灯里「過去から来たってどういうこと?」
梓「灯里ちゃん今日の日付は?」
灯里「えーと……」
アリス「2XXX年15月11日です」
梓「やっぱり」
藍華「ちゃんと説明しなさいよ」
梓「私がネオ・ヴェネツィアに修学旅行で来たのは2010年、約80年前です」
晃「本当か?」
藍華「またまた、騙そうったってそうはいかないんだから」
梓「灯里ちゃんパソコンで
中野梓を検索してくれない?」
灯里「わかった……なかのあずさ」
灯里「あったよ、放課後ティータイムのギタリスト?」
梓「ビンゴ」
藍華「放課後ティータイム?聞いたことないわね」
アリス「昔の人気ロックバンドらしいです」
藍華「でも同姓同名の別人じゃない?」
灯里「写真があるよ……ちょっと大人っぽいけど梓ちゃんだ」
梓「みんなは半信半疑かもしれないけど私はこれで確信したよ」
藍華「うーん、にわかには信じがたいわね」
梓「まあそうだろうね、でもこのネオ・ヴェネツィアに私の探してる人がいないのは確か」
灯里「えー」
アリス「どうするんですか?」
梓「もう探しても仕方ないし……みんなは練習に戻ってよ」
灯里「そんな!もうちょっと探してみようよ」
梓「ありがとう、でもいいの」
梓「晃さん、昔来た桜ヶ丘女子の話詳しく聞かせてもらえませんか?」
晃「いいよ。確かあの話でも生徒が1人迷子になるんだ」
晃「一緒の班の子達が先生に報告したら警察も出動する大騒ぎになったんだけどなかなかみつからない」
晃「じっとしてられなかった生徒の二人がうちのゴンドラを持ち出して探しに出たんだ」
藍華「どうやって?」
晃「いやまさか素人がまともに漕げるはずないのはお前たちがよく知ってるだろう?」
晃「二人がちょっと乗ってみたいと言ったのでその通りにしたら、当時のうちのウンディーネを振り切って漕ぎ出したんだ」
アリス「プロが追い付けないなんてビックリです」
晃「二人を追いかけて多数のウンディーネが出たんだけど見事な操舵で華麗に振り切る」
晃「結局ネオ・ヴェネツィア中を漕ぎ廻ってようやく迷子を発見したって話」
灯里「すごーい」
アリス「世の中には天才がいるもんなんですね」
藍華「後輩ちゃんも天才って呼ばれてるじゃない」
アリス「流石に初めて漕いで先輩達から逃げ切る自信はありません」
梓「へぇ、そんな話があったんですね」
晃「だから梓ちゃん、最後まであきらめないように!」
梓「はい」
梓「明日地球へ行ってみようと思う」
灯里「梓ちゃん……」
梓「私が住んでいた辺りがどうなっているか見てみたいし」
藍華「故郷か」
梓「それにもしかしたら誰か知ってる人がまだいるかもしれない」
アリス「それが老人だったり梓さんの子供とかだったりしたらショックかも知れませんよ」
梓「それでも行かずにはいられないから」
梓「今日はもうちょっと探してみるね、みんな色々とありがとう」
灯里「えーっ」
藍華「待ちなさいよ」
アリス「でっかい水くさいです」
灯里「私たちここまで来たら最後まで付き合うよ」
梓「みんな……」
アリア「ぷいにゅー」
梓「アリア社長まで……ありがとう」
藍華「それじゃ再開しましょうか」
灯里「晃さんありがとうございました」
晃「頑張れよ」
梓「やってやるです!」
灯里「それじゃ梓ちゃんのお友達探しに、れっつらごー!」
アリア「ぷいにゅー」
アリス「梓さんどこへ行きましょうか?」
梓「そうね、やっぱり私がここへ来てしまった原因を考えて見ようかな」
灯里「きっと私たちとお友達になるためにアクアが起こした素敵な奇跡だよ」
藍華「恥ずかしい台詞禁止!」
灯里「えー?」
梓「そういえばアリア社長を追いかけてたら灯里と会ったんだよ」
アリス「なるほど、さしずめアリア社長は時の案内人てとこですね」
藍華「恥ず……」
藍華「じゃあその場所へ行ってみましょう」
梓「灯里ちゃん覚えてる?」
灯里「うん、案内するよ」
梓「それにしてもアリア社長って不思議な猫さんだね」
アリア「ぷいにゅー?」
梓「こんな体の猫さん見たことないよ」
アリス「アリア社長は火星猫さんです」
梓「火星猫ってみんなアリア社長みたいなの?」
灯里「うーん、どうかな」
藍華「こんなモチモチした猫は見たことないわね」
アリス「でっかい不思議です」
灯里「着いたよ」
梓「あっ!確かに灯里ちゃんと出会った場所」
藍華「空き家?」
アリス「でっかいカビ臭いです」
梓「ここに何か秘密があるのかもしれない」
灯里「秘密?」
梓「……この家がタイムマシンだとか?」
藍華「とてもそうは見えないわね」
アリス「中へ入ってみましょう」
灯里「ごめんくださーい!誰かいませんかー!」
藍華「空き家なんだから誰もいないわよ」
梓「真っ暗だあ」
アリス「明かりを持ってきました」
灯里「アリスちゃんナイス!」
藍華「うーん……やっぱり何もないみたいね」
梓「そんなはずは……その化粧台が異空間への入り口だったり」
灯里「鏡の国へ繋がってるかもね」
アリス「何で私を見るんですか?」
灯里「アリスちゃんイン・ワンダーランドなーんて」
アリス「面白くないです」
灯里「えー?」
藍華「何やってるのよ……」
梓「灯里ちゃんのつまらないギャグはともかく普通の化粧台だったよ」
灯里「梓ちゃんまで」ガーン
藍華「結局この家はただの汚い空き家だってことね」
アリス「そのようです」
梓「これで手掛かりはなくなったか」
灯里「梓ちゃん!もし帰れなくなっても私と一緒に生きていこう!」
梓「灯里ちゃん」ジーン
藍華「ひ、姫屋は人手が足りないから手伝いとして置いてもらえるように頼んであげるわよ!」
梓「藍華ちゃんもありがとう、私別にこの時代のネオ・ヴェネツィア嫌いじゃないよ」
アリス「どんな状況だろうと楽しんでしまえばいいんです」
梓「アリスちゃんもありがとうね」
梓「みんなありがとう、もう遅いし帰った方がいいよ」
藍華「今さら何言ってんのよ」
アリス「そうです」
梓「いいの、ここで暮らすのも悪くないかなって思うから」
灯里「梓ちゃん」
梓「ひょっとしたらもう会えないかもしれないね」
灯里「ええー?やだよー」
藍華「灯里、もう帰りましょう」
アリス「梓さんが帰れたら良し、帰れなければまた会えますから」
梓「そういうこと」
梓「じゃあね!もし帰れたら何か目印を残すよ!」
藍華「期待しないで待ってるわよ」
灯里「私の部屋に泊まっていきなよ」
梓「ありがとう、でもいいの」
アリス「……これ持って行って下さい」
梓「アリスちゃんの帽子……いいの?」
アリス「でっかいお土産です」
梓「ありがとう」グス
灯里「私の帽子も!」
アリア「ぷいにゅー」
藍華「大事にしなさいよね」
梓「灯里ちゃん、アリア社長、藍華ちゃん……ありがとう」
梓「それじゃ“またね”」
アリス「また会いましょう」
藍華「またね」
灯里「うん、またね」
アリア「ぷいにゅー」
梓「はあ……ああは言ったものの行く当てなんてないんだよね」
梓「どうしようかな」トボトボ
アリア「ぷいにゅー」トコトコ
梓「アリア社長?」
梓「もしかして帰り道を教えてくれるの」ダダッ
アリア「ぷいぷいにゅー」トタトタ
梓「本当に不思議な猫さんですね」ダダッ
梓「待ってー」ダダダ
アリア「ぷいにゅー」
梓「アリア社長!」
梓「……」
梓「遂に最後の望みも絶たれたか……」
梓「もう疲れたよ」
梓「……」
梓「……」
「待てー!」
梓「……?」
「そっちへ行ったわよ」「追い込めー」
梓「何の騒ぎだろ?」
梓「うわっ!すごい数のゴンドラだ」
「梓ちゃーん!」「梓ー!」
梓「!!!」
梓「まさか……まさか……」
憂「梓ちゃーん!どこー?」
純「梓ー!」
梓「……嘘でしょ」ウルウル
梓「ういー!じゅーん!ここよー!」
純「梓?梓なの?」
憂「梓ちゃん!今行くよ!」
「止まったわよ!」「囲め!」
梓「純!憂!勝手にゴンドラ持ち出したのね!全く無茶するんだから」グスッ
純「梓のバカ!心配したんだからね」グシュッ
憂「梓ちゃん……よかったよう」ポロポロ
梓「ふぇーん!ごめんねー」ヒグッ
純「ううっ」エグッ
憂「おかえり梓ちゃん」ダキッ
「どうしたの?捕まえないの?」「バカ!いいとこなんだから邪魔しないの」
梓「……ただいま」
純「憂ってばすごいんだよ!ウンディーネさんより速くスイスイ漕いできたの」
憂「えへへ///」
梓「ありがとう」
憂「……結局こっぴどく叱られちゃったね」
純「まったく梓のせいで」
梓「ごめんね」
純「でもウンディーネさんはあんまり怒こってなかったのよね」
梓「憂なんか天才ウンディーネだってスカウトされてたしね」
憂「それは……必死だったから」
純「ぷっ」
梓「あはは」
憂「二人とも笑うなんてひどーい……うふふ」
純「ところで梓それは何?」
憂「可愛い帽子だね」
梓「ああこれは……」
純「何よー、もったいぶらないで教えてよ」
憂「私も聞きたいな」
梓「……でっかいお土産です」
純「それよりどこで何をしてたのか詳しく教えてよ」
憂「私たちには聞く権利あるよね?」
梓「うん、二人には聞いてもらいたいけど」
純「何よ」
憂「ダメなの?」
梓「ねえ、三人でバンド組もうよ!」
純「えっ」
憂「梓ちゃん疲れてる?」
梓「違うわよ!いつかこの帽子を被って大きなライブをやろう!歴史に残るようなすごいやつ!」
こうして私の時間旅行は終わりました。
憂と純には本当にあった事を話しましたが、やはり半信半疑でした。
それでも帽子のこともあり三人で手紙を書くことにしたのです。
宛先は2XXX年15月12日、親愛なる友へ
おわり
最終更新:2010年08月24日 23:12