文芸部室
ニキビ女「どう考えてもあのカップリング最高でしょー」
デブ女「いやいやそれは邪道だよー」
ニキビ女「ねえ?秋山さんはどう思う?」
澪「え…(よくわからないよ…)」
私は
秋山澪、文芸部に入った事を後悔しています
こんな事なら律の言うとおり軽音部に入っておけばよかったかな・・・
澪「あ…律、今日はいっしょに帰らない?」
私は今日部活を休もうと思いました
なんだか思っていたものと違ってたから…
律「ごめん澪!今日は軽音部の皆と楽器選びに行くんだ♪」
律はいつも軽音部のことで忙しいみたいです
私と居るときもいつも楽しそうに軽音部の話ばかりします
律「あ、よかったら澪も来くるかー?」ニコニコ
律はとても優しいです、私みたいな裏切り者でも昔と変わらず接してくれます
でも私は人見知りなので軽音部の人達と遊びに行くなんて想像もつきません
澪「あ…いいよ、誘ってくれて悪いけど…」
律「そっか…」
唯「りっちゃーん♪部活いこー♪」
どうやら軽音部の友達が律を迎えに来たようです
律「あっそれじゃな澪ーまた明日ー」
澪「うん…」
私も仕方ないので文芸部へ向かう事にしました
澪「こんにちは…」
デブ女「澪ちゃん、遅刻よ!罰金!」
ニキビ女「ギャーハハハッ」
澪「…」
何かのアニメの真似なのでしょうか
私にはよくわかりません
私は席に着くと小説の続きを考える事にしました
地味で人見知りな女の子と誰にでも優しくて活発な男の子の恋愛物語です
デブ女「澪ちゃん何かいてるのー」バッ
澪「あっ!」
デブ女「えーどれどれ♪」
澪「か…かえしてください!」
中には恥ずかしいポエムなどが沢山書いてある
それを読まれたら末代までの恥だ
デブ女「君を見てるといつも私のハートがどきどきしちゃうの(笑)」
ニキビ女「ブッフォwwwwww」
澪「か…かえしてよぉ…」ワナワナ
デブ女「タイトル・ふわふわ時間wwwPN・プリンセス・サンジュwww」
ニキビ女「テラスイーツwwwwww」
澪「かえしてぇ…ねぇ…かえしてよぉ…」グズグズ
デブ女「いつも頑張ってる気味の横顔ずっと見てるけど気付かないね(笑)夢の中だったら二人の距離縮められるのにな(笑)」
ニキビ女「ちょwwwwwこれニコ動にうpしようぜwwwwww」
気が付けば私は泣きながら文芸部から飛び出していました
どうして軽音部に入らなかったんだろう…
後悔が胸をよぎります
もしあそこで律のいう通りにしていたら…
私にも律以外の友達が出来たのかもしれません…
どれだけ走ったでしょうか
気が付けば町の中を走っていました
ドンッ
?「きゃっ!」
澪「あ!大丈夫ですか?」オドオド
無我夢中で人とぶつかってしまいました
怖い人だったらどうしよう…
?「あー、確かりっちゃんのお友達だよね」
それは聞き覚えのある声でした
澪「たしか…平沢さん…?」
唯「うれしいなー名前知っててくれたんだー♪」
平沢唯、律の友達で同じ軽音部のメンバーです
彼女は無邪気な表情でえへへ笑いました
悪い人ではなさそうです
澪「うん、律からいつも話は聞いてたから…」
唯「秋山澪ちゃんだよね?」
澪「え?」
唯「りっちゃん部活だといつも澪ちゃんの自慢ばかりするんだー♪」
どうやら平沢さんはさっき軽音部と別れてきたそうです
そして律がいつも私の事をどう言ってるのかを教えてくれました
律「澪はさー、馬鹿な私をいつもやさしく面倒見てくれるんだー」
律「しかも最近文芸部で小説ってのを書いてるらしいんだ」
律「すげーよなー、かっこいいよなー!」
律「ほんとは澪を軽音部に入れたかったんだけど澪には自分のやりたい事をやってほしいんだ」
律「澪が頑張ってるんだ、私達も練習頑張ろうぜ!」
私は涙が溢れました
私は律が思っているようなかっこいい人間なんかじゃありません
文才もないし一人ぼっちだしずっと軽音部に入ればよかったと後悔しているような惨めな人間でした
澪「うぅぅ…律ぅ…」
唯「わわわっ澪ちゃんどうしたのー?」
突然泣き出す私に平沢さんは慌ててしまったようでした
澪「私は…そんなかっこいい人間なんかじゃないんだ…」ヒック
平沢さんもどうやら察してくれたようで
いままで見せていたおとぼけた表情ではなく
なんだか優しいお姉さんのような表情になりこちらに向かってきました
唯「お話聞かせてくれるかな…?」ギュウウゥゥ
不意に抱きしめられて驚きましたが
なんだかとても暖かくて安らかな気持ちになりました
私はいままでの事をあらいざらい話しました
唯「うん、大変だったんだね…うん」
平沢さんは自分の事のように話を聞いてくれました
唯「もしよかったらさ…軽音部に入らない?」
澪「え…」
軽音部への転部
私もそれは考えなかったわけではありません
でももう私の弾けるベースのポジションは埋まっているだろうし
いまさら律に軽音部に入りたいなんていえません
唯「あはは、そんな事かー」
澪「え?」
唯「大丈夫だよ、澪ちゃん」ニコッ
どういう事なのかわかりません
私は恐る恐る尋ねてみました
澪「ベースは誰かがもうやってるんじゃないですか…?」
唯「ううん、ベースは誰も居ないよー」
律から聞いた話と違います
部活は4人以上じゃないと認められないし
軽音部はドラム、ギター、キーボード、ベースで構成されていると聞きました
それなのにベースがいないとはどういう事なんでしょうか
唯「えへへー」
照れた口調で平沢さんが教えてくれました
どうやら律は自分を含めて3人しか部員が集められず、一度は軽音部をあきらめたようでした
でも文芸部で頑張る私を見て、このままバンドも組めずに廃部にしてなるものかと
いろいろ考えたそうです、その結果
唯「生徒会の和ちゃんの名前を借りたんだー♪」
とりあえず近いうちにベースを探し出すから、との事を条件に
生徒会の平沢さんの友達を説得して幽霊部員として入部させたようです
唯「だからベースは澪ちゃんしかいないよ!」
澪「でも…いまさら…律に顔向けなんてできないよ…」
いまさら入部しても律に迷惑をかけると思いました
最初に誘ってくれたのを断ったのは私だし
どこにいってもジャマ者な私みたいなのが入部したらきっと軽音部の人間関係を悪くします
せっかく律の作った部活を駄目にしたくないし
私はこれまでどおり文芸部で馬鹿にされながら小説を書くのがお似合いです
澪「だから…ごめんなさ
?「そんなわけないだろ澪ー!」
澪「え?」
いつも聞きなれた声、振り返ってみると律がいました
澪「律…」
律「澪が軽音部に入って悪い事なんてあるかよー!」
律「私だって本当は澪といっしょにバンドやりたかったよ! 」
澪「!」
律は胸の内を語りだしました
律「でも澪が文芸部で頑張るっていうから応援したんだ…」
律「本当は止めたかったさ…でも出来るわけないじゃないか親友を束縛するなんて…」
澪「律…」
こんなにまじめな律の姿を見るのは初めてかもしれません
律「だけど澪がもう疲れたって言うんなら…」
律「もし少しでも軽音部に入ってもいいかなって思うなら…」
律「私のために…」
律「軽音部のために力を貸してくれないか…」
澪「律ぅ…律ぅぅぅ…」グスッ
もう私の心に迷いはありませんでした
今日はなんだかよく涙が流れる日でした
1回目は悲しみの涙、2回目は悔しさの涙、
そして最後に幸せの涙…
私は律に抱きつきます、律もギュッとしてくれました
そういえばよく抱き合う日だったような気もします
唯「ありゃー、澪ちゃんとられちゃったかー…」
律「おーよしよし泣くなよ澪ー」
澪「だって嬉しいんだよ…しょうがないだろー?…」グスッ
律「なーに言ってんだよ、あのとき約束しただろー」
律「私がドラムで、澪がベースで、ずっとバンド組もうねって…」
澪「あれ…そうだったっけ…」
律「それでプロになったらギャラは7:3ねって」
澪「捏造するな!!」
ゴンッ
律「あいたっ!」
唯「あっははははは、りっちゃうおかしー」
律「うるせー」
つい自然に手が出てしまう、こんな絡みをするのは久々だ
たぶん律の奴が私を元気付けるためにわざとおちゃらけてくれたのだろう
私も自然と微笑が溢れた
余談だけれど律が何故ここに来たのかというと平沢さんがおっちょこちょいでギターを買ったくせにそのまま店に忘れて帰ったから届けに来たらしい
さっきまでお姉さんのような態度だったのに買って早々忘れてしまうドジな平沢さんの態度がまた面白くて3人で笑いあった
私が始めて高校で友達が出来た瞬間だった
数日後
私は軽音部にいます。
文芸部をやめるというときはとてもとてもこわかったけれど
律たちが応援してくれたから、私は勇気を出せました
律「澪ー、この前書くっていってた歌詞どうなったー?」
澪「うん、書けたよ」ピラッ
私は最高の力作を律に見せ付けてあげました
文芸部上がりの私の実力を見たら腰を抜かすに違いありません
律「きみを見てるといつもハートDOKDOKI…」
律「ぶっふぉwwwww」
澪「あー!笑うなー」
律「あははは、ごめんごめんだって澪がこんなかわいらしい歌詞かくなんて思わなかったからさーww」
律の奴も私の歌詞を笑いましたが文芸部と違いとてもとても優しさのある笑い方だと思いました。なので私は悲しくありません
唯「みせてみせてー」
律「ほれっ」
唯「すごい、いい歌詞だ!!」
律「マジかよ!?」
紬「皆さん、お茶が入りましたよー」
澪「ちょっと待て練習は!?」
律「しょうがないなーちょっとだけやるか」
澪「まったく…」クスッ
私は軽音部に入れて本当に幸せだと思います
文芸部と比べてとても充実していて今じゃ友達も出来ました
本当に律と友達でよかったです
律「よしじゃあいくぜ、ふわふわ時間だ!」
これからもきっと私達のふわふわ時間は続くと思います。
おしまい!
私は必死にそれを取り戻そうと抗っていた
無駄な努力だったけど…
デブ女「これからもきっと私達のふわふわ時間は続くと思います。wwww」
ニキビ女「なんなのこれwwww澪さんの妄想パネェっすwwww」
澪「…」
その通り
全部私の妄想だ、稚拙な文章ととってつけたようなハッピーエンド
誰も感動しない茶番でしかない物語だ
ブス女「そもそも律って田井中さんの事でしょwwww」
ニキビ女「もうとっくに澪さんの事なんて忘れてるっしょww」
ブス女「別に文芸部やめてもいいよwwwどうせあんたみたいなのどこも入れてもらえないと思うからさwww」
現実にはこんな仲間や親友なんてそうそういないもんだ
こうやって脳内で妄想するのが関の山
でも…もしあの時軽音部に入部していれば変わったのだろうか
後悔しても仕方がなかった
明日もあさっても明々後日も私はきっと文芸部に足を向けるのだろう
私はPNプリンセス・サンジュ…文芸部の道化なんだから…
おしまい
最終更新:2009年12月09日 01:13