ある寝苦しい夜 私の枕下に意外な人物が現れた…

梓「…………」

梓「澪先輩…なにやってんですか」

「澪先輩ではありません。天使です」


梓「…………」

梓「あの…眠いんで帰ってもらえますか」

天使「イヤ……そういうワケには…」

天使「実はあなたの願い事をひとつだけ叶えにきたのですよ」

梓「え…ホントですか!?」

天使「ただし私にできる範囲でお願いします」

天使「いくら天使とはいえ『どんな願いでも』というワケにはいかないので……」

梓「なるほど…そう言われると逆に信憑性がありますね」

天使「じゃ どうぞ」

梓「う~ん……」

梓「ちょっと待ってて下さい」

梓「あっ 今のは願い事じゃありませんよ」

天使「わかってますよ そんな子供みたいなことは言いませんから……」

梓「あぁ 助かります」

梓「あの……『願い事を百個にする』っていうのはできるんですか?」

天使「はい それくらいなら大丈夫ですよ」

梓「え……!いいんですか?融通がきくもんなんですね…」


天使「ハイ! 願い事が百個になりました」

天使「さ どうぞ」

梓「う~んここからが本番だなぁ…」


梓「私小四の頃から十年近くこのギター使ってるんですが」

天使「確かに……よく見ると傷が結構ありますね…」

梓「でしょう?だから新しいヤツが欲しいんですけど……」

天使「それは難しいな……」

梓「え!?ダメなの?」


天使「あなたにギターを渡すためにはまずどこかから持ってくる必要があるんですが…
   その場合どこかの工場か楽器店から戴くことになるんです。
   でもここ最近は商品管理が徹底してますから当然事件にも発展しますしあまり目立つことは避けた方が……」

梓「そうですか…じゃちょっと目先を変えて『好きな人と付き合いたい』っていうのはどうですか?」

天使「…ま……相手にも寄りますね」


天使「相手の方のお名前を教えていただけますか」

梓「は、はい…琴吹紬さんです」

天使「あ…すみません…漢字での表記もお願いします」

梓「えーっと……楽器の琴に口に欠けるの吹き…それから糸に自由の由で琴吹紬です」

天使「ハイハイ……じゃ ちょっと待っててください……」

天使「…………」

梓「」どきどき

天使「…………」

梓「」どきどき

天使「あ……」

梓「!!」


天使「ダメですねこれは……」

梓「なななななんで!?」

天使「イヤ……あなたと琴吹さんが両想いなら私も手助けができたんですが…
   ああも意識があなたに向いていないとやり様がないもので……」

梓「じゃあなたはどんな願いなら叶えられるんですか!!」

天使「そうですね…あなたご趣味はありますか?」

梓「バンド組んでますけど…」

天使「ならこういうのはどうです?『これからもずっとバンドを続けられますように』」

天使「けど細かい仲たがいとかはありますよ、あきらめて下さい」

梓「なんだかあなたが段々小さく見えてきました」


梓「まぁ私たちはもともと仲良いんで願い事なしでも続けてくとは思います」

天使「まさにそのとおり……だから『私のできる範囲』なんですよ」


天使「あなたたちの中の誰かが誰かを嫌いだったりしたらあの願いは叶えられませんよ……」

天使「あと念のため言っときますけど就職すると自然とバンドなんてやらなくなりますよ」

梓「あなたの話って聞けば聞くほど落ち込んできます…」

天使「私が天使と言うことで過大な期待をされる方が多いんですが……」

天使「そんなうまい話ありませんって…」


梓「けっこうあちこち行ってるんですね…」

天使「もう今日だけで二十件目です…」

天使「天使が現れたぐらいで特別な恩恵が受けられるなんて思わない方がいいですよ」


天使「あと百個願い事して下さい」

梓「…………」

梓「そういわれると難しい……」

天使「別に構いませんよ…数へらしても……」


梓「じゃ 悪いですけどいっこにして下さい」

梓「うーん…」

天使「ゆっくり決めていいっスよ」


梓「決めた!」

梓「明日快適に部活できるようにして下さい」

天使「ハイ かしこまりました」


天使「それじゃおやすみなさい」

梓「おやすみ…」

梓「…………」

パチッ

ギッギッ


天使「快適に使えるようにギターのメンテしときましたから……」

梓「あなたホントに天使ですか……?」




最終更新:2010年07月26日 23:27