梓「ま、待ってください! ムギ先輩が……」

紬「いいのよ、梓ちゃんっ。これこそ私の望んでいたものだから!」

梓(この人は……!)

梓「『つ』ですか……」

紬(これはっ)ピカーン

紬「ねぇ、梓ちゃんっ」

梓「? はい」

紬「うふふ」ドキドキ

梓(なんだあの人)

梓「じゃあ『月』でお願いします」

紬「!」

律「へっ? ああ、『月』ね……。『き』だな」

梓(はっ)ピカーン

梓「や、やっぱり『月見』でお願いします!」

律「? なんで急に変えて……あっ」

唯「?」

律「んっ……」

梓(気付きましたか)

紬(グッジョブよ、梓ちゃん!)

澪「あ……」

梓(澪先輩も気付いたみたいですね)

律「みみみ『み』かー! な、何があるかなー……」チラッ

澪「」ジー

律(うおおおっ、すっげーこっち見てる! ていうかなんで涙目なんだよ!)

梓(先ほどの澪先輩の発言はいわば律先輩への愛の告白!)

紬(ここで何と答えるかで、りっちゃんの澪ちゃんに対する返事が……!)

律「あー、いやぁ、思い付かないなー……」

澪(やっぱり……、気付いてないのかな……)

唯「あ! 私分かっちゃったっ!」

律「うっ!」ドキッ

梓(さぁ、来るかっ?)

紬(言ーえっ、言ーえっ)

唯「りっちゃん、最後の文字は『お』だよっ」ヒソヒソ

律(言われなくても気付いてるっつーの!)

律(……あーだめだ。他に何も思い浮かばないっ。もう言うしかないのか……)

律(って、あれ……? なんで私答えるのためらってんだ?)

澪「」ジー

唯「『み』で始まって『お』で終わる言葉だよっ」ヒソヒソ

律(澪は勇気を出して言ってくれたのに……、私は照れくさがって……)

唯「りっちゃん、目の前っ」ヒソヒソ

律(そうか、私は――)

律「……『みお』」

澪「!」

梓(き、来たっ!)

紬(っしゃあああっ!)ブッシュゥゥウ

唯「それだよぉ!」

澪「……律」

律「なっ、なんだよ!」

紬「澪ちゃん澪ちゃんっ。お題は何だったかしら?」

澪「好きな……もの……」

梓「律先輩っ、よく聞こえなかったのでもう一度言ってください!」

律「う……、うるさい」

梓(り、律先輩が……照れてる?)

律「なんだよ! ほら次行くぞ!」

唯「ほいほーい、『お』だねぇ」

澪「……えへへ」

紬(ああっ、嬉しそうな澪ちゃんっ! なんて可愛いのかしら!)

律「…………ふふっ」

梓(! 今、律先輩が笑ったような……)

唯「お、お……。あっ、『おなら』ぁ!」

紬(これはひょっとするとひょっとするかも……)

梓(律先輩にも可愛いとこあるんだなぁ……)

唯「あははっ! おならだってぇ!」キャイキャイ

紬「えっと……、『ら』ね」


梓(『おなら』が通った!?)


紬「『ライブ』なんてどうかしら?」

唯「おっけぃ!」

澪「『ぶ』かー」

澪(『部長』、なんちゃってね……。さすがに恥ずかしくて言えないや)

澪(……えへへ)

唯「澪ちゃーん?」

梓「時間切れで負けますよ?」

澪「へっ? あっ、じゃあ『ブーケ』」

紬「いいわねぇ、幸せの象徴って感じで♪」チラッ

律「な、なんだよ」

紬「んーん」

唯「なかなか終わらないねぇ、次はあずにゃんだよ」

梓「はい」

梓(私の好きなもの……)

梓「『軽音部』」

澪「お」

紬「あら……」

唯「ん」

梓「え、な、なんですかこの空気……」

紬「うふふ」

唯「えへへ~」ニヤニヤ

梓「ちょっ、やめてください!」

澪「なんか……、いいな」

紬「うん♪」

梓(は、恥ずかしい……。でも、こんな時だからこそ言えることだよね。律先輩も澪先輩も、みんな普段は言えないような想いも伝えられる……。好きなものしりとり、悪くないかも……)

唯「次、りっちゃんだよ」

律「『豚肉』」

梓(こっ、こいつ……!)

紬「んー?」

澪「確かに、律は豚肉が好きだもんな」

梓(なんだそのフォロー)

律「ま、まぁな」

唯「そっかぁ。じゃあ……、『クリスマスケーキ』!」

澪「うん」

律「唯らしいな」

梓「ムギ先輩です」

紬「ふふふ、『キーボード』」

律「ま、そりゃそうか」

澪「『ど』と来たか……」

梓「そろそろ続かなくなるんじゃないですか?」

紬(もし澪ちゃんが負けたら……)

─────────────

律『ルール通り、澪には私のいうことを聞いてもらうぞ!』

澪『う、うん……』

律『それじゃあ……』

澪『いやっ、そんな……』

─────────────

紬(負っけーろ! それ負っけーろ!)

澪「うーん……」

律「おいおい、でてこないのかー?」

紬(っし!)グッ

唯「澪ちゃん澪ちゃん!」

澪「?」

唯「」クイックイッ

紬(? 唯ちゃん、自分のことを指差して……)

唯「」ビシッビシッ

紬(私たちを……?)

澪「あっ」

紬「! まさかっ」

澪「『友達』!」

唯「そぉだよっ!」

紬(ああああ……)

梓(まったくこの人は余計なことを)

律「……ふぅ」

梓「『ち』ですか」

唯「ち~」

梓(……やば)

律「あと30秒ー」

梓「ちょっ、早いですよ!」

律「なかなか終わらないからなっ」

唯「あと20秒~」

梓「もうちょっと! ちょこっとだけ待って……」

梓(ちょこっと……?)

梓「あ、『チョコレート』で」

唯「なにっ!」

律「ベタだなー」

梓「答えられたらいいんです!」ふんす

律「『と』だろ……」

律(『鶏肉』……はあまり好きじゃないしな……)

唯「りっちゃん考えすぎー」

澪「律……」

梓「あと20秒です」

律「! 梓、卑怯だぞ!」

梓「19……18……17……」

律「こいつ……!」

紬(りっちゃんが負けたら……)

─────────────

律『うわぁ、負けたー』

唯『りっちゃん罰ゲームー』


律『罰ゲームって……』

梓『律先輩の言うことを聞くんでしたよね?』

律『うん。でも私が負けたしな……』

唯『どおするの?』

紬『じゃ、じゃあ代わりに澪ちゃんの言うことを聞くのはどう?』

律澪『ええっ!』

梓『いいですね、それ』

唯『じゃあ澪ちゃん! りっちゃんを好きにしていいよっ!』

澪『え……』

澪『じゃあ……』

─────────────

紬「よしっ」

唯「?」

梓「13……12……11」

律「まっ、待てって!」

澪「……」ゴクリ

唯「10秒前~」

律「おっおい、こいつら止めてくれよムギー」

紬「9876543210!」

律「はやっ!」

唯「というわけで~、りっちゃんの負けです!」

梓「いちいち言わなくても分かりますって」

紬「じゃあ罰ゲームね!」

澪「えっ、でも……」

梓「確か、負けた人は律先輩の言うことを聞くんでしたよね?」

律「うん。でも私が負けたしな……」

唯「どおするの?」

紬(き、きたっ)

紬「じゃ、じゃあ代わりに澪ちゃ 唯「私が命令するよ!」

紬「!」

律「えっ!」

澪「うん、いいんじゃないかな」

紬「えっ、ちょっ」

梓(えー……、そこは澪先輩が律先輩にー)

律「よし分かった! 唯の言うことを何でも聞いてやる!」

唯「やった~」

紬「くっ」ギリギリ

梓(ムギ先輩……)

唯「じゃあね~」

梓(諦めるのはまだ早いですよ)

唯「この4人の中の誰かとポッキーゲームー!」

律澪「!」

紬「それは……」

唯「えへへ~、面白いでしょ?」キャイキャイ

梓(無悪意っ……! その純真さゆえ生み出される悪魔的命令っ……!)

律「い、いやっ、それは……」

唯「さっき私のいうことをなんでも聞くって言ったよね?」

律「」ゾクッ

紬(唯ちゃん、ここに来てやっと良い仕事したわね)

澪「……」ジー

律「……分かった」

紬(よし……)

唯「じゃあ誰とやるの? りっちゃんの好きな人選んでねっ」

律「うっ……」

梓「さぁ! 指名してください!」

律「し、しょうがねえっ! やってやらぁ!」

澪「……」ゴクリ

律「…………み……」

紬「!」

律「……見ろ、みんな! 雨が止んだぞ!」

澪「へ?」

梓「まだ雨は……」

律「あっそうだ! 今日はちょっと用事があったんだった!」

律「じゃあな!」ダッ

紬「えっ」

バタンッ

梓「帰っ……た?」

唯「およ?」

澪「あ……れ?」

澪「え……、ちょっと」

唯「あらら」

梓「は、はは……」

紬「あー……」

澪「なぁ、ムギぃ……」

紬「あ、あはは……」

澪「うっ……」グスン

梓「…………」

紬「…………」



~fin~



最終更新:2010年08月03日 00:03