梓「ジムですよ、ジム、時代はイデオンです」

唯「それはジムじゃないと思うな」

 といいつつ、ジャングルジムに登る唯先輩。
 私はそんな先輩を下から眺めるだけ。
 絶景かな絶景かな。

唯「あずにゃんも登ろうよー」

梓「私高いところ苦手なんですー」

唯「そっかー、じゃあ仕方ないねー」

 唯先輩は遊びに夢中で、私がおぱんちゅまんこ覗いていることも、
 そもそもジャングルジムに誘ったのが私だということも忘れているみたいだった。

唯「梓ちゃん、鼻血大丈夫?」

梓「何も問題ないです、むしろ絶好調です」

唯「そう? じゃあ、今度はあれに入ろ?」

 と、唯先輩が指さすのは、中が空洞になってる山の形をしたアレです。
 夜に来るとサカってるカップルが使っているとかいないトカ&ゲー。

梓「中に入るんですか」

唯「うん、嫌かな?」

梓「私どっちかって言うと、入れられるより、入れるほうが好きなので問題ないです」

唯「梓ちゃんがどこか遠い人間のように感じてきたよ」

 子供のときはもっと大きいような気がしたけど、
 身体が成長すると中も狭く感じる。
 どこか、ギチギチあんあんです。

唯「この中で声を出すと、あーって、揺れるんだよねー」

梓「もう一声ー」

唯「あー! あーっ! あー!」

 グッジョブです唯先輩、もう絶好調すぎて鼻血が出そうです。
 ええと、ティッシュティッシュ。

唯「うう、耳が痛いよ」

梓「そうですね、この痛みも幸せな気分になってきます」

唯「よくわからないよ……」

 私たちは公園を抜け夕日の中の帰り道、そういえばときりだしてみた。

梓「澪先輩には、ファンクラブがあるそうですね」

唯「ああ、シューティングスター澪さまだね」

梓「唯先輩知ってたんですか?」

唯「知らないのは澪ちゃんくらいだと思うよ」

 秘密にしているとかじゃないですよね?
 バラしたらしめられるとかそういう規則はないですよね?

唯「梓ちゃんは……入ってるの?」

梓「いいえ、特に興味もないですし」

唯「へ? 興味ないの?」

梓「……? ええ、ファンクラブとかそういうのよく分からないですし、活動内容もたいしたことないですし」

唯「活動内容はすごいよー」

梓「へ? だって、お菓子を食べたりするだけだって聞きましたよ」

唯「ああ、あずにゃんは知らないんだね」

梓「むー」

唯「むくれてるあずにゃんも可愛い」

梓「からかわないでください」

唯「澪ちゃんファンクラブには、そういう表の活動する一派と、裏の活動をする一派に分かれてるの」

梓「裏?」

唯「澪ちゃんの同人誌発売」

梓「へ?」

唯「ブロマイドとか、そういうのでお金を取るのが裏の一派」

梓「それ、いいんですか?」

唯「でね、一番人気があるのが、カップリング小説なんだ」

梓「カップリング……」


唯「一番人気なのが、律×澪だね」

梓「りつみお!?」

唯「で、ちょっと前まで二番目が澪×唯」

梓「みおゆい!?」

 あとでその同人誌ください。

唯「でも最近、一部の勢力がすごい力をつけてきたんだ、律×澪に迫る勢いなの」

梓「へー、そんなのがあるんですねー」

唯「ひとごとだねー」

梓「ええ、だって、私に創作なんてできないですし」

唯「でも、そんな事ないんだなー、だって、最近の人気は澪×梓だから」

梓「なん……だと……?」

唯「りっちゃんのカチューシャと、あずにゃんのツインテールがなければ、私が一番だったんだろうけどねー」

梓「え、私のツインテールそんなに人気なんですか!?」

唯「あずにゃんがツインテじゃなかったら、あずにゃんじゃないよ」

梓「そこまで!?」

唯「髪を解くのは、悪魔に魂を売る所業だから絶対にやめてね……」

梓「は、はあ……出来る限り頑張りますけど……」

唯「でね、もちろんツインテールだからあずにゃん人気があるんだけど、それだけじゃなくてね」

梓「すごいこと言いませんでした?」

唯「澪×梓は公式なんじゃないかと、ファンクラブの間で話題になってるみたいなんだ」

梓「公式……」

唯「ねえ、あずにゃん、あずにゃんは、澪ちゃんの事好き?」

梓「私は……」

 私は澪先輩より唯先輩のほうが好きです。
 唯先輩のきらきらとした瞳も、
 先輩のぷっくりとした唇も、
 思わず突っつきたくなる頬も、
 華奢な肩も、
 ささやかだけど大きくなり始めてる胸も、
 しなやかな腕も、
 意外とオトナっぽいくびれも、 
 細長のおへそも、
 意外と筋力がある脚も、
 小さな足も、
 おぱんちゅの奥に潜む大事なところも
 綺麗な色をした乳首も、
 隠れてみた性器も、
 抱きつくときに使う手のひらも、
 全部全部好きですよ。

梓「……ゆ、唯先輩が!」

唯「へ?」

梓「唯先輩が澪先輩より立派になったら考えてやるです!」

唯「ほへ」

梓「もっとしゃっきりしてください! ってことです!

 やってしまった……。」


唯「やってしまった?」

梓「はっ!? い、今のは違います! ツンデレなんかじゃありません!」

唯「えへへ、あずにゃんツンデレなんだー」

梓「ち、違います! いつ私がデレたんですか!」

 顔が熱い。
 火が出そうなくらい。
 触られたらきっと気持ちだってバレバレだ。

唯「あずにゃんかわいい!」

梓「ひ、ひっつかないでください!」

唯「はーい、いい子いい子ー」

 今確実にぷしゅって感じた。
 たぶん、もう無残なことになってるパンツを想像しながら、
 まあ、唯先輩に抱きつかれるのも役どころと我慢した。
 あー、ぐっしょり濡れて気持ち悪い。


唯「そっかー、あずにゃんは澪ちゃんより、私の方が好きなんだね?」

梓「そうです! もういいです! そうなんですから!」

唯「あずにゃんは怒ると語彙が少なくなるねえー」

梓「うがー!」

唯「私もだよ」

梓「う……え?」

唯「私もあずにゃんの事好きだよ」

梓「そ、それは、澪先輩ファンクラブの女の子たちみたいな気持ちで……?」

唯「あずにゃんは、一人の女の子として好き、恋人にしたいな」

梓「……」

 倒れそう。
 てか、倒れる。
 唯先輩にこんなイケメンな台詞を吐かれるとは予想して無かった。


唯「あずにゃんの返事、聞かせて欲しいんだけど」

梓「……へ?」

唯「告白したんだよ、お答え欲しいな?」

梓「あ、ああ。ぼーっとしてました」

唯「……変かな? そうだよね、女の子同士なんて」

梓「変じゃないですよ!」

唯「変かも知れないよ?」

梓「だったら変でもいいです! 唯先輩と付き合えるなら!」

唯「じゃあ、今から恋人同士でいい?」

梓「はい、いまから、こいびとどうしですることぜんぶしましょう!」

唯「へへ、あずにゃんってばー」




 後日談。
 澪先輩ファンクラブが、澪先輩にバレました。
 私がきっかけではありません。
 秘密の会合をしているところを、たまたまノートを取りに来た澪先輩に見つかってしまったのです。
 なんでも、作詞ノートをオークションしていたらしく、十万の値がついたとかつかなかったとか。

 金銭のやりとりはまずいと色々問題になったようですが、
 リーダーの「メグ」副リーダーの「メガ」サブリーダーの「タク」がファンクラブを解散することを選択し、
 問題は有耶無耶になったようです。

 表の一派は時々、活動しているようですが詳細はよくわかりません。


 それと、一番人気の澪×律が達成されたようです。
 一日中イチャイチャしてます。
 一日中というのは語弊がありますね、部活中イチャイチャしてます。
 練習しろという澪先輩はどこに消えてしまったのか、
 今ではティータイムを楽しむことに重点が置かれています。

 私も唯先輩とデートしているみたいでいいんですけどね。



 そして二年生の夏合宿。
 ムギ先輩が用意したという別荘で、ついに梓は唯先輩によって女性にさせられました。
 二人で乗り越えた痛みは永遠の思い出ということにしておきましょう。

 同じ夜、澪先輩と律先輩も同じように乗り越えられたみたいですが……
 そのことは私はよく分かりません。


 そして、文化祭当日。
 お互いの絆が深まったおかげか、ライブも大成功。
 ファンクラブの何名かが倒れて病院に搬送されるというハプニングがあったものの、
 その他滞り無く、デートもすることができました。

 クリスマス、バレンタイン、新しい春……
 季節はめまぐるしく過ぎていき……
 そして、また新しい春。

 先輩たちを見送った私はというと。



梓「ほら、唯、新入生歓迎会の準備するよ!」

唯「うわぁぁん、もうちょっとまってよぉ! 梓早過ぎるってばぁ」

梓「何言ってるの、ぎりぎりまでムギ先輩のお菓子かじってたのはどこの誰ですか、緊張感の欠片もない!」

唯「くぅー、さすが最高学年の梓だよぉ、立派になったねぇ!」

梓「その最高学年で留年した唯は私と同級生なんだけど?」

唯「今年は梓と修学旅行に行けるよぉ」

梓「ほら! 今はギター二人なんだから、チャッチャと走る!」

唯「ねえ、梓」

梓「なに?」

唯「思い出いっぱい作ろうね!」

梓「そんなこと、あたりまえです!」



憂「ふふ、お姉ちゃんに引っ張られるお姉ちゃん可愛い」

純「……」

憂「あ、お姉ちゃんが転んだ!」

純「……」

憂「お姉ちゃんが慰めてるねえ、お姉ちゃんは意外と涙もろいもんねえ」

純「前から言おうと思ってたんだけどさ」

憂「なあに?」

純「私ね、梓のために留年する唯先輩もどうかなって思ったんだけどさ」

憂「愛の力だよね」

純「なんで、憂は梓までお姉ちゃんって呼ぶの? もう、どっちがどっちだか」

憂「だって、将来は私のお姉ちゃんになるんだからお姉ちゃんでいいんだよ」

純「至極当然みたいに言われた!?」


梓「えー新入生の皆さん、ゆい×あずです!」

 今は二人しかいませんが、とてもやる気のあるいい部活です。
 新入生の皆さんに是非来て頂けるように、これから演奏します。

唯「梓、私たちの部活の名前いってないよ!」

梓「あ……」

唯「もう、梓は緊張してばっかなんだからー、はい、ちゅー」

梓「ん、ちゅー」

 あ。


 ごめんなさい、諸先輩方。今年で軽音部は廃部になりそうです……。


おわり。



最終更新:2010年07月24日 22:34