三年二組教室
律(……ダメだ。梓が頭にこびりついてるみたいだ)
律(梓……)
律「……はぁ」
和「気味が悪いくらい元気ないわね」
唯「あんなに元気のないりっちゃんは二年の学園祭ライブ前以来だよ」
澪「しかも髪下ろしてるから余計にアレだな」
紬「でも、今のりっちゃんすごく女の子らしくて可愛い……」
律(梓…………)
梓「律せんぱーい!」
律「!!」
律「あ、梓……?」
梓「今すぐ屋上に来てください!」グイ
律「ちょっと……手を引っ張るな……///」(あ、梓と手をつないでる///)
紬「なんだかすごくいい展開が待ってるみたいね!」
澪「なにか二人にあったのか?」
唯「私はなにも知らないよ。和ちゃんは?」
和「私だってなにも知らないわよ」
屋上
律「そ、それで話ってなんだよ?」
律「唯のことなら私じゃなくて他の誰かに聞いたほうがいいぞ」
梓「違います!」
律「え?」
梓「私は……私は……」
律「あ、梓……」
律(上目遣いの梓がマジで可愛い///)
律(結婚したい、いや、せめてキスだけでも……)
梓「私は……私は律先輩のことが……」
二年一組教室
純「梓、告白うまくいったかな?」
憂「どうだろうね。成功してるといいけど」
純「なんか気になることでもあるの?」
憂「うん、実はちょっとね」
純「なになに?」
憂「惚れ薬の効果はずっと続くのかなって思って」
純「ああ、たしかに。告白の瞬間に薬が切れたりしてね、あははは」
憂「純ちゃん、それ笑えないよ」
……
梓(髪下ろしてる律先輩ホントに素敵で……可愛い)
梓(……じゃなくて!)
梓(言うんだ! 言うんだ! 私!)
梓「律先輩、あなたのことが……!」
律「…………」
梓「好きです!」
律「……え?」
律「え?」
梓「……だ、だから好きなんです! 律先輩のことが……」
律「梓……」ポン
梓「な、なんですか律先輩?」
律「先輩をからかっちゃダメだぞ」
梓「からかってないですっ。私は本当に……」
梓(どうなってるの? さっきまであんなに顔を赤くしてたのに……)
律「もうすぐ休み時間も終わるから戻ろうな」
梓「話は終わってないです!」
律「またあとで部活んときに聞いてやるって」グイグイ
梓「ええ? えええー!?」
三年二年教室
唯「あ、りっちゃんが帰ってきたよ」
澪「梓となに話してたんだ、律」
律「それが、なんかよくわからないけど告白された」
和「告白?」
律「うん、律先輩のことが好きなんです、って」
紬「り、りっちゃんはなんて返事したの?」
律「先輩をからかうなよって返しといた」
紬「それだけ?」
律「それだけ」
三時間目
律「……」カリカリ
律(しっかし、なんでさっきまであんなに梓のことばかり考えてたんだろ?)
律(まるで、アレじゃ……)
律(梓に恋してるみたいだよな……///)
律(いや、ないない。有り得ない)
二年一組教室 三時間終了
梓「」グテー
純「おーい、梓」
梓「」グテー
純「あーずーさー」
梓「…………なに?」
純「元気出しなよ。告白が失敗したくらいで、いじけちゃだめだって」
憂(やっぱり惚れ薬切れちゃったんだ……)
梓「べつに、まだ告白は失敗してないよ……!」
梓「ただ、私の思いが律先輩にきちんと伝わらなかっただけだもん」
純「はいはい」
梓「もういいや。今日は部活出ないで帰る」
純「あの真面目な梓が部活に出ずに帰るの!?」
梓「今日はもうなんか全部やだ……」
憂「梓ちゃん、元気出して」
梓「無理……」グテー
梓の家
梓「そんなわけで家に帰ってきてしまった……」
梓(……ああ、なにやってんだろ)
梓(そもそも、惚れ薬を使って告白っていうのが、最悪なまでにずるいよね……)
梓(……私、すごく嫌な子だ)
ぷるるるる♪
梓(誰かな? もしかして律先輩……?)パカッ
梓「……唯先輩、か。もしもし?」
唯『もしもーし、あずにゃん?』
唯『あずにゃんが部活サボるって憂から聞いたから、電話しちゃいました』
梓「……すみません」
唯『どうしちゃったの、あずにゃん。なにかあったの? 元気ないよ?』
梓「……私、フラれちゃったんです」
唯『フラれた?』
梓「私、律先輩に告白したんです……でも、全然ダメでした」
唯『あずにゃん……』
梓「唯先輩、少しだけ私の話聞いてもらっていいですか?」
唯『いいよ、私は先輩だからね』
…
唯『へえ。そんなことがあったんだ。ムギちゃんはすごいね』
梓「はい。惚れ薬なんて普通はありませんよね」
唯『それで、あずにゃんがりっちゃんに告白したときに、惚れ薬の効果が切れちゃったんだ』
梓「はい。本当に、私ったら馬鹿ですよね」
梓「卑怯な手まで使ったのに結局、相手にもされなかったんですから」
唯『そんなことないよ』
梓「そんなことありますよ」
唯『そんなことない。だってりっちゃん、あずにゃんが来ないって聞いたら、すごくあずにゃんのこと心配してたよ』
梓「それは……ただ後輩が来なかったから、ですよ」
唯『あ、そっか』
梓「できれば納得してほしくなかったです」
唯『えへへ、ごめんね』
梓「いえ、実際その通りだなんで」
唯『でも、あずにゃんはりっちゃんにまだ、きちんとは告白できてないんでしょ?』
梓「まあ、一応。でもきちんと告白しても無理ですよ。だいたい女どうしっていうのが……」
唯『あずにゃん!』
梓「は、はい」
唯『やっぱりもう一回告白しなさい!』
梓「え……?」
唯『あずにゃん、諦めてるようだけど実はまだ諦めきれてないでしょ?』
梓「…………はい」
唯『やっぱり、そうだよね』
梓「バレバレですか」
唯『声聞いてると、すごくあずにゃんの諦められないっていうのが伝わってくるもん』
唯『だからさ、今度こそきちんと告白してみなよ』
唯『あずにゃんの想いをりっちゃんにぶつけなきゃ!』
梓「唯先輩……」
唯『ねっ?』
梓「……はい!」
唯『応援してるからね、あずにゃん』
梓「唯先輩、本当にありがとうございました。私ガンバります」
唯『うん、ガンバって。それと私、今すごく先輩っぽいでしょ?』
梓「すごく先輩っぽいです」
唯『えへへ』
梓「唯先輩……」
唯『うん?』
梓「昨日は八つ当たりしてごめんなさい」
唯『もう忘れちゃってたよ、あずにゃん』
唯『じゃあね、あずにゃん。ガンバって!』
梓「はい!」
梓「唯先輩に応援してもらったし、ガンバらなきゃ!」
ぷるるるる♪
梓「電話……律先輩からだ」パカッ
律『梓、もしもーし、私だぞー』
梓「はい、中野です」
律『今日はどうしたんだよ、真面目な梓が部活来ないなんてなにかあったのか?』
梓「ごめんなさい、律先輩……その、今から律先輩の家に行ってもいいですか?」
律『ん、ああ、べつに構わないけど』
梓「じゃあ今から行きますから……待っててください」
律『……わかった』
田井中家前
梓(大丈夫、私!)
梓(今度こそ、自分の想いを伝えるんだ)
梓「すぅーはー……」ピンポーン
梓「律せんぱーい」
ガチャ
律「そんなに大きな声ださなくても出るって」
梓「す、すみません。ちょっと緊張しちゃって……」
律「まあ、入りなよ」
梓「お邪魔します」
律の部屋
律「テケトーな場所に座ってくれ」
梓「ありがとうございます」
律「んで、話ってなに?」
梓「……」
梓(マズイ。また緊張してきちゃったよ……)
律「梓?」
梓「は、はい」ビクッ
梓(言わないと。言って伝えなきゃ……!)
唯『あずにゃん。ガンバって!』
梓「……!」
梓(そうだよ、唯先輩だって応援してくれたんだから、なおさら言わないと!)
梓「律先輩」
律「うん」
梓「私、先輩のことが好きです」
律「…………」
梓「大好きなんです」
律「……」
律「梓、最初に私は梓に謝らないといけない」
梓「…………なんですか?」
律「屋上でさ、コクられたとき、わかってたんだ。梓が本気で私に告白したってこと」
梓「はい」
律「でも、なんだかすごく変な感じがしてさ。いや、単純にびっくりしたのかも」
梓「そうですよね、急に告白されたら……」
律「ううん、だって昨日は唯が好きだって言ったからさ」
梓「それは律先輩が勝手に誤解しただけです」
律「そうなの?」
梓「そうです」
律「まあとにかく、まだ自分の気持ちはよくわかんない」
律「これが私の本音」
梓「……そうですか」
梓「でも私は律先輩が好きです。大好きです」
律「うーん、あのさ。いったい私のどこがいいんだ?」
梓「先輩、覚えてますか? 私が初めて軽音部の部室を訪れたときのこと」
律「ああ、あのときか」
梓「今でこそ唯先輩が私に抱き着くのが、お約束みたいになってますけど」
梓「もともと私に最初に抱き着いたのは律先輩なんですよ?」」
律「そういえば、梓が来てくれたとき、かくほーみたいなこと言って抱き着いたかも」
梓「抱き着いたんです」
律「でも、それだけじゃないだろ?」
梓「昨日、告白するときにも言いましたよ?」
梓「明るくて、思いやりがあって、ちょっと抜けてて、でも素敵な先輩が……好きだって」
律「てっきり唯のことかと思ってた」
梓「まあ、唯先輩もそうですし、ムギ先輩も澪先輩も素敵です」
梓「でも私にとって一番素敵なのは、律先輩なんです」
律「梓……」
律「よし、梓!」
梓「はい!?」
律「明日は何曜日だ?」
梓「明日? 明日は土曜日。休日です」
律「明日、二人でどっか行こう!」
梓「急ですね……」
律「梓だって急に私の家に来たいって言ったじゃん」
梓「たしかに」
律「似た者どうし、ということで。明日、出かけよう」
梓「二人きりですか?」
律「もち」
律「さっき、自分の気持ちがわからないって言っただろ?」
律「やっぱり、もっと相手のことを知って自分のことも知らなきゃさ」
梓「……わかりました。じゃあ明日はどこに集合しますか?」
律「んー、そうだな」
律「あそこのマックにしよう」
梓「了解です」
律「梓は覚えてる?」
梓「なにをですか?」
律「去年の夏休み、あのマックで言った言葉」
梓「?」
律「『あの人はガサツでいいかげんだからパス』って」
梓「……あう」シュン
律「いや、怒ってるとかイヤミじゃないんだ」
律「ただ、そんなこと言ってた梓が私のことを好きだって言ったのがすごくおかしくてさ」
梓「あのときは、まだ律先輩の魅力を知らなかったんです……///」カアアア
律「なーるほど」
梓「と、とにかく明日は私、ガンバりますから!」
律「うん、私も明日、楽しみにしてるから」
次の日 マクドナルド前
律(梓のやつ、おそいな)
律(まあいいや、この時間を使って髪チェックしとこ)
律(……前髪、下ろしてみたけど梓のやつなんて言うかな?)
梓「せんぱーい」
律「お、梓。ようやく来たか」
梓「はい、すみません。昨日から服選んでたら……///」カアアア
律「どうした? 顔赤いぞ」
梓「い、いえ。律先輩が髪下ろしてたから……」
律「変かな?」
梓「全然!変じゃないです! すごく似合ってます?」
律「そ、そうか」
律「で、梓はどっか行きたいとこある?」
梓「えと……律先輩とならどこでもいいです」
律「嬉しいけど、それ困るな」
梓「すみません……」
律「まあいいや、どっかテキトーにブラブラしようぜ」
ギュッ
梓「り、律先輩!?」カアアア
律「なに顔赤くしてんだよ。デートなんだから手を繋ぐのは当たり前じゃん」
梓「デート……」
律「そ、デート」
梓「じゃあお言葉に甘えて、手をつながせてもらいます///」
律「うんうん。それっぽいじゃん。よし、出発しんこー」
梓「律先輩、今日は絶対この手離しませんからね」
律「メシどうすんだよ?」
梓「知りません!それより早く行きましょー!」
律「はいはい」
梓(いつかは本当に恋人としてこんな風に手をつないで二人で、律先輩と歩けたらいいな)
ギュッ
律「梓、手痛いぞ」
梓「私の愛が律先輩の手を強く握れって言ってるんですよ」
ギュウ!
終わり
最終更新:2010年08月30日 21:08