唯「……んっ、ぁ」

梓「んちゅ……」

唯「――しちゃったね、ちゅう」

梓「しちゃいまいたね」

唯「あずにゃん、これがどういう意味か分かる?」

梓「んー、初めて繋がれたってことですか?」

唯「そんな浅いことじゃないよ」

梓「うー……わかんないです、降参です」

唯「私たちさ、恋人さんになれたんだよ。ほんとの意味でね」

梓「恋人……」

唯「もう隠さなくてもいいと思う。もう我慢しなくてもね」

梓「若干バレ気味でしたけどね…」

唯「そりゃ私があずにゃんに抱きついたとき、あずにゃんが抱きつき返してきたら怪しまれちゃうよねぇ?」

梓「唯先輩だって前お泊り会したときに寝言で『あずにゃん大好きだよ』って言ってたそうじゃないですか」

唯「それは友達としてって好意的に解釈できるもん」

梓「元々怪しまれてたんですからそんなこと通じませんよ」

唯「……ふふ」

梓「ふふふっ」

唯「今日はここで寝ちゃう? 二人で」

梓「女の子が二人で野宿なんかしたら危ないですよ」

唯「あずにゃんとふたりでいたいもん」

梓「私もです。ずっと二人でいたいです」

唯「ずっとは……やだなぁ」

梓「……唯先輩?」

唯「いやね、りっちゃんも澪ちゃんもムギちゃんも、みんな好きだよ?」

唯「でもその中で、特別あずにゃんが好きなの。いつも一緒にいたいとは思わないけど、居たい時は一緒に居たいっていうか」

梓「ああ、納得です」

唯「ごめんねあずにゃん。気を落とさないで?」

梓「お、落としてないですよ!」

唯「――強がるあずにゃんもかわいいけど、強がらないあずにゃんはもっとかわいいよ?」

梓「唯先輩は……ずるいです……」

唯「なんで?」

梓「いつもはあんなにだらしないのに……気がつくとすんごく大人で」

唯「大人なんかじゃないよ。ただあずにゃんのことに真剣なだけ」

梓「それがカッコよくもあるけど、なんだか唯先輩が遠くなるようで……怖いんです」

唯「ふふっ、やっぱりあずにゃんは可愛いよ」ギュ

梓「ゆい、せんぱい?」

唯「私はここにいるって。怖がらなくてもいいんだよ、あずにゃん」

梓「……もう少し、もう少しだけこのままで」

唯「分かってるよ」

梓「……好きです唯先輩」

唯「うん」

梓「好きで好きでたまらないんです。今も、この腕をほどきたくないんです」

唯「そうだね」

梓「……もう一回キスしてください」

唯「いいよ。しよ?」

梓「んっ……ちゅ、ぅ――」

唯「――ぁ、んっ……」

梓「……舌、いれちゃいました」

唯「全然いいよ。あずにゃんだもん」

梓「私心配なんです。これで明日起きたら、もう私の恋人じゃなくなってるんじゃないかって」

梓「私の……大好きな唯先輩じゃなくなってるんじゃないかって」

唯「……ねえあずにゃん」

梓「なんですか?」

唯「この喧騒さ、なんだか縁日を二人で抜け出してる様な感じに聞こえない?」

梓「そう、ですね……」

唯「まだ頑張って演奏してるバンドの人もたくさんいてさ、ライトアップとか凄くきれいだよね」

梓「ええ、綺麗です。すごいです」

唯「私さ、こんな景色をふたりっきりで見れて嬉しいよ?」

唯「あずにゃんは嬉しくないの?」

梓「そんなこと、ないです、けど……」

唯「じゃあ、さ。笑ってよ。笑ってるあずにゃんってとびっきり可愛くて、魅力的なんだよ?」

唯「ネガティブにならないで、なんて無理だと思うけどさ、ふたりっきりの時は二人で笑ってようよ」

唯「多分そのほうが楽しいよ?」

梓「……はい」

唯「ほんとに悩んで、悩んで。怖くて怖くてたまらない時だけ泣きついてきてもいいよ?」

梓「……なんだか唯先輩に先輩っぽくされるのはしゃくです」

唯「ぶう。だって先輩じゃん!」

梓「違いますよ。唯先輩は私がいなきゃだめなお子様です」

唯「なにそれ~! あずにゃんこそ私がいなきゃだめなおチビちゃんじゃーん!」

梓「違います! 唯先輩のが子供です!」

唯「あずにゃんの方が子供だもん!」

唯「やれやれ。おチビちゃんだから自覚ないのかな?」

梓「そのセリフ、そっくりそのままお返ししますよ」

唯「ふーん。もうあずにゃんなんかきらーい」

梓「私は大好きですけど、何か?」

唯「じゃああずにゃんの負けね?」

梓「べ、別に負けてないです! ただ好きなんだけです!」

唯「私はあずにゃんの大好きの10倍大好きだし」

梓「じゃあ私100倍ですもん」

唯「あー! ずるいよあずにゃん! あと出しじゃん……」

梓「唯先輩だって同じようなもんですからおあいこですよ」

唯「あずにゃんのがするいよー」

梓「はいはい、もういいですからこのやりとり」

唯「じゃあ何ならいいのさ~。わがままさんめ」

梓「……好きって、いってください」

唯「好き。大好き」

梓「だれをですか?」

唯「中野梓ちゃん」

梓「ど、どれくらい好きですか?」

唯「世界で一番、愛してる」

梓「……むう」

唯「やっぱり私の勝ちでしょ!」

梓「今回のところは勝ちを譲ってあげるです……」

唯「さて、そろそろ戻る?」

梓「え……もうですか?」

唯「もう二時間くらいここにいいるよ? 私ももう眠くて……」

梓「もうそんなにたってたんですね……」

唯「ふたりだけ居なくなってるの、バレてたりして……」

梓「別にいいんですよね? ゆーいせんぱい?」

唯「いいけど……説明とかめんどくさいんじゃない?」

梓「あー、確かに先生あたりの追求は厳しそうです」

唯「おトイレ行ってたで通じるかなぁ。あずにゃんが一人じゃ怖いって言ってました! って」

梓「いいませんよ! 絶対騙されてくれませんからそれ!」

唯「こっそりだからねあずにゃん……」

梓「わかってますよ……」

ガトッ

唯「おっと」

梓「ちょっと唯先輩!」ボソボソ

唯「ごめんごめん……でへへ」

梓「ふう、ムギ先輩はぐっすりですね……」

唯「さわちゃんもよく寝ておりますのぉ」

梓「でも唯先輩……」

唯「んー? なあに?」

梓「律先輩と澪先輩……いませんけど……」

唯「ま、まさかね……」

梓「いやいやまさかですよね……」

ペラリ

律「あ」

唯「え」

澪「なにしてんだり……つ……」

梓「まじですか……」

唯「りっちゃん達って、そ、そそういう関係?」

律「お、お前らこそさっき二人でどっか行ってたよな……?」

澪梓「はぁ……」

律「わ、わたしらは別に変なことしてたわけじゃなくてだな……そう! トイレ行ってたんだよ! なー澪?」

澪「えっ!? ええと……」

澪「トイレは安易だから見たいバンドがあったことにしろって言ったろ……」ボソボソ

律「わり……」

梓「聞こえてますからね、完璧に……」

唯「でもりっちゃんたちもそういう関係だったんだねぇ」

律「そういう関係ってなんだよ! わたしらはその……友達だしな……」

唯「なーんだ。付き合ってるわけじゃないんだね」

律「そ、そういうお前らはどうなんだよ!」

唯「え? 付き合ってるけど、あずにゃんと」

梓「ちょ、ちょっと唯先輩!」

唯「だって言ってもよかったんでしょ?」

梓「そうですけど……ちょっとはその、恥ずかしがる気持ちというか。そういうのを持ってたほうがいいです!」

唯「えー。いいじゃん! あずにゃんと私の仲なんだし!」

梓「それとこれとは話が別ですよ!」

律「それで? どこまで進んだんだよゆーいー」

唯「さっきちゅーしてきました!」

澪「嘘だろ……」

梓「わわわわわ」

唯「あずにゃんかわいかったよぉ~」

律「ふ、ふーん……」

澪「で、どうだったんだ?」

梓「なななにがですか?」

澪「だからその……く、くちづけ?」

梓「くちづけって……でもまあ、なかなか良いものですよ、キスは」

澪「わわ、わわわ……律と、キス……」

梓「澪先輩しっかりしてください! 澪せんぱーい!」



唯「そういうりっちゃんたちはどこまでいったのさ! まあまだ告白もしてないみたいだけど……」

律「え、と……いや普通に二人でいただけだし……」

澪「て、て、て、手はつないだぞ!」

唯「なんだか初々しくていいよねぇあずにゃん」

梓「確かに……照れる律先輩もかわいいですしね」

律「な、なんだよ梓ぁ! 上から目線なんか許さないからな!」グリグリ

梓「ちょ、やめてくださいよー」

紬「りっちゃん、同じように澪ちゃんにも抱きついてあげればいいのに」

唯「そうだよ~。澪ちゃんもきっと喜ぶよ」

唯「ってムギちゃん! 起きてたの?」

紬「うん、大体聴いてたわ。唯ちゃん達が一回目のキスしてた辺りからかな」

梓「じ、地獄耳すぎませんか!?」

律「わたしらの会話は聞いてなかっただろうなムギぃ!」

紬「積極的な澪ちゃんって、いいものよね……」

澪「きかれてた……」

唯「ムギちゃん耳いいんだねー」

紬「うふふ。こういう事になると、なんだか聞こえてきちゃうのよね」

梓「もはや超能力の域ですよ、それ……」

紬「……梓ちゃんもかわいかったよ?」ボソリ

梓「なっ……や、やめて下さいです……」

律「そ、そろそろ戻ろうぜ! ちょっとでも寝とかないと辛いと思うし」

梓「た、確かにそうですね! ほら、テントの中戻りましょうよ!」

紬「えー? もっとお話ししようよぉ」

澪「ムギ……勘弁してくれ……」

さわ子「……ねえ」ガサリ

唯「さ、さわちゃん……? 起こしちゃった?」

律「お、起こしちゃったのは悪かったけどさ。ほら、わたしらももう寝るとこだし!」

さわ子「……好きだのちゅーだのって……うるさいのよ……」

律「さわちゃーん……? もしもーし?」

さわ子「そんなに大好きならちゅーでもなんでもしちゃいなさいってのよ!」

梓「先生が、壊れたです……」

さわ子「りっちゃん、澪ちゃん……そこになおりなさい」

律「なんでわたしらなんだよ……ちゅーちゅー言ってたの唯達の方じゃんか……」

さわ子「はいキス。強制ね」

澪「……え? えええっ!?」

律「ちょっと、ちょっと! おかしいだろ!」

さわ子「私が見たいから。ちなみにしなかったら私顧問辞めるわ」

紬「するしかないじゃない! 二人とも!」

梓「……ノリノリですね、ムギ先輩」

律「どーすんだよみおー……」

唯「しちゃいなよー! しっちゃいなよー!」

澪「……どうしよ、どうしよ、どうしよ」

律「おーい、聞いてるかー? みおちゃーん」

澪「……! り、り、りつー、どうすんだよ~」

律「もうこれする雰囲気だろ、どう見ても……」

梓「もう観念しちゃってくださいよ、澪先輩」

さわ子「はーやーくー」

律「ほれ、澪こっち向け」

澪「律……するの?」

律「するよ。元より、狙ってたしな」

梓「律先輩って意外にズバッというんですね……」

律「澪はさ、私がリードしてやらないと」

さわ子「男前じゃない、りっちゃん」

律「……ほら。目、つぶれよ澪」

澪「……りつが、そういうなら、つぶるよ?」

唯「澪ちゃんってやっぱり可愛いよね」ぼそっ

梓「……嫉妬しますよ?」ぼそっ


律「するぞ?」

澪「……うん」

律「怖くないよ。すぐ終わる」

澪「うん、うん」

律「――んっ、んぅ」

澪「……あ、り、りつぅ」

紬「まあまあまあ。いいものが見れたわ!」

さわ子「やけにねちっこくするのね……まあいいわ。私、もう寝るから」

澪「りつ……もいっかい……」

律「わかった。……ちゅ、ぅ」


梓「……あの、唯先輩」

唯「あれれ、あずにゃんもしたくなっちゃった?」

梓「あう。――した、いです」

唯「ほれほれ。わたしの唇は空いてるよ? あずにゃん」

梓「唯先輩っ……んっ……」


紬「ここがヘブンなのね……天国なのよ、ね……」

―――
――

さわ子「うー、いつつ。ヘドバンとお酒の飲み過ぎで、見事に記憶吹っ飛んでるわね……」

紬「先生、歩けますか?」

さわ子「まあそれくらいなら……ほら、あんたたち起きなさい。帰るわよ」

唯「……もう食べられないよぉ」

紬「ほら唯ちゃん起きて」

さわ子「でもあなた何時に起きたの? まだ朝の6時だってのにピンピンしてるけど」

紬「私、寝てませんから……寝れなかったの間違いなんですけどぉ」

さわ子「あら、うるさいと寝れない子だった? 連れてきちゃてごめんなさいね?」

紬「いえいえ、興奮しちゃって寝れなかっただけですから~」

さわ子「……? 不思議な子……」

―――
――

唯「――ってことがあってね」

憂「じゃあ梓ちゃんとお付き合いすることなったんだ」

唯「まあそれはちょっと前からだけどね。ちゅーは初めてだったけど」

憂「うーん。……なんだか頑張ってね、お姉ちゃん!」

唯「えっと、何を?」

憂「同性同士、とかハードルも高いかな――って」

唯「大丈夫だよ」

ガチャッ

梓「唯せんぱーい! 学校いきましょ――っ!」


唯「私とあずにゃんなら、きっと。……ね?」



fin



最終更新:2010年08月16日 22:39