純「ひまだなあ」

純「そうだ梓を観察しよう」

純(ええと梓は…)

純(いましたいました)

純(何かぼそぼそ呟いています)


――1時間後…

純「一時間ほどずっとなにかを呟いていました」

純(あの子ちょっとこわいな)

純「さて今度は何かを書いています」

純「手の動きから察するにどうやら絵を書いているようです」

純「なんの絵だろう」


――1時間後…

純「まだ書いてる」

純「相変わらずひまです」

純「なぜか梓の顔がいやらしい顔に変わりました」

純「さらに監視をつづけます」


――30分後…

純「まだ書いてる…」

純「しかし次は教室移動です」

純「移動します」

純「梓もそろそろやめるでしょう」



憂「あれ?純ちゃん梓ちゃんいないね」

純(どうやらまだ教室で作業をしているようです)

純「あーほんとだ。でも大丈夫でしょ。うん」

憂「そうかな…」

純「うんうん」

憂「…」



梓「…」

純「ちょっと…」グイッ

純「うわっ!」

純(なにこの顔…形容できない…)

純(そうだ目的を…)

純「…ん?なにその紙?」

梓「ああ、純…ってダメ!見ないで!」グシャ

純(なぜか必死です)

純「見られちゃまずいの?というかなんか憂っぽいのが見えた気が…」

梓「気のせい!それに憂は絵じゃないよ!」

純(なにこれ…)

純「わかってるよそんなの…」

純「憂の絵みたいなのが見えたの」

梓「あははそうだね。あっ!もうお昼だ!ご飯ご飯」

純(むむ…)



憂「じゃあ食べよっか」

純「うん」

「「いただきまーす」」

憂「梓ちゃん?」

梓「…はっ!な、なんでもない」

純(またなにか様子がおかしい)

梓「…」カキカキ

純(なにかかいてる)

純「なに書いてんの?」ズイッ

梓「なんでもありません」パタリ

純(うーん…)

梓「…」ジー

純(なぜか憂のお弁当を凝視しています)

憂「…」

憂「あ、梓ちゃん、よかったら食べてね」

梓「ほんと!?食べる!」パクパク

憂「…」

純「…」



梓「…っぷう…ごちそうさま」パンパン

純「ごちそうさまって梓…」

純「全部食べるなよ…」

純(こいつマジか…)

梓「あっえっ?うそ!ごごごめんね憂!」

憂「ううん。そんなに美味しそうに食べてもらえたらこっちも幸せだよ」

純「でも憂食べるものないでしょ」

純(憂がいたたまれない…)

純「あずさ!なにか買ってきなよ!」

憂「い、いいよ。でも代わりに…」

梓「!」

梓「いつでもどうぞ!」ドキドキ

憂「ほんと?じゃあもらうね…」

憂「梓ちゃんのお弁当!」

梓「…」

憂「ふふっ…食べてみたいと思ってたんだー。美味しそう!」

梓「あ…はは、どうぞどうぞ…あは…」

純(…)


純「…」

純(どうも梓の様子がおかしい)

純(というか普段からあんな子だったっけ?)

純(引き続き監視を行います)

純(あれは…さっきの紙かな)

梓「…」グチャリ

梓「…」ギリ

純「…っ!」ゾク

純(なぜか悪寒が走りました)

純(なんなんだろう今日)

梓「心配ない!」ガタッ

純(わっ!なにあの子)

梓「……いえなんでもありません先生」

純(けっこう心配です)



―夜。

純「ふー暇だなあ」

純「…ん?」ズンチャズンズンチャ

純「メールか。えーと…憂から」

純「…」

純(プールかあ)

純(よっしゃ!行ったるぜ!梓も心配だし)

純(………………ほんとはすごく嬉しいんだけどね)

純(憂!感謝するぜ!)



―次の日。

梓「プールだ」

純「ああ、プールだ」

憂「どうしたのふたりとも」

梓「ううん。それより早く着替えようよ!」

純(ここはわたしがリードすべきだな。よし)

純「おう!とつげきー!」タタタ

梓「…」

純「ついてきてよ…」

純(まあこんなこともあります)


梓「…」

憂「梓ちゃん?着替えないの?」

梓「気にしなくていいよ」ジー

憂「その…ちょっと着替えづらいかな…」

梓「大丈夫大丈夫」

憂「う、うん」ヌギヌギ

梓「…」ヌヌ

純「梓…」

純(そろそろ本気で心配です)

憂「ちょっと…恥ずかしいよ…」

梓「…」ジー

純(むむ…)


憂「ま、まあ無事に着替えられたことだし」

憂「入ろっか」

梓「うん」

純「…ん?」

憂「あ…」

梓「どうしたの?」

憂純「だれ?」

梓「何言って…うわ焼けてる…」

純「なんて早さ…」

憂「さすがに…」

梓「やめて!そんな目で見ないで!」

梓「うわあああああん」ダッ

憂「あっ!梓ちゃん待って!」ダッ

純(ここはわたしも追いかけるべきか)

純「あずさー!待って…」タタ

純「…はやっ…」

純「なんなのあのふたり」

純「…もういいもん!ひとりで入る!」



純(なによもう!おいてきぼりにしちゃってさ!)バチャバチャ

純(…)

純(もしかして梓…)

純(憂のこと好きなのか?)

純(てかそうだな。それしかない)

純(相談してくれてもいいのに…)


純「ブーブー」バチャバチャ

憂「純ちゃ~ん!」

純「!!…憂…」

憂「ごめんね、梓ちゃんもいるから一緒に泳ごう!」

純「!…うん」

純(これなら惚れてもしかたない、うん)


純「あーつっかれた~!」

梓「うるさい」

純「なによ、梓のせいで疲れたっていうのに」

憂「まあまあふたりとも」

梓「でも…楽しかったね」

憂「うん」

純「…まあね」



―自宅。

純「さっそく梓にカマかけてみよう」

純「どうせあの絵は憂を書いてたんだろう」

純「よし」ピッピッ

純『いい加減憂で妄想するのやめなよ』

純「…っと、送信っ」


純「返事こねえ…」

純「…」

純(べっ別に悲しくないもん!)グスン

純(もうねる!)


―次の日。

梓「純!」

純「ん~?梓か。なに?」

梓「憂にアタックします」

梓「手伝って」

純(どうやら間違ってはいなかったようだ)

純「あんた…昨日の今日で…」

梓「使えるものはなんでもつかうよ」

純「つかうって…」

梓「ほらはやくいい案出してよ」

純「そんな急に…」

梓「ふーん。まあいいやなにか考えておいてね」タタッ

純「そんな…」

純(なにこれ)


梓「やりました」

純「なにを?」

梓「もんできた」

純「はあ?」

梓「憂を」

純(要領を得ないなあ)

純「はあ…で、どうだったの?」

梓「手応えはありました」

純「ふーん。よかったじゃん」

梓「柔らかかったです」ワキワキ

純「いやもんだ感触じゃなくて」

梓「そっちはわかりません」

純「へえ…」

梓「じゃあね」タタッ

純(報告をするためだけに来たのか)

純(まあ少しは信頼されてるのかな)


―帰り道。

純(つーかあのふたり十分仲いいだろ)

純(さっきもふたりで帰ってるの見えたし)

純(まあわたしはひとりだけど)

純「…」

純「さみしくないもん!」

「ウイイイイイイイイイイイ!」

純「…ん?なんだろ今の」

純「…帰ろう」



―夜。

純(最近なんなんだろう)

純(この扱い)

純(でも…)

純(ふたりともいい友達だよね)

純「…寝よ」

「アズニャアアアアアアアアアン」

純「わ…今のは…?」

純「…まあいっか」

純「おやすみなさい…」

―この日、偶然にも二つの雄叫びを聞いた彼女が、
知らずのうちにそれぞれ対する想いをもう片方と結びつけ
とにかくいい方向へ持っていったことを知る者は、誰もいませんでしたとさ。

                                      おしまい。



最終更新:2010年08月02日 22:27