さわ子「お邪魔しまーす。・・・あれ、梓ちゃんは?」

唯「寝てるよ」 

さわ子「寝てるって。一応部活中なんだから、それはどうなのよ。・・・で、私のお茶は?」

紬「あ、はい。今すぐに♪」 ぱたぱた

律「突っ込む気にもなれん」

紬「お待たせしました」

さわ子「ありがとう。・・・って、椅子が無いじゃない」

律「壊れたんだよ。組み立てれば、元に戻るとは思うんだけど」

さわ子「私はここへ、くつろぎに来てるのよ。それなのに椅子が無いって、一体どういう訳?」

律「ややこしい人だな、全く。おい誰か、席を譲ってやってくれ」

唯「はーい。さわ子さん、ここ空いてるよ」

さわ子「・・・なんだか、すごい嫌な気分になるんだけど」

律「これからは、優先席って書いとくか?だははー♪」

さわ子「デコッパチ、お前は今から空気椅子だ」


律「あー、ひどい目に遭った」

澪「自業自得だろ。良いから、私の膝に座れよ」 さりげなく

律「ありがてー、ありがてー。澪様、ありがてー」

澪「怖いから止めてくれ」

律「じゃ、足揉んで」

澪「全然態度が逆じゃないか。・・・今日は特別だからな」 ぐふ、ぐふ

律「やりー♪」

紬「うふふ♪」 ぱしゃっ


律「しゃーない。やっぱり椅子を直すか。部品は全部あるんだし、なんとかなるだろ」

澪「私は自信無いぞ」

律「だからって梓が起きてくれば、また椅子は足りなくなるからな。いつまでも、膝の上って訳にも行かないし」

澪「それはそれで、別に」 ごにょごにょ


紬「唯ちゃん、これなに?」

唯「マイナスドライバーだよ。マスドライバーじゃないよ、マイナスドライバーだよ」

紬「うわー♪レールガンはやっぱり佐天さん最高♪」


律「もはや原型なしだな」


律「えーと、これをはめて。これで止めるのか?」

澪「だったら、これはどこに使うんだ」

律「脚が固定出来れば、なんだって良いんだよ。・・・やっぱり、全然分からん」

澪「別な椅子を解体するとか言うなよ。本当に椅子が無くなるぞ」

唯「その時は、全員ソファーに座れば良いんじゃ無い?」

律「でもそれって、狭くないか?」

紬(むしろ、GJ♪)

澪(ありがてー、ありがてー。唯様、ありがてー)


澪「取りあえず、この椅子を参考にしてみるか」

紬「ここを外せば良いのね」

律「つまり、その逆の手順なんだけどな。一度失敗してるから、今度は慎重にと」

紬(りっちゃん。もう頑張らなくて良いのよ)

澪(律。お前は良くやったよ。後は私達に任せて、ゆっくり休め)

唯「あずにゃん、起きてこないね」

律「こっちは良いから、唯は梓を見てやってくれ」

唯「本当に大丈夫?」

律「いや。結構自信無い」 あせあせ

紬(うわぉっ♪)

澪(おっしゃーっ)

唯「あずにゃん。また一つ、椅子が消えていくよ。この先世界から、一体幾つの椅子が消えて無くなるんだろうね」 つんつん

梓「・・・何の話ですか、一体」 むくり

唯「わっ。お、起きてたの」

梓(あの雰囲気で、寝てられる訳が無い)

唯「椅子が全部無くなったら、このソファーに5人掛けだよ。ちょっと狭いけどね」

梓(ばっちこーい♪)


律「だーっ」 どたっ

唯「あ、りっちゃん。椅子はどうだった?やっぱり、失敗?」

律「やっぱりって言うな。最後の一つをバラしたところで、ようやく構造が理解出来た。どうにか全部直したよ」

唯「おお、さすがりっちゃん。今日は一段と輝いて見えるよ♪」

律「おでこが、とか言うんじゃないだろうな」

唯「また、そんな事言ってー♪」

澪(空気読めよ、デコ)

紬(磨いて、磨いて、磨いて、磨いて、磨いて)

梓(でも結局すごいよな、律先輩は。デコッパチだけど)

唯「だったら最後に、5人でソファーに座らない?」

律「いや、絶対に狭いし。そもそも、座れるか?」

唯「やってみないと分からないよ。ね、ムギちゃん♪」

紬「そ、そうね。まあ、最後だから。ね、澪ちゃん♪」

澪「みんなが言うなら、仕方ないか。な、梓♪」

梓「今日だけですよ、もう♪」

紬・澪・梓(神はいた♪)

唯「・・・やっぱり狭いね」

律「隙間無いぞ、これ。澪、お前太ったんじゃないのか」

澪「なっ。それはお前の事だろ♪」

紬「と、とにかくこれは、苦しいわねー♪」

梓「私の入る隙は無さそうですね。えへへ・・・」 しゅん


唯「あずにゃん、あずにゃん♪」 ちょいちょい

律「あーずさ♪」 ちょいちょい

澪「梓♪」 ちょいちょい

紬「梓ちゃん♪」 ちぃちょい

梓「え、あの。えと、その」

紬「えいっ」 ひょいっ

梓「えっ?」 ふわふわっ

梓「・・・なんですか、これは」 

唯「特等席だよ」

梓「座ってるんじゃなくて、皆さんの上に寝そべってるだけです」

律「まあまあ。たまにはこういうのも良いだろ」 撫で撫で

梓「今日だけですよ、もう♪」

澪「確かに、たまには良いのかもな」 撫で撫で

梓「もう、澪先輩まで♪」

紬「あら、私は毎日でも構わないわよ♪」 さすり、さすり

梓「あん♪紬先輩♪」


 夜・平沢家リビング

唯「・・・って事があったんだ」

憂「椅子かー。みんなの膝に座るのは、ちょっと面白そうだね」

唯「ちょっと変かなって、思わなくもなかったけどね」

憂「そんな事無いよ。軽音部のみんなが仲良しで信頼しあってるから、そういう事も出来るんだよ」

唯「やっぱり?憂は私達の事、良く見てくれてるね」

憂「だって私は、みんなの事大好きだもの。勿論、お姉ちゃんは一番に♪」

唯「ういー♪」

憂「お姉ちゃん♪」



 翌朝・教室

唯「という訳で昨日は、憂に膝枕してもらいました」

和「微妙にずれてるし、むしろ唯がしなさいよ」

唯「たはは、つい」

和「それにしても、膝の上ね」

唯「和ちゃん、私の膝に乗ってみる?」

和「ここで?」

唯「変かな?」

和「考えた事も無いわ」 ひょい


律「おーっす。って、なにやってんだ」

澪「うわっ」

紬「うふふ♪」

唯「結構これって、癖になるね」 きゅーっ

和「唯、辛くない?」

唯「全然平気。この先もずっと、こうしていたいくらいだよ」

律「それは無理だろ」

和「誰が決めたのよ、それ」 ぎらっ

和「ありがとう、唯。もう良いわよ」 ひょい

唯「どう致しまして」 ぺこり

和「次は唯が座ってみる?」 ぽんぽん

唯「じゃ、お言葉に甘えて」 ひょい

和「こうしてると、昔を思い出すわね」 きゅっ

唯「いつまでも、ずっとこうしていられると良いね」 

和「何当たり前の事言ってるのよ、唯は♪」

唯「てへへー♪」

律「あーあ、見てられん」

紬(りっちゃん。ここはむしろ、ガン見の場面よ♪)



 放課後・軽音部部室

梓「済みません、遅れました」

律「おー、来たな」

梓「椅子は・・・、全部ありますね」

唯「あずにゃん、あずにゃん」

梓「はい?」

唯「ほら、あずにゃん♪」 ぽんぽん

梓「椅子はあるんですから、もう座りませんよ」

律・澪・紬「ほら、ほら♪」 ぽんぽん


梓「皆さん、一体何言ってるんですか」

唯「良いから、良いから。あずにゃん。ほら、早くー♪」 ぽんぽん


梓「・・・もう、今日だけですよ♪」



                                 終わり



最終更新:2010年09月12日 00:14