唯「うわ~ん!」

律「い、いきなりどうした唯?」

唯「のっ、のどがぢゃあ゛…うぇ、っぐ…うう゛」

律「え? え?」

ドカーン

和「おう!」

律「あおっ!?」

和「ここに唯が逃げてきたべ?」

律「の、和…さん?」

和「さっさと出せやコラー!」

唯「……」ブンブン

律(あ)

律「ゆ、唯ならここに来てないよ」

和「……」チラチラ

和「どっかに隠してんじゃねーのか…?」

律「いやいや、そんなことしてないって」

唯「……」ガサゴソ

律(段ボール被って隠れてる!?)

和「まぁ、いいわ。てか後で嘘だって分かったら覚えとけよコノヤロー」

ガチャリ

唯「もう、行った…?」

律「あ、ああ」

唯「うわ~ん!」バッ

律「うわっ」

律「唯…お前何やらかしたんだよ?」

律「あれだけ和にはもう関わるなっていっただろ」

唯「だ、だって! だって和ちゃんが私のポッキー勝手に取ったから…」

律「はぁ…」

・・・


数日前。
それはいつものHR中のことであった。

さわ子「真鍋さん」

シーン…

さわ子「あら、真鍋さんまだ来てない…おかしいわね。何の連絡も来なかったし」

唯「和ちゃん遅刻だー」

姫子「あの真面目な真鍋さんが珍しいよね。…まさか事故に」

唯「え!? やだよ! わ、私和ちゃん探しに…」

姫子「じょ、冗談よ。冗d…」

ガチャ…ドカーン

?「ち、ちーっす」クチャクチャ

「!?」

ドアが大きな音を立てて開かれると、金髪の少女が教室に入ってきた。
…どちらさま?
クラスが騒然としている中、堂々と椅子にドカッと腰かけて机の上に足を組む少女。
彼女は席は唯の前の席だ。

唯「…どなた?」

「!」

?「あ゛? 幼馴染の顔を覚えてられないの?」

和「ふふーん、私だよ。和だよ、のーどーか」

「!!!」

「うそぉ…」「えー!?」

「ほんとに真鍋さん!?」「いやー!」

さわ子「え…あ、いや…ちょ、ちょっと…」

さわ子「ま、真鍋さん!!」

和「は、はーい!?」

さわ子「そそそ、その頭はどうしたの!? 耳にピアスまで…」

さわ子「け、化粧もしてるじゃない! どういうつもりっ!?」

和「あ゛…」

和「あ゛ー?」

さわ子「なっ!?」

和「お、おめぇも昔はこんなだったんだべー? なァー、さぁわちゃ~ん」

さわ子「ちょっ、ば……あ、後で職員室に来なさい」

和「望むところだコノヤロー!」

唯「な、なんてこったい…」


澪「……」ガクブル

和「澪ってさぁ、めっちゃ可愛いよねー」

澪「ひゃ、ひゃりがとぉ…」

和「わ、私がいいとこ紹介してあげよっか?」

和「アイドル事務所的何か…みたいなー?」ニヤ

澪「あ、あいどる…?」

和「澪ならすぐに人気出そう。お、お乳でけぇし」

和「まるで牛ね! このホルスタイン! 絞ったら…汁出てくるんじゃね!?」ガシッ

澪「ひぃんっ…やめてよぉ…」

律「おい、その辺にしといてやれよ!」

和「んあ~?」

律「い、嫌がってんだろ」

和「デコ助か」

和「なんだ自分の女に手ぇ出されて悔しいって? え?」

澪「ちょ…///」

律「ああそうだよ! 悪いかよ!?」

和・澪「ちょ!! まっ!?」

和「あ…えっと…」

和「あの…うん…なんか、ご、ごめん…」タタタ

澪「た、助かった…でも」チラ

律「大丈夫か、澪」

澪「律…さっきの…えっと///」

律「ああ、あれね。いや、澪は私の所有物だろ? 私の断りなく勝手に遊ばれてたのが我慢できなくてさ…」

澪(なんかこいつ色々と歪んでる…)



紬「い、嫌よ…」

和「いいじゃん! いいじゃん! どうせお金一杯あるんだし」

和「少しぐらいいだろぉー! シャー芯切らしちゃったんだよ~!」

紬「え、だったら私の分けてあげるけど」

和「え」

和「…あ、えっと…ぜ」

和「全部よこせー!」バッ

紬「きゃっ」

和「…ちっ、これっぽっちかよ。まぁ、いいわ。今回はこれだけで我慢してやる」

紬「あ、どうぞ」

和「ふんっ」フンス


和「……」スタスタ

和「……」ウキウキ

和(やっ、やっちゃった!)

和「カツアゲやっちゃったわ…!」

ゾクゾク

和「わ、悪いことするのがここまで快感だったなんて…」

和「ふふふ…私はもういい子を捨てたのっ。これからは悪の道を目指すのよ」

唯「るんるんる~ん」トコトコ

和(あら、唯…ふふっ!)


和「おい!」

唯「うひゃあ!? な、なんだ和ちゃんか」

和「も、文句あんのかコラ」

唯「べ、別にないよぉ…?」

和「ふん、あっそ」

和「…ん、いいもん持ってんじゃん!」バッ

唯「あぁっ、私のポッキー!」

和「はい、ぼっしゅ~! きゃははは」

唯「か、返してよー! 酷いよー! 和ちゃん!」

和「ふ、ふふん!」


唯「まだもう一袋あるんだよ~!」

和「じゃあ私にくれたっていいじゃない!」

唯「やーだー!」

和(ケチ!)

和「ふん、とにかくこれは貰ってくから」ス

唯「えーん! 和ちゃんがポッキー取っちゃったよー!」ポロポロ

和「が、ガキじゃないんだから一々口に出して言わないでよ!?」

唯「ぐすっ…和ちゃん…一体どうしちゃったの? こんなの和ちゃんじゃないよぉ…」

和「ふ、ふふ! 私は変わったのよ! じゃなくて変わったんだよ!」

唯「イメチェンにも…程があるよっ」ガシッ

和「!? ちょ、ちょっと髪引っ張らないで!」

唯「こんなにさせちゃって! ばかばかばか!」グイグイ

和「や、やめ…!」

ポロ

唯「あ…」

和「!!!?」バッ

唯「カツラ?」

和「ち、違うっっ///」

唯「染めたんじゃないの?」

和「染めた! 染めた染めた染めたぁっっ///」

「あらー、今の見たぁ?」「真鍋さん髪染めてなかったんだね~」

「カツラだって、カツラ」

和「うぐっ…///」

唯「あれ、よく見たらそのピアス…シール?」

和「わああああ! わああああ!!」ブンブン


唯「和ちゃん?」

和「……」ワナワナ

和「…ゆぅぅぅいぃぃぃ」

和「よくも私に恥を掻かせてくれたわね!!?」

唯「ぎゃ、ぎゃぁ~!? 和ちゃん怖いぃぃ!?」タタタ…

和「ま、待ちなさ……待てやコラー!!」ダダダ

唯「ご、ごめんなさい! ごめんなさいぃ! ポッキーあげるから許して?!」

和「うるさいうるさいうるさーい!!」

唯「ななな、なんでそんなに怒ってるのー!?」

和「きぃーー!!」プンスカ

・・・

唯「はぁ…」

律「とにかく、今の和は分けわかんないからさ。しばらくは関わんなよ。それが得策だ」

唯「でもぉ…」

律「きっとあれだ。若気の至りってやつ。和も人の子だしな」

唯「遅れた反抗期?」

律「まぁ、そんなもんなんじゃね? よくわかんないけど」

唯「違うよ…やっぱり、何か和ちゃんに何かあったんだよ!」

律「悪い友達ができたとか?」

唯「ううん、それはないよ。和ちゃん友達つくるの下手糞だから」

律「そういうことは言ってやるなよ」


ガチャリ

梓「……」

律「お、梓。どうした変な顔して?」

梓「さっき和さんに会ったんですけど…えっと…」

律「そっか、梓はまだ和見てなかったんだよなー。一昨日あたりからあんなになっちゃったんだよ…」

梓「な、なんで教えてくれなかったんですか?」

律「いや…できる限り私たちも触れたくない話題だからさ…ないことしようって」

梓「ああ…」

唯「わ、私のことまだ探してた?」

梓「はい、聞かれましたよ。鬼の形相でした」

唯「ひぃー…本気で怒った顔の和ちゃんはナマハゲのそれに匹敵するよぉ…」

律「唯、お前。ほんとは和のこと嫌いだったりするのか? そうなのか?」


ドカーン

「!?」

和「やっぱりここにいるじゃねーかコノヤロー!!」

律・梓「の、和(先輩)!」

唯「ぎゃーす!? や、やだー!」

和「じっくりと…お灸をすえてやるわ。か、覚悟しいや」

梓(うっわ、汗で化粧が落ちてきてる…!)

唯「やーだー!! 怖いよー!! えーん!」

和「…ぶ、ぶ、ぶりっ子すんなや! ムカつく!」グイグイ

唯「わあぁーん! うわあぁあーん!」

ガチャリ

憂「失礼しま…お姉ちゃん!?」

梓・律「憂(ちゃん)!」

唯「びえ~んっ、う、う゛ーい゛ー!! へる゛ぶみ゛~…」オイヨイヨ…

憂「お、お姉ちゃん! と、とにかく…えいっ!」

ドン

和「ふぐっ!?」

憂「大丈夫? お姉ちゃん?」

唯「え~ん! 怖かったよおおお」ギュッ

憂「よしよし」ナデナデ

律「いやー妹は偉大だなーあはは」

梓「棒読みになってますよ…それより」

梓「だ、大丈夫ですか…和さん」

和「うっ…ぐ」フラフラ

憂「え、和さん!?」

和「いたた…」

律「少し、頭冷えたんじゃないか? 和」

和「う、うるさい…」

憂「和さん」

和「う、憂…!?」

憂「なんで、なんでお姉ちゃんをいじめたの?お姉ちゃん、いやだいやだってすごく嫌がってたじゃないですか。泣いてましたよ? 見ました? かわいそうに…」

和「え、えっと…そ、そんなの…そんなこと」

和「しったことかよぉっ!」

憂「めっ!」グッ

和「うわあああごめんなさいぃぃっ」

律「ほら、妹ってすげぇ」

梓「例外もありますよ」


律「和、どうして急にそんな極端な非行に走ったんだ?」

和「……」

和「嫌だったのよ」

梓「え?」

和「周りから私が真面目でいい子でクールビューティだというレッテルを貼られていることが」

梓「クール…え?」

和「…私だって普通に不真面目なところがあるのよ」

律「普通に不真面目…」

和「親、教師と期待に期待をかけられて…生徒会長としての仕事に追われる毎日…ストレスがたまる一方だった」

和「そして、私は決心したの。それならいっそ、不良になっちゃおう! って」

律「そいつは随分と思い切ったな」

和「やってみるとこれが中々…今まで我慢してきたことができてとても爽快で快感だった」

和「でも…」

和「なんかやってるうちに根本的なところで色々と違うな気がしてきて…」

律「だろうな」

梓「早めに気付けただけまだましですよ。変にこじらせなくてよかったです」

憂「ふふ、和さんが悪いことをするのは似合いませんし、キャラじゃないですよ」

和「う…」

唯「そうだよー」

和「唯…」

唯「和ちゃんは悪い子じゃないんだよ? 無理してそんなことしてたって可笑しいよ」

唯「笑っちゃうよ」

和「うぐっ…!」

律「うわぁ…」

梓「心に突き刺さりますね…」

唯「だから和ちゃん」

唯「いつもの和ちゃんに戻ろう? 私、いつものカッコかわいい和ちゃんが大好きだよ!」

和「唯…」

唯「ね!」

和「ええ…ええ…そうね」

和「私、真鍋 和は普通の女の子に戻ります…」

憂「キャンディーズ?」


後日談

唯「和ちゃ~ん、宿題見せてよぉ」

和「もう! なんでしてこないのよあんたは! 知りませんっ、自分の力でなんとかしなさい」

唯「やーんっ!」

律「和もすっかり元通りだな」

澪「うん、一時はどうなるかと思ったよ」

ガチャリ

さわ子「はーい、みんな席についてー」

さわ子「出席をとりますよー」


さわ子「さーん…滝エリさーん…」

さわ子「琴吹 紬さーん」

シーン…

さわ子「あら、琴吹さんまだ来てない…おかしいわね。何の連絡もこなかったし……まさか」

ガチャ…ドカーン

「!?」

紬「ち~っす!」ニコニヤ

さわ子「…も、もう嫌……」

紬(一度、不良になってみたかったの~ふふ)

唯「なんてこったい…」


おわり!



最終更新:2011年04月06日 17:54