紬「ふ、ふふふ……」
紬「うふふふふふふ」
紬「ついに手に入れたわ……!」
紬「Mr.マ○ックが愛用したといわれる五円玉とサイン入り催眠術入門書」
紬「これを使えば皆のあんな姿やこんな姿が……はぁん」キマシタワー
紬「はー、早く明日にならないかしらー」
よくじつのほうかご!
唯「みんな遅いねー。掃除まだ終わらないのかな?」
紬(二人きり……そして相手は唯ちゃん! これはやるしかない!)フンス!
唯「ほえ!? ど、どうしたの?」
紬「お願いがあるの! 聞いてくれる?」
唯「うん! いいよ~。なにかな?」
紬「じゃあまずはこの五円玉をよーく見て」
唯「わかった! じぃーーっ」
紬(う、うまくできるかな? できるかな?)ワクワク
紬「それじゃあいくわ。……あなたは梓ちゃんを見るとキスしてしまう~キスしてしまう~」ユラーユラー
唯「うぅ、んぅ?」
紬(成功したかしら?)ワクワク
紬「はい! もういいわよ」
唯「え? もういいの?」
紬「ええ♪ あとは梓ちゃんが来るのを待つだけ――」
梓「すいません! 遅くなりましたー」
紬(噂をすればなんとやら!? カメラカメラ)キラン
唯「あ、あずにゃん!」ガタッ
唯「あずにゃーん! 会いたかったよー」ダキツキ
梓「ちょ、ちょっと唯センパイ暑苦しいから離れ」
チュッ
梓「て」
唯「うわぁ~! あずにゃんのくちびるやわらか~い。もっかいしよ?」チュッ
梓「て!?」
唯「もっかい」チュッ
唯「もう一回」チュッ
唯「もっと」チュッ
唯「……もっと」チュッ
唯「ん」チュッ
唯「………」チュッ
チュッ ジュッ チュル クチュ ハァ ハムッ レロ チュッチュ
紬「………」ダラダラ
紬(これよ……これなのよ……! 私が求めていたものは! あ、興奮しすぎて鼻血が)
梓「んん~っ! んーっ! んんんーー!」
唯「んっ……んく、はふぅ……」
梓「ぷはっ、な、ななななにするんですかぁっ!」
唯「いや~メンゴメンゴ。なんかあずにゃんのくちびるがすごくおいしそうに見えてさぁ~」
梓「おいしそうに見えて、じゃありませんよ! ふぁ、ふぁーすときすだったのに……」
梓「はじめてだったのにぃ……」ジワァ
唯「あずにゃん……」
梓「こんなの、こんなのあんまりですよ……」ポロポロ
唯「……ゴメンねあずにゃん。私、あずにゃんの気持ち全然考えてなかった」チュ
梓「って言ってることとやってることが噛み合ってないじゃないですか!」
唯「あ、あれ? やめようと思ってるんだけど体が勝手に……」
紬(うふふ。しっかり催眠にかかってるみたいね)ジー
唯「あれれ? な、なんでだろ? あずにゃんにキスするのがとまんない」チュ
梓「ふ、ふざけ、んむ、ないでくださ、んんん!」
唯「ゴメンね、ゴメンねあずにゃん! とまんない、とまんないのぉ!」チュチュ
梓「やめ、んむ! ぷあっ、ひぅ、ゆいせんひゃいやめへぇ!」
紬(……なんだか雲行きが怪しくなってきたような?)ダラダラ
梓「んぁ、ちゅぷ、やぁ、だ……んん」
唯「あずにゃん、あずにゃぁん……」ハァ、ハァ
紬(あの優しい唯ちゃんが愛玩動物のような梓ちゃんを力尽くで押さえつけてまでキスを強要してる……)
紬(無理やりなのはあまり好きじゃないけど、これはこれで背徳感があって興奮するわね……)フンスフンス!
梓「んく、う、この……いい加減にしてください!」ドンッ!
唯「ひゃわっ!?」ドサッ
紬(あ、突き飛ばされちゃったわ)
梓「はぁ……はぁ、んくっ、はぁ、はぁ」
唯「あ、あずにゃん……?」
梓「く、うぅ……うううぅぅぅううぅ」ポロポロ
唯「あずにゃん……えと、えと」
梓「………っ!」ダッ!
唯「あずにゃん! 待ってよ!」
紬「唯ちゃん!」ガシッ
唯「ふわ! ム、むぎちゃん!? 離して、あずにゃんが――」
紬「いま追っても無駄よ。混乱して話なんて聞いてくれる状態じゃないわ」
唯「で、でも」
紬「まずこれを見て」チャリ
唯「ほえ? 五円玉?」
紬「あなたは眠くなーる、あなたは眠くなーる」ユラーユラー
唯「あれ? なんだか急に眠気が……くぅ」スースー
紬「あなたは私が手を叩くと目を覚まします」
紬「そして目を覚ますとあなたにかかっている『梓ちゃんを見るとキスしてしまう』という催眠は解けています。それ!」パン!
唯「ふわ! えと、私はなにして……そうだ! あずにゃん!」
紬「唯ちゃん待って!」
唯「ムギちゃん?」
紬「混乱してる梓ちゃんに何を言っても聞いてくれないでしょうから、落ち着くまでそっとしときましょう?」
唯「でも、あずにゃんに謝りたい……それに、今追いかけなきゃダメになっちゃう気がするから」
紬「……だったら私が行くわ」
紬(そもそも私が蒔いちゃった種だし……)
唯「でも、でも、私が行かなきゃ」
紬「唯ちゃん」ギュ
唯「ム、ムギちゃん?」
紬「絶対梓ちゃんを連れてくるから。話、聞いてくれるようにお願いするから」
紬「だから、ここで待ってて。ね?」
唯「……わかった。ゴメンね、ムギちゃん。ありがと……」グスッ
紬「うん、うん。よしよし」
紬(ううぅ、すごく良心が痛むわ……)
…………
……
…
紬「梓ちゃん、どこに行ったんだろう?」ハァ、ハァ
純「あれ? えーと、琴吹先輩?」
紬「あ! 梓ちゃんの友達の……鈴木さん?」
純「はい、そうです。覚えててくれたんですねー」
紬「ええ、まぁ。……あ、そうだ! 梓ちゃん見なかった?」
純「え゛、えーっと、見てないですけど……どうしたんですか?」
紬「いえいえいえ! な、なんでもないのよ! うふ、うふふふふ。じゃね~」バビューン!
純「うわ、速……。もう行ったよ、梓」
梓「う、うん……」
純「いったいどうしたのさ? 泣きながら走ってきたり、琴吹先輩から隠れたり……」
梓「別に。なんでもないもん」グスッ
純「はぁ~。なんでもないわけないでしょ? 話してごらん」
梓「………」
純「話したくないっての? まぁ別にいいけどさ。どうせくだらないことでケンカして逃げてk」
梓「くだらないことじゃないもん!」
純「うわっ! い、いきなりなによ」
梓「くだらないことじゃ……」
純「あー、わかったわかった。で、どうすんの?」
梓「どうするの、って」
純「ケンカかなんかして逃げてきて、探しに来てくれた琴吹先輩から隠れて、それからどうすんの、ってこと」
純「このままふて腐れてんの? それとも仲直りしに行くの?」
梓「そんなの……そんなのわかんないよ」グシグシ
純「……とりあえず今日は家に帰ってじっくり考えた方がいいんじゃないの」
純「このままケンカ別れするのか、仲直りするのかをさ」
梓「……うん。そうする」
純「ところでさ、誰とケンカしたの? まさか琴吹先輩?」
梓「け、ケンカなんてしてないもん! それに悪いのはムギセンパイじゃなくて唯センパイ!」
純「あーわかった、平沢先輩が梓のぶんのお菓子食べちゃったとか、ショートケーキの苺を横取りされたとかそんなのでしょー」クスクス
梓「そ、そんなんじゃないーーーっ!」
純「よしよし、苺食べられて悔しかったんでちゅねー」
梓「だーかーらー! 違うってばーっ!」
梓「ふんだ! 純なんかもう知らないっ!」
…………
……
…
紬「ただいま~……はぁ」
唯「お帰りムギちゃん。あずにゃんは……見つからなかったみたいだね」
紬「うん……ごめんね。絶対連れてくるって言ったのに」
唯「いいよ。捜しに行ってくれてありがと、ムギちゃん」
紬(あうぅ、また良心にちくちくときたわ……)
唯「あずにゃん、もう帰っちゃったのかな」
紬「きっとそうかも。人に聞いても『見てない』ばっかりで……」
唯「そっか……」
唯「………」
紬「………」
紬(どうしよう、どうしたらいいんだろう。ああ、催眠術なんて使わなければこんなことにはならなかったのに)ハァ
唯「……よし! 私、あずにゃんの家に行って謝ってくる!」
紬「ええ!?」
唯「じゃあねムギちゃん! 今日はありがと!」
紬「ゆ、唯ちゃ――行っちゃった。大丈夫かなぁ……」
紬「怒り心頭な梓ちゃんが危害を加えた唯ちゃんの話なんて聞いてくれるのかしら?」
紬「もしかしたら門前払いを食わされたりして……心配だわ」
紬「でももう私にできる事なんてなさそうだし、唯ちゃんに任せるしかないわね」
紬「しかたない。帰りましょう……おっとカメラカメラ、忘れるところだったわ」
紬「えっと、たしかここら辺に……あったあった。家に帰ったらじっくり鑑賞しましょう♪」
ウワーヤベースゲーオクレチマッタナ。モウミンナマチクタビレテンジャネーノ?
バカリツガイケナインダゾ。アソンデバッカリイルカラ
ナンダトー! ミオダッテアソンデタジャナイカヨ、ット
ガラッ
律「いやーごめんごめん。澪のせいでおくれちったー……あれ?」
澪「律がしっかり掃除しないのがいけな……ん?」
律&澪「「だれもいない……」」
…………
……
…
梓「唯センパイ……」
梓「なんであんなことしたんだろう。私達、女の子同士なのに」
『いや~メンゴメンゴ。なんかあずにゃんのくちびるがすごくおいしそうに見えてさぁ~』
『あれれ? な、なんでだろ? あずにゃんにキスするのがとまんない』
梓「……そんなに、止まらなくなるほどおいしそうに見えたのかな? 私のくちびる」
梓(センパイのくちびる、ぷるぷるしててすごく心地良かったな……)
梓「!」
梓「わ、私、なに考えてんだろ。唯センパイのくちびるなんてどうでもいいじゃん」
ピンポーン
梓(誰か来た……宅配便かな)
梓(まぁだれでもいいか。お母さんがでてくれるだろうし。なんか疲れちゃったな……)ボフッ
エッ、アガラセテモラッテモイインデスカ。ソレジャオジャマシマース
梓(あー、ベッドが気持ちいい。このまま寝ちゃおっかな。あ、でも制服しわくちゃになっちゃうし)
梓(……別にいいか)
ア、アッタアッタ。コノヘヤカー。デハサッソク、トツニュー!
バタン!
唯「あずにゃん! こんちわっす!」
梓「に゛ゃっ!? ゆ、唯センパイ!? どうして私の家に……」
唯「えへへ。あずにゃんのお母さんにあがらせてもらったの」
唯「そんなことよりも、アイス食べよ! アイス!」ガサガサ
梓「あ、あいす?」
唯「うん! あずにゃんは、なにがい~い? パナップ? モナ王? それともピノ?」
唯「私はね~やっぱりジャイアントコーン! 上のチョコとかコーンがおいしいんだよー」ペリペリ
唯「はい! 食べてみて」
梓「でも……」
唯「おいしいから、ね? 食べて」
梓「……ん、あむ」カリッ
唯「どう? どう?」
梓「ん、おいしいです」
唯「でしょでしょ~。あむあむ」
梓「あっ」
唯「うん? ろうかひひゃの?」
梓「間接キス……」
唯「あ」
唯「………」
梓「………」
梓「どうして……」
梓「どうしてあんなことしたんですか?」
唯「わかんない……あずにゃん見てたらなんだか、すごくキスしたくなっちゃって」
唯「それで、一回だけならいいかなーってキスしてみたら止まんなくなっちゃった」
梓「そう、ですか」
唯「うん。……ゴメン、あずにゃん。イヤだったよね」
唯「ファーストキスをいきなり奪われたら怒って当然だよね」
唯「ゴメンね。本当にゴメン」
梓「もういいですよ。謝らなくても」
唯「あずにゃん……」
梓「一つだけ聞かせてください。センパイは、私のことが好きなんですか?」
唯「だいすき!」
梓「え、えーと……友達として、ではなくて。なんというかその、恋愛対象として……とか」
唯「う~ん? 私、そういうのはよくわかんない」
梓「そ、そうなんですか……」
唯「でもね」
唯「あずにゃんは私にとってすごく大切な人だよ」
梓「………」キュン
梓「……はっ!」
梓(わ、私としたことが、今の唯センパイの一言でときめいてしまった!)
梓(私にはそっちのケはないはずなのに~~~)ブンブン
唯「あ、あずにゃん?」
梓「にゃっ! あ、コホン。た、大切な人にいきなりキスしちゃダメじゃないですか」
唯「えへへ~。あずにゃんがかわいすぎるのがいけないんだよ~」
梓「か、かわっ……! ま、まぁ今回だけは許してあげます。次はないですからね!」
唯「やったーっ! あずにゃんありがと~」ダキッ
梓「もう、苦しいから抱きつかないでくださいよー」
梓(まったく、私も甘いなぁ)
唯「ねぇねぇあずにゃんあずにゃん!」
梓「なんですか? 唯センパイ」
唯「キスしてもいい?」
梓「……え?」
唯「いきなりキスするのがダメなら、する前に許可貰ったらいいのかなーって思って」
梓「いやいや、そういう問題じゃないような……」
唯「ダメ?」キラキラ
梓「う゛……わ、わかりましたわかりましたよ! ただし――」
唯「あずにゃん……んっ」チュ
梓「唯センパ、んっ、ふあ、はふ、ん、ちゅ、ちゅぴ……」
梓「んむ、ぷはぁっ。――二人きりのときだけ、ですよ」ハァ、ハァ
唯「うん、わかった。二人だけのヒミツ、ね」
唯「あずにゃんのくちびるあまかったー。あのさ、もっかい、いーい?」
梓「ダメです。たぶん、甘かったのはさっき食べたアイスのせい……あ」
唯&梓「「アイス!」」
唯「あー……やっぱり溶けてる。ジャイコー……」
梓「その略し方某国民的アニメに登場するキャラの名前みたいだからやめましょうよ」
唯「じゃあ、ジャイアン?」
梓「もっとダメです!」
…………
……
…
……結局、溶けちゃったアイスは家の冷凍庫で固めなおすことにしました。
固まったら、唯センパイと一緒に食べるつもりです。
溶けてしまったアイスは固めなおせばいい。そのほうが捨てるよりもずっといいはずです。
同様に、ケンカや仲違いで解けてしまった絆も、仲直りで固めなおせばいい。
捨てるなんてもってのほかです。
だって、私達の絆は……とてもかけがえのないものだから!
唯「あ、そうだあずにゃん。DVDってみれるかな?」
梓「はい。ノートパソコンがあるからみれますけど……なんですか? そのディスクは」
唯「これ? カメラの中に入ってた!」
梓「そうなんですか?。じゃあみてみましょう」
梓(カメラって、だれのカメラ?)
…………
……
…
紬「はぁ……唯ちゃん、大丈夫かしら」
紬「気が重いわ……まぁそれは置いといて」
紬「今日撮った唯ちゃんと梓ちゃんのキスシーンをじっくり堪能しましょう♪」
紬「さーてディスクを取り出してー……」
紬「………」
紬「……ない」
完
最終更新:2010年08月12日 18:22