澪「ずっと幼なじみで…いるのが当たり前になっちゃってたんだ…。律は何も言わなくても私の側にいてくれるって…勝手に思い込んで…遠くに行っちゃいそうになったらこんなやり方して……グスッ」
律「澪……」
澪「側にいてほしい…律。」
律「(駄目だ、今…泣いたら…私は…壊れちゃいそう……)」
律「(我慢しろ
田井中律。私が軽請け合いしたのが原因だろう……! その私が今泣いて……どうする!)」
律「澪……。私にとっては澪も唯も大切な友達だよ。だから遠くに行くとか…そんなことなくて…」
澪「なんで嘘つくんだよぉっ律! お前達…付き合ってるんだろ?」
律「なんで…」
澪「わからないとでも思ったのかっ! 律とは小学校から、唯とだって二年は付き合いがあるんだぞ! それでほんとにっ……わからないと思ってたのか……」
澪は私にすがり付くように両手を肩にかけ、下に俯き泣いている。
私はそれをどうしたらいいのか……わからなくて、無意識に抱きしめようとしたが
「りっちゃん」
唯がよぎって、私の手はただ役に立たないマリオネットみたいに空中で静止していた。
泣きじゃくる澪をなんとか宥め、家に送り、帰省本能赴くままに家に帰って来た。
律「ただいま……」
聡「あ、姉ちゃんお帰り! ベイブレードやろうっぜ!」ビシッ
にこやかに親指を立てる弟に無償に腹が立ったが家族に当たり散らす気にもなれず。
律「はいはい一人でやってなさい」
適当にあしらって二階の自室に転がり込む。
ドサッ
律「はあ~……」
ベッドに倒れ込むように寝転ぶと、ふと一言だけ吐き出す。
律「いなくなってしまいたい……消えてしまいたい……死んでしまあああああああ」
聡「姉ちゃんうるさいぞ!」
──────
律「現状を確認しよう!」
私はノートを取り出し、唯、澪、そしてわたくし律の名前を三角形に書き、考えに浸る。
律「唯は……私が好きだ。間違いないよな……凄い甘えてくるし大好きって言われたし……」
ノートに唯から私に矢印を伸ばす。
律「で、澪は……。幼なじみで腐れ縁…だと思ってたけど澪は私のことが好き……私と唯が仲が良いと弱々しく泣くぐらい…」
澪から私に矢印を伸ばす。
律「……」
唯 澪
↓ ↓
律
律「……、あ、梓とかムギも入れてみよう!(三人じゃ寂しいしな!)」
律「梓と憂ちゃんってどうなんだろ。仲良さそうだよなぁ」
30分後には何故か梓と憂ちゃんの可能性について考えていた。
律「だあああああ駄目だっ! 考えがまとまらない! よしっ! こんな時は弟とベイブレードするに限る!」
律「お~い聡~! 喜べ! ベイブレードでいざ勝負勝負!」
聡「来たな悪のベイブレーダーリッツめ!」
リッツ「わはは覚悟しろサトシィ~!」
ブゥンブゥンブゥンブゥン───
──────
唯「りっちゃん出ないなぁ…。今日余計なことしちゃったかな…?」
唯「でも普段でも私達仲良いし…あれぐらい普通だよね」
憂「お姉ちゃ~んご飯だよ~」
唯「あ、う~ん」
憂「電話してたの?」
唯「ちょっとね。出なかったけど。あっちもご飯かなぁ」ウズウズ
憂「最近お姉ちゃんなんだかいっつもニコニコしてるよね。何かいいことでもあったの?」
唯「わかる? まあ何て言うか……まだ憂にはわからないかなぁ~この気持ちは」
憂「?」
唯「(りっちゃん~……えへへ///)」
唯「これ美味しいね憂!」
憂「えへへ、これはちょっと時間かかるけど今日は上手く出来たかなって思ってたんだぁ。お姉ちゃんに喜んでもらってよかった」
唯「……決めたよ! 憂! 私に料理教えて!」
憂「えっ…お姉ちゃんが料理? なんで…?」
唯「愛だよ、憂っ!」フンス
憂「えっ…」
唯「(りっちゃん喜ぶかなぁ…。バレないように朝渡そっと!)」
憂「(お姉ちゃん…だから楽しそうにしてたんだ…。彼氏…とかかな。お姉ちゃん……取られたら寂しいな…)」
次の日───
律「結局聡とベイブレード100連戦してしまった…」
律「(わかってる…何とかしなきゃいけないことなんて…)」
律「でも私には片方を裏切ることなんて…」
唯「りっちゃんおはよっ」
律「う~ん…って唯ぃっ!? なんでこっちの道にいるんだよ!?」
唯「ちょっと渡すものがあって早起きして待ってたんだぁ」
律「渡すもの?」
唯「はいこれ!」
律「弁当? まさか作って来てくれたのか?」
唯「」コクコクニコニコ
律「(これもらったらヤバいだろ……でも…)」
唯「一生懸命作ったんだよ。ちょっと憂に手伝ってもらったんだけどね」ニコニコ
律「(唯には悪いけど断ろう…勿論これが澪でも断ってた。…これ以上関係が縺れたら軽音部崩壊なんてことになりかねない…!)」
律「悪いな…唯それは……」
澪「受け取ってやれよ律。唯がせっかく作ってくれたんだぞ? 断る理由もないだろ?」
律「澪……(そりゃ通るよな…同じ通学路だもんなぁ…)」
澪「大丈夫。私も作って来たんだ。これも食べてくれるよな、律」
律「(……)」
律「あ~ダイエット明けですっごくお腹減ってたんだよね~! ありがと二人とも! なんか悪いな~気を使わせて!」
唯「……(いくら澪ちゃんでも…譲れない)」
澪「……(負けないぞ…唯。律は私が…)」
律「(はあ…)」
昼休み────
律「ご…ごっつぁんです…」
澪「(ほんとに二つとも食べるなんて…やっぱり律は優しいな)」
唯「りっちゃん美味しかった?!」
律「う、うん…。特にこの煮物が…」
唯「それは憂に教えてもらってすご~く時間かかったんだぁ。気づいたら朝になっててびっくりしたよぉ」
澪「むっ! わ、私の卵焼きだって美味しかったろ? 律!」
律「凄く美味しかったよ…はは」
紬「(どうしたのかしらあの三人…」
和「(大体察しはつくけどね…。まあそっとしておいてあげた方がいいんじゃない」
紬「(りっちゃん……」
─────
梓「こないだ見に行った映画面白かったよね」
純「マイケールッ!」
梓「似てない似てない」
憂「」ボー
純「憂? どうしたのさっきから。お箸持ち上げたり下げたり。指の運動? ならこっちの方がいいよっ!」チョッキチョッキ
憂「」ボー
梓「憂~聞いてる~?」
憂「……あっ、うん! 学園祭の話だよね」
純「それは指の運動の前の映画の前のジャズ研の珍行動の前の話題じゃない」
憂「う…ごめん。聞いてなくて…ふぁぁ…」
純「眠そうだね憂。昨日夜更かしでもしたの?」
梓「純じゃあるまいし…」
純「私がいっつも寝てないみたいに言うなーっ」
憂「ちょっとお姉ちゃんにお料理教えてたんだ…」
梓「唯先輩が…料理!?」
純「クンクンックンクンッ……恋の匂いがしますなぁ」
梓「したことないのにわかるんだ」
純「乙女にはわかるもんなのよ」
梓「唯先輩が…料理ねぇ…」
憂「結局誰に作るか教えてくれなかったの…。それで終わってからも眠れなくて…実はほとんど寝てないんだぁ。ごめんね二人とも…ちょっと…寝るね…」クゥ…
純「健気やなぁっ! なんでこんな良い子に彼氏がいないのだろう! こうなったら私がなってやろうか!」
梓「女の子同士で付き合ってどうするのさ」
純「それもそうだね」
梓「(何か嫌な予感がするなぁ…凄く)」
放課後────
ガチャ
梓「すみません遅れました~」
唯「りっちゃんハイどうぞっ!」
澪「私のも食べていいんだぞ、律」
律「寧ろ私のを半分にして食べてくれ…お腹が…がっ」
梓「(予想的中…。こんなことだろうと思いました…。)」
紬「」オロオロオロオロ
梓「(ムギ先輩どうしていいかわからなくてオロオロしてる…。ここは私がビシッと言ってやるです!)」
梓「先輩達何やってるんですか! ケーキをあげないだのあげるだの! 持って来てくれたムギ先輩に失礼ですよ!」
唯「あっ…そうだね…ごめんねムギちゃん」
澪「ごめん…ムギ」
律「ごめんな…ムギ(梓ぁ!)」
紬「(言えないっ! 困ってるりっちゃんが可愛くて仕方ないなんて…! 後唯ちゃんも澪ちゃんもヒナに餌をやる小鳥みたいで…)」ぽわぽわ
梓「ム、ムギ先輩!? 帰って来てください!」
その後私達は普通に練習して帰ったのだけれど、唯先輩と澪先輩は明らかにドラムベースで合わせたりするし…。
律先輩は律先輩であの走ってたドラムが嘘みたいに鈍足になって…音楽にメリハリが出来なくなってました。
大体のことは察しはつきますけど…このままで大丈夫なんだろうか、軽音部…。
その練習の後で律先輩からメールで呼び出され今駅前のマックにいると言うわけです!
ここは私が一肌脱いで、カムバック軽音部! です!
律「ごめんな梓、奢るから好きなもの食べろよ。私は…ほら」
梓「先輩それ…自分の」
律「残して帰ったらお母さんに悪いだろ? だからって捨てたりも出来ないしさ。ちゃんと食べないと…な」
梓「先輩…優しいですね」
律「今はその言葉が痛いよ…」モグモグ
───────
律「と言うわけなんだ…」
律先輩から大まかに説明を聞くと、大体予想通りで安心した。
その、何て言うか肉体的な関係というか何言ってるんですか私は!
まあそういうのがなくて安心しました。
梓「それで律先輩は…どっちの方が好きなんですか?」
律「どっちもだよ。同じぐらい好きだよ。」
梓「じゃあどっちとも付き合えばいいじゃないですか」チューチュー
律「はっ!? それが出来たらこんなに悩んでないよ…」
梓「そんなに二人とも独占欲強いんですか?」
律「強い強い唯なんて私じゃなきゃやだよって抱きついてくるし澪は澪で泣き落としだしさ…あの二人にそんな選択肢はないよ…」
梓「なるほど」モグモグ
梓「じゃあ二人とも別れたらどうですか? って別に付き合ってるとかじゃないんでしたっけ?」
律「いや…唯とは一応付き合ってると言うか……成り行きで」
梓「そこをもっと詳しくお願いします。ちょっと長くなりそうなのでシェイク追加してもいいですか?」
律「…うん、いくらでもお飲み」
───────
律「ってわけでさ…」
梓「先輩…優しさもそこまで行くと毒ですよ」チューチュー
律「今日の梓はやけに厳しいな…」
梓「軽音部の未来(学園祭)がかかってるんですから当然です。そうなると難しいですね…。唯先輩と付き合ってるなら澪先輩は切るべきじゃないですか? 唯先輩が先ですし」
律「そしたらさ…下手したら澪が部活に来なくなるんじゃないかと思って…」
梓「あり得ますね…」
律「なぁどうしたらいいと思う梓ぁ! 私こういう経験ないからどうしたらいいかさっぱりで…」
梓「えっ…でも私も…」
律「梓は彼氏いるんだろ?」
梓「えっ…?(いるなんて言った覚えないけどな)」
律「去年のクリスマスパーティー来なかったじゃないか。さすがに鈍い私でもそれぐらいはわかるんだぞっ」
梓「(すっごい勘違いしてる……でもまあいいか、この方が話進めやすいし)」
梓「ま、まあいたことはありましたけどね!」
律「ははぁっ! 梓様ぁ! なにとぞその知恵と経験をこの田井中律めに授けてくださいませぇ!」
梓「えへんっ! そう言うことなら協力してあげるです。じゃあ一番最初に聞かなきゃいけないことがあるんですけど、答えてくださいね」
律「おおよっなんだって答えちゃうよん! 今ならスリーサイズだって公表…」
梓「律先輩ってレズなんですか?」
次の日 お昼休み────
唯「はいっ! りっちゃん! 今日は考えて量を少なめにしてきたよっ!」
澪「私は考えて…今日はスープにしたんだ」
唯「(ふふ、澪ちゃん一歩後退だねっ)」キランッ
澪「あんまり熱いと飲むの時間かかるし、まだ暑いからな。ちょっと冷まして持って来たよ。はい、律」
律「ありがとう…ありがとうっ」ポロポロ
澪「泣くほど嬉しいのかっ!?」
律「(澪ちゃんの気遣いは五臓六腑に染み渡るで…スープおいし)」
唯「む~…っ!」
澪「(押すだけが戦いじゃないんだよ、唯)」キランッ
────
純「お~やってるやってる」
梓「はあ…律先輩…スペシャリストに聞くって言ってたけど大丈夫なのかな…」
憂「……」
放課後────
唯「(りっちゃんにケーキあげたいけど…ムギちゃんに悪いもんね。せっかく私達の為に持って来てくれたのに…)」
澪「(梓の言う通りだ。最近ちょっと律に目が行きすぎて周りに目を向けてなかった。確かに律も大切だけど…同じぐらい軽音部だって大事なんだ)」
梓「(わかってくれたみたいで良かったです。これで律先輩もお腹に余裕が出来るはずです!)」
律「(今日は唯の弁当も少なかったし澪もスープだったからな~。自分の分食べても胃袋余裕のよっちゃんだぜ)」
梓「それにしてもムギ先輩遅いですね~」
紬「みんな~お待たせ~」
ドンッ!!!!!
律「ドンッって! 今ドンッっていったぞムギ!」
梓「その大きなクーラーボックスなんですか!?」
紬「みんなお腹いっぱい食べられるようにいっぱい持ってきたの! これがショートケーキにチョコレートケーキ、シュークリームにシフォンパイ! ゼリーやアイスなんかもあるのよ~」
梓「……(ムギ先輩がラスボスでしたか…律先輩は…)」
律「」ウルウル
梓「(泣いてるっ)」
紬「いっぱいあるからいっぱいあげていいのよ二人とも♪」
唯「ムギちゃん…」
澪「ムギ…」
唯「じゃあ遠慮なくりっちゃんはいあ~ん」
澪「あっ…こ、こっちも! あーんだ、律。」
律「あ~ん…(もう好きなだけ詰め込んでくれぇぇ)」
梓「(まさかムギ先輩が更に爆弾を投じるとは…いや本人は悪気はないんだろうけど。寧ろ凄くいい人なんだけれど…)」
紬「うふふ…(楽しそう)」ぽわぽわ~
梓「(はっ! まさか百合のスペシャリストって!)」
────────
喫茶店───
カランカランッ
律「ようムギ。待たせたか?」
紬「ううん~私もさっき来たとこよりっちゃん」
律「さっきは私の為にごめんな…あんなにお菓子とかケーキ持って来てもらって…」
紬「私が好きで持って来てるだけだから。気にしないで」
律「(軽音部一の良心は間違いなくムギ、お前だっ!)」
紬「で、りっちゃん話って?」
律「うん。実はだな…」
──────
律「ってわけなんだ…」
紬「りっちゃん……」ゴゴゴゴゴ
律「ひゃ、ひゃい……」
紬「二股はダメよっ! どっちか一人にしないと!」
律「ですよね…わかってるんですがなかなか…」
紬「…でもにアドバイス出来ることはあんまりないかも…。私もそういった経験ないから…」
律「え~とそれは他の人にあてがあるから大丈夫。ムギに聞きたいのは…そのぉ~…百合?についてなんだけど…」
紬「百合…?ってなぁに?」
最終更新:2010年08月19日 21:38