母「そろそろご飯よー」

唯「はーい」

母「ねえ、唯……」

唯「なぁにお母さん」

母「こんな時に言うのもなんだけど、行ってあげてよ……」

父「…」

唯「どこに?」

母「憂のお墓よ…」

唯「だからぁ~ういって誰?」

母「……唯の妹じゃない…」

唯「妹なんていないよ?」

母「うん……」


・・・・・

ある日のスタジオ

律「やっぱ一回やった曲だといい感じだなー!」

澪「律が走り気味なのは相変わらずだけどな…」

律「そ、そう?」

紬「唯ちゃんのボーカルもすっごくいい…」

梓「ですね……それは私も思います」

唯「そお?えへへ~…」

澪「うん!……憂ちゃんも喜んでくれると思う」

唯「うい……」

律「澪……」


本番が近づくにつれて、私はまた変な夢を見るようになった。


「ナイフ持ってるぞ!早く警察を…」


「お姉ちゃん、足が…痛くて」

「動かないで、今行くから」


これは……


「うそ…」

「おね…」


見たことある…

「お姉ちゃああん!!助けて!!!」

「…」

これは何?

「いたい!!!やめて!!」

「やあああああ!!!!」

女の子が刺される。

「いたい!!!やだぁ!!!」

そこにいる「私」は下を向いてる。

「ぉうぇ……おっ…っ……」

血まみれの女の子が倒れてる。

「おね…ちゃん…」

「…」

「ういぃ……うい………」

お父さんもお母さんも泣いてる。

「…」

そこにいる「私」は下を向いてる。

「…っ……」

親戚のおじさん、おばさん。
軽音部のみんなもいる。
みんな泣いてる。

私の知らない人の大きい写真が置いてある。

「唯ちゃん……気を落とさないで…」

「なんで?」

「大丈夫よ……憂ちゃんは唯ちゃんを見守ってくれてるから」

「どゆこと?」


「痛々しくて見てられないわ…」
「気の毒ね……」


「?」

「唯……もう唯は離さない……から…」

「お母さん?」

「ういっ……うい……っ…」

「お父さん…」

「唯……」

「なんで泣いてるの…?」

「ゆい……憂はもう……」

「……」


「みんな…?」

「唯……っ…ずっと一緒だから…」

「え?…う、うんっ」

「唯ちゃん……私たちもいるからっ…」

「ムギちゃん…」

「憂…」

「あずにゃん…」


そうだ……


死んだんだ……私の妹は、憂は、死んだんだね…



憂――


「お姉ちゃん!」




唯「憂っ!?」

唯「夢……」


憂は殺されたんだね……

いやだ……うそだ……


憂!!!


憂を探さないとっ!
憂はどこに…


母「唯!?こんな時間にどうしたの…」

唯「憂がいないのっ!!」

母「唯…」


唯「どこ!?どこにいるの!?」


母「…」

お母さん…?そこは物置で――

「お姉ちゃん」


ういっ!

憂!!私だよ!お姉ちゃんだよ!!


母「唯……お仏壇…壊れちゃうわ…」


憂!なんで…

なんでずっと笑ってるの!!?


憂!?


憂!!返事してよお!!憂!!!


母「もうやめて…唯…」

父「どうしたんだ…」

憂!!!


なんでようい!!!!

どうしてっ………


待ってよ………


母「唯……」



憂には……もう…会えないんだね……


いやだ…やだ……


いやぁ…


そうだ


今会いに行くようい


「唯!!!」


簡単だったんだ


「唯!!やめなさい!!」


離して、お父さん


「目を覚ませっ!!!」


いたい……


「なんで分かってくれないの唯…!」


お母さん…?


「唯……もうやめてよ…」


分からないの…


「憂はもういないんだよ」



・・・・・

しばらく経った日の朝


母「今日は本番なのよね?」

唯「そだよ~」

父「ごめんな……見にいけないんだ」

唯「いいよお!全然へーき!!」

母「大丈夫?」

唯「ばっちりだよっ!」


お父さんとお母さんにも見せてあげたかった、聞かせてあげたかったけど。

今、一番に聞かせてあげたいのは、憂なんだ。私の想いを。


母「やっと前に進めそうね」

唯「ずっと進んでたよ~?」

母「ふふっ、そうかもね」

唯「変なお母さん」


初めて憂のお墓に来た。私はもう逃げないって決めたから。
憂が死んじゃったのは事実で、それはもう変えられないから。

もちろんあの記憶は忘れられない。絶対に忘れられない。

そして多分、憂は私を許してくれない。
だってあんなに酷いことをしたんだから。

でも、だから、何もしない、っていうのはやっぱり 逃げ だと思った。
今私ができる精一杯のことをして、精一杯生きていく。

それが憂へのお供物で、私から憂へのお礼になればいいなぁ…って。


憂―

ごめんなさい。

そして、何度お礼しても足りないぐらい、感謝してます。
これから憂へのお礼を私なりの方法で贈ります。


自分勝手だよね。わがままだよね。


そう思われてもしょうがないのは承知です。
でも、もしよかったら聞いてくれるとうれしいなぁ…


唯「…よし」

母「じゃあ、頑張ってきなさい!」

唯「うんっ!!」


私のせいで、殆ど無くなってしまった、憂が生きていた証。

憂はどんな想いで私を見ていたんだろう。



「それでは最後の曲。聞いてください!」


分かってた

最初からわかってたんだよ、私

自分の気持ちにふたをして逃げていただけで

澪ちゃんは分かってくれてた


そしてこれは紛れもなく、憂のために作った詞

憂のために考えた詞、憂への感謝をこめて作った詞だったんだ


「U&I!」


キミがいないと 何も できないよ

キミのごはんが 食べたいよ

もし キミが 帰ってきたら とびきりの笑顔で 抱きつくよ

キミがいないと 謝れないよ

キミの声が 聞きたいよ

キミの笑顔が見れれば それだけで いいんだよ

キミがそばにいることを 当たり前に思ってた

こんな日々が ずっとずっと 続くんだと思ってたよ

ごめん 今は 気づいたよ

当たり前じゃないことに

まずは君に 伝えなくちゃ

ありがとうを


君の胸に 届くかな

今は自信 無いけれど

笑わないで

どうか聞いて

想いを歌に込めたから

ありったけの ありがとう

歌に のせて 届けたい

この気持ちは ずっとずっと

忘れないよ

想いよ 届け




おわり



最終更新:2011年10月18日 15:56