第2.5部

「ねえ、キョン!あたしたちが夏に遊び呆けてる間に不思議が起こったみたいよ!」

遊び呆けるとはなんだ。お前が誘ったから遊んでいたのであって呆けるために遊んだのではない。

「どうせ、呆けてるだけの夏休みなんだから関係ないじゃない」

まったくもって気に食わないやつだ。実際そうなのだから言い返せないのだがな。

「その不思議とは、一体なんのことでしょうか?」

調子に乗らせるなサイキックニヤケめ。お前のせいで毎回毎回こいつは暴れやすくなるのだ。

「聞きたい!?」

聞きたくない

「あんたには聞いてないわよ」

「涼宮さん、不思議なことってなんなんですかぁ?」

オー、マイエンジェル朝比奈、あなたの純真無垢なお声をこの傍若無人人間に聞かせる必要などないのですよ!

「みくるちゃん、これよ!」

新聞を広げるのはいいが俺に近すぎてなにも読めんぞ。

「あら、読まないんじゃなかったの?」

言葉のあやだ。

ハルヒの持っていたスポーツ新聞にはでかでかと女子高生遭難救助の文字が躍る。


女子高生遭難も五名全員無事。

XX県Y市の海岸で起きた局地的な津波で行方不明になっていた女子高生ら五人が昨日未明救助された。
五人は同じ高校に通う生徒で、部活動の先輩と後輩の関係である。
この海難事故は奇跡的に五人が同じ島(19xx年より無人)に漂着し、厳しい島内の自然環境の中で生存というかつて類を見ないものである。
女子高生らは「体がおぼえていました」などと多少動揺した発言をしているものの健康体。
昨日中に全員が健康診断を受けて、本日中には退院の見込み。


記事を読み終えると、古泉がこちらを見てニヤける。こっちを見るな。
そこで長門が本を閉じ、今日の活動もつつがなく終わった。
帰り道、団長は朝比奈さんにに熱心にサバイバルの極意を伝えていた。

「これは僕も予想外でした。まさか涼宮さんが人助けを並行していたとは」

新聞を片手に古泉が話しかける。

「もしかして、終わらない夏休みが女子高生を救ったてのか?」

「ええ、おそらくそうでしょう。無意識化でのきゅうさいですかね」

「んな、あほなことが……」

俺は援軍がほしくて、長門のほうに目をやる。

「……彼女たちが助かるのは今回が初めて、一回目で夏が終われば死んでいた」

長門、お前もか。

終わらない夏休みが救った命もある。そう考えると俺も呆けていたわけではないだろう。
顔も見たことのない赤の他人だが、あんたたちの健闘を称えるよ、女子高生。
救済か。恩を着せる気はないが、その事実を知って、このくだらない坂道もなんだか愛らしく見えてきた。





最終更新:2010年09月12日 22:05