prrrr…

梓「あ…」

梓「唯先輩からだ…」

梓「こんな時間にどうしたんだろ」

ピッ

梓「もしもし」

唯『もしもし、あずにゃん? 今大丈夫?』

梓「はい、大丈夫です どうしました?」

唯『なんだかお話したい気分で~』

梓「これと言った用事は無かったんですね…」

唯『えへへ~』


電話の向こうの悪気の無い笑い声

全く困った先輩なんだから


唯『…今日は残念だったね』

梓「仕方ないですよ、今朝はどしゃぶりでしたし…」

唯『うん…』

梓「それに明日があるじゃないですか」

唯『でも…』

梓「…」


唯先輩の言いたいことはわかる


先ほどまた雨が降り始めた

この雨が明日まで続くとは思えないけど

それでも不安になる気持ちはわかる


けど 唯先輩が不安だったのはそれだけじゃなかったみたい



唯『あずにゃん…』

梓「はい」

唯『あずにゃんは寂しくない…?』

梓「…」

唯『私達が卒業して… あずにゃん1人になって… それで…』


それが聞きたくて…電話してきたんですか

そりゃあ 私だって寂しくない訳がない

だから正直に答える


梓「寂しいですよ」


梓「寂しいに決まってるじゃないですか」

唯『やっぱりそうだよね……ごめんね』

梓「なんで謝るんですか」

唯『だってあずにゃんに寂しい思いをさせちゃって…

  私…なんて謝ったらいいか…』


まったく

この人は 本当に

そんなの らしくないですよ


梓「唯先輩!!」

唯『は、はい!』

梓「私が寂しいのは 今が楽しいからなんです!」

唯『え…』

 ……

梓『今が楽しいから…

  先輩達と過ごす今が楽しいから

  だから寂しいんじゃないですか』

唯「あずにゃん…」

梓『こんな寂しい思いを出来る私はきっと幸せなんです!

  大好きな先輩達に可愛がられてもらえて

  たくさんの思い出を貰って

  本当に何度お礼を言っても足りないくらい!』

唯「あ、あずにゃんっ…!」

梓『だから… 寂しくたって大丈夫です!

  私には先輩達との思い出がありますから!』


ああ、そうだった

彼女は私が思ってるよりもずっとずっと強い子で


梓『例え離れてしまっても… 思い出は傍にあります!

  思い出を通して ちゃんと私達は繋がっています!

  離れ離れなんかじゃないです! だから安心してください!』

唯「…」

梓『だから… その…』

唯「あずにゃん」

梓『先輩?』

唯「もう大丈夫だよ」

梓『!』

梓『もう…心配かけないでください!』

唯「えへへ ごめんね」

梓『だから謝る必要はないです!』

唯「そっか、そうだね じゃあ…」


唯「ありがとう あずにゃん」


電話を終えて

ふと窓の向こうを覗けば

雨は止んでいた

曇っていた空は晴れ渡り…



唯「綺麗…」


満天の星空


皆も…そして彼女も…この空を見ているのだろうか



……

紬「晴れてよかった!!」


雨は止み、空には沢山の星が見えていた


紬「明日は素敵な日になりそう!」


大切な思い出の詰まった小箱を抱え

星空に祈る


どうかまた大切な宝物が… 思い出が増えますように


……

澪「ん 雨止んだのか…

  今日はずっと締め切ってたし…

  喚起しようかな」

ガラッ

律「よっ」

澪「なんでいるんだっ!!」 ゴツンッ

律「いてっ!」

澪「いい加減窓から入ってこようとするのやめろよな…」

律「えへへ それよりさ 見てみなよ」

澪「?」

律「うえ、うえ」

澪「上?」

澪「うわっ…  綺麗…」

律「本当にな…」


……

黄金色の空を見上げて

今ここにはいないけど

いつも傍にいるあの人に届くように

語りかける


梓「きっと大丈夫ですよ 明日はきっと大丈夫

  だから…絶対 明日も良い思い出にしましょう!」



……


唯「…そうだね

  明日も良い日になると良いね!」


たとえ離れ離れになったとしても


きっと私達の見上げる空は何処かで繋がっている


同じように私達の思いもきっと繋がっているんだ




青白い光が空を走り

そして、夜が明けた



トントン

憂「お姉ちゃん、そろそろ起きないと」

唯「うーん おはようー ういー」

憂「うん、おはよう!

  それよりお姉ちゃん」

唯「ふぇ?」

憂「律さん達もう来てるよ?」

唯「えっ! うそっ!」

ガチャ

唯「いってきます!!」

バタンッ

澪「唯 遅いぞっ」

律「まったく どんな時でも遅刻するのは唯らしいけどな」

紬「まあまあまあ」

唯「ごめーん!」

梓「それじゃあ、行きましょう!唯先輩!」

唯「うん!」


見上げれば

何処までも続く 透明な空


さあ 行こう 私達の明日へ


この空は私達だけの空っぽのキャンパス


どこまでも先へと続いていく空

空が続く限り、そこに描く私達の明日も続く


皆の思いを繋げて 皆の色を重ねて

空いっぱいに 虹色の明日を 描こう


終わり



最終更新:2010年07月29日 20:55