唯は片手を湯船からあげ、憂の頭をなではじめた

唯「憂、とっても可愛い……」

唯「食べちゃいたいくらい可愛いよ」

唯「憂を一目見た時から、こうなる日がいつかくると思っていたんだ」

唯「憂、あなたをこの世で一番愛してる。君以上の存在はいない」

唯「憂、あたなのためなら私はどうなっても構わない、あなたに命じられるなら湖の水も飲み干そう」

唯「だから、わたしと結婚してはくれまいか?……憂」

憂「いいよ、お姉ちゃんとなら」








クスクス、クスクス、アーハハハッ
二人声揃えて笑った、その声は風呂場に反響してとても大きく聞こえた



憂「お姉ちゃん、劇の真似上手だね」

唯「いやー憂みてるとさー可愛くってね、思わず恥ずかしい台詞が出ちゃった」

憂「うん、とっても恥ずかしすぎて、笑うの我慢できなかったよ」

唯「言ってる本人はもっと恥ずかしいんだよ~」

憂「そうかもしれないね。だから、お姉ちゃんが笑い出したら私も一緒に笑っちゃった」

唯「さてさて~ひと笑いしたし、頭と体洗おっか~」

憂「お姉ちゃんお願いがあるんだけど……いいかなぁ」

唯「おお、二つめだね~ど~んとこいだよっ!」

憂「頭洗って欲しい……だめ…かな?」

唯「やーっと、お願いらしいお願いがきたね!」

唯「その願いかなえてしんぜよう」

唯「私は湯船の外にでるから、憂は膝立して頭を湯船の外に出して」

憂「こんな感じでいいのかな」

唯「うん、グッドグッド~」

唯「それじゃシャンプーするね~」

唯はシャンプーホルダーを3プッシュし
手で軽く泡立ててから憂の髪に馴染ませ始めた

シャンプーは髪に馴染み、泡立ち始めると指通りがよくなってきた
唯の指の腹が憂の頭皮をほどよく刺激する

憂(シャンプーしてもらうなんて何年ぶりなんだろう……)

憂(気持よさと懐かしさで、なんだか幸せ……)

憂(耳の裏やこめかみまで丁寧……すごく気持ちいいよ、お姉ちゃん)

憂(首筋にお姉ちゃんの指が触れると当たるとくすぐったい……)

唯「おきゃくさーーん、かゆいところはありませんか~?」

唯「憂~かゆいとこないの~?」

憂(何か言わなくちゃ…えっと、えっと)

憂「えっと…あの……まゆげ……」

唯「お客さん通ですな~」

唯「シャンプーしてもらうと頭の周囲はゴシゴシしてもらえるから痒くないけど」」

唯「シャンプーしてる範囲のちょっと外が痒くなるよね~」

唯「勇気をもって範囲外をおっしゃってくれたお客さんの肝っ玉、たいしたもんですぜっ!」

憂「あは…は…はは」

唯は指先の腹でやさしく眉毛を擦ってあげた

憂「眉毛を擦られたの初めて……結構好きかな……」

唯は器用に片手で一通り憂の洗い上げ、シャンプーを丁寧に流し落とした
続いてリンスを丁寧に髪を馴染ませてから綺麗に流し落とした

唯「憂~おわったよ~」

憂「お姉ちゃんありがとう。とっても気持よかったよ」

唯「何しろ指先は鍛えてますから~」

憂「日頃の成果?だね」

唯「えへへ、私も頭を洗うから、唯は隣で体洗ってね」

唯「片手だけど平気~?」

憂「う~ん、なんとかなりそうだよ」

唯は体を洗っている憂の横腹をつつくなどの妨害工作をしつつ自分の頭を洗った
一方の憂は隙あらば脇腹を突かれてその度に手を止めていた
結局、唯が頭を洗い終え、身体を洗い終わった頃にようやく憂も身体を洗い終えた
これだけじゃれあっても、握られた片手は絶対に離さなかった

風呂上りは大分疲れたのか、おとなしく身体をふきあい、服を着せっこした
その後は二人で肩を寄せて扇風機にあたり、定番の宇宙人の真似ごとで笑いあった

唯「そろそろお腹すいたよ~憂~」

憂「お姉ちゃんのお風呂場での攻撃で疲れちゃった」

唯「憂がくすぐったがりだから悪いんだよ~」

憂「えへへ、今日は片手が使えないから、あんまり凝ったのはできないかな……」

憂「レトルトのカレーでもいい?」

唯「うん、朝からずっと大変だったもんね。夕食くらいは楽しよう」

憂「でも、サラダだけはちゃんと作らせて」

憂「キュウリ切って、レタスちぎって、プチトマトのせるお手軽なのにするから」

唯「あーキュウリは私に切らせてっ!お願い憂っ!」

憂「うん、お姉ちゃんに任せるよ」

唯「えへへ~お手伝いだ~」

憂は鍋に火にかけてレトルトのカレーを入れた
暖まるまでの間にサラダを作る。憂は手際よくレタスをちぎってボウルに入れ、プチトマトを隅に添えた
残るは唯の担当のキュウリだ



唯「中国4000年の歴史が生み出した剣術の技を、まさか包丁で披露することになろうとは」

憂「お姉ちゃん刃物で遊ばないでー」

唯「はい、すいません……」

スタン、スタン、スタン……キュウリを1cm程の大きさに切った

憂「お姉ちゃん上手~」

唯「こんなもんだよ~憂には勝てないけどね~」

憂「それじゃボールに移して完成だよ」

憂「レトルトも暖まる頃だし、ご飯よそうね」

憂「お姉ちゃん、器もってもらってもいいかな」

唯「はいは~い、片手は絶対に話しちゃいけないもんね」

憂「うん、ありがとうお姉ちゃん」

憂はお鍋を火から外して中のパウチをとろうとした

憂「熱いっ!」

唯「みみ、みみ!みみたぶ!」

憂「えっと、あ……あ…」

唯「私のみみたぶーーーーーーーーーーーー!」

憂は唯の叫びで唯の耳たぶを触った

唯「大丈夫?」

憂「うん、お姉ちゃんのおかげで助かっちゃった」

唯「頼れる姉を持てて幸せだね~。もっと頼っていいんだよ~」

憂「うんっ!」

唯の機転?のおかげで事なきを得、無事に食事にありつくことができた

唯憂「いっただきまーす」

唯「レトルトも捨てたもんじゃないね~」

憂「うん、簡単にできてこれだけの味を出せるってすごいよ」

唯「そうだよね~手作りのほうが好きだけどたまにはいいよね」

憂「今度はちゃんと手作りカレーつくるね」

唯「憂のカレーは美味しいからね~部活のメンバーにも食べさせてあげたいよ」

憂「それだけ褒められると照れるな……」

唯「憂の料理大好きよ、お世辞抜きに美味しいもん」

憂「えへへっ」

食器は水に浸し、次の日洗うことにした。今この時を少しでも一緒に過ごすために

憂「今日は一日楽しかったよ~」

憂「朝起きてお姉ちゃんの部屋で一緒に寝て」

唯「一緒にトイレいって顔洗って朝ごはんたべて」

憂「お着替えが大変だったりしてね」

唯「一緒に外食して映画見てアイス食べて写真とって」

憂「お姉ちゃんにお風呂で頭洗ってもらったりね」

唯「憂のくすぐったがりが判明したりっ、半分のぼせてお風呂上がって」

憂「お姉ちゃんの耳たぶが熱冷ましにちょうどいいことを知って」

唯「無事なんとか夕食にありつけて」

唯憂「たのしかったね~!」


唯「憂と毎日ずーっと仲良く一緒にいるけど、少し距離があったよね」

憂「うん、その距離が今日はゼロだったよね」

唯「手をつないで同じ距離、同じ視線、同じものを感じていた今日は」

憂「お姉ちゃんがくれた私へのバースデイプレゼント」

唯「私も憂のバースデイプレゼント一緒に受け取っちゃった」

憂「それもとってもいいことだと思うの。一緒じゃないとすべて得られなかったから」

唯「そうだよね、二人がいたから、二人だから沢山の楽しい時間が過ごすことが出来た」

憂「形としては写真として残ったし、心にも思い出が沢山たくさーん出来た」

唯「憂、今日は一日ありがとう」

憂「ううん、お姉ちゃん私こそ素敵なバースデイプレゼントをありがとう」


               唯「憂」
            憂「お姉ちゃん」


           唯憂「せーーのっ」



           唯憂「だーい好き!」



唯憂「あはははっ」

唯「まだひとつだけ目標を達成できてないことがあるよ」

憂「うん、そのひとつはとっておいてあるんだ」

憂「お願いすることは決めてあるから」

唯「なんだろ~」

憂「えへへ」

憂「今日はいろんなことがあって少しバテちゃった」

唯「うん、私も」

憂「早いけど寝よっか」

唯「今日は憂の部屋にとまるよ」

憂「うんっ」



────────憂の部屋

憂「お姉ちゃん電気消すね」

唯「うん、消そう~」

唯と憂は二人で電気を消し、同じベットの中へと入った

憂「お姉ちゃん、3つ目のお願いなんだけど」

唯「なにかな~なにかな~」

憂「私が眠るまで……手を握っていてね」

唯「あはは、憂、言われなくたって握ってるよ」

憂「えへへ、お姉ちゃんお休み」

唯「おやすみ、憂~」



ぎゅっぎゅっ……  ぎゅっぎゅっ……


────────


あの日以来、私とお姉ちゃんは、たまに手をつないでいます。

どちらからともなく手をつないで、一緒の距離を大切にしています。

手をつないだ距離でしか分からない、相手の思い、相手の気持ちを知るために。







あなたも大切な人と手をつないでみませんか?




おわり



最終更新:2010年08月25日 21:11