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皆さん、いかがお過ごしでしょうか。平沢憂です。
九月に入り夜はとても涼しくなりましたね。
風邪はひいてませんか? きちんと暖かくして寝ないとダメですよ。
そうしないと私のお姉ちゃんみたいに、大事なときに体調を崩してしまいます。
ほんと、秋らしい空気が漂ってますね。

秋と言えば……、私は読書と芸術――、あと食欲の秋です。
お姉ちゃんが美味しそうに食べてくれるから料理の腕の奮い甲斐もあります。

さて、それはともかく、私たち学生には外せない一大イベントがありますよね。
読書、芸術と言えば文化。

そう、文化祭です。
桜高文化祭といえば軽音部、とまではいきませんが
それなりにお姉ちゃんたちの演奏は有名になったようです。

友達の中野梓ちゃんも入部して5人体制になりますますパワーアップしました。

今日はそんな軽音部が活躍する文化祭でのライブの一幕をお送りします。

和(司会)「それでは次の出演者は本校の花形! 知らない人はいない! 果たしてやるきはあるのか!
       ファンクラブまで出来てしまった我らが軽音部こと放課後ティータイム! どうぞ!」


会場を包み込む拍手。いやが上にも高まっていく観客の期待。
私はゆっくり上がる緞帳のみんなへと、心からのエールを送った。
生徒会と実行委員会で尽力してきた文化祭。
学校の生徒のお目当ては殆どがこのライブではないだろうか。

桜高軽音部。

事実、生徒会も実行委員会も唯達の演奏で全校のモチベーションが維持されているのを感じてた。
……あんなみんなだけど本番になると素敵な演奏するのよね。
私も期待してる。講堂の観客の中に憂ちゃんを見つけた。
目があって互いに手を振る。

まもなく緞帳が上がる。
講堂に詰めた観客の声援も高まっていった。

和「え?」

ステージの上は空だった。


楽器類、マイクの準備はばっちりなのだが、主役の演奏者達が、いない。
これにはさすがの講堂も少しばかり驚いたようで、そこかしこから疑問の声が上がっていた。

和(ちょ、ちょっと澪? 律? ムギ? こんなの聞いてないわよ……)

学生の行う学祭ライブといえどリハーサルはきちんと執り行われる。
講堂を使える時間も限られている。
その中で出演者各々の持ち時間も定められ、出演順も決められた上で通しで行う。
よって、内容に大きな違いが出るはずが――。

和(まさか……唯)

幼馴染みのことが脳裏をよぎる。まさか、また、何か重大なことを……。
無意識に憂ちゃんを見る。どうやら何も知らないようだ。
心配そうな表情でステージを見ていた。
ライブ班――スタッフ連中もぽかーんとした表情だ。

いよいよ観客達がざわついてきた頃、ようやく動きがあった。
律が、上手側から姿を現した。

ただし。なんとも言い難い妙な格好である。
前身黒尽くめ、ぱっと見、まるで全身タイツのようだがそれほど地味ではない。
シックなライブ用の衣装のようだ。
そして頭には花冠を乗せて、やけに神妙な面持ちでステージ中央にやってきた。

気付けば先ほどまで講堂を覆っていた歓声も消え、皆が何事かとステージに意識を傾けている。

和(……律)

何が何だか全く訳が分からない。
講堂内の誰もがそんな心境だったろう。

やがて、うつむきがちの顔を上げた律がとうとう声を発した。



律「私は 神だ」


きっと感情が具現化するなら、講堂内はクエスチョンマークで満たされた。

律「私 は 神だ」

再び、律は講堂内を見渡してそんなことを言った。

律「お前 たち 民 が 考え た 」

唯「ちょ、ちょっとりっちゃん!? どうしたの?」

制服姿の唯が上手側から慌てて出てくる。
あたふたと唯にしてはめずらしい。

唯「もう私たちの番なんだから、遊んでないで――」

律「邪魔 は する な」

そんな唯に向き直った律は持っていたスティックを掲げると、それをまるで剣のように振り下ろした。

唯「うわああああ……! のおおぉぉぉぉおおぉぉおおお……!」

すると唯が急に苦しみだす。
胸を押さえ喉を押さえ、やがてゴロゴロ転がってまた上手側の裏に消えていった。
なんなの? 一体……。観客席からは小さく笑い声が聞こえる。
律が正面に向き直り、こう続けた。


律「お前 たち 民 が 考え た この 文化祭 という 儀式 は

  我々 神 から 見ても いい もの だ

  よって この 儀式 は 絶やす こと なく 続け

  代々 まで 受け 継ぎ ――」


蕩々と言を繋ぐ律の姿はいつものだらしない空気をまるで感じさせなかったが。
観客席の笑い声は大きくなっていて、歓声も復活していた。

和(あれ……これってもしかして)

振る舞いに既視感を覚え、脳を回転させているとそこへ。
律と似たような格好の唯がギターを背負って飛び出てきた。
そうしてようやく私は合点がいった。


唯「私 だ」

律「なんだ お前 だった のか」

唯「また 騙され たな」

律「全く 気付かな かった」


唯は神妙そうな表情をしているつもりなのだろうけど、なんだか間抜けで――。
私はつい吹き出してしまった。

唯「暇を 持て 余した――」

律「――神々 の――」


唯・律「――遊び――」


瞬間、観客席が沸騰する。
二人はそれぞれ神々しさをイメージしたポーズをとっているつもりなのだろう。
唯はギターを構え、律はスティックを頭上に掲げて、とてもいい顔をしている。






やがて律がスティックを打ち鳴らした。





律「ワン、ツー、スリー!」



いかがでしたか? これが今年の文化祭ライブの模様です。
お姉ちゃんたち軽音部のライブは無事に大盛況のうちに幕を閉じました。
ちなみにライブ後に和さんにはしっかり怒られたそうです。
私も最初はびっくりしましたが、何だかお姉ちゃんたちが楽しそうだったのでオッケーです。

あの不思議な衣装も顧問の山中先生の手作りらしいです。

軽音部の活躍も話せたので今日はこの辺で失礼します。
平沢憂でした。





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最終更新:2010年01月25日 14:53