和「スクリュードライバーよ」

唯「すくりゅーどらいばあ?」

和「男が女の子を落とすのによく使うお酒よ。唯が私に飲ませたのがまさにそれだったの」

和「口あたりはいいんだけど、なかなかアルコール度数は高くてね……ぐふふ」

唯「息くさっ」

和「はぁ~」

唯「ゲホッ、ゲホッ……」

和「まさか唯はなにも知らずに私にそのカクテルを飲ませたの?」

唯「カクテキだかなんだか知らないけど、知らなかったよ」

和「天然で私を落とそうとするなんて……恐ろしい子……ふふ」

唯「眠りには落とそうとしたけど、まさかこんなことになるなんて……」

和「唯、せっかくだしお酒の勢いにまかせてこのまま……」

唯「わ、わ、ダメだよ! 絶対にダメ!」

和「唯……はあ~」

唯「ゲホッ……ゲホッゲホッ……だから、酒臭いよ!」

和「ねえ、唯。私、最近生徒会で疲れてるの」

唯「和ちゃん……」

和「行事がたくさんあって、私もその関係ですごく忙しいの」

唯「大変だね」

和「だから行事で疲労のたまった私を情事で癒して!」

唯「うまくないし、顔近いよ!」

和「どうして、唯は納得してくれないの?ねえ、どうして?」

唯「お酒の勢いにまかせたらダメだからだよ」

和「あ、もしかしてまだいちごのこと怒ってる?」

唯「ほんの数分前までは怒ってたけど、今はもうどうでもいいよ!」

和「はあはあ……ねえ、唯、もう我慢できなくなってきちゃった……どうしよ……?」

唯「知らないよ! はなしてよ!」

和「もう、お互い処女どうし、一緒に処女を散らせましょ?」

唯「なっ……わたしのいちごに続き、さくらんぼまで奪う気なの!?」

和「あなたーとわーたし、さくらんぼー」

唯「いやああああ」

和「大丈夫よ。優しくするから……ね?」

唯「……うっ」

和「ねえ、唯……」

唯「ストップ! ストップだよ、和ちゃん!」

和「なによ?」

唯「わたしと和ちゃんは宿題をやるはずだったんだよ!?」

和「ほっときなさい。宿題なんてあとでいくらでも見せてあげるから。まずは私を見て……」

唯「脱がないでよ」

和「じゃあ脱がせよ」

唯「いやああああああ」

唯「待って! 待つんだよ、和ちゃん」

和「アンタ、どれだけ私を焦らす気なの?」

唯「だからちがうっ。宿題だよ」

和「宿題?」

唯「わたしたちは宿題をやるはずだったんだよ?」

和「うるさいわね」

唯「わたしが解けない問題があるの」

唯「しーいずくれいじーあばうと……ってなに?」

和「クレイジーなのは私だから安心して」

唯「もうやだこの人」

和「一つ聞いていい?」

唯「なあに、わたしに馬乗り状態の和ちゃん」

和「私のこと嫌い?」

唯「嫌いじゃないよ。好きだよ」

和「じゃあなんでダメなのよ? 私をもてあそんで楽しいの?」

唯「全然、そんな気ないよ」

和「…………寂しいわね」

唯「……え?」

和「ほんとっ……中学の頃は二人でベタベタしてたのに」

唯「ベタベタまではしてないと思うけど」

和「高校に入るまでは、金魚のフンみたいに私についてきたのに」


和「気づいたら、なんだか成長しちゃってるし」

唯「そう、かな?」

和「自覚はないの?」

唯「人に言われても全然わかんないや」

和「……そう。唯は成長したわよ。私が言うんだもの。間違いないわ」

唯「……和ちゃん」

和「それに、大学は行くところちがうし」

唯「和ちゃんは国公立だっけ?」

和「うん。やっぱり今の時代はいい学校行っといたほうがいいから」

唯「そっか」

和「幼稚園から高校までずっと一緒だったのにね。ここにきて、お別れなんて……」

唯「お別れじゃないよ。わたしと和ちゃんの家はすぐ側だし……」

和「そんなこと知ってるわよ。知ってる。けれど……」

唯「けれど?」

和「やっぱり寂しいものは寂しいのよ」

唯「わたしも、寂しいかな……」

和「うん、寂しいからさ……」

和「せめて今のうちに肉体関係だけでも築いておくべきよね?」

唯「あの、空気読んで和ちゃん。KYすぎるよ」

和「アンタは知らないだろうけどKYっていうのは本来は『空気読め』って意味なのよ」

和「今じゃ意味が変わって『空気読めない』に変化してるけど」

唯「たしかに知らなかったよ」

和「でしょ? だから私たちの関係も変わりきってしまう前に、ね?」

唯「だから無理やりでもそうやってそっちに結びつけないでよ」

和「嫌なの?」

唯「嫌だよ」

唯「こ、こうなったら」

和「こうなったら?」

唯「憂に言いつけるよ?」

和「言ってみれば?」

唯「ふん、いいもん……あ、もしもし憂?」

憂『もしもし、どうしたのお姉ちゃん?』

唯「実はね」

憂『うん』

唯「和ちゃんにわたし、襲われそうなんだよ」

憂『いいんじゃない?』

唯「え? いいんじゃない? いやいやよくないよ」

憂『だって教わるんでしょ?』

唯「ちがうよ。教わるんじゃなくて襲われるんだよ!」

憂『だから、和さんから教われるんでしょ? いいことだよ』

唯「あのー……憂?」

憂『お姉ちゃんの胸のいちごも和さんに取られないようにね』

唯「え?」

憂『バイバイ、頑張ってねー』

ぷちっ

唯「…………」

和「話は終わった?」

唯「どうなってるの? 憂にわたしの話が通じないなんて……」

和「まあつまりそういうことよね」

唯「どういうこと? さっきからわたしのお尻を撫で回している和ちゃん」

和「こんな言葉を知ってる?」

唯「知らないよ。ていうか今日の和ちゃん、知ってる、言いすぎだよ」

和「まあまあ。将を射んと欲すればまず馬を射よ、って」

唯「ええと、つまり?」

和「憂はもう私にメロメロなの」

唯「妹が寝取られてた……」

和「まあまだ最近、二年前のことよ」

唯「まだ憂中学生だよ!」

和「ちなみに憂は私と二人きりのときは『和ちゃん(はーと)』って私のこと呼ぶの」

唯「へ、へえ」

和「って言ってももとは憂がいけないのよ。私は唯にずっと前から惹かれてたのに」

唯「わたしも和ちゃのことをもっと知っておけば、引いてたよ」

和「二年前、私、唯が部活でいないときに唯の家に行ったの」

和「憂ったら私が生徒会のことでカリカリしてたらね、気をつかって、ジュースを出してくれたの」

唯「まさかそれがお酒だったとか?」

和「そのときは酎ハイだったわね。憂ったらミスしたのかしら……とにかく私、それを飲んだの」

唯「そ、それで?」

和「酒のせいで記憶にはないけど、意識が戻ったあと、憂が『すごかった……』って」

唯「す、すごかった……?」

和「それ以来、私たちはまあ色々と色々なことをしたわ。聞く? 聞きたい?」

唯「聞きたくない」

和「そう、残念。それにしても……将を射んと欲すればまず馬を射よ、なんて言うけど普通に将を射ればいい話よね」

唯「一人で納得しないでよ!」

和「まあ、いいわ。唯、続きをしましょ」

唯「あの、和ちゃん? なにをする気かな?」

和「つ・づ・き」

唯「いやああああ」

唯「くれいじーだよ! 和ちゃんがお酒でくれいじーになっちゃったよ!」

和「唯もCrazyにしてあげる」

唯「いやあああ脱がさないでええ」

和「あら、かわいらしいいちごさんがあるわね」

唯「おーのー!」

和「安心して。綺麗に摘み取ってあげるから」

唯「うーいー助けてぇ!」

和「助けはこないわよ! 朝までたっぷり楽しみましょ」

唯「いやああああ」

和「安心して、私が唯を気持ちよくしてあげるから」

唯「がうっ! がうっ! がううっ!」

和「そんなさかりのついたオス犬みたいにがっつかないで」

唯「ちーがううっ!」

和「大丈夫よ。気持ちよーくしてあげる。快楽で天国にまで導いてあげる」








憂「じゃあお姉ちゃんが天国に行ったら、次は私が和さんを天国に導きますね」

和「え?」


10分後

和「」ピクピク

唯「ええと……どうなってるの?」

憂「お姉ちゃんの電話でいやな予感がしたから駆け付けたんだよ」

唯「…………」

憂「どうしたの?」

唯「いや、その……和ちゃんが言ってたんだけど……憂と和ちゃんが肉体関係を持ってる、って」

憂「それ嘘だから安心して」

唯「そうなの?」

憂「たしかに二年前ぐらいに和さんにお酒を飲ませちゃって暴走させたけどね」

憂「べつに変なことしてないしされてないから」

唯「ほ、ホントに?」

憂「…………」

唯「憂?」

憂「…………///」

唯「憂……?」

憂「お、お姉ちゃんこそ、なんともない?」

唯「まあおかげさまで」

憂「よかったー」

唯「……憂」

憂「なあに、お姉ちゃん?」

唯「これからは宿題はきちんとやるよ」

憂「お姉ちゃんも、受験生だもんね。頑張ってね」

唯「うん」

唯「しーいずくれいじーあばうと……ああ、そういう意味なのかな」

憂「?」

唯「なんにも」



次の日

唯「和ちゃん、体の調子はどう?なんともない?」

和「うん、少し体が痛いし、昨日の唯の部屋にいた頃からの記憶がないけど問題ないわ」

唯「よかった」

和「ところで、唯は英語の宿題はできたの?」

唯「うん! きちんと『くれいじーあばうと』を使って文を作れたよ」

和「どれどれ……」



唯の答え

NodoKa is crazy about お酒.

――――――――――――――――――――

和「…………」

唯「どう? 使い方あってる?」

和「……どういう訳よ、これ? ていうかなんでお酒は日本語のままなのよ?」

唯「お酒って単語が出てこなかったもん。あ、ちなみに訳は」

唯「和ちゃんはお酒で狂ってしまった、だよ。どう、正解?」

和「失礼な上に訳も間違ってる。まあきちんと訳したら余計に私に対して失礼だけど」

唯「えー? ちがうの? じゃあ答えはなあに?」

和「そうね……」


和「Yui is crazy about ice cream」

和「……ってとこかしらね?」

唯「わたし、アイス食べても狂わないよ?」

和「……唯、勉強しなさい。そして正しい答えを見つけなさい」

唯「うぅ~、まあ、ガンバるよ」

和「あ、なんなら私が勉強教えてあげるわよ?」

唯「それはいいです」

和「どうして?」

唯「トラウマが……じゃなくて、和ちゃんに頼らなくてもわたしはできるってことを証明するためだよ」

和「そう?」

唯「もう絶対に二度と和ちゃんには勉強は教えてもらわないからね!」




おわり!



最終更新:2010年09月11日 20:38