暴走族「なんだテメェ! どこのもんじゃワレぇ!」

暴走族「いてまうぞこらー!」

暴走族「シャアッコラァ!」

唯「人間を操るなんて……ッ!」

操られた暴走族達は唯に襲いかかる。

暴走族「いてまうぞワレ!」
暴走族「シャアッコラァ!」
暴走族「ラッシャア!」

バイクに股がったまま鉄パイプで殴りつけに来る。

唯「ごめんね…恨みはないけど…」
憂『お姉ちゃん…』
唯「大丈夫、憂……殺しはしないから」

思いに過った憂に答えながら暴走族を迎え討つ唯。


一台目が突っ込んで来たのを唯はかわしながら、逆に鉄パイプを奪いとる。

暴走族「なんすんやワレェ!」

その鉄パイプを後から来た一台のバイクの車輪に投げ込むと勢い良く暴走族はバイクから投げ飛ばされた。

暴走族「あ、アホかこいつ」ガタガタ

暴走族「兄ちゃんこいつヤバいって! あんなことやるやつヤバいって」ガタガタ


飛ばされた暴走族の鉄パイプを拾いあげ、容赦なく襲いかかる。

唯「このっ! 早く戻れっ! 意識を取り戻してっ!」

暴走族「助けて!」
暴走族「こいつヤバいよ兄ちゃん! 頭おかしいよ!」
暴走族「に、逃げるぞ! ちょっとたかってお金もらおうとしただけなのに! クソッ!」

洗脳が解けたのか彼らは去っていく。

唯「全く世話がかかる…あんまり人間に干渉するのやめようよ?」

包丁をお手玉みたいに手遊びしながら私は奴を視る。

唯「終わりだよ、これで…」

「……!」

奴が背中を見せ、逃げようとする時だった。

唯「逃がすかっ!」

思い切り包丁を奴に投げつける。すると包丁は蒼白い刃となって奴を貫き、コンテナに刺さりこんだ。

消えていく、奴が、消えていく。

唯「あんたも悪気があってこっちに来たわけじゃないんだよね…私とおんなじ。ただ私には…憂がいた。それだけだよ」

消えていく蒼白い残り火を見ながら、私はコンテナに体を預けドサッと倒れこんだ。

唯「何本もってイカれたろう…」

避けたと思っていたが何発かはもらっていたようだ。

唯「たはは…無理しすぎちゃったかな…でもまぁいいや…全部終わったし」

にゃあ…

声がする、仔猫の鳴き声。

にゃあ…

唯「お前…どうして」

仔猫「良くやったな、ユイ」

唯「!? 喋っ…」

仔猫「覚醒者となりて、良く奴を討ってくれた。すまなかったな、こうするしかなかった」

唯「そっか…あの夜感じた力の源はやっぱりお前だったんだね」

仔猫「ああ。私はかつて奴らを討っていた、覚醒者として。だが君も知っての通り覚醒者の体は長くはもたない…故にこのような猫に擬態して新たな覚醒者を探していたのだ」

唯「それが私…か。酷いことするよね…無理やりなんてさ…」

仔猫「覚醒者は誰にでもなれるわけじゃない…故に選べないのだ。だから…すまない」

唯「いいよ…過ぎたことだし…もう、いいんだ」



朝日が登る、

唯「私はどうなるのかな? このまま光に溶けてなくなったり…?」

仔猫「そんなことはさせない、私が、この命に変えても…」

そういうと仔猫は私の膝に乗ってきた。

仔猫「むぅん」ペロペロ

手を舐めながら何かを私に送り込んで来ている!

唯「そんなことしたら…あなたが!」

仔猫「構わんさっ! 私はただの猫、これからもそう生きていく! ただ君は違う! 人間だ! 私とは違う!」

唯「人間なんかじゃ…」

仔猫「もう覚醒者である必要はない! 君はあの妹さんと一緒に還るんだ! 元在る世界にっ!」

唯「猫、さん…」

仔猫「くぉっ…」ゴロリン

唯「猫さんっ!」

仔猫「さらばだ、平沢唯

唯「猫さっ」

目映い光が辺りを飲み込み、私は意識を失った。

─────────

憂「はあ…はあ…お姉ちゃん…どこ?」

急に走り出した仔猫を追ってこんな遠くの港まで来ちゃったけど…間違っていない気がする。

憂「お姉ちゃん!!」

コンテナに横たわる唯を見つけて急いで駆け寄る憂。

憂「お姉ちゃんっ!? しっかり!」

唯「ん……んん…あれ? 憂? ここどこ?」

憂「お姉ちゃん…まさか覚えてないの?」

唯「?? 何が?」
憂「そっか…消えるって…こういうことだったんだ」

唯「憂~それよりお腹減ったよぉ~早く帰ろ~?」
憂「うん、お姉ちゃん。」

憂は海の方を見ながらうっすら涙を溜める。
憂「さようなら…もう一人のお姉ちゃん…」


仔猫「にゃあ~」
憂「こんなとこにいたんだ。案内ご苦労様」

憂は仔猫を抱き抱えるとよしよし、と撫でる。

憂「帰ろっか、お姉ちゃん」

唯「うんっ!」

憂「この猫さんの名前何がいいかなお姉ちゃん?」

唯「う~ん、武者丸とかは!?」

憂「え~もうちょっと可愛いのがいいよ~」

唯「武者丸可愛いくない~?」

ふう、どうやら気づかれなかったか。
憂も、そして周りのみんなも二度と気づくことはないだろう。
私は…平沢唯、彼女の影を担う部分だと。

唯「(今度は二重人格に目覚めちゃったのか……私ってカッコいい…!)」

おしまい




余談

澪「朝日が登る港って感じの歌詞書きたくて早起きして来たけど…何か思い浮かばないな~…」

澪「帰って勉強しなおそうかな…」

そんな時だった。
声が聞こえる。

澪「ん? 港の人かな…」

コンテナから覗き込むように声のした方を見てみると、

唯「私はどうなるのかな? このまま光に溶けてなくなったり…?」

唯「そんなことはさせない、私が、この命に変えても…」

仔猫「」ペロペロ

唯「そんなことしたら…あなたが!」

唯「構わんさっ! 私はただの猫、これからもそう生きていく! ただ君は違う! 人間だ! 私とは違う!」

唯「人間なんかじゃ…」
唯「もう覚醒者である必要はない! 君はあの妹さんと一緒に還るんだ! 元在る世界にっ!」
唯「猫、さん…」
唯「くぉっ…」
唯「猫さんっ!」
唯「さらばだ、平沢唯」


澪「唯……?」

何やってるんだ朝っぱら……。

澪「まさか演技の練習とか…?!」

澪「演劇に興味持っちゃったのかな!?」

私がいい歌詞書かないから…

澪「こうしちゃいられない! 唯の為にもいい歌詞書いて軽音部に目を向けさせなきゃ!」

次の日学校────────

朝日に歌う猫

仔猫は歌うよ~ 高らかに~

仔猫と少女は語るよ~ 朝日と共に~

律「却下」

澪「なんでーッ!?」

唯「(まさか視られてた…、澪ちゃんも覚醒者なの…?)」

おわり



最終更新:2010年08月12日 00:17