さわ子「あら和ちゃん。まだ残っていたの?」

和「これから帰る所ですよ」

さわ子「そう……たまには私に少し付き合わない?」

和「どうしたんですか急に」

さわ子「色々あるんですよ大人には」

和「別に構いませんけど」

さわ子「本当!? 先生奢っちゃうから安心して!」


 場末の居酒屋

和「あの私、一応未成年なんですが」

さわ子「大丈夫、和ちゃん老けてみえっから。いい意味でよ」

和「制服なんですが」

さわ子「細かいわね~、だからメガネなのよ」

和「先生もですが」

さわ子「ほとばしる知性の発露だからしょうがないの」

和「むしろ野生を抑えてる様な印象ですが」

さわ子「そうよ! 今時女は肉食系じゃなきゃいけないわ!」

和「そんなもんですか」

さわ子「そうよ! 飲みなさい」

和「それは無理です」

さわ子「先生を一人にしないで!」

和「しませんから落ち着いて下さい」

さわ子「私は冷静よ。静かなる事林の如く」

和「大体、私を酔わせてどうするつもりですか」

さわ子「人肌恋しい季節なのよ! 分かるでしょ!」

和「先生に捧げる気は毛頭ないですから」

さわ子「けっ! 別にいりませんよ先生だって!」

和「えっ、マジですか?」

さわ子「あっ、もう一押しでしたか?」

和「いえいえ気の迷いでした」

さわ子「ダメよ? もっと自分を大切にしないと」

和「はい」

さわ子「ホッとしました」

和「何だかんだいって分別あるんですね」

さわ子「そうよ。焼き鳥食べる?」

和「いや、いらないです」

さわ子「うわっ! 焼き鳥拒んだ人初めて見た!」

和「すみません」

さわ子「何なの? 何科の動物なの?」

和「単に食欲ないんです」

さわ子「じゃあどうしてあげたらいいんですか先生は」

和「お酌しましょう」

さわ子「あっ、これはどうも! へっへっへっ!」

和「先生お酒強いんですね」

さわ子「へいへいへ~~~い♪」

和「やっぱりちょっと酔ってきましたか?」

さわ子「気に入った! 私の家で飲み直そうぜ!」

和「いえ、割と過保護な親が心配しますので」

さわ子「和ちゃん! どこにも行っちゃやだ!」

和「で、でも……」

さわ子「ビデオ溜まってるのよ!」

和「じゃあ、それ見たらいいじゃないですか」

さわ子「一緒に見ましょうよう!」

和「こんな状態で見ても全然中身入っていかないでしょ」

さわ子「ひひひひひ! 和ちゃんったら!」

和「怖いです」

さわ子「ひどい! 優しいよ!」


 さわ子のマンション

和「ここですか?」

さわ子「そうなのだ! ここなのだ!」

和「じゃあ帰ります。お大事に」

さわ子「待ちなさい! お茶飲んでけ!」

和「さわ子先生……」

さわ子「もう遅いし女の子一人じゃ危ないわよ!」

和「でも……」

さわ子「和ちゃん方向音痴なんでしょ!? 唯ちゃんから聞いたし!」

和「何も泣く事はないじゃないですか」

さわ子「甘んじろ! 甘んじて受けろ!」


 その室内

さわ子「そろそろお腹空いたでしょ? 和ちゃん」

和「ええまあ」

さわ子「何か作るわ。ビーフorチキン?」

和「チキンで」

さわ子「了解~」

和「というかそんな状態で料理なんかして平気なんですか?」

さわ子「ただの野菜炒めよん。目隠ししても出来るわ」

和「確かに手際いいですね。流石です」

 ……

さわ子「はい出来たわよ~」

和「いただきます。ん、おいしいです」

さわ子「うふふ、ありがとね」

和「お礼を言うのはこっちですよ。ご馳走になっちゃって」

さわ子「いいのよ。自分の分だけ作るのって張り合いないし」

和「作ってあげる彼氏とかいないんですか?」

さわ子「わ、悪かったわね! いないわよ! 今はね!」

和「ホントですか?」

さわ子「何でいきなりそんないじわる言うの!」

和「ちょっと気になりまして」

さわ子「今まで仲良くやってたのに!」

和「先生泣かないで」

さわ子「うええぇ~ん! 和ちゃんのバカ~!」

和「さわ子先生の良さが分からない男共が愚かなんですよ」

さわ子「そうよ男なんて! 男なんてー!」

和「私は違いますから」

さわ子「へっ?」

和「私が男の事なんて忘れさせてあげます」

さわ子「ま、待った和ちゃん。私にそのケはないわ」

和「でも私が異性だったとしたらどうです?」

さわ子「異性ではないわよね?」

和「嫌いですか?」

さわ子「嫌いじゃないけど異性ではないわよね?」

和「私も先生の事好きです。眼鏡だし」

さわ子「その理由おかしいし異性ではないわよね?」

和「もちろん綺麗で優しくて変な先生だとも思ってますが」

さわ子「もう一度確認するけど異性ではないわよね?」

和「ごめんなさい冗談です」

さわ子「何だよっ!! 期待して損したあーっ!!」

和「うわっ! び、びっくりした」

さわ子「あー、罰よ罰! 今日はとことん付き合いなさい!」

和「まだ飲む気ですか先生? 身体に毒ですよ」



 ……

風子「そ、それで和ちゃんの貞操は無事なの!」

和「当たり前じゃない。先生をなんだと思っているの?」

風子「だ、だってさわ子先生がそんな人だったなんて」

和「内緒にしといてね。でもいい先生よ?」

風子(そうか誇張、誇張よね)

和「そういえばツーショット撮らせて貰ったんだ。見る?」

風子「あっ、すごい楽しそう」(先生こんな表情するんだ)

和「この後、抱きつかれてキスされまくったんだけどね」

風子「ぬわんですってえええぇっ!!」

和「じょ、冗談! 冗談よ!」(頬っぺただけだし)





 ライブ編

和「そろそろ出番よ。準備出来た?」

律「おー、バッチリだよん」

澪「最後の学園祭、悔いの残らない様にしなきゃな」

紬「き、緊張してきたー」

唯「ふぁ~、待たされすぎて眠くなってきちゃったよ~」

梓「唯先輩は少し緊張してください!」

さわ子「気合入れなさい! あなたたちならやれるわ!」

和「所で何故かメガネがポケットにあるのだけど」

律「ぷっ! 和も執念深いやつだな~」

和「自分でもそう思うわ。それでどうかしらメガネ?」

律「しょうがねーなぁ」(みんな断わるだろうし私だけでも)

澪「恥ずかしいけど……」(ファンサービスだファンサービス)

紬「かけるかける~」(和ちゃんのデレみたいし)

梓「みなさんがやるなら私も」(唯先輩のメガネ……)

唯「え~、私はイヤだな~」

和「ほ、本当に!? みんなありがとう!!」

さわ子「なにが始まるの?」

律「なんだなんだ、みんな和には甘いなぁ!」

澪「律こそ」

律「まあいっか。軽音部も和には色々お世話になったし」

澪「そうだな」(主に律の不注意が原因だけど)

紬「うふふ、和ちゃんどうかしら~?」

和「似合うわムギとっても」

唯「おかしい! メガネなんて変だよ!」

梓「唯先輩だけですよ。やりましょ?」

唯「あずにゃんの頼みだって私は」

梓「何でそんなに嫌がるんです? 和先輩があんなに」

和「いいの梓ちゃん。無理強いしてもメガネは喜ばないわ」

梓「和先輩……」(なに言ってるんだろうこの人)

唯「ふんだ!」(メガネメガネって! 絶対かけてやるもんか!)

和「それに唯の方が大切。メガネより長い付き合いだもの」

唯「えっ……」

和「頑張ってきてね唯」

唯「かっ、貸してよメガネ!」

和「唯?」

唯「勘違いしないで! たまにはいいかな~って思っただけだもん!」

和「唯……ありがとう!」

律「よく言った唯! この一体感こそ我が軽音部の誇りだっ!」

澪「ああ」(不思議と落ち着く……メガネっていいかも)

紬「幼馴染っていいなー」

梓(思った以上にメガネっ娘の唯先輩マジプリティ)

 そして行われた軽音部によるメガネライブは大盛況に終わり、
桜が丘高校の間でメガネブームが巻き起こったのは言うまでもない。

さわ子「和ちゃんGJよ!」





 高橋風子編

風子「やったね和ちゃん! 大成功だよ!」

和「そうね。でも風子のお陰よ」

風子「えっ? わ、私なにも……」

和「あなたという最大の理解者が支えてくれたから成し遂げられた」

風子「と、とんでもないです」

和「私はそう思ってる。感謝するわ風子」

風子「和ちゃんはズルイよ……」

和「ずるい? 私が?」

風子「だってかっこよすぎるもん」

和「そうかしら」

風子「そうだよ。これじゃ好きになっちゃうよ」

和「……別に構わないんじゃない」

風子「ダメですよ。女の子同士なのに気持ち悪いでしょ」

和「私は嬉しいわよ。風子の好意なら」

風子「中途半端に期待持たせないでよ!」

和「どうして?」

風子「例え偏見がなくったって和ちゃんは唯さんが好き」

和「そうね」

風子「ほら! 私には1ミリの希望だってないもの!」

和「泣かないで」

風子「だって、だって私、私はぁ……」

和「私だって途惑ってるんだから」

風子「……ごめんなさい」

和「謝らないで。私の話を聞いて」

風子「……」

和「私も風子が好き。風子の好きとは違うかも知れないけど」

風子「うん」

和「でもすごく近いと思う」

風子「……!」

和「だからしばらく仲のいい友達のままでいさせてくれない?」

風子「い、いいの? 本当にいいの?」

和「今更なによ。人の事をお姉様呼ばわりしておいて」

風子「あはは……ふ、深い意味はないんですよ」

和「少し素直になりなさい。私が照れ臭いじゃないの」

風子「分かりました!」

和「いい返事ね」

風子「不肖この高橋風子、一生お姉様について行きます!」

和「あらあら思い切った事。ちょっと引くかも」

風子「もう決めちゃったもん! 覚悟してねお姉様!」



 その後、3年2組

律「澪ー、いつまでメガネしてんだ?」

澪「メガネはいいものだぞ。勉強もはかどる」

律「そうなの? 貸して貸してっ!」

澪「こ、こらぁー! 律ぅ!」

紬「でもメガネ似合うよね澪ちゃん」

唯「うんかわいーよね」

和「嬉しいわね。唯もメガネの偏見なくなった?」

唯「そうだね。ライブ気持ちよかったし」

和「良かった」

唯「あのね、メガネしてない和ちゃんもいいけど……」

風子「メガネしてる和ちゃんもかっこいいですよね」

唯「う、うん!」

和「あんまり褒められると痒いんだけど」

紬「うふふっ、和ちゃん人の事いえないでしょう?」

和「そうだったかしら?」

唯「あの……高橋さんって和ちゃんと仲いいよね」

風子「風子! 風子って呼んで唯ちゃん!」


                       おしまい



最終更新:2010年08月08日 22:56