梓「やっぱり澪先輩は一番頼りになるなぁ。とんだ杞憂だったな」
純「梓、何ぼーっとしてんの?」
梓「後は唯先輩とムギ先輩か。唯先輩が一番心配だよ」
純「憂ー、梓が変なんだけど!」
…
唯「~~♪ 澪ちゃんのお陰で課題も提出できたし、これでやっと練習に身が入るよ!」
唯「ちゃんとしないと澪ちゃんやあずにゃんに怒られちゃうからね」
梓「唯先輩」
唯「おーあずにゃん! 噂をすればなんとやらだよ。部室に行くところ?」
梓「いえ、唯先輩を待ってたんです。部活は皆さん用事あるみたいなんで、今日は解散になりました」
唯「ええっ、さっきまでみんなといたのに!? ちょっと教室に戻って聞いてみるよ」
梓「えっ! えーっと、あの! 唯先輩と一緒にアイスでも食べたいな~とか」
梓「(ううっ、流石に無理があったかな……)」
唯「それならそうと早く言ってよ! でも珍しいな~、あずにゃんからそんな提案がくるなんて」
梓「(ふー、唯先輩でよかった)」
梓「そ、そうですか? あ、それと今日唯先輩の家に泊めさせてもらってもいいでしょうか?」
唯「わ~、大歓迎だよ! 今日はあずにゃんデーだね~」
梓「ありがとうございます。じゃあ早く行きましょう」ニッ
唯「ただいまー」
梓「お邪魔します」
憂「お姉ちゃんお帰り。あ、梓ちゃんも一緒なんだ」
唯「うん。あずにゃん泊めてもいいよね?」
憂「全然構わないよ。でも突然どうしたの?」
梓「特に深い意味はないよ。唯先輩と親睦を深めようと思って」
唯「そーそー、しんぼくを深めるんだよ、憂」
憂「お姉ちゃんわかって言ってるのかな……じゃあ今ご飯の用意してるからちょっと待っててね」
唯「了解ですっ! あずにゃん、私の部屋に行こうよ」
梓「はい」
唯「散らかってるけど気にしないで座ってよ~。憂に飲み物もらってくるね」
梓「あ、お構いなく」
梓「本当に散らかってるなぁ。ギターだけは綺麗にしてるけど」
梓「あーもう着替えもほったらかし、机の上も無茶苦茶。漫画と教科書が交互に重なってる!?」
梓「ベッドの上に着替えが脱ぎっぱなし! ズボラにも程があるよ」
梓「ん、着替え……着替え!? これはチャンスなんじゃ」ゴクリ
梓「唯先輩の着替え……いただきます!」
梓「あ~なんだこれすご~い! おおお、ここはヘブン! メイドインヘブン!!」ゴロゴロ
唯「あずにゃん」
梓「ああ神様ありがとうございます! ドリームタイムいただきました!!」
唯「あずにゃんって」トントン
梓「うわあああああ!!――って、ゆいせんぱい」
唯「なんか楽しそうだったね。あれ、それ私の寝巻き」
梓「あああああそうです、これなんです! これしわくちゃだったからたたんでたんですよ! はいっ!」
唯「あ、ありがとー? それより憂が御飯できたー、だって」
梓「そ、そうですか、それじゃ行きましょうか(ふー、何とか誤魔化せたみたい)」
唯「いやー、今日はあずにゃんがいたからはしゃぎすぎちゃったみたい。疲れたからもう寝るね~」
梓「はい。電気消しますよ」パチッ
梓「(唯先輩はやっぱり自宅でもだらしなさMAXだったなぁ。遊ぶことしか考えてないみたいだし)」
梓「(こりゃあ唯先輩にはスパルタしかないかな。明日から……あふぅ。眠くなってきた……)」
梓「Zzz」
ジャンジャンジャン♪
梓「!?」ガバッ
唯「あ、ごめ~ん、あずにゃん。起こしちゃったね」ジャンジャン♪
梓「唯先輩、こんな夜中にギター弾いて……どうしたんですか? 寝てたんじゃなかったんですか」
唯「うん。でもあずにゃんと遊んでて、練習するの忘れてたから今やってるんだよ」
梓「え、練習するのはいいことですけど。明日じゃダメなんですか?」
唯「うーん、でも一日一回はギー太触らないと落ち着かないんだぁ。学園祭も近いから毎日触っとかないとね~」
梓「唯先輩……! 私、唯先輩のこと見直しました! こんな真面目な一面もあったなんて」
唯「えへへ~、そう褒めるでないよ、この子は~。私すぐ忘れちゃうからさ、いつも遅くまで練習してるんだ」
梓「ああ……! 梓は感激です! 唯先輩、私に手伝える事があったら何でも言って下さい!」
唯「ほんと~? じゃあさ、ここのとこが難しくてさ~」ジャカジャカ
梓「ここはこうして、こうですよ。あ、それじゃなくて、こっちです」ジャカジャカ
唯「よくわかんないな~。こう?」
梓「違いますよ。えっと、後ろから失礼しますね」
憂「お姉ちゃん、梓ちゃん、うるさいよ~」ガチャ
梓「あ……」
憂「……ふーん」バタン
唯「怒られちゃったから、もう寝ようか」
梓「は、はい(起きた後が怖い)」
…
梓「はぁ、まさか朝食が味噌汁のダシとった後の煮干しオンリーなんてね。触らぬ憂に祟りなしだわ」
純「梓、何浮かない顔してんの」
梓「でもその甲斐あって普段の唯先輩を知る事ができたんだし、よしとしようか」
純「また聞いてない……あ、憂~。この間から梓がおかしい、って憂も聞いてくれない!」
梓「これで残すはムギ先輩だけか。一番謎が多い人だよね。気合入れていこう」
純「何に気合入れるのか知らないけど、今日英語の小テストってわかってんの? あーもう全然聞いてない」
紬「シャランラシャランラ~♪」
紬「今日は全員揃ってるかしら。そろそろ練習しないと大変よね」
梓「ムギ先輩」
紬「あら、梓ちゃん。何か久しぶりな気がするわ。今から部室?」
梓「いえ、ムギ先輩を待ってたんです。部活は皆さん用事あるみたいなんで、今日は解散になりました」
紬「えっ、私より先にりっちゃん達が行った筈だけど」
梓「う、いや、ホントはですね、ムギ先輩に是非聞きたいことがありまして」
紬「まさか……遂にきたのね! 待ってたの、梓ちゃん!」ガシッ
梓「何か反応が……それでですね、迷惑じゃなければ今日ムギ先輩の家に泊めさせてもらえませんでしょうか?」
紬「私の家? あぁ、そうよね! ここじゃ人目につくものね! 早速行きましょう!」ピッ
紬「もしもし、斉藤? 早く学校に車を寄越して。10分以内に」ピッ
梓「あ、ありがとうございます。突然すみません」
紬「いいのよ~、やっぱり夏といえば百合展開よね。誰とかしら~」
梓「ゆり? 何の話ですか……」
梓「ふぇ~……凄い部屋ですね。わっ、高そうな絵」
紬「ちょっと飲み物でも持ってくるわね。お話はそれからにしましょう」
梓「あ、はい、お構いなく」
梓「なんか調子狂っちゃうなぁ。うん、今の内に調査開始だ」
紬「梓ちゃん、お待たせ!」ガチャ
梓「わあああっ! は、早かったですね」
紬「こんな機会滅多にないから急いできちゃったぁ。それでお話っていうのは?」ワクワク
梓「いえ、大したことでは無いんですけど。普段のムギ先輩がどう過ごしてるのかってことなんですけど」
紬「……えっ、どういう意味?」
梓「どういう意味も何も。そのままですよ、自宅でムギ先輩がどういう生活を送っているのかな~、っていう好奇心です」
紬「私に対する好奇心? 私に百合百合ってこと?」
梓「さっきからその百合ってのが何かわからないんですけど……」
紬「なぁんだ、私の早とちりなの……いい機会だから、梓ちゃんに百合の何たるかを教え込んであげるわね」
梓「えっ、いやその、そういうのではなくて普段のムギ先輩を」
紬「普段通りよ~。手っ取り早く、この本を読んでいってちょうだいね」ドサッ
梓「コレ、女の人同士で……うわーうわーうわー!」
紬「うふふふふ」
紬「あら、もうこんな時間。そろそろ寝ようか、梓ちゃん」
梓「あはははははは……はっ、そ、そうですね。ありがとうございました、私何かに目覚めそうです!」
紬「それはよかったわ~。今度は是非実体験を教えてちょうだいね」
梓「唯×梓、いやさ梓×唯かな? 律×澪もいい……あれ、この楽譜何ですか?」
紬「あ、それ新曲の予定なの。この間から作ってたんだけど。ちょうどいいから梓ちゃんの意見も聞かせて欲しいわ~」
梓「凄くいい感じですね、これ! やっぱりムギ先輩は流石です! 改めて素晴らしいと思いました」
紬「あらあら、そうかしら」
梓「はい! 普段はおっとりしてて、ゆる~い感じですけど、やっぱり軽音部の事を考えていてくれているんですね!」
紬「そこまで大した事じゃないけど、でも軽音部が一番っていう気持ちは皆より強いつもりよ」
紬「今まで見た事もないこととか、話に聞いた事しかなかったことも軽音部で体験できたし。貴重な友人も増えたし」
梓「ムギ先輩……」
紬「もちろん貴重な後輩もね。み~んな大切にしているわ」
梓「ムギ先輩……私、感動しました! 色々な意味で今日は忘れられない日になりそうです!」
紬「あらあら、梓ちゃんったら。うふふ」
…
梓「この一週間、普段の先輩方を調査してきたけど」
梓「澪先輩はともかく、いつもだらけてる唯先輩に律先輩、何を考えてるか計り知れないムギ先輩も」
梓「皆さんそれぞれ軽音部の事を大事に想っていたんだなぁ」
梓「練習時間が足りなくなるからって、いつも口を酸っぱくして言ってたけど」
梓「やっぱり息抜きも必要だね。これからは頭ごなしに怒鳴っちゃうのは控えよう」
梓「ここでネタ晴らしして、軽音部一致団結! って、いい流れにしたいな」
梓「って、ちょっと私偉そうだね……あはは」ガチャ
梓「こんにちは! あの、皆さん聞いて下さい!」
唯律澪紬「……」
梓「いつも皆さん部室でお茶飲んでばっかりで、全然練習していないじゃないですか」
唯律澪紬「……」
梓「ですから、ちょっと勝手ですけどこの間から先輩方の身辺調査をさせてもらいました」
律「おい」
梓「結果は意外でしたね。いや~まさか皆さんがあんなに軽音部の事を想っていらしたなんて」
梓「あ、聞きたいですか結果。凄いですよ~。あ、でもやっぱりどうしよっかな~」
律「聞けよ」ゴツン
梓「痛っ! な、何するんですか律先輩」
律「そりゃこっちの台詞だよ。身辺調査とか言ってこの一週間フラフラしてたのか?」
梓「そうです! お陰で皆さんが真面目に部の事を考えているのがわかりましたよ。さぁ、練習しましょうよ!」
澪「もう土曜日なんだぞ、梓」
紬「今週は梓ちゃんと誰かがいつもいなかったから、合わせて練習できなかったのよ」
唯「あずにゃん、部活サボるような子じゃなかったのに……」
梓「あれっ?」
律「大体、私らはちゃんと練習してたんだぞ。お前何してたんだ?」
澪「ノリノリでトランプしてたな……」
唯「一緒にアイス食べに行ったよ!」
紬「百合レクチャーで目覚めかけてたわ」
律「ライブのDVD観てたっけかな」
澪「……遊んでただけにしか思えないな」
梓「あれれっ?」
律「思えば誘い方が強引だったような気がするな」
澪「突然現れて、今日の部活はないから家に行ってもいいか?って感じだったな」
紬「あら? みんなもそんな感じだったの。私も同じ」
唯「そういえば、あずにゃんは昨日の英語の小テストひっどい成績だったんだって? 憂が言ってたよ」
律「なんだぁ? 練習だけじゃなくて勉強もしてないのかよ」
澪「梓、来年の軽音部は梓が支えていくんだぞ。それに受験勉強もある」
紬「梓ちゃんがこんな調子じゃ、私達も気が気じゃないわね」
梓「なんで私が悪者に……う、うわぁぁぁぁぁぁぁん!!!」バタン!
律「おい、逃げたぞ!」
紬「梓ちゃん!」
梓「違うんです違うんです! こんなつもりじゃなかったのにぃぃぃ!! うわびゅっ!」ツルッゴチン
唯「あ、こけた」
澪「悪いことをすると痛い目に遭うんだな」
おしまい!
最終更新:2010年08月23日 04:52