純「すべての作品でゴーレムを作ったのは、その方が真実を隠していられるし、怪しまれないと思ったから」
純「卒業恐怖症の唯先輩だけ出てきたら、『なぜこの唯先輩だけ?』という話になる」
純「考えて行くうちに私に行きつく可能性もあったし、余計なことを考えてもらっちゃ面倒だから」
憂「……そして、思惑通り梓ちゃんが素直になったから、こうして真実を告げた、ってこと?」
純「あと、澪先輩と、唯先輩もだよ」
純「昨日、お姉ちゃんからなんか言われなかったかしらん?」
憂「……えへへ、まあね」
純「唯先輩、けっこう嫉妬してたでしょ」
純「嫉妬って、自分のものにしたいっていう欲求だからね。それが強まるほど」
純「自然とああいう展開になるもんだよ」
憂「そっか……」
憂「お姉ちゃんたち、これからどうなるの?」
純「そりゃ当然、ここに戻ってもらうよ」
純「役目はもう終わったからね」
憂「……でも、こうして生を受けたのに」
純「生きてなんかないよ。ただの動く人形。成長も老化もせず、動いているだけ。忘れないで」
憂「そんな言い方っ!」
純「目の奥にはカメラ、耳の奥にはマイク」グリッ
憂「何するの! やめてっ……」
純「思考はコンピュータ……それにっ」ブチィッ
純「血だって流れてない」プラン
憂「……っ」
純「お姉ちゃんだあずにゃんだと言っても」ブラブラ
純「結局はただの人形なんだから」
憂「……ひどい」
純「そうかもね。でも、これが事実なんだから」ポイッ
純「たくさんのお姉ちゃんがいたことは、夢として忘れようね」
唯「うい? 今なんかすごい音がしたけど……」
純「終わり」ポン
唯「どう……」グラッ
唯「」ドサッ
憂「おね、ちゃ……」
純「……お別れしよう、憂」
憂「ひどいよ、純ちゃん……」ウルッ
憂「なんで、こんな幕切れなの……?」
純「……ごめん。でも、早いうちのほうがいいから」
憂「うわああああっ!! 嫌だ、いやだあっ!!」ブルブル
唯「どうしたの、憂!?」
唯「大丈夫!?」ポン
純「終わり」
唯「ういっ……」ドサッ
唯「何があったの、」ポン
純「終わり」
唯「憂……」バタッ
憂「ああ……ああ……」
憂「純ちゃん……こんな、ことして……許さないよ……」
純「……」スタスタ
唯「……呆れたものね」
純「……」ポン
唯「クライアントが誰かは知らないけど、あなたの方にも協力するメリットってものがあったはずじゃない」
唯「……大好きな友達に嫌われちゃうけど、いいの?」
純「ただでさえあれなのに、私まで首を突っ込んだら余計にややこしくなりますから……」
純「早いうちの方が、いいです」
唯「そう……」
純「……終わり」
――――
梓「すごいなぁ……ほんとに唯先輩にしか見えない」
梓「……」サワサワ
梓「……」チュッ
唯「あずにゃん、何してるの?」グイッ
梓「めきゃんっ!!」ビクゥン
梓「ゆ、ゆ唯先輩、こ、これはそのっ!!」アタフタ
唯「帰るよ」
梓「えっ……」
唯「帰るよ、あずにゃん。すぐに」
梓「あ、はい……」
帰り道
憂「……」
梓「……えっと、あの。私はこっちですので」
憂「うん……」
梓「あのさ、憂……こう言ったらむかつくかもしれないけど」
梓「気を落とさないで。これが、もとの形なんだから」
憂「……そんなの、わかってる」
唯「……またね、あずにゃん」
梓「はい、さよなら……」
憂「……」
唯「……」
唯「……憂、こんな風に言ったら、他の唯ちゃんたちに悪いけどさ」
唯「ちゃんと、私はいるからね?」
憂「……うん、ありがとう……」
唯「……」
憂「ううっ……」ウルッ
唯「憂、泣いちゃだめ」ギュッ
憂「うう、くっ……!」ギュウゥ
唯「大変だったけど、楽しかったよね。絶対忘れないようにしよう?」
憂「うんっ、うんっ……わすれない……!」
唯「っ……」ギュッ
平沢家
憂「ただいま……」
シーン……
唯「おかえり、憂」
憂「……うん」
居間
憂「あ……赤ん坊」
唯「動かないね……」
憂「……遠隔操作ができるって言ってたから。たぶん、動きを止めさせてるんだと思う」
憂「……ひどいな。ここまでするんだ、純ちゃん」
唯「……純ちゃんに返した方がいいかな?」
憂「そうだね……盗聴器だって入ってるし」
唯「私が行ってくるよ」
憂「……だめ」ギュ
唯「憂……」
憂「一緒に行きたい。一人になるのは、いや……」
唯「……わかった。それじゃ」
ピンポーン
唯「……こんな時に、誰だろう」
純「ガチャ」
純「私です」
憂「……」キッ
純「うおっ! そう怖い顔なさんなってぇ」
純「忘れ物、取りに来ただけだから」
唯「……忘れ物。この子のことなの?」
純「そうですそうです、返してくれますか?」
唯「……勝手に連れてって」
純「そうですか? じゃあ遠慮なく」スッ
純「それじゃ月曜日、学校でね、憂!」
バタン
憂「……なんなの? おかしいよ、こんなの」
憂「純ちゃん、あんな子じゃなかったのに……」
唯「……私には、分かんないよ」
憂「……お姉ちゃん、私……紬さんに会いたい」
唯「えっ……?」
憂「唯さんも言ってた。純ちゃんにはクライアントがいる」
憂「それも、あんなそっくりの人形を作れるほどの資金力を持っている、だよ」
唯「それがムギちゃんだっていうの?」
憂「可能性だよ、あくまで」
唯「……わかった。電話してみるよ」
プルルルルッ プルルルルッ
プルルルルッ……
唯「……出てくれないや」
憂「……っ」
唯「憂、ムギちゃんはきっと忙しいだけで」
憂「……そうだよね。紬さんがこんなことに手を貸すわけないよね」
唯「うん、うん……きっと、そうだよ」
憂「……そろそろ、おなか減ったね。お昼ご飯作るよ」フラッ
唯「よろしくね、憂……」
憂「うん……」
唯「あ……て、手伝うよ! 無理しないで憂!」
憂「いいから。お姉ちゃんはごろごろしてていいよ」
唯「うう……」ウズッ
憂「動いちゃダメ……」スラッ
唯「憂、なにするの……?」
憂「なにって、お料理を」
ボー
唯「ほんとに……? いつも先にまな板濡らすよね……?」
憂「……忘れてただけだよ」ジャー
唯「憂、やっぱり私手伝うよ」
憂「いいから」
唯「だめ。手伝わせてくんないと怒るよ?」
憂「……わかったよ」
唯「野菜切るのは、私に任せてね」
憂「大丈夫、お姉ちゃん?」
唯「私だって、毎日お料理してる憂を見てきたんだから!」ザクザク
憂「あっ、ほんとだ! すごいお姉ちゃん!」
唯「へへー」ザクザク
憂「ちゃ、ちゃんと手元見て!」
唯「ほいほいっ」ザクン
唯「あっ」ジワー
憂「お姉ちゃん! もう、しっかり見てないから……」
憂(血だ……)
唯「ご、ごめんなせえ……」
憂「ちょっと貸して」グッ
唯「あっ、憂?」
憂「ん……」ペロ
唯「いたっ……」
憂「ごめん……」チュパッ
憂(血の鉄っぽい味がする……生きてるんだね、お姉ちゃん)
唯「……」ドキドキ
憂「んふ……」チュウッ
唯「……っ」ピク
唯「う、うい……もう大丈夫だよ」チュポン
憂「ん……ごめん。ありがと」
唯「ありがとうって……」ドキドキ
唯「さ、さっ! 料理の続きだよ!」ザクザクザク
憂「あ、お姉ちゃんキャベツ切りすぎ……」
唯「だ大丈夫だよ! 私うい大好きだから! じゃなくてキャベツ、キャベツが大好き!」モシャモシャ
憂「……昨日も言ってたのに……」
唯「え、えへへ……だって今は憂、そういう状況じゃないから……」
憂「……でも。言いかけたなら、ちゃんと好きって言ってよ」
唯「うん。……へへ、憂、大好き」ギュ
憂「……」
唯「……ごめん、ね」
憂「ううん。ちょっと考えてただけ」
憂「お姉ちゃん……私とえっちしたお姉ちゃんはもういないんだよね」
唯「う、うん……」
憂「だったら、私はもうお姉ちゃんと結ばれてもいいのかな?」
唯「それは……」
唯「……私が答えるのは、ずるいと思う」
憂「私が考えなきゃだめってこと?」
唯「他の人に相談してもいいよ。けど、私は……ちゃんと考えないで、いい答えしか言えないから」
憂「そっか……それじゃ困っちゃうな」
唯「うん……」ザクザク
憂「だからキャベツはもう大丈夫だって」
――――
梓の部屋
梓「……」プニプニ
梓「あー……」カポカポ
梓(唯先輩の舌、柔らかかったな……)
梓(……あれが人形だったなんて)
梓「……」
梓(でも、あの事で気付けた……私は唯先輩が好きなんだって)
梓(……きっと、このためだけに純が全部仕組んだんだよね)
梓「ありがとう、純……」
梓(でも)
梓「ごめん……」
梓「……」ゴロン
梓(私は、憂が唯先輩のことどれだけ好きかってことも)
梓(唯先輩が憂のことどれだけ好きかってことも)
梓(よくわかってる、つもりだから)
梓(だから私……どんなに純が憂に嫌われても)
梓(純が、いつまでも行動しない私に苛立ったとしても)
梓(純の想いには、応えられない)
梓「……あーあ」
梓(わたしたち、壊れちゃったなあ)
梓「……」
梓「……すぅ」
おしまい
ムギの目的と純が大量のSSを書いた理由が知りたいです
ゴーレムの試運転みたいな感じ?
※
紬はくだらない理由で、「百合が見たい」だけ。
純は友人として、憂唯梓の三角関係に決着をつけさせたかったという理由です。
ゴーレムは完成されたものなので、試運転ではないです。
最終更新:2010年09月16日 00:00