純「私の事をもっと知りたいとか? なーんて……」

唯「正解」ギュッ

純「えっ?」


唯「純ちゃんをもっと知りたい」

唯「……学校に入学する前、憂と一緒に部活見学に来たでしょ?」

唯「あの時からね、憂に色々聞いてたの」

唯「だってほら、後輩になるかもしれない子じゃん?」

唯「入部する前からその子の事を分かっておけば……ほら、どんな音楽が好きなのか、好きな食べ物とか、色々な事」

唯「そうすれば、すぐに仲良くなれると思ったからね!」

唯「……まぁ純ちゃんは入部してくれなかったけど……ううん、謝らないで」

唯「それから純ちゃんがどんな子なのか聞いて……知っていくうちに……」

唯「なんか……だんだん純ちゃんの事を意識しちゃうようになってて……」

唯「眠ってても……お菓子を食べてても……」

唯「忘れられなくなっちゃってたんだ……」

唯「純ちゃんの事をもっと知りたい」

唯「でも、学年も違うし部活も違う」

唯「普段の生活の中じゃ話す機会が無い。全く無いってワケじゃないんだろうけど……」

唯「電話してみようかと思った。メールしてみようかと思った。直接会いに行こうと思った。でも無理だった」

唯「だって……なんだか……」

唯「……は、恥ずかしかったから……」

唯「どうしたら……純ちゃんと話せるかな?」

唯「どうしたら……純ちゃんをもっと知れるかな?」

唯「……それで、思い浮かんだんだ」

唯「私が憂になれば良い」

唯「憂の格好をすれば……恥ずかしがらずに純ちゃんと話せる」

唯「そんな、自分勝手な事を……」

唯「……それで今日、実行したんだよ」

唯「……憂に無理を言ってね」


純「……」

唯「……自分勝手、だよね」スクッ

純「……」グイッ

唯「あ……」

純「宿題を写す条件、続き、まだ残ってるでしょ?」ギュッ

唯「……うん」ギュッ

純「……恥ずかしさはもう無いみたいですね」クスッ

唯「……言われると意識しちゃうよ」カアッ

純「ふふっ」


純「……憂は唯先輩が自分勝手だとは思ってないと思いますよ。私も思いませんし」

唯「そうかな……」

純「だって憂、いっつも楽しそうに唯先輩の事話しますもん」

唯「憂が?」

純「はい。それに今日一日一緒に居て分かりました」

唯「えっ?」

純「憂が言ってた事が本当だって。優しくて……他人を想える人だって……」

唯「純ちゃん……」

純「……唯先輩」

唯「ん、なあに?」

純「唯先輩って、私の事を"知りたい"んですよね?」

唯「……う、うん」

純「……"知りたい"って言葉よりもっと素敵な言葉があると思いませんか?」

唯「……うん。あるよ。素敵な言葉が」

純「……」

唯「……」



唯「……"好き"」

唯「……私は」

唯「……純ちゃんの事が」

唯「……"好き"、です」

唯「……こ、恋人として、"好き"、です!」


純「……ふふっ。凄く嬉しいです」

唯「……い、言っちゃった」カアッ

純「……」

唯「……あの」

純「唯先輩」

唯「う、うん」

純「私も唯先輩の事、好きです」

唯「ほ、ホント!?」

純「でも、まだお付き合いは出来ません」

唯「……だ、だよね……女の子同士だもん、抵抗が……あれ? まだ?」

純「はい」

唯「そ、それってどういう……」

純「私の想いが唯先輩の想いに負けてるからです」

唯「……想いが?」

純「はい。唯先輩は私の事をこんなに想ってくれてるのに……私の想いは好きな人……唯先輩に負けてるって」

純「"好き"が"好き"に負けてるなんて……」

唯「純ちゃん……」

純「……ですから、唯先輩」

純「私の想いが唯先輩の想いに負けないくらいになるまで……」

純「恋人同士と呼べるようになるまで……」スッ

唯「えっ──」



チュッ


純「"進んだ友達"から、始めようよ」ニシシ

唯「……」

純「それまでは……ほっぺだけね!」

唯「……」

純「……!」カアッ

純「うわあああ何やってんだ私いいい!!」ジタバタ

唯「純ちゃん」スッ

純「へ」



チュッ


唯「……こちらこそ、よろしくね!」ニシシ

純「……うん!」

唯「えへへ……」

純「へへ……」

唯「へへ、へ……」グスッ

純「へ?」

唯「うわああああああん!!」

純「ちょ、ちょっと!? なんで泣くの!?」アタフタ

純「落ち着いた?」

唯「うん……」ゴシゴシ

純「どうして泣いちゃったの?」

唯「嬉しくて……安心したら泣いちゃった」
純「……そっか。でも唯先輩、笑った顔が一番似合うよ?」

唯「……そうかな?」ニコッ

純「うん、そうだよ」ニコッ

唯「……ねえねえ」

純「ん?」

唯「唯って呼んでよ」

純「まだだーめ♪」

唯「えー!」

純「ふふっ」



──キーンコーンカーンコーン

唯「あ、チャイム鳴っちゃった!」

純「今日はもうサボっちゃおうよー」

唯「ダメだよ純ちゃん!」

純「えー」

唯「ほら!」キュッ

純「あ、ポニテ」

唯「今日は憂ですから!」ふんす

純「……敵わないなーもー」クスッ

唯「ほら、行こっ!」スッ

純「うん!」ギュッ




つぎのひ!



憂「昨日は楽しかったよ~」ニコニコ

唯「そ、そう?」

憂「うん! いーっぱい抱きついちゃった!」ニコニコ

唯「っていうか憂……私の国語の小テスト……」

憂「紬さんって凄く良い匂いするよね。一番抱きついたかも!」ニコニコ

唯「……」

憂「ん? どうしたの?」

唯「……ごめん」

憂「? 何が?」

唯「ムギちゃんにバレちゃった」テヘッ

憂「」



10ぷんご!



唯「うーいー!! 学校遅刻しちゃうよー!! 部屋から出てきてよー!!」ドンドン

──『お姉ちゃん先に行ってて!! 私恥ずかしくて死にそう!!』

唯「大丈夫だってばー!!」ドンドン

──『うわああああああん!!』



とうこうちゅう!



和「あら、おはよう二人とも」

唯「あ、おはよう和ちゃん」

憂「おはようございます……」ズーン

和「憂、どうかしたの?」

唯「ちょっとね、あはは……」アセアセ

和「……そう。それで?」

唯「へ?」

和「なんで昨日、あんた達は入れ替わってたの?」

唯「」

憂「」


カクカクシカジカ



和「はぁ……唯、あんたこんな大事な時期に何やってんのよ……」

唯「……だって後悔したくなかったもん」

憂「和さん、お姉ちゃんを責めないでください……」

和「別に責めないわよ……終わった事はどうにもならないんだし。でも、これっきりよ?」

唯「はぁーい」

和「ほら、憂も」

憂「は、はい!」

和「ん、よろしい」



憂「ところでなんで分かったんですか?」

和「何年あんた達の幼馴染みやってると思ってるのよ」クスッ

憂「……和ちゃん」ギュッ

和「ふふっ。昨日散々抱き着いたくせにまだ足りないの?」ナデナデ

憂「えへへ……」

唯「……私そんなに抱き着いてるかなぁ?」




こうてい!



唯「……あ! 50メートル右方にあずにゃん発見!」ビシッ

和「私、日直だから先に行ってるわよ? 職員室に日誌取りに行かなくちゃ」

唯「ほーい」

憂「あ、私も日直です」

和「あら、そうだったの。一緒に行く?」

憂「はい。お姉ちゃん、梓ちゃんによろしくね」フリフリ

唯「うん、行ってらっさ~い」フリフリ

唯「あずにゃんおはよ!」ダキッ

梓「もー、朝一から唯先輩はホントにもー」

唯「あずにゃん分補給~」ギューッ

梓「離れてくださいってばー」

純「おはよ、唯先輩!」

唯「あ! 純ちゃん!」バッ

梓「へ? あ、あれ?」

唯「おはよっ!」ダキッ

純「ふふ、おはよ!」ギュッ

梓「!?」

純「あったかいなぁ……唯先輩にはもう春が来てるんだねー」ギューッ

唯「うん……今まさに春が来てるよ……純ちゃんという春がねー」ギューッ

梓「ちょ、ちょっと!!」


純「どしたの梓ー?」ギューッ

唯「あ、憂があずにゃんによろしくだってー」ギューッ

梓「そうですか!! じゃなくて!! い、いつの間にそんなに仲良くなったんですか!! っていうかスキンシップ激しすぎです!!」



──キーンコーンカーンコーン



梓「あ、チャイム」

唯「純ちゃん」

純「ん?」



チュッ

唯「……また後でね!」

純「……うん!」

唯「……ふふっ」タッタッタッ……

純「……えへへ」フリフリ

梓「ちょ、ちょっとちょっと!? 今何やったの!?」

純「梓、私達も行こ!」タタタタ

梓「ま、待てー!! 質問に答えろー!! 唯先輩とどういう関係だー!!」

純「……"進んだ友達"だよっ!」



おしまい!



最終更新:2010年08月05日 23:10