熱に浮かされたように蕩けてしまっている律の顔は涙目で、だらしなく涎を垂らしている。
誰だって、寸止めされてしまったらそうなるだろう。流石にここまできて焦らすほど私も意地悪じゃない。

「りつ、お尻、こっち向けて。」
「ふぇ…」

気の抜けてしまっている返事ながらも、おずおずと私のほうに律の白いお尻が突き出される。
私は屈んで律の腰を少し高く持ち上げると、頭をその下に滑り込ませて律の蜜壺に舌を突き入れた。

「んっ…!」

相変わらず感度は良好。律は必死に腰だけは支えようと頑張ってるけど、いつまで保つのだろう。
お構い無しに律の蜜の味をひとしきり堪能して、今度は充血して小さく存在を主張している愛らしい豆に吸い付く。

「みお、気持ちいい、よぉ…♪ぁ、だめ、だめだって…イっちゃ…イく、みおぉ…っ!」

律ががくがくと腰を震わせ始めたのを見計らって、舌先で突ついていた律のクリトリスを、舌全体でべろりと刺激してあげた。
途端に、律は背中に電流が走ったかのようにびくりと仰け反って、シーツをくしゃりと握り締める。
あ…私で気持ちよくなってくれたんだ……。
それが妙に嬉しくて、律がどうしようもなく愛しくて、仰向けに転がったまま息を荒くしてる律に覆い被さって、
ぎゅう、と抱きしめた。律はしばらく息を整えようとしていたけど、やがて私の背中に腕を回して抱きしめ返してきた。


◇ ◇ ◇



「なぁ、憶えてる?桜高の卒業が間近に迫った日のこと。」

私の胸の中で、ぽつりと律が呟いた。
もちろん憶えている。さわ子先生への恩返しライブと称した軽音部最後のライブに向けての練習前。
蓋を開けてみれば、私達は奇跡的にも同じ大学に合格して、向こう4年間は一緒にいられると喜んだ。
でも、やっぱりさわ子先生や梓とはお別れしないといけない。それを考えてしまった唯が泣き出したんだっけ。



「やだよ…さわちゃんやあずにゃんとお別れなんて、寂しいよ……」
「唯…っぅ……」
「ゆい…せん、ぱ…っ…!」

ぽろぽろと涙をこぼして静かにすすり泣く唯に触発されて、私も涙腺が決壊してしまった。
つられて梓も泣き出す始末で、もう訳が分からなくなるくらい、皆でたくさん泣いた。
泣いて泣いて、涙が枯れた頃。ぽつりと律が呟いた。

「なぁ…でもさ。いつかはこういう別れが、くるものなんだよ。それに、永遠の別れじゃない、そうだろ?
会おうと思えばいつでも会いに行ける。放課後ティータイムは一旦解散になるかもしれないけど…二度とできないわけじゃない。」
「律……」
「なぁ梓。私達と同じ大学を目指してくれとは言わない。決めるのは梓だ。
けど…また、梓と一緒に演奏したいよ。落ち着いたら、また軽音部にも遊びに来るからさ…その時は、一緒に演ってくれるか?」
「…もちろんです!やってやるです!…来てくれなかったら、承知しませんからね!」
「あずにゃん…!ありがとう!」


鼻声の唯が、涙も拭かず梓に抱きつく。梓はくすぐったそうにしながらも、嫌がる素振りは見せなかった。
ムギはうんうんと頷いて、その横で梓の頭をよしよしと撫でていた。



梓が部長を務めていた一年間は私達がよく軽音部に遊びに行って、後輩達の前で演奏したりもした。
梓が三年生になったばかりの春先、律に一通のメールが届いた。梓から、私達の大学を受けるつもりだという主旨のものだった。
そして、季節は巡る。秋―――梓と憂ちゃんは、同じ大学の指定校推薦枠を勝ち取った。
二人の受験日には皆で励ましに行って、合格発表にも行って。
晴れて私達と同じ大学に進学し、放課後ティータイムが再結成された。
唯はむしろ憂ちゃんの方が心配だったみたいだな。

「あの時は強がってたけど、今思うと、一番寂しがりだったのはわたしだったんだな。だから、あんな事を言って梓を縛っちゃったんだ。」
「ううん、私は、それが梓の重荷になったとは思わない。それは梓を見くびり過ぎだ。」
「そうかな。」
「断言できるよ。考えてもみろ、私達が出た大学は、あの辺じゃ結構な難関大だぞ。行きたくないのに
目指したって仕方ない。それに梓は、自分をしっかり持ってるよ。他人の意見や願望にそう易々と流されたりはしないさ。」
「…だといいんだけど。」
「大丈夫、心配するなって。」
「…そっか。ありがと、澪。」

律がしなだれかかってくる。これが恋人同士なら、もっと溺れられるんだろうけど。
律と私はお互いを恋愛対象として見てはいない。友愛、親愛であって、恋愛じゃない。
それはお互いに分かっているから。どんなに望んでも子どもを作ることはできないし、
もし子どもが作れたとしても、その子に父親がおらず、血の繋がった母親が二人というのはどう考えたって、
社会からは奇異の目で見られるからだ。そんな結果は、私も律も望んでいない。


……本当は分かってるつもりだ。私は律ほど上手くやっていけるであろう相手がいるとは思えないし、
もしも私か律が男だったら、とっくに結婚してる。でもそれは、夢物語であって現実じゃない。
でも、現実である以上は受け入れなきゃならない事なんだ。だから割り切って、親友の枠に無理矢理止まってる。
だけど、やっぱり溢れ出る愛欲を抑える事はお互いできなくて、今みたいな身体を重ねる関係に乱れ込んだんだ。
逃げと言われてもいい。どうかしていると罵られたって構わない。でも、秋山澪という一人の人間として、
田井中律が大好きだっていう気持ちだけは、絶対に譲れない。多分それは、律も同じ。

そんな事を考えていると、不意にぎゅ、と袖を掴まれた。
見れば、律が何かをねだるような視線で私に訴えている。あぁ、甘えスイッチが入っちゃったのかな。

「ねぇ…」

伏目からの上目遣いでおねだりされては、こちらにも抵抗の術は無い。むしろ、喜んで抱きたい。
前髪を下ろしていつもよりクールさが5割増の律が可愛らしくせっついてくるこのギャップがとんでもない破壊力なのだ。
耐えられるやつがいるというのなら是非見てみたいものだ、と思うくらいに。

「しょうがないな…おいで。」
「えへへ…!」

がばっ、と律が飛び込んでくる。あ、やばいかも……。
そう考えていると、不意に律に唇を奪われる。ほぼ同時に差し込まれる律の舌。甘くて、熱くて、柔らかい。
それが意思を持った軟体動物のように私の舌に遠慮なく絡んできて、ちゅぷりとぬめった音を立てながら
お互いを擦りつけ合う。ただそれだけなのに、身も心も蕩けてしまいそうなくらい気持ちいい。
律の頬を愛しげに愛撫すると、くすぐったそうに笑って、やり返してきた。
どうやら今度は私が攻めで、律が受けというコンセプトらしい。私がベッドの上で半身を起こすと、
律がちょこんと大腿に跨る。律の秘所は、じわりと熱をもっていた。

「すごい、ぐちょぐちょだよ、律……」
「んっ…♪みおのっ、こと、考えてたらっ…我慢、できなくてぇっ…♪」

律は私の上に跨って、嬌声を漏らしながらクリトリスを擦りつけるように腰を振っている。
こちらからも足を律の股間に擦りつけてやると、律はクフンと切なそうに鼻息を漏らし、私にしがみついて抱き枕のように擦り寄ってきた。

「あぁ…きもちいぃよぉ、みおぉ…んぅ、ふぅっ…」

ぬちゃぬちゃと卑猥な水音がこだまする。律の秘所から溢れた蜜が私の太腿に塗りつけられて、てらてら光っている。

「ん、律ぅ…」

再び、舌と舌が絡み合う。律の表情は既に蕩けきっていて、いまいち焦点が定まっていない。
私の舌を貪りながら、秘所を一心不乱に擦りつけて快楽を追い求める。

「ほら、律。」

がしっ、と律の顎を両手で捕まえて大人しくさせる。律はその間も瞳を潤ませながらもじもじしていて、お預けを食らったのが悲しいらしい。

「せっかくなんだから、一緒に気持ちよくなろ?」
「ぁ…ごめん、澪。一人で気持ちよくなっちゃって…」
「いいよ、私で気持ちよくなってくれたんだって思ったら、ちょっと嬉しかった。」
「えへへ…じゃあ、これ…使ってみない?」

おずおずと律が差し出してきたのは、いわゆる大人の玩具というやつだ。
…ただ、その形状が普通とは違う。なにせ、その…ぐねぐねうねる部分が両端についている。

「な、なぁ律…それ、なんだ?」
「何って…双頭バイブ?」
「……」

違う。訊きたいのはそんなことじゃなくて。なんでそんなものを持ってるのかって事だ。

「その…さ。わたしだってムラムラすることはあるって、こと、で…」

ばか律。本当に律は昔から嘘が下手くそだ。いくらなんだって、普通のそれとこれとを間違えたりはしないだろうに。

「律…わたしの事考えて、細いのにしてくれたんだな。…ありがとな。律のそういうさり気ない気配り上手なところ…すごく好きだよ。」
「みお…わ、わたしそんな…」
「違った?」
「ち、違わない、けど……」
「だろ?せっかく用意してくれたんだ、一緒に気持ちよくなろう?」
「う、うん…」

顔立ちイケメン、顔色赤面。澪さんもう耐えられないよ律っちゃん。

「りーつっ。」
「ひゃっ!?みお、何して…んッ♪」
「ちゃんと慣らさないと、挿れたときに痛いからな。…っていっても、律のここ、もうぐちょぐちょだけど。」
「だ、だからって、そっち、責めないで…ひぅッ!ぁ、ゃぁ…」
「律、可愛い…」

つつ、とフェザータッチで律の肩甲骨を撫でる。全く力なんて入れていないのに、私が指を這わせるたびに、
律はこれでもかというほど、びくんと身体を引き攣らせて刺激に耐えている。

「やだ、やだよぅ、みおぉ…」
「言ってることと身体の反応が間逆だぞ、律。ここ、気持ちいいんだろ?それとも本当にやめてほしい?」

力なく項垂れたままの律の顔はやや長い前髪に隠れて見えない。ただ、触れるたびに跳ねる背中と
次第に速くなる震えた艶めかしい息遣いが、律の興奮具合を示唆している。

「やだ…止めちゃ、やだぁ…」
「すごく色っぽいよ、律。そんな反応されたら、私じゃなくても苛めたくなるさ。」

耳の裏に舌を這わせて、律の背中を指先で苛めながら諭すように囁きかける。

「ひぁぁ…いじ、わるっ…!もぅ、我慢、できないよぉ…焦らさないでっ……」

さっきから律の身体が小刻みに震えているのを感じる。…撫でられただけで達しかけてる。本当に敏感なんだな。

「あはは、ごめん。じゃあ、挿れるよ…?」
「うん、来て、みお…っ!」

つぷり、とバイブの先端数センチが、あっさりと律のあそこに飲み込まれた。そのまま差し込んでいくと、抵抗はあるけれど
つっかえはせずに、ずぶりと律の下の口がバイブを咥えこんでいく。私も律と向き合う姿勢で、ゆっくりとバイブを膣に挿入していく。
あ…すごく硬い…それに、やっぱり異物感はあるな。でも、律と繋がってるんだ。

「んん…ぁっ!?はいっ、ちゃったぁ…」

律がさっきの破瓜の時に少し慣らしていてくれたからか、思ったよりはすんなり入った。律はといえば、もう目がとろんとしたまま、
荒く息を吐いては吸ってを繰り返している。実際、私も興奮の度合いで言ったらいい勝負だ。

「じゃ、じゃあ、スイッチ入れるぞ?」
「うん…」

カチッ、と電流をONにしたその途端――堰を切って快楽の波が一気に叩きつけられた。

ヴヴヴヴヴヴ……

「ひゃっ…!んぁ、あひぃ…だめ、あっ♪ん、刺激、がぁっ…ぃっ…!強すぎてっ…!」
「んぁぁ…く、ふぅ…んっ♪わたし、も…これ、頭が真っ白になるぅぅ…みお…みおぉぉっ!」

きっとこれが他の相手だったら、気持ちよくなんてなれなかったんだろう。律だから。大好きな律と一緒だから、
律と繋がっているから、今にも弾けてしまいそうなくらいに気持ちいいんだ。
背筋がぞくりと震える。律の言うとおり、一瞬本当に頭の中が真っ白く染まった。ぷかぷかと快楽の波に揺られて浮かんでいるような、
何も考えられない堕落の楽園。そんな絶頂から私を現実へと引き戻したのは、私に折り重なって倒れてきた律の身体だった。
同時に、ふわりと律の香りが舞い込んでくる。

「ん…りつ…」
「みお…すごく、きもちよかった。」
「うん、私も…」
「みお、大好き。」
「大好きだよ、律。」

普段なら恥ずかしくて言えないような言葉の応酬がなんだか心地よくて、お互いに愛を囁きあった。
未だにウィンウィンうねっているバイブのスイッチは、律が「やかましい!」とでも言いたげに切った。

「そだ、澪…」
「なに?」
「ありがとね、髪…切ってくれて。最初は変わり様にびっくりしたけどさ、これもいいかも、って思えた。」
「うん、律は前髪下ろしてたほうが可愛いよ。」
「んー…でもさ、よく考えたらこのカチューシャも、澪にもらったやつなんだよね。
つけなくなったらなったで、物寂しいというか…そんなわけだからさ、これからは気分で髪型変えようと思うんだ。」
「そっか。でも、気に入ってくれてよかった。」
「ふぁ…なんか、眠くなってきちゃった。ねぇみお…」
「しょうがないな、律は。…分かったよ、一緒に寝よう。」
「…うん。」

嬉しそうに布団に潜り込む律。後始末をする気も、着替える気もないらしい。私も一つ、溜め息を吐いて律の隣に身を寄せる。
窓の外に目をやれば、相変わらず雨はざぁざぁとノイズをかき鳴らすし、雷雨の稲光が怖くて仕方なかったけれど。
隣に律のぬくもりがあるから大丈夫。一人用の狭いベッドに二人で寝転ぶ。
胸元に潜り込んだまま眠りに落ちる律の吐息が首をくすぐるけれど、それもまた心地いい。
そういえばお風呂、借りそびれちゃったな。律も入らずにそのまま寝息を立てている。
私の肺を満たすこの甘い香りは、石鹸やシャンプーというよりも律自身のもの。私の大好きな香りの一つだ。
くしゃ、と律の髪を撫でて、誰にともなく顔をほころばせる。今はこれで満足してる。たとえ結ばれないと分かっていても、
いつかはこの関係に終止符を打つ時が来ると分かっていても。私の腕の中で眠るこの悪戯猫は、それはそれは幸せそうな顔だから。
私と律の幼馴染の絆は、いつまでも変わらない。そうだろ、律。
そっと、身体を律に密着させてみる。やわらかくて、小さくて、でも温かい。
ぎゅっと抱きしめてやると、律は喉を鳴らして満足気に唸るのだった。 <Fin.>




最終更新:2010年08月13日 21:44