憂「おねーちゃーん、朝だよ~起きて~」

唯「くーくーくー」

いつもと同じ時間にお姉ちゃんを起こしに行く私……。

いつもの様に軽く寝息が聞こえてきました。
うん、かわいい寝息。

まだ寝ているのを確認してからゆっくりベッドへ近づいていきます。

いつからだったかな……。
いけない事してるんだって分かってても……止めることが出来なかった……。

あの寝顔を見ていると心臓が凄くドキドキしてくるから。
幸せそうな顔に、薄く開いた唇……。
可愛くて、愛しくて、今日も自分を止めることが出来そうもありません。

ごめんね、お姉ちゃん。


憂「お姉ちゃん……」

腰を下ろしてベッドに手をかけます。
「ギシィ」とベッドのきしむ音が聞こえると、私の鼓動もどんどん早くなっていくのが分かりました。

顔を近づけていくと、お姉ちゃんの息が軽く顔にかかるのを感じます。
ここまできたら後は目をつむって……。

憂「んっ……」

軽く、軽く触れただけなのに
私は心が幸せいっぱいで満たされる感じになりました。

もう胸に触れなくても分かるくらい心臓がドキドキしていて
顔も多分真っ赤になっているんだろうと思います。凄く熱いです。

そして心が落ち着くまで待ってからお姉ちゃんを起こします。


憂「おねーちゃーん、朝だよ~起きて~」

唯「うん……。もう朝~?もっと寝たいよ~」

憂「ほら、起きないと遅刻しちゃうよ」

唯「う~ん、分かった分かったよ~」

寝ぼけ眼に寝癖っている髪、可愛いな~。


唯「今日は部活ないから一緒に帰ろっか?」

ご飯食べているお姉ちゃんの髪の毛をといていると、こんなことを言ってきました。

やった久々に一緒に帰れる!嬉しいなぁ。
ついつい顔がほころんでしまいました。

憂「うん!いいよ!授業終わったらお姉ちゃんの教室に行くから待っててね?」


その日、学校にいる間は上のそらでした。
純ちゃんや梓ちゃんとの会話も進まず
早くお姉ちゃんと帰りたい気持ちでいっぱいです。

お姉ちゃんの事を考えると、今朝の事を思い出します。

――もっとしたいなぁ……。



憂「ばいばい~また明日ね」

やっと授業が終わったけど、こんな時に限って掃除当番。
素早く終わらして駆け足でお姉ちゃんの教室へいきました。

お姉ちゃん、待たせてごめんね?


教室を覗くとお姉ちゃんが一人。
机に顔を置いて寝ているようです。
待たせすぎちゃったかな。

ゆっくりお姉ちゃんに近づいていく。
顔を見るととても幸せそう……。
アイス食べている夢でも見ているのかな?


憂「お姉ちゃん寝ているの~?」

つぶやくように言った。

お姉ちゃんの顔を見ていたら
また我慢できなくて、でもしたくてしたくて……。

あ、でもここは学校だ。
他の子に見られるのは嫌だなぁ。
でもしたい。どうしようどうしよう……。

――少しくらいなら。

ゆっくり顔を近づけていく。
あぁ……、今日も顔キレイだよお姉ちゃん。

ゆっくり目を閉じました。


きゃはははは。

憂「ひゃっ」

甲高い笑い声と共に、体をビクつかせます。
……見られてないよね?

声が聞こえなくなるくらい待つと、肩の力が抜けていくのが分かりました。

憂「ふぅ……帰ろうかな……」

憂「お姉ちゃん起きて~」


お姉ちゃんと一緒に帰れるのは楽しいはずなのに
どこか気持ちが落ち着かず、胸の辺りがモヤモヤするのを感じます。

食事中の会話も生返事になり
「うーいー大丈夫?」なんて言われてしまいました。

お姉ちゃんを心配させるなんて、私の馬鹿……!


憂「ふぅ……」

お風呂に入っている時は、考えるのにもってこいだね。

憂「今日はダメダメだったなぁ」

憂「落ち着かないや……」

憂「あ~あ……」

さっきからお姉ちゃんの寝顔や
薄く開いた唇のアップが頭の中にドンドン出てきます。

消そうと思っても次から次へと出てきて消すことができません。
学校で中途半端に終わっちゃったからかな。なんか涙が出てきそうだなぁ。

お姉ちゃんは私の事どう思っているんだろう。
こんな妹は気持ち悪いって思うのかな。
お姉ちゃんに嫌われたら生きていけないよ……。

憂「今日はもう寝ちゃおうかな」


唯「あ、うーいー。もう寝ちゃうの~?」

憂「うん、電気ちゃんと消しといてね?」

唯「分かった~、私もすぐ寝るから~」

憂「おやすみ、お姉ちゃん」

唯「おやすみ、うーいー」

憂「……」

憂「……」

憂「ふぅ……」

憂「ね~む~れ~な~い~」

憂「お姉ちゃんもう寝たかな」

憂「あ、もうこんな時間だ……」

憂「……もう寝たよね」


ゆっくりドアを開けて部屋の中を確認しました。
ベッドに大きな膨らみを発見。やっぱりもう寝たよね。

音を出さないようにベッドへ……。
暗いから物を蹴らないようにしないとね。
結構散らかっているなぁ。明日掃除しないと……。

お姉ちゃんの隣までやってきました。
またギー太と添い寝しているや。羨ましい……。
目が慣れるまでもうちょっとお姉ちゃんの顔を見ているからね。


憂「かわいい……」

呼吸に合わせて唇が小さく開いたり閉じたり……。
触ってみたい欲求が沸いてきました。
少しだけ少しだけだから……。

憂「柔らかい……気持ちいいなぁ」

ふにふにと指に感触が残りました。
ここまできたらもう後は我慢できそうもありません。

憂「お姉ちゃん、ごめんね。朝だけじゃ我慢できないよ……」

ゆっくり顔を近づけていきました。
学校じゃ途中で終わっちゃったけど、ここでは誰にも邪魔されないから。

あ、ギー太が見ているね……。
ギー太目をつむってね?私もつむるから。

憂「んっ……」

……我慢していた分今回はいつもより長いです。
どんどん自分の息が荒くなっていくのが分かりました。

心臓もどんどん音が大きくなっていきます。
お姉ちゃんに聞こえちゃいそうだよ。

でも、離したくない離れたくない。


興奮がどんどん高まり
頭の中が一瞬真っ白になった後
全身が震える感覚に襲われました。

この姿勢のまま何分たったのかな。
呼吸が整うのを待ちます。
しばらくドキドキが止まりそうもありません。

今日は幸せいっぱいだなぁ。
いい夢見れそうだなぁ。

そんな事を考えながらゆっくり目を開けると



――お姉ちゃんと目が合いました。


大きく、そして少し垂れ目で、ブラウンの瞳が私を見つめます。
……しばらく呆気に取られた後、血の気が引いていくのを感じました。

憂「あ、あ……」

唯「うーいー?」

憂「……さい、……めんなさい、ごめんなさい!」

唯「うい!」

お姉ちゃんの声を無視して、自分の部屋へ戻り頭から布団をかぶりました。

憂「どうしよう……どうしよう……!」

憂「嫌われちゃった嫌われちゃった!」

憂「う、うわあああああん」

唯「うーいー?」

しばらく泣いているとお姉ちゃんが部屋に入ってきました。

憂「ごめんね、ごめんね」

唯「泣かないでよ、うい」

憂「だってだって、私お姉ちゃんに……!」

唯「怒ってないから。本当だよ?」

憂「もうしないから……嫌わないでぇ……お願い……」

唯「私がういの事嫌いになるわけないじゃん」

唯「ういの事スキだし、それに毎朝やってるもんね」

憂「え?」

憂「気づいてた……の……?」

唯「うん!うい柔らかいもん~。毎日楽しみなんだよ!」

憂「あうぅ……」

恥ずかしかった。
多分顔は真っ赤になっていると思います……。

唯「いつか起きている時にしてくれると思ってたけど……」

唯「ういは恥ずかしがり屋さんだね!」

憂「お、おねえちゃあん」

唯「ほらほら泣かないの」

憂「うん、泣かない……」

憂「お姉ちゃんごめんね?もう寝ている時にしないから……」

唯「え~別にいいのに」

憂「違うの。お姉ちゃんが、私の事嫌ってないスキだって分かったから」

憂「だから……もう必要ない……かな」

唯「うい、このまま一緒に寝ようね?」

憂「うん、お姉ちゃん私嬉しいよ……」

唯「えへへ、可愛い妹のためだもん!」

憂「ありがとうお姉ちゃん。大スキだよ!」

唯「私も大スキだよ!」

憂「おねーちゃーん、朝だよ~起きて~。もう遅刻だよ~」

唯「むにゃむにゃ」

憂「ほら起きてよ」

唯「私はまだ眠ってまーす」

憂「もう、お姉ちゃんったら……!」

いつもと違う朝だけど、もう後ろめたい気持ちなんかありません。

スキだよお姉ちゃん!!!



                                 おしまい



最終更新:2010年08月09日 20:56