ガチャッ


梓「こんにちはー…」

律「おーっす、梓」

梓「あれ、律先輩一人なんですか?」

律「みんな掃除当番だってさ」

梓「そうですか…」

律「まぁ座れよ」

梓「あっ、はい」

律「もうすぐ冬休みだな~」

梓「あっという間ですね…私もそろそろ2年生ですよ」

律「まぁお前の場合、頭脳は高校生、見た目は小学生だけどな」

梓「なんですかそれ!」

律「あはっ、わるいわるい」

梓「むぅ…」

梓(なんでこの人はそういうことを言うかな~…)

律(梓をからかうと可愛いなぁ…)

梓「よいしょっと…」

律「なにやってんだ?」

梓「練習するんです、ギターの」

律「まだみんな来てないんだからいいだろ」

梓「何を言ってるんですか!学際のライブを忘れたとは言わせませんよ?」

律「あぁ…あれはひどい演奏だった」

梓「だったら次のライブに向けて、血の滲むような特訓をするべきですっ!」

律「いや、そこまでしなくても…まだ時間があるんだしさ?」

梓「何を甘いこと言ってるんですかっ!」

律(中野さん怖い!?)

梓「一年なんてあっという間なんですよ!?だいたい律先輩は部長なんだからクドクド…」

律(なんかスイッチ入っちゃったよ~…どうすりゃ治まるんだ?)

梓「律先輩っ!聞いてるんですか!?」

律「はっ、はいぃぃっ!!」

梓(こうなったらこれを機に、律先輩を更正させてやるんだからっ)

律(あーどうしよう…どうすれば…)

律(そうだ!)

律「梓よ」

梓「なんですか?」

ダキッ

梓「っ!?」

律「おーし、いい子いい子」ナデナデ

律(確か前に唯がこうやって落ち着かせてたような…)

梓「ふにゃぁ…///」

律(よしっ!このまま続ければ…)

梓「にゃぁ…」

梓(はっ!?いけない!)

梓(このまま流されるところだった)

律「ほーれ、いい子いい子」ナデナデ

梓(甘いですよ律先輩。こんなの…唯先輩と比べれば月とスッポン!)

梓(出直してきやがれですっ!)

梓「うがーっ!」

律「うおっ!?」

梓「ふっ…まだまだですね、律先輩」

梓「そんな抱きつき方で私をどうこうしようなんて100年早いです」

律「なっ!?」

律(なんて生意気な!)

梓「ほら、ふざけてないで早く練習してください」

律「ふ、ふざけてねーよ!マジメに抱きついたんだ!」

梓「そ、それどういう意味ですかっ///」

律「いや…別に深い意味はないけど…」

梓「だったら…変なこと言わないで下さいよ」

梓(マジメに抱きついたって…なんか変な風に捉えちゃうじゃん)

律「まぁとりあえず落ち着けよ、ほら座りなって」

梓「あっ、はい」

律「いや~、もうすぐ冬休みだな~」

梓「そうですねぇ、なんかあっという間…って」

梓「なに話を戻そうとしてるんですかっ!!」

律「ちぇっ」

梓(もう…なんでこの人部長やってるんだろう)

梓(澪先輩がやってくれればよかったのに…)

梓「律先輩、なんで部長やってるんですか?」

律「今思ったことそのまま口にしただろ」

梓「気になったんです」

律「だってかこいいじゃーん」

梓「はぁ…」

律「んまぁっ!!なんでございますかそのため息は!」

梓「呆れてるんですよ…」

律「なら逆に聞くけど、誰が部長だったらいいんだよ?」

梓「澪先輩」

律「即答だな…けど澪みたいな恥ずかしがり屋に部長なんて無理だぜ?」

梓(恥ずかしがり屋は関係ないと思うけど…)

梓「じゃあムギ先輩なら…」

律「ムギもあれでぬけてる所があるからな~」

梓「じゃ、じゃあゆ……やっぱいいや」

律「ほら、結局私しかいないじゃん!」

梓「むぅ…」

律「さぁ尊敬しろ!部長の私を尊敬しろ!」

梓「……」プイッ

律「こらっ!そっぽむくなぁ!」

梓「…やっぱり納得できないです」

律「あのなぁ…」

梓「だって律先輩いつも適当にやってるじゃないですか」

律「なんだとぉ!」ギュ~ッ

梓「っ!?」

律「こいつー!」グリグリ

梓「きゃー♪」

梓(あっ…これはいいかも)

律「どうだ、まいったか!」

梓「ま、参ってなんかないですっ」

律(まったく、強情なやつだな…)

律(でも嫌いじゃないぜ)

梓(今のは…本当によかったかも…)

梓(って、なに考えてるのよ私!)

律「それにしても、あいつら遅いなぁ…」

梓「そ、そうですね…どうしたんでしょう?」

律「まさか…サボりか?」

梓「そんな、澪先輩がするわけないじゃないですか」

律「じゃあ補習かな?」

梓「唯先輩はともかく、澪先輩とムギ先輩はありえませんっ」

律「ひどいこと言うな…唯が聞いたら悲しむぞ?」

梓「じゃあ唯先輩は補習とかしないんですか?」

律「いやまぁ…ありえそうだけど」

梓「ちなみに律先輩もありえそうです」

律「なんだとこらーっ!」ギュ~ッ

梓「きゃー♪」

律「まったく、生意気な後輩め」

梓(だって律先輩相手じゃなんか気が引き締まらないし…)

律「言っておくけどな、私は成績けっこう良いんだぞ?」

梓「知ってます、澪先輩に教えてもらってるんでしょう?」

律「なっ、それだけじゃ…ないっ!」

梓「なんですかその間は…」

梓「やっぱり澪先輩は一流だな~、美人だし頭もいいし、勉強もできるし」

律「私だって美人でしょっ?」キラッ

梓「……ぷっ」

律「笑うなぁっ!」

梓「まぁ美人の類には入ると思いますよ」

律「何様だお前」

梓「でもやっぱり澪先輩には劣りますかね」

律「失礼な上に口を開けば澪だなぁ…そんなに好きなのか?」

梓「すっ、好きとかじゃなくて…///」

律(あー…好きなんだ)

律「でも…こんな生意気だと分かったら澪に嫌われちゃうだろうなー」

梓「!?」

律「澪のやつ、梓の本性知ったらどう思うんだろう?」ニヤニヤ

梓「ほ、本性ってなんですかっ!」

律「私に対してしてきた無礼の数々だよ」

梓「それは律先輩だからですっ」

律「んだとー?…でもまぁ、どっちにしろ澪に知られたら終わりだな」

梓「うっ」

律「そうなりたくなかったら、私の前でも礼儀正しくするんだな」

梓(それもなんかヤダ…)

律「ん?どうした」

梓「いえ…」

律「ならさっそく敬ってもらおうか、先輩の私を!」

梓「え~…」

律「なんだその顔は!!」

梓「だって律先輩相手だとなんか…」

律「私のどこが悪いって言うんだよ!」

梓「まぁ…率直に言うと傷つくから言いませんけど」

律「私の評価そんなに酷いの!?」

梓(たぶん唯先輩より…)

律「…グズッ」

梓「!?」

律「ひどいよ…そこまで言わなくても…」

梓「あっ、いやっ!その…」オロオロ

梓(まさか泣くなんて…)

律「びぇ~~~っ!梓のバカーーーッ!!」

梓「ご、ごめんなさい言い過ぎました!反省してます!」

律「びぇ~~~っ!」

梓「律先輩…」

梓「本当にごめんなさい…私が悪かったです…」

梓「先輩の言うことは何でも聞きますから…許してください」

律「えっ、マジ?」

梓「え?」

律「ふっ」ニヤリ

梓「う、嘘泣きだったんですか!?」

律「マジ泣きだよ?」

梓「うそだぁ!」

律「さぁ、さっそく言う事を聞いてもらおうか」

梓「イヤですよ、なんで私が…」

律「はぁ…散々好き勝手言ってこれか。私の心は深く傷ついたっていうのに…」

梓「うっ…」

律「あぁ、なんて可哀想な私…」

律「私は後輩のことを大切に想ってるっていうのに、その後輩ときたら…」

梓「わ、分かりました!ちょっとだけなら聞きますよ…」

律「じゃあイチャイチャさせて」

梓「は?」

律「私、梓ちゃんとイチャイチャするのが夢だったの~」

梓「い、イチャイチャって…」

律「ほら、いつも唯とやってるじゃん。あんな感じで」

梓「あれはイチャイチャじゃありませんっ!」

律「なんでもいいから愛でさせてくれよ」

梓「はぁ…」

梓(なんでこんなことに…めんどくさい人だなぁ…)

律「あ~ずにゃんっ!」ダキッ

梓「…律先輩にそれ言われると気持ち悪いんですけど」

律「ひどっ!」

律「あ~ず~にゃ~ん」ダキダキ

梓「…むぅ」

律「このぅ、かわいいやつめ」ナデナデ

梓「うにゃっ」

律「ほれほれ~」スリスリ

梓「うぅ…」

律(あぁ…梓を可愛がるのもけっこう良いかも…)

梓(律先輩にこれやられると凄い違和感…)

律「あ~ずにゃんっ」ギュ~ッ

梓「っ!」

梓(でも…強く抱きしめられるのは悪くない…)

梓(なんか嬉しい…)

律「そうだ梓」

梓「なんですか?」

律「これつけてみろよ…」ガサゴソ

律「じゃーんっ!ネコ耳」

梓「どこからそれを…」

律「いいから早く早く」

梓「むぅ…これでいいんですか?」

律「やっぱ梓といえばネコ耳だよなぁ」

梓「なんですかそれ」

律「ニャーって言ってみて」

梓「…ニャー」

律「やっぱかわいい!」ダキッ

梓「うっ…」

律「梓みたいな後輩を持てて幸せだ」

梓「そう言われるのは嬉しいですけど……」

律「梓、愛してるぞ!」

梓「て、適当なこと言わないで下さい!」

律「あ~…梓が本当の妹だったらいいのに」

梓(私はこんなお姉ちゃん絶対にやだ…)

律「なぁ梓…私のこと好きか?もちろん先輩としてだけど」

梓「…嫌いではないですよ」

律「そこはお世辞でもいいから大好きっていうんだよ」

梓「いやです…私は自分の気持ちに正直でありたいんですっ」

律(素直じゃないやつがなにを…)

律「でもまぁ…私は梓のこと好きだからな?」

梓「そ、そうですか…それはありがとうございます」

梓「私もこれからは、律先輩のこと好きになるようなるべく努力はしたいと思います」

律(そうまでしないと好きになってくれないのかよっ)

律「それにしても、澪たちはまだ来ないのか?」

梓「遅いですね…電話してみればいいんじゃないですか?」

律「…いや、もうちょっと梓と二人っきりでいたい」

梓「え?」

律「だってこうやって私たちが二人でいるのって、滅多にないじゃん」

律「だからもうちょっと楽しみたいの」

梓「……」

律「ははーん、ひょっとして今照れちゃったな?」

梓「て、照れてなんかないもんっ!」

律「よしよし、かわいい子め」ナデナデ

梓「うぅ…」

~♪

律「おっと、電話…澪からだ」

律「もしもし?」

澪『律、今何やってんだ?こっちは校門の前でずっと待ってるんだぞ』

律「え?部活は?」

澪『何言ってんだよ、今日は休みって言ってたじゃないか』

律「……あっ」

澪『はぁ…忘れてたのか』

律「あはは…ドンマイドンマイ」

澪『みんな待ってるから早く来いよ』

ピッ

梓「どうしたんですか?」

律「今日部活が休みなの忘れてた…」

梓「…あれ?そうでしたっけ」

律「お前も忘れてたのかよ」

梓「すいません…うっかり」

律「お前も忘れん坊屋さんだな」

梓「ち、違います!今日はたまたまですっ!」

律「私たち、もしかしたら気が合うんじゃね?」

梓「合いませんっ!」

律「照れるなよ~」

梓「照れてませんっ!」

律「本当は?」

梓「もう、いい加減にしてください!!」

律「はいはい」

律「じゃ、みんなも待ってるしそろそろ行こうぜ」

梓「はぁ…」

梓(律先輩の相手は疲れる…)

律「若いのになんて顔してるんだよ」

梓「律先輩のせいですよ」

律「なんとっ!?」

梓「もういいですから、さっさと行きましょう」

律「ったく、かわいくない後輩」

梓「めんどうな先輩…」ボソッ

律「なに?」

梓「なんでもありませんっ」

梓(でも…強く抱かれたのは悪くなかったかも…)


―――――
―――

梓(そういえば、昔そんなことがあったなぁ…)

梓(思えば、あの時から律先輩のこと意識してたのかも)

梓(あの頃は今みたいに素直じゃなかったから気づかなかったけど…)

律「ただいまー」

梓「あっ、お帰りなさい律先輩」

律「…なに嬉しそうな顔してるんだ?」

梓「え?」

律「なんかニヤニヤしてるぞ」

梓「き、気のせいですよっ」

律「そうか?まぁいいけど…」

梓「そうだ、頼んでたもの買ってきてくれました?」

律「…あっ」

梓「律先輩?」

律「忘れてた…」

梓「はぁ…相変わらずなんだから」


おわり



最終更新:2010年08月23日 22:06