梓「このままなら唯先輩の将来は真っ暗よ」
純「ちょっと梓! あんた何いってんの!?」
憂「あ……あうぅ……」
梓「そんな涙目になったって誤魔化されないんだから」
憂「ご、誤魔化すだなんて」
純「唯先輩はやれば出来る人じゃん! 梓もそう言ってたでしょ!」
憂「そっ、そうだよ! お姉ちゃんはやれば出来る!」
梓「うん、唯先輩はやれば出来る人。それは分かってる。でもね」
憂「でも?」
梓「裏を返せばやれるけどやらない人って事なの」
憂「そんな! そんな事ないよ!」
梓「常に唯先輩を甘やかして、いい気になってる憂には分からないよね」
憂「いい気だなんて私……」
純「梓! ひどいよそんな!」
梓「ごめん違った」
憂「あ、梓ちゃ……」
梓「唯先輩は優しいから憂を立ててるだけだね。
そう考えると本当に甘えてるのは憂、あなたかも知れない。
唯先輩に甘えて、唯先輩の可能性を奪ってるんだ」
憂「……うっ……ううぅ……」
純「や、やめてー!!」
……
純「こんな惨事になるのを私は防ぎたい」
梓「なるかボケーッ!!」
純「分かった本当の事を教えてあげる」
梓「上から目線だなぁ」
純「憂の髪留めが攻撃色に染まっているからよ」
梓「なにその髭のおじさんが考えそうな設定」
純「だから近付いちゃダメ」
梓「その説明のどこに納得すればいいの?」
純「攻撃色の憂をなめない方がいいわ」
梓「どういう事?」(むしろなめたいけど)
純「後ろに立つ者は誰彼なしにめっされる」
梓「なにそれかわいい」
純「憂を甘く見ないで!」
梓「ひっ!?」
純「ウオッカの背後に立つようなものよ!」
梓「へ? それどういう事?」
純「ウオッカというのはダービー馬」
梓「よく分かんない」
純「蹴られたら3メートルは吹っ飛ばされるわよ!」
梓「えっ? え!? 蹴られるの!?」(うそこわひ……)
純「驚くのはまだ早い」
梓「ま、まだ他に何かあるっていうのっ!?」
純「黒い髪留めの時は暗くてネガティヴになり」
梓「あの憂が!?」
純「青い髪留めの時はいつもの20%増しで涙ぐみ」
梓「ポテチ増量みたいな嬉しさ!?」
純「ピンクの髪留めの時はやたらスキンシップしてくる」
梓「な、なんだってえええええええーッ!!」
純「気をつけな梓」(ホントからかい甲斐があるわ、この子)
憂「なにメチャクチャ言ってるのかな純ちゃん?」
純「フォウイッ! 聞いてた!?」
憂「騙されないで梓ちゃん。これはお姉ちゃんに買って貰っただけだから」
梓「分かってるわよそんな事! バカにしないで!」(危ない危ない!)
純「おじいちゃん子っぽい梓には分かるまい」
梓「誰がよ! 何でよ!」
憂「私はお姉ちゃん子だよ」
梓「分かり切ってるよ!」
3年2組の教室
唯「それでね~、ういったらすごい喜んでくれたんだよ」
紬「本当に唯ちゃんと憂ちゃんは仲いいね」
唯「うん! 憂と私はず~っと一緒だもん!」
律「仲いいっていうレベルじゃねぇぞっ!」
紬「素敵じゃない。羨ましいわ」
唯「えへへ~」
律「まあ私らも卒業したら二度と会えないかもだしぃ」
唯「何でそんな寂しい事いうのりっちゃん!!」
紬「そらそうよ!」
律「冗談! 冗談ですわよ!」
唯「憂も軽音部のみんなとも、ず~っと一緒なんだから!!」
紬「唯ちゃん……」
律「ああ、ずっと一緒だ唯!」
唯「……何で私の頭をグシャグシャにするのりっちゃん?」
律「頭皮マッサージでございます」
唯「いたた……もういいよ!」
律「遠慮なさらないで唯さん!」
唯「あー、もうりっちゃんだけは一緒じゃなくていいや」
律「なんだとー! 私なしでは生きられない身体にしてやろうかぁ!」
唯「そうだね。とっても上手だから自分にやったらいいよ」
律「やだぁ、照れるよ~っ! ズビシ! ズビシ!」
唯「はっ! ほっ!」
律「おっ、よけた? やるな唯~」
唯「ハッ!」
律「ちょ、スカートめくんな!」
唯「ほほう、中々かわいい下着ですね~」
紬「りっちゃん女の子みたい!」
律「わ、わりぃかっ!」
唯「ううん、すごくかわいいよ」
律「や、やめろって! かわいくねーし!」
唯「どうしたのりっちゃん顔赤い~」
律「このやろ~! お前の下着も見ちゃうかんな!」
唯「あっ、やだやだやだ!」
律「うひひひ、大人しくしろい下手人が!」
唯「ああんムギちゃん助けて!」
紬「任せて! 私、犯人を匿うのが夢だったの~!」
律「ちっ、2対1とは卑怯なり!」
唯「あばばばばばば!」
律「だが時としてその不利な状況が私を燃え上がらせるっ!」
唯「まだ私だって本気じゃないから!」
律「甘いな! 私はこれで実力の半分も出していない!」
唯「じゃあ私も秘められた力を解放するよ!」
紬「がお~っ!」
澪「ふふっ、3年になっても相変わらずか」
和(唯……私は?)
昼休み、2年1組の教室
梓「憂~、くるりの新譜だけど聴く?」
憂「へえ~、聴く聴く」
梓「じゃあかたっぽ貸したげる」
梓「いやいや」(教室の中なのに憂とイヤホンで繋がっちゃってる!)
憂「やっぱいいね~」
純「はぐ……はぐ……」(今日は梓やけに憂にごろにゃんしてるな)
梓「気に入ったんならCD持ってくるよ」(頭がフットーしそうだよぉ!)
憂「本当! ありがとう梓ちゃん!」
梓「はいここで抱きつきですね」(バッチコイ!)
憂「うん? 何が?」
梓「ハッ! 本音も建前もおかしくなってた!?」
憂「あははっ、梓ちゃんってたまに変だよね~」
梓「なははは……」
純(なんっか面白くない)
純「憂~、ちょっとゴメン」
憂「純ちゃん?」
純「秘技!! ポニテ崩しぃ~!!」
梓(純が憂のリボン取った!?)
憂「……何するの純ちゃん」
純「そろそろまぜろよ」
梓(髪を下ろした憂ってやっぱり唯先輩にそっくりだ)
憂「めっ!!」
純「あうっ」
梓(あれ? 私もしかして憂を唯先輩に重ねてただけなのかな?)
憂「もう! 次やったら許さないからね?」
純「はい……しぃましぇん」(まさか涙目になるとは)
梓「いやそもそも私は澪先輩に憧れていて……」
憂「ん?」
純「急にどーした梓?」
梓「ムギ先輩や律先輩もアリっちゃアリだし……」
憂「何がアリなの?」
梓「えっ? うわっ! 何っ!?」
純「声に出てたよ」
梓「うわっ、ちがっ! 違うから! 私そんな誰でもいいって訳じゃ!」
憂「ヘンな梓ちゃん」
純(ダメだこいつ……早く何とかしないと)
放課後
梓「憂、一緒に帰ろっか」
憂「えっと軽音部は?」
梓「期末だからないんだ」
憂「そっか。お姉ちゃんいつも通りギター担いで行ったから」
梓「相変わらず唯先輩は……」
憂「最近すごく練習してたから残念だろうな~」
梓「ふ、ふぅんそうなんだ」(陰では一生懸命なんだよね)
純「私もジャズ研休みなんだけどスルーですか?」
梓「言われなくてもこびり付いて来るでしょ純は」
純「人を頑固な油汚れみたいに言うな!」
梓「冗談よ。たまには三人で帰るのもいいよね」
憂「でも部活も楽しいんでしょ~?」
梓「確かにないと物足りないかも」
純「かわいい後輩どもと会えないのは寂しいな」
梓「くそ嫌味かくそ」
純「羨ましいだろう? 今からウチ来るか梓?」
梓「そっちこそ軽音部に入らなかったの後悔してるんでしょ?」
純「なにおう!?」
梓「私が軽音部の話するといいな~、いいな~ってうるさいじゃん」
純「そ、そんな事ないもん!」
憂「そっかー、最初は二人ともお互いの部活に入ろうとしてたんだね」
梓「考えてみたらそうね」
純「……梓ともう少し早く友達になれていれば」
梓「うん? 何か言った純?」
純「な、何でもないよ! わははは!」
憂「純ちゃんも梓ちゃんと一緒だったら軽音部入ってたって事?」
純「ちょ、ちょっとうい~!」
梓「そうだよね。一人じゃ入りにくいよねウチの軽音部は」
純「そ、そうだよー! 梓は良く入部出来たもんだ!」
梓「そんな言い方って……私だって最初はとまどったけど」
純「ティータイムとかコスプレとか色々突き抜けすぎてるのよ!」
梓「私もちょっと普通じゃないなって思ったけど」
憂「今ではもう骨の髄まで馴染んでるよね」
純「並の人間にはついて来れない! 無理!」
梓「ふっ」(そうだよね先輩達の仲間になれるのは私だけだ)
純「何でニヤニヤしてるの梓?」
憂「梓ちゃん本当に軽音部が好きなんだね~」
その夜、平沢家
唯「りっちゃんに先生の話聞いてなかったのかってバカにされた」
憂「お姉ちゃん何の話?」
唯「今日私、部活ないのにギー太持って行ったでしょ?」
憂「うん」
唯「だから言ってあげたの。聞いてなかったんじゃない忘れたんだと」
憂「お姉ちゃん正直だね!」
唯「ま、まぁね!」
憂「お姉ちゃんも部活なくてやっぱりつまらない?」
唯「うん? そりゃあ軽音部楽しいもん!」
憂「あはは、梓ちゃんもそんな感じだったよ」
唯「う~、あずにゃんとのスキンシップがないのも辛い」
憂「梓ちゃんかわいいもんね~」
唯「でもたまに思うんだ。後少しで何もかも変わっちゃうのかなって」
憂「……え?」
唯「やってる時は忘れてるけど、ずっとは続けられないんだよね」
憂「そ、それは分からないよ」
唯「前までは変わりたいって思ってた。だけど今はそれが怖いんだ」
憂「お姉ちゃん……」
唯「あ、ごめんね。柄にもない事いっちゃった……えへへ」
憂「変わったって大丈夫だよ! お姉ちゃん達は!」
唯「うい?」
憂「何がどう変わっても、お姉ちゃんはお姉ちゃん!」
唯「で、でも~……」
憂「頭のリボンの色が変わっても私は私でしょ?」
唯「そ、そっかぁ!」
憂「そうだよ!」
唯「DEATH DEVILのさわちゃんが教師になってもさわちゃんだもんね!」
憂「それは変わりすぎ!」
唯「よ~し!! 行くよギー太!!」
憂「お、お姉ちゃん勉強は!?」
おしまい
最終更新:2010年07月23日 19:45