律「で、でも・・・私がメール送ったのだって9時過ぎだぞ?」

紬「私がメールに気付いたのは10時過ぎよ」

律「えっと・・・その時間帯に二人が一緒にいたのか?」

紬「唯ちゃんの家にいたみたい、唯ちゃんがお風呂に入ってる隙にかけてるって言ってたわ」

澪「なんで和は自分のケータイからかけなかったんだろうな?」

紬「そういえば、どうしてかしらね?それは聞かなかったけど・・・」

澪「なんか意味深だなぁ」

律「まぁまぁ。とりあえず、和はなんて?」

紬「『唯が変なメール送ったと思うけど、気にしないでね』って感じかしら」

律「いや、このメールは気になるだろ・・・」

紬「えぇ。和ちゃん、ちょっと素っ気なかったの」

澪「そうなのか?」

紬「うん。それだけ言って電話切ろうとしたし・・・」

律「そうなのか・・・でもこれは進展だな。唯と和の間に何があったのか」


澪「でも和もちょっと冷静じゃない感じだよな。すぐに電話を切るなんて」

紬「え?」

律澪「え?」

紬「確かにすぐに電話を切られそうにはなったけど、切られてはいないわよ?」

律澪「え」

紬「『このままだと切られちゃう!』って思ったから切られないように頑張ったの」ウフフ

律澪(やるな、ムギ)

律「でかした!それで?そのあとは?」

紬「どうして喧嘩してるの?って聞いたんだけど、やっぱり喧嘩はしてないって」

澪「えー?言ってること無茶苦茶じゃないか?」

紬「確かにこれには理由があるけど、それは言えないって言われたわ」

律「なんでそんな遠回りなんだよ」

紬「きっと、唯ちゃんよ」

澪「唯?」

紬「えぇ。どうしても知りたいなら唯に聞いてちょうだいって言われちゃった」

律「唯に、か・・・」

紬「唯ちゃんが真相を教えてくれたら、和ちゃんも教えてくれるみたい」

澪「・・・なぁ。それ、変だぞ」

紬律「え?」

澪「唯から真相を聞いたならわざわざ和に聞き直す必要なくないか?」

紬「言われてみれば・・・」

律「えっと、どういうことなんだ?」

澪「もしかしたら、和の持ってる真相っていうのと、唯の持ってる真相って違うんじゃないか?」

律「おい、ややこしいぞ」

澪「だから、この件について唯の考えてることと和の考えてることは別かもって話だよ」

律「へ?なんでそうなるんだ?」

澪「あーもういい。律は黙ってて」

律「んな!?わからないんだからしかたないだろ!?」

紬「二人とも喧嘩しないで。でも、私も澪ちゃんの言うとおりだと思う」

澪「だろ?ますますわからなくなってきたな・・・」

律「あ、そういえば」

澪「どうした?」

律「私、さっきちょっ引っ掛かったんだよ」

紬「どこに?ハシゴ?」

律「いや、そういう意味じゃなくて。さっき、私に澪が『あとで覚えてろ』って言ったの、覚えてるか?」

澪「あぁ、私が落ちそうになってたときだな?」

律「そうそう」

紬「それがどうかしたの?」

律「ほら、あの二人も最近同じようなことよく言うじゃん」

紬「確かによく聞くわね」

澪「でも、それがどうしたんだよ」

律「『あとで』なんて言ってるけど、あとっていつだ?」

紬「・・・?」

澪「律、もっとわかりやすく」

律「だから、学校で盛大にやり合ってるのなんて昨日のビンタ合戦くらいじゃないか?」

澪「ビンタ合戦って・・・」

紬「でもそうね。なんかその『あとで覚えてろ』ってフレーズ、毎日聞いてる気がするけど・・・」

律「だろ?もしかして、最近ずっと和は唯の家に通ってたんじゃないか?」

澪「『あとで』っていうのは家に帰ってからってことか。可能性はあるな・・・でも、なんの為に?」

紬「話せば話すほど謎が深まるわね・・・」

律「わからん。やっぱり唯に直接聞いたほうがいいよ」

紬「そう、その話なんだけど」

律澪「?」

紬「私に間違ってメール送っちゃったことは唯ちゃんにそのまま話すって」

律「え?唯は自分で間違ったって気付いてなかったのか?」

紬「そうみたい」

澪「なんでだ?」

紬「さぁ・・・。とにかく、私がそのメールに目を通してるってことは伝えるって言ってた」

律「ふーん?」

紬「その方が唯ちゃんに話をしやすいでしょ?って」

澪「和的には唯に真相を聞いても問題ないってことか」

紬「ううん、むしろ・・・」

律「むしろ?」

紬「私達に、突き止めて欲しいんだと思う」

律「・・・」

澪「・・・」

律澪「なんだそれ」

紬「和ちゃん、このことを誰かに相談したかったって言ってた。だけど、唯ちゃんのことを考えると誰にも言えなかったんだって」

律「・・・和」

紬「唯ちゃんが頑なに隠してるから、だからきっと和ちゃんもこのことを誰にも言えなかったんだと思う」

律「うー・・・ややこしい・・・」

澪「でも、ちょっと面倒だな・・・」

紬「え?」

澪「唯に事情を聞くのも一苦労だし、そのあと和からも事情を聞くんだろ?」

律「だな。いっぺんに教えてくれりゃいいのに」

紬「それは無理よ。きっととても繊細な問題なのよ」

澪「だよな・・・それにそんな方法思い付かないし・・・」ハァ


ガチャ・・・バタンッ


律澪紬「!?」

律「お、おい・・・誰か来たぞ?」ボソッ

澪「だな・・・」

紬「・・・」ドキドキ

唯「ねぇ、和ちゃん?」

和「何よ」

律澪紬「!!!?!!?!?!?」

律「唯!?」

澪「と、和・・・!?」

紬「二人ともラッキーよ!」

律「なんでだよ!超ビックリした!」

紬「しー!」

澪「そ、そうか・・・!」

律「あっ!なるほどな」

紬律澪「このまま黙ってれば・・・!」

澪「りつ!」

律「なんだよ」

澪「でかした」

律「へ?」

紬「そうよ!私達がここに登らなければ・・・!」

律「あ、あぁ!そっか、こうやって話を聞ける状況は生まれなかったな」

澪「本当は盗み聞きなんてよくないんだけどな・・・」

紬「この場合はしかたないわよ。それに、ここで出てったら二人にも悪いでしょう?」

律「そうそう。まぁ、これも計算のうちなんだけどな!」ヘヘーン

澪「調子に乗るな」

律「ちぇー」

唯「昨日の話なんだけど・・・」

律澪紬(!?)

和「えぇ。どうしたの?」

唯「私、間違ってムギちゃんにメール送っちゃったでしょ?」

和「えぇ。そうね」

律(二人でいるときはど突き合ったりしないんだな・・・)

唯「それで『これはどういう意味?』って聞こうとしたムギちゃんから電話が来て・・・。
私がお風呂に入ってたから和ちゃんが出たって、言ったよね?」

和「えぇ、言ったわよ」

唯「ケータイの通話履歴・・・着信履歴じゃなくて発信履歴の方にムギちゃんの名前があったんだけど?」

和「・・・!」


唯「これって、どういうことかな?」

和「・・・誰かがムギに電話をかけたってことになるわね」

唯「その誰かって、和ちゃんだよね?」

和「・・・えぇ、そうよ」

唯「あれ?辻褄が合わないよね?説明してよ」

和「唯、お風呂に行く時に私にメールしたって言ったでしょ?」

唯「うん」

和「でもね、私・・・昨日はケータイを自分の部屋に忘れてきてたのよ」

澪(それで唯のケータイからかけてきてたのか)

唯「それは、知ってる。でも、私もあの時はちょっと慌ててて・・・しかも間違ってムギちゃんに送っちゃうし・・・」

和「うん、私も忘れてるんだろうと思ったわ。(まさか間違ってムギに送ってるとは思わなかったけど)」

唯「なんで、なんでそんなになんでもお見通しなの?」

和「唯のことだから」

唯「・・・そういう言い方ずるいよ、嫌い」

和「嘘おっしゃい。・・・唯がそんな簡単に私のこと嫌いになれたら、こんなことにはならなかった」

唯「・・・」

和「あのとき、唯が思い詰めたような顔で部屋を出てったから・・・」

唯「うん」

和「悪いとは思ったんだけど、勝手に唯のケータイ見せてもらったのよ」

唯「そうなんだ」

和「ごめんなさいね。でも・・・大げさかもしれないけど、遺言メールなんて嫌だから」

唯「それは本当に大げさだよ」アハハ

和「でも、それくらい暗い顔してたのよ?」

唯「・・・そっか」

和「ねぇ、唯?」

唯「和ちゃん」

和「な、何よ?」

唯「ムギちゃんと、何の話してたの?」

和「それは昨日言ったでしょ?」

唯「でも、和ちゃん嘘ついてたじゃん」

和「それはどっちが電話をかけたかって話だけ。勝手にケータイ見たとは言えなくて・・・ごめん。でも、内容に嘘はないわ」

唯「でもさ」

和「何よ」

唯「今日、ムギちゃんから何も言われなかったよ?普通聞いてくると思わない?」

和「・・・」

紬(先にりっちゃん達に言わないとって思ってたけど、そうよね。考えてみれば不自然だわ)

唯「・・・」

和「ねぇ、唯」

唯「なに?」

和「私がこんなことを言うの、無神経だし、おかしいとは思うけど・・・」

唯「?」

和「ムギ達に、相談してみたらどうかしら」

唯「へ・・・?なんて相談するの?」

和「そ、それは・・・」

唯「私は和ちゃんのことが好きで、でも和ちゃんは付き合ってくれませんって?」

律澪紬「」

律澪紬(ええええぇぇぇ!!?!?)

和「・・・」

唯「それとも、私は同性の幼馴染に恋心を抱いてしまうような頭のおかしい子ですって言えばいいかな?」

和「唯・・・!」

唯「何?事実じゃん」

和「・・・」


パシン!!


律澪紬(!!?!?)

和「いい加減にしなさい!!」

唯「・・・」

和「私は唯のことをそんな風に思ってないわ!唯がそうやって腐るのは勝手だけど、私の気持ちを歪曲して解釈しないで」

唯「・・・ばか」

和「この間も言ったでしょ?気持ち悪いなんて思ってないし、頭がおかしいとm」

唯「それ以上言わないで!」

律(唯のこんな声、初めて聞いたぞ・・・)

唯「それ以上、言わないで・・・お願い、和ちゃん・・・!」

和「唯・・・」

唯「私、もう、無理だよ・・・」

和「・・・」

唯「人を好きになるって・・・こんな苦しいことだと思わなかったよ・・・」

和「唯、泣かないで」

唯「和ちゃんが抱き締めて撫でてくれたら泣きやむよ・・・」

和「馬鹿なこと、言わないで」

唯「・・・なんで、なんでこうなっちゃったのかなぁ」

和「唯・・・」

唯「和ちゃん、好き」

和「・・・うん」

唯「ごめん」

和「・・・うん」

唯「和ちゃんが他の子と一緒にいるのが嫌、話してるのも嫌、私じゃない誰かを見てるのも嫌」

和「・・・」

唯「でもね、一番嫌なのはそんな些細なことで苛立ったり嫉妬したり和ちゃんに八つ当たりしてる自分なんだ」

和「唯」

唯「こんなの私じゃないよ・・・!」

和「唯ってば」

唯「な、なに?」

和「いい?恋をすると誰だって自分を見失ったり、知らない自分を知ったりするの。それはおかしいことじゃないわ」

唯「そんな、テレビで言ってるようなことはどうでもいいよ」

和「・・・」

唯「もういい。私、部活行く」

和「ねぇ、唯」

唯「・・・なに?」

和「・・・」

唯「ねぇ、今呼び止めたよね?」


和「・・・なんでもないわ」

唯「気になるよ」

和「・・・」


ピロピロピーン♪


和唯律澪紬「!!!?!?!?!!?」

澪「おい!今の音!」

和「誰かいるの!?」

律「わわわ!!」アタフタ

紬「りっちゃん!?」

律「梓からメールだ!タイミング悪いっつの!」

澪「悪いのはタイミングじゃなくて音を切っておかなかったお前だ!」

律「あーあー私が悪かったよ!」

和「ちょっと、あんた達!そこに居るの!?」

律澪紬「ぎっくぅ!!」


5
最終更新:2010年08月21日 03:20