澪「だから私は唯から梓を奪おうと思う」

唯「え、なんで?」

澪「私だけとられたみたいで悔しいだろ」

唯「いや……そもそもりっちゃんは澪ちゃんの物だったっけ? 確かに仲良しではあるけどさ」

澪「幸いにも梓は私の事を尊敬しているしな、すぐに虜になるだろう」

唯「もしもーし?」

澪「そうと決まれば行動開始だ!」タッタッタ

唯「聞いてよー」


~~~


部室

律「澪と唯の奴、いつまで掃除当番やってるんだよ」

梓「てきとーにサボるより良いじゃないですか」

紬「そうよ、お茶を用意して待っていましょう」

ガラッ

澪「梓!」

梓「はい?」

澪「……」ツカツカ

梓「な、なんですか?」

澪「……」グイ

律(梓のアゴ持って何する気だ?)

紬(あらあらまぁまぁ)

梓「せ、先輩? 顔が近いですよ……?」ドキドキ

澪「梓……私の物になれ」

律「ぶーー!!」

紬「なるほどなるほど」

梓「な、なななななにを言ってるんですか!?」

律「澪!?」

澪「うるさいぞ浮気者」

律「浮気って……あ! ムギと遊んだ時はちゃんと最初にお前も誘っただろー!」

澪「そんなに楽しくなるなんて予想出来ないだろ!」

律「無茶苦茶言うなよ」

紬「お、落ち着いて二人とも」

梓(痴話喧嘩ですか……)

澪「でももういいんだ。私には梓がいるから」ギュー

梓(む、胸に埋まる)

律「お、おい……」

バタン!

唯「あずにゃん!」

梓「ゆ、ゆいしぇんぱい」

澪「見て解るように、今日から梓は私の物だから」

唯「あずにゃんを物扱いしてはいけません!」

律「うん、まぁ、そうだな」

唯「あずにゃんを離して!」

澪「嫌だ。律を失った私の寂しさを埋めてくれるのは梓しかいない」ナデナデ

梓「あ……」

唯「あー! あずにゃんが私には見せない甘い顔を!」

梓「し、してないですよ!」

澪「梓、私なら唯と違って過剰なスキンシップはしないし、甘えたい時に甘えさせてあげるよ」

澪「だから私もちょっとだけ梓に甘えていい?」

梓「……」

唯「あ、あずにゃん? 私の方が良いよね? あったかいもんね?」

紬「ダメよ唯ちゃん、梓ちゃんが澪ちゃんから離れないのが答えよ」

澪「可愛いな梓は」ツンツン

梓「あぅ……」

紬「あらあら赤くなっちゃって」

律「なんか姉妹みたいだなー」

唯「あ……あ……」

唯「あずにゃーん!」ガバッ

梓「あ、暑いから抱きつかないでください!」グイグイ

唯「拒否された……」

唯「み、澪ちゃんの方が良いんだ……」

梓「そこまでは言ってませんけど」

梓「唯先輩の愛は少々一方通行的なところがあるので……」

紬「ちょっと、否定できないわね」

梓「その点、澪先輩は適度な距離感を持ってくれそうですし」

律「あんまり近いと殴られるけどね」

澪「こんな風に?」コツン

梓「にゃあ?」

律「私の時と威力が違う!」

澪「当たり前だろ、梓を本気で殴れるわけない」

紬「良いなぁ梓ちゃん……澪ちゃんに叩いてもらってるぅ」

律「そこ羨ましがるポイントじゃないから」パコン

紬「えへへ……りっちゃんに叩かれた」

唯「い……居場所が無い……」

唯「ち、ちくしょー!! ぐれてやるー!!」ダダダ

バタン!

梓「あ、唯先輩が」

澪「練習もしないで困った奴だ」

梓「全くです!」

澪「あぁそうだ、この間借りたCDなんだけど……」

梓(音楽の話がちゃんと出来るのって良いなぁ)

紬「唯ちゃん探さなくていいの?」

律「気が済んだら返ってくるよ……家出が見つかると恥ずかしいんだぞ」

紬「心配だわシャランラ」

律「ムギ、変な語尾でウケを取ろうとするのは安い手だから止めとけ」


……

唯「ぐれてやる……って何をすればいいんだろ?」


唯「とりあえずタイを解いて、ブラウスのボタンを二個ほど空けよう」

唯「へへへ、校則破ってやったぜ」

和「あ、唯」

唯「おう生徒会長」

和「何か悪いものでも食べた? あれほど拾い食いはダメって言ったでしょ」

唯「きょ、今日からぐれるんだもん」

和「はいはい……もう、制服はちゃんと着なさい」テキパキ

和「はい、完璧。あんまり変な事しないのよ」

唯「……」

唯「和ちゃんはダメだ、真面目だからこっちまで真面目にされてしまう」

唯「ここは元ヤンのさわちゃんにぐれ方を教えてもらおう」


職員室

唯「さわちゃーん」

さわ子「あら唯ちゃん、どうしたの?」

唯「私に不良のなり方を教えて下さい!」

さわ子「え?」

唯「ワルになってあずにゃんと澪ちゃんを見返してやるんだ!」フンス

さわ子「……」

唯「私の新しい魅力にあずにゃんもメロメロになるはずだよ!」

さわ子「じゃあ教えてあげるわ」

唯「はい!」

さわ子「あのね唯ちゃん、唯ちゃんくらいの年頃はそういうのに憧れやすいの」

さわ子「私もそうだったから解るわ」

さわ子「でもね、それはやがて恥ずかしい思い出になるの」

さわ子「増してや自慢気に『あの頃悪かった』なんて語り出すのはもっての他」

さわ子「だからその気持ちは忘れて、いつのも唯ちゃんのままでいなさい」

唯「えー、つまんなーい」

さわ子「大丈夫大丈夫、唯ちゃんはとっても可愛いもの。私が保証するわ」ナデナデ

唯「うう……」

唯「やっ!」パシン

さわ子「唯ちゃん?」

唯「さわちゃんのバカー! 眼鏡曇ったまま戻らなければいいんだー!」タタタ

さわ子「なんて恐ろしい事を言う子なの……」

~~~

唯「……」タタタ

唯「……」

唯「なんかドキドキする……」

唯「は、走ったからだよね」

唯「……部室戻ろう」

唯「ただいまー」

律「ほら帰ってきた」

紬「お帰りなさい、紅茶入ってるわよ」

唯「うん」

澪「ぽけーっとしてどうしたの?」

唯「なんでもなーい」

澪「いけっ梓」

梓「唯先輩ー」ダキッ

唯「なーにー?」

紬「あら?」

律「普通の反応だな」

梓(微妙にショックだ)

ガチャ

さわ子「練習やってるー?」

唯「さ、さわちゃん!」

さわ子「あら唯ちゃん不良は止めたの?」ニヤニヤ

唯「う、うん」

律「今から練習前の一服だから」

さわ子「順番おかしいでしょ……ムギちゃん、私にもお茶ちょうだい」

紬「はい、ただいま」

さわ子「ん? そういえばいつもと席が違うわね?」

澪「今日から私の隣は梓になりました」

さわ子「ふーん、ま、何でも良いけど」

さわ子「唯ちゃん、一つずれて」

唯「は、はい」

梓(唯先輩がおかしい?)

さわ子「~~で、あの先生が腹立たしいのよ」

律「うわー、聞きたくないなぁ、職員室のドロドロ」

唯「……」ジー

梓「大人も複雑ですね」

さわ子「何歳になってもネチネチしてる人はいるのよ」

唯「……」ジー

さわ子「なぁに? さっきから」

唯「な、何でもないよ! さわちゃんの眼鏡曇らないかなって」

さわ子「あんたはどれだけ私の眼鏡に恨みがあるのよ」ツネー

唯「いひゃいいひゃい!」

澪(つねられながら笑ってる……)

紬(私も罵倒されながらつねられてみたいなぁ)

さわ子「さて、そろそろ練習しなさい」

律「一緒になってお茶してたくせにー」ブーブー

さわ子「田井中さん、成績表がどうなってもいいのかしら?」

律「大人ズル過ぎだろ」

澪「梓、準備するぞ」

梓「はいです!」

紬「唯ちゃん、練習よ」

唯「え、あ、うん、解った」

~~~

唯「君を見てると、いつもハートドキドキ♪」

唯「揺れる思いはマシュマロみたいにふーわふわ♪」

唯(うぅ……さわちゃん、そんなに見ないでよぉ)


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最終更新:2010年07月21日 21:55