#15
『それぞれ!』


キーンコーンカーンコーン

純「あ~…ようやく学校終わった」

梓「これから部活」

純「あっ、私もだ」

憂「私は夕飯の買出しがある」

純「でもまぁ…まだ時間もあるしちょっとまったりしようよ」

憂「そうだね」

梓「もうすぐ文化祭かぁ…」

純「てかもう半年もしないで一年終わるんだね」

憂「早いねー」

純「年取ったら体感時間が早くなるらしいからね、あっという間だよ」

梓「来年は受験……その前に軽音部のい新入部員を見つけないと」

純「あぁ、来年一人なんだっけ?」

梓「そうだよ…」

純「誰も来なかったらジャズ研に入りなよ」

梓「んー…ジャズ研のジャズは私の求めてるジャズと違うだよねぇ」

純「何を生意気な!」

憂「あははっ」

梓「憂は来年入ってくれるよね?」

憂「え?うーん……考えておくね」

憂「でも、音楽やってみるのも何か楽しそうかも」

梓「そうだよ、楽しいよ!」

梓「憂もやった方がいいって、センスあるし」

純「確かに、憂のセンスの良さは異常だね」

純「天才、ってやつ?」

憂「そ、それは大げさだよ~」

梓「でも本当に天才かもね、平沢姉妹は」

梓「普通の人が苦労して登る壁をヒョイって感じで簡単に飛び越えちゃうもん」

憂「そうかなぁ?あんまり実感がないよ」

純「まぁ梓の言ってることは分かるよ、一般人として」

純「ドーナッツみたいに風穴開けてプラプラ生きてる私には、憂が羨ましいよ」

憂「……」

純「あっ…別に攻めてるわけじゃないよ?」

憂「うふふ、分かってる」

純「だから…いつかその風穴を閉じて、しっかり中身が詰まった大人にならないとね」

純「憂はその目標だよ」

憂「えへへ」

梓「大人かぁ…私はなれるのかな」

梓「来年から一人だし…先輩達を指針に頑張ってたのに…」

憂「……」

純「はぁ……」ポカッ

梓「いたっ!?いきなり何するの!」

純「梓はさ、もっと周りを見なよ」

梓「え…?」

憂「そうだよ…お姉ちゃんが卒業しても私たちがいるじゃない」

梓「あっ…」

純「…今気づいた?遅いよ」

梓「…ごめん」

純「まぁ気づいてくれたならいいけどさ」

憂「うんうん」

梓「はぁ……ふふっ」

純「ま、軽音部に入るかは分かんないけどね」

梓「そこっ!そこが心配」

憂「でも梓ちゃんならきっといい先輩になれるよ」

梓「むぅ…そ、そうじゃなくて……」

梓「まぁ…そうかもしれないけど」

梓「……ところでさ、純」

純「ん?」

梓「やりたいことは見つかったの?」

純「んー…全然」

純「何ができて何をやりたいのか…さっぱり」

純「まぁ目先の目的ぐらいはあるんだけどね」

純「でもまぁ…将来の目標がきっちりと定まってる人が羨ましいよ」

梓「……」

純「ていうかさっきから私って羨ましがってばっか!」

純「はぁ…ダメ人間だ私」

憂「そんな事ないよ?」

憂「何ができるか分からないって人って……大勢いるから」

憂「私もそうだし」

純「えっ、うそ」

憂「うん…」

憂「たぶんね、今の時代色々のものがあふれているから……選択肢が多すぎるんだよ」

憂「人生…一生どころか二回や三回あったって足りないよ、きっと」

純「……」

梓「けど…選んだものぐらいは叶えたいよね」

純「その選ぶところから問題は始まってるんじゃん」

梓「分からないよ?もしかしたらもう自分は選択してて……」

梓「途中でその壁を乗り越えることを諦めてるだけなのかも」

純「簡単に言うけどさ、目標が高ければその分壁だって高いじゃん」

純「今すぐ武道館でライブやれるくらい人気者になれる?」

梓「それは……無理だけどさ」

梓「でもその話は極端すぎるよ」

梓「何もできないからって諦めるより、何でもいいからやりたいな、私は」

純「夢を追う派だね、梓は」

純「…まぁ確かに何もしないよりマシだね」

梓「それでスターにでもなれたら嬉しいんだけど…」

純「……そうだ」

憂「どうしたの?」

純「もし有名人になったら、過去の話とかインタビューされるんだよね?」

純「どうしよう…」

梓「急に自分の話が飛躍してない?」

純「うわぁぁぁ……小学校の頃の卒業文集とか読まれちゃうのかな?」

純「今思うとすっごく恥ずかしいことしか書いてない気がするんだけど…」

憂「私も…かな」

純「梓は大丈夫?子供のころ変なことしてない?」

梓「そんなものしてるわけ………………………ないじゃん」

純「間が長いね」

純「とにかく、過去のことが恥ずかしくて有名人になれないよ…」

梓「なるつもりあったんだ」

純「でも梓が有名人になったら色々ばらしちゃうかも」

梓「え?」

純「猫耳つけてたりとかー」

梓「にゃーー!!ダメーーー!!」

憂「うふふっ」

純「とにかく…将来の自分が恥じることのないように今日から真面目に生きよう!」

純「そう私は決めた!」

憂「わー」パチパチ

梓「純にできるのかな…」

純「できるもん!やってみせるもん!」


キーンコーンカーンコーン


憂「あっ…もう時間だ」

梓「じゃあそろそろ行こっか」

純「そうだね」

憂「じゃあね」

純「うん、バイバイ憂、梓」

梓「バイバイ」

憂「また明日ねー」



純「……」



梓「……」



憂「……」

憂「あっ…今日の夕飯何にしよう?」


#15
『それぞれ!』 おわり



最終更新:2010年08月18日 02:09