バタン!


またしても突然、扉が開け放たれた。

梓「!?」ザ・・・


唯「皆、ちょっと遅れちゃったけど来たよー!」

紬「遅れてごめんね、すぐにお茶入れるわ」

唯!ムギ!

梓(唯先輩!?ムギ先輩!?)

私と梓の意識が唯とムギに向かった一瞬、そのほんの一瞬の隙を突いて、

澪の体が爆ぜた。

澪「決着は、お前の敗北でだ。梓」

梓(しまっ、た・・・!)

澪「双、按ッッッ!」

梓「が、はっ・・・!?」

その声を聞いて私の意識が澪と梓の方に戻った瞬間、梓は膝から崩れ落ちていた。

澪「はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・!」

澪「い、今ので私の頸を全てお前に打ち込んだ・・・これなら、今のお前にでも通用するだろ?」

梓「流石、ですね澪先輩・・・。最初からこれを狙っていたんですか」

澪「ああ、私は最初から『誰か』が来る、その瞬間を待っていたんだよ」

澪「これだけ扉に近くても、僅かにしか足音は聞こえないんだ」

澪「扉からあれだけ離れていれば、誰かが階段を登って来る音なんて聞こえようが無いからな」

梓「どうあがいても、それを知る者と知らない者では、咄嗟の反応に差が出ます、からね・・・」ガクッ

澪「そういうことだ、梓。お前は己の力に、パンツの力に溺れて油断しすぎたんだよ」


唯「・・・ねえ、ムギちゃん」

紬「なあに?唯ちゃん」

唯「ちょっと遅れて部室に来たら、澪ちゃんが深道ランカーであずにゃんが倒れててりっちゃんが縛られてるんだけど・・・」

紬「そうね」

唯「これは一体、どういうことなんだろうね?」

紬「ごめんなさい唯ちゃん・・・私にもわからないわ」

唯「そっかぁ」

紬「まぁとりあえず、お茶にしないかしら?」

唯「そうだねー、細かいことは気にしなくてもいっかー」

紬「うふふ、今日はフルーツタルトを持ってきたのよ」

唯「やったー!ありがとうムギちゃん、早くお茶にしよう?」

紬「そうね、今準備するわね」

澪が遂に梓を倒した。
けど、ね?

結局、どうやっても話はパンツに戻るのかよ。
何だよパンツの力に溺れるって、意味がわからないよ。
もう嫌だ、せめて少しでも話を変える。

律「それにしても澪、さっきの何なんだ」

澪「え?」

律「さっき、梓の体に手を当ててただけなのに梓が膝をついて、倒れたじゃんか。何なんだよあれ」

澪「ああ、あれか。あれは浸透剄だよ」

律「しんとーけい?何だよそれ」

澪「いや、私血とか苦手だしさ」

律「は?」

澪「私の方が律より体大きいし、いざという時になるべく相手や自分の血を見ないでも、律のこと守れるようになれないかと思って頑張って身につけたんだ」

律「・・・あっそ」

普段は怖がりで、泣いてばっかりで、私に頼ることが多い癖に、
何でこういうタイミングでそんなことを言えるんだよ。

律「馬鹿澪」

澪「な、何だよ急に!」

やっぱり、駄目だ。
人のパンツを平気で持って行って匂いとか嗅ぐような変態でも、
私は澪のことが好きなんだ。

というか、何となく思ってはいたけど澪だって私のこと好きな筈だ。
      • 自分で言うのもすごい恥ずかしいけど。


でも普通、そうじゃなければそんな変態行為に及ばないだろうし。
いや、普通は好きでもそんな行為に及ばないけど。

更に目の前で倒れてる奴は好きでなくてもそういう行為に勤しむmotherfuckerだけど。

律「澪」

澪「何?」

律「お前、人のパンツなんて持って行ってたんだな」

澪「う」

律「しかも、梓の話を聞く限り一枚や二枚じゃなく相当な数を」

澪「うう」

律「何でそんなことしたんだ?」

澪「そ、それは・・・」

律「理由も無くそんなことしたのか?」

澪「ち、違う!そうじゃない!」

律「じゃあ何でだよ、流石にこれは理由も無しだったら許せないぞ」

澪「う、あう」

律「もし理由があるならはっきりと言え。そうじゃなきゃ絶対許さない」

澪「え、えーっと・・・」

というかさっきはあんまりな事態だったから流したけど、私のファンクラブみたいなのに入ってるって堂々と言ってたよな。
そもそもそんなものあったの自体驚きだけど。

しかも人のパンツを持って行ってるとか堂々と言ってたし。
なのに何でこいつは今更その理由を言うのを憚ってるんだよ。
わかっちゃいたけど、へたれめ。

      • まぁそれは、今まで気持ちを言えないできた私も同じか。
だからこそ、今日は決着をつけてやる。


律「澪、言っておく」

澪「え?」

律「本当の理由さえ話せば、私は絶対に澪のこと許す」

律「だから、本当のことを話してくれ。お願いだ」

澪「・・・」

澪「わ、私は・・・あくまで欲しかったのは律のだけで・・・」

律「うん」

澪「な、何で律のだけは欲しかったかと言うと・・・」

律「うん」

澪「・・・律が、昔から私の傍に居てくれて、私のこと守ってくれて、本当に優しくて、」

澪「いつも引っ込み思案な私を引っ張ってくれて・・・」

澪「しかも他のどんな女の子にも負けないくらい可愛くて・・・」

      • 聞いてて恥ずかしくなってきた。
確かに私のこと好きな気がするとは思ってたけど、ここまで思われてるとは。

それは私のパンツも欲しがったり・・・しねーよ普通は。

澪「つまり、その、だから・・・」

澪「・・・」

澪が黙り込んだ。
他に散々言ってはいけないようなこと言ってたのに、やっぱりそこは言えないのか。
全く、お前は恥ずかしがるとこ間違えてるよ。

でもまぁ、昔から澪はそうだもんな。
人とずれてて、怖がりで恥ずかしがりで、思い込んだら一途で。

律「そういうとこも含めて、好きになっちゃったんだから仕方ないよなぁ」

澪「え?」

律「えーっとさ、もういいよ。許してやるよ」

澪「え?」

律「澪、好きだよ」

澪「・・・え?」

律「私、澪のことが友達としてとかじゃなくて、好きだ」



ブシュウウウウウ

唯「ムギちゃああああん!!」



何か聞こえた気がするけど、今はスルーしておこう。
多分あれも関わり合いになると面倒な類な気がする。

律「澪もそうだと思ってたんだけど、違うか?」

澪「・・・」

律「てっきり私は、だからそういうことしたんだと思ってた」

律「澪はそういうこと言えないと思うし、でも気持ちだけは暴走しちゃってそんなことしそうだからな」

澪「違、わない・・・」

澪「私も!私も律のことが、一人の女の子として大好きなんだ!」



紬「Excellent!」ドブシュウウウ

唯「うわあああ!?更に!?」



唯、今はそっちは任せた。頑張ってくれ。

律「・・・そっか」

澪「うん!」

律「じゃ、改めて許してやるよ。これからは恋人としてよろしくな」

澪「うわぁぁぁん!りつぅぅぅぅぅぅぅ!!」

律「ちょ!待て澪!さっきから言いたかったけどまず解いてくれ!」

澪「あ」

律「私まだ手縛られたままなんだぞ!?」

澪「ごめん律、今助けるよ」

心なしか澪の視線が手じゃないところに行ってる気がするんですけど。

律「・・・言っておくけど、そのまま私のパンツに手を伸ばしたらそれは絶対許さないからな」

澪「」

澪「ソンナコトシヨウトシテナイヨ?」

律「澪」

やっぱり図星かよ。

澪「ごめんなさい、水色の爽やかな感じが律にすごく合ってると思います」

律「おい澪」

澪「ごめんなさい、つい。今度こそ本当に解くから勘弁して下さい」

全くこいつは・・・。

澪「・・・よし、解けたぞ」

律「あぁやっと解放された・・・」

立ち上がれること自体が何か久しいな。
立ち上がったら立ち上がったで、何か目の前で手をわきわきさせてる奴が一人居るけど。

澪「・・・」ワキワキ

律「そのまま私の胸に手を伸ばしても、私は怒るぞ」

澪「ち、違うよ!恋人同士になった訳だし、律に抱きつきたいなーって思って・・・さ」

律「へ?」

      • 何だよ。
変態発言と行動ばかりかと思ってたのに、普通に可愛いところは可愛いじゃないかよ。

律「あ、そ、そういうことか。・・・だったら、いいよ」

澪「本当!?」

律「ほら澪おいでー、なんちゃって・・・」

澪「律!」ダキッ

澪「えへへ、律大好きー///」スリスリ

律「あ、あぁ私も///」

くそう、何だかんだでやっぱり澪可愛い。



紬「私、今幸せよ・・・?」ブッシャァァァァァ

唯「うえぇぇぇん!折角止まったのにー!!」



澪「律の匂いがするー」スリスリ

      • 何か、わざと私の胸にばかり顔を摺り寄せてきてる気がするけど、気のせい、だよな。

澪「ここは、天国ですか・・・?」プチン

律「おい!?澪、お前ブラのホック外すな!」

澪「はっ!?ごごご、ごめん!!」スリスリ

澪「律のおっぱいがあまりにも心地良かったからついより上等の快楽を求めて・・・!」スリスリ

律「そう思ったとしてもやめろ馬鹿!」

やっぱり私、早まっちゃったかなあ。


律「で、話は聞こえてたと思うけど」

唯「うん、聞こえてたよー」

紬「私ははっきり聞こえなかったから、もう一回ちゃんと言って!」

ムギ、お前もお前で少しは自重しろ。


律「あーはいはい。澪と私、付き合うことになったからさ」

澪「・・・///」

紬「いよぉぉぉぉぉっしゃぁぁぁ!」ボタボタボタボタ

唯「おめでとー!」パチパチパチパチ

ああ、唯。お前はいい子だなあ。

梓「ふ、相変わらず甘々なことですね・・・」ザー

唯「あずにゃん!?」

澪「意識が戻ったか!」

梓「今回は私の完敗のようですね・・・、さぁどうぞ好きにして下さい」ザー

紬「梓ちゃん・・・」ボタボタ

律「・・・いいよ、別に」

梓「え?」ザ…

律「結局、縛られはしたけどそれ以外何もされなかったし、間接的にお前のおかげでこうなった訳だしな」

唯「りっちゃん・・・」

唯(りっちゃんを縛ったのはあずにゃんだったんだ・・・何でそんなことしたんだろ・・・)

唯(まぁいっかー、細かいことは)

紬「りっちゃん・・・」ボタボタ

紬(そういえば梓ちゃんが何で澪ちゃんに倒されてたかは知らないままだわ・・・)

紬(まぁいいわね、今後は正式に律澪を見れることになったんだからそんな些細なことは)

澪「律・・・」

澪(やっぱり律は可愛いし、すごく優しいんだな・・・)

澪(今後は正式に恋人なんだから(ピー)とか(ピー)とか・・・///)

律「澪」

澪「はい!?」ビクッ

律「・・・?何でそんなに驚いてるんだ?澪も別にいいよな?」

澪「あ、あぁ・・うん、律が良いなら構わないよ」

澪(焦った・・・)

梓「律先輩・・・」



梓「じゃあ、二人の仲を取り持ったお代としてパンツ下さい」

律「」

世の中には信じられない展開というものがあると思う。

例えば、部室で後輩が複数のパンツを顔に当てながら友人の名前を連呼しているとか。

例えば、幼馴染の親友が人のパンツを自分のものより多く所持しているとか。


例えば、

人のパンツを奪おうという悪事を見逃した後輩に、この後に及んでパンツを要求されるとか。

fin



最終更新:2010年08月23日 02:20