とある夜
澪ママ「あら、田井中さん」
律ママ「うん?・・・って、秋山さんじゃない。買い物の帰り?」
澪ママ「えぇ。田井中さんは何処かへお出かけ?」
律ママ「そうなのよ。これから町内会の集まりでねー」
澪ママ「えっ、それ私聞いてないわ・・・」ガーン
律ママ「あれ?回覧板こなかった?」
澪ママ「え、えーと・・・?」
律ママ「じゃあご存知なかったのね。8時からだけど、よかったら少し遅れて一緒にいかない?」
澪ママ「まぁ!じゃあ晩御飯急いで作っちゃうわね」
律ママ「手伝おうか?」
澪ママ「平気よ。今日はお刺身だから」
律ママ「いや、それ『作る』っていうか切るだけじゃない」
澪ママ「もう切れてるやつ買ってきたから大丈夫♪」
律ママ「大丈夫♪じゃないから。晩御飯の準備らしいこと何一つする必要ないよね」
澪ママ「あ、でも・・・チンしないと」
律ママ「わお、お米まで手抜きかよ」
澪ママ「どうもサボっちゃうのよねー」
律ママ「それでよくあんな発育のいい利発そうな子が育ったもんだ・・・」ヤレヤレ
澪ママ「やぁだ、そんなに褒めないで?田井中さん」
律ママ「あんまり褒めてないからね、これ」
澪ママ「そういえば、昨日澪から聞いたんだけどね」
律ママ「澪ちゃん?」
澪ママ「えぇ。りっちゃんが「澪の母さんは綺麗だよな」って言ってたんですって」
律ママ「そりゃ、秋山さんは綺麗な顔してるからね。私が男ならほっとかなかったよ、なんてねー」
澪ママ「やだ、田井中さんまでっ!私ね、それ聞いてすっごく嬉しくなっちゃって、
今度りっちゃんが家に来たらご馳走しなきゃって思ってたのよね」
律ママ「秋山さんには料理の腕を振るう形でのご馳走は期待できそうにないから外食ってことでいいかな」
澪ママ「やぁだー。私だってやろうと思えば出来るわよ?」
律ママ「例えば?」
澪ママ「お刺身とか」
律ママ「それはもういい」
澪ママ「えー」
律ママ「他には?」
澪ママ「一番の得意料理はシロウオの踊り食いかな」
律ママ「うわ、究極だなオイ」
澪ママ「うふふ」
律ママ「うふふじゃないからね。せめて殺めて。包丁とか鍋とか使う方向できちんと料理して」
澪ママ「あ、鍋でシロウオの踊り食いm」
律ママ「いやよくないから。そんなに大量のシロウオいらないから」
澪ママ「大漁と大量をかけたの?さすがね」
律ママ「そんなところで関心しなくていい。ほら、時間になっちゃうから行こう?」テクテク
澪ママ「そうね。今日はパパはお仕事で帰り遅いから澪しかいないかも」テクテク
律ママ「秋山さんのところいつも帰り遅いものね」
澪ママ「そうなの。だからこのマグロは澪のものよ・・・!!!」
律ママ「澪ちゃんがお父さん似でよかった、本当によかった」
澪ママ「ちょっと、それどういう意味?」ガチャ
律ママ「べっつにー?」
澪ママ「もうっ。さぁ、入って?」クスクス
律ママ「お邪魔しまーす」
シーン
澪ママ「あれ?澪ったら寝てるのかしら」
律ママ「受験勉強も大変よね」
澪ママ「りっちゃんもでしょ?」
律ママ「律はいつも通りぐーたらしてるわ。あ、そうそう」
澪ママ「?」
律ママ「この間はごめんなさいね、夜遅くまで律がお邪魔しちゃって」
澪ママ「この間・・・?あぁ、あのとき?でも先月のことじゃない?」
律ママ「ううん、1週間くらい前じゃないかしら」
澪ママ「え?来てないわよ?」
律ママ「またまたー」
澪ママ「本当よ?それに一週間前って言ったら私を褒めてたって聞いた後だから、もし来てたなら何かご馳走してたハズだわ」
律ママ「律、無事でよかったね・・・!」
澪ママ「そういうことだから、本当に来てないわよ?最近りっちゃんが来なくて寂しかったんだから」
律ママ「そうなの?律ったら騒がしいから・・・」
澪ママ「騒がしいなんて、ちょっと姦しいってだけじゃない」ウフフ
律ママ「いや、それあまり意味変わってないからね。フォローに全然なってないからね」
澪ママ「あら、そうだった?」
律ママ「とりあえず、支度済ませちゃいましょう?」
澪ママ「そうね」ゴソゴソ
律ママ「私は何をしようか?」
澪ママ「あ、見てて」バコンッ
律ママ「ですよねー」
澪ママ「えーと・・・」
律ママ「ちょっと待って、冷蔵庫の中が綺麗過ぎて怖い。全然料理してないでしょ」
澪ママ「うん?ちょっと待っててね、マグロをこの中に入れるから」
律ママ「話を聞け。っていうか、さすがにマグロが可哀相だわ」
澪ママ「えー?」
律ママ「同居人はわさび(チューブ)とむぎ茶とバターだけ」
澪ママ「そんなこと言ったってー」
律ママ「全く・・・って、あれ?」
澪ママ「どうかした?」
律ママ「テーブルの上に何か置いてあるけど・・・紙?」
澪ママ「あ、澪っよくテーブルの上に置きポエムしてくから」
律ママ「置きポエムって何」
澪ママ「ちょっと読んでもらえる?」
律ママ「えっと・・・『今日は律の家に泊まります』ですってよ」
澪ママ「あら、素敵なポエム」
律ママ「いや、これ絶対ポエムじゃないからね」
澪ママ「ストレートな想い、しっかりと伝わったわ・・・!」
律ママ「なにこれ、私がおかしいの?」
澪ママ「いつもお邪魔になっちゃってごめんね?」
律ママ「いーのいーの、気にしないで」
澪ママ「そう言ってもらえると助かるわー」
律ママ「準備終わった?」
澪ママ「えぇ。お待たせしちゃったわね」パタパタ
律ママ「なーに言ってんの!それじゃ、行きましょうかっ」ガチャ
澪ママ「はいっ」
バタンッ
律ママ「あ、そうそう」テクテク
澪ママ「どうしたの?」テクテク
律ママ「さっき律からメール来てたのよねー」パカッ
澪ママ「親子でメールなんて、仲がいいのね」
律ママ「そう?連絡だけの簡素なものだけどねー」
澪ママ「それでもコミュニケーションが取れてるっていいことよ」
律ママ「・・・って、あれ?もしかして澪ちゃん、反抗期?」
澪ママ「ううん、そんなことはないわよ」
律ママ「そう?普段はメールとかしないの?」
澪ママ「うん、たまに用事があるときに送ったり送られたりするくらいかな」
律ママ「へー」
澪ママ「でもキャッチボールが上手くいかないっていうか・・・」
律ママ「メールしても返事が来なかったり?」
澪ママ「ううん、なんか面倒で私が返信するの忘れちゃうのよねー」
律ママ「それキャッチボール上手くいってないの秋山さんのせいだわ」
澪ママ「あと『ご飯いらない』ってメールに気付かなくて御飯作っちゃったり」
律ママ「キャッチすらできてないからね、この人」
澪ママ「あれ?よく考えたら私からメールしたことなんてあったかしら・・・?」
律ママ「送ったり送られたりっていうか、送られたり送られたり」
澪ママ「まあそうとも言うかな」
律ママ「まあそうとしか言わないかな」
澪ママ「もー、田井中さん厳しいー」
律ママ「私もツッコミはあまり得意じゃないんだけどね?」チラッ
澪ママ「うふふ」
律ママ「可愛いからって笑って誤魔化しても駄目っ」
澪ママ「そんなつもりじゃありませんー。あ、そういえばりっちゃんからのメールって?」
律ママ「あぁ、そうだったそうだった」カチカチ
律ママ「」
澪ママ「どうしたの?」
律ママ「こ、これ・・・」
『今日は澪ん家泊まるから』
澪ママ「あらあら、シロウオを振舞わないと!」
律ママ「生きた小魚を私の娘に振舞おうとしない。・・・っていうか」
澪ママ「そうよね、変よね」ウーン?
律ママ「あいつら・・・何か変なことを・・・?」
澪ママ「りっちゃんは確かに危ないけど、澪に限ってそれはないわ」
律ママ「わお、私の娘を踏み台にしてさらりと自分の娘を褒めやがった」
澪ママ「なんか心配になってきちゃった・・・!」
律ママ「うーん、大丈夫じゃない?もう高校生なんだし」
澪ママ「そうね。町内会ってほとんど飲み会みたいなものよね?うふふ、久しぶりに飲むわよー♪」
律ママ「切り替え早すぎだろ」
数日後
ピンポーン
律ママ「はいはーい?」
澪ママ「こんばんはー」
律ママ「あら、どうしたの?」
澪ママ「今日ね、パパも澪も家にいないから寂しくて」エヘヘ
律ママ「そういうことね。遠慮せずあがってあがって」ササッ
澪ママ「お邪魔しまーす」
律ママ「今日はうちも誰もいないからのんびりしてていいからね」
澪ママ「そうなんだ?旦那さん遅いの?」
律ママ「うん、今日は帰って来ないみたい。聡は部活の合宿」
澪ママ「りっちゃんは?」
律ママ「律は友達の家でお泊りだってさ」
澪ママ「あ、やっぱりりっちゃんも一緒だったんだ」
律ママ「うん、軽音部でお泊りって言ってたから澪ちゃんも行ってるんでしょ?」
澪ママ「そうなのよ。琴吹さんの家にお泊りって聞いたわ」
律ママ「えぇ、近いうちにちゃんとご挨拶しないとね」
澪ママ「そうねー。・・・あ、そうそう」
律ママ「どうしたの?」
澪ママ「この間だけど」
律ママ「あ!それ私も聞こうと思ったの!あの後、律がお邪魔してたり・・・して、ないよね・・・?」
澪ママ「うん、来なかったの。田井中さんのその口ぶりだと、田井中さん家にも来てないのよね?」
律ママ「そうそう、やっぱり夜遊びか・・・あいつら・・・!」
澪ママ「待って、澪は無実よ」
律ママ「いいや有罪だ」
澪ママ「二人とも、何してたのかしらね??」
律ママ「あ!そうだ・・・!今から琴吹さん家に電話かけてみない?」
澪ママ「えぇ!?でも、ご迷惑にならないかしら?」
律ママ「まだ夜の7時だし、大丈夫じゃないかしら」
澪ママ「そっか」
律ママ「こう、なんていうか、お礼ためだけに電話するのも結構気恥ずかしいしね」
澪ママ「そうね。りっちゃんへの用事のついでに、さりげなくお礼の電話・・・悪くないわ!」
律ママ「でしょでしょ?」
澪ママ「で、電話してなんて言うの?」
律ママ「言うっていうか・・・まず、お邪魔してるかどうかの確認かな」
澪ママ「そうね、それがメインよね」
律ママ「あ。それと、卵きらしちゃったのよね」
澪ママ「キレる若者、キレる卵・・・」
律ママ「いや、卵は別に怒ってないから。使っちゃったの、昨日全部使っちゃったの」
澪ママ「あぁ、そういうこと」
律ママ「普通そうでしょ・・・とりあえず、かけてみよう?」
澪ママ「琴吹さん家の電話番号わかる?」
律ママ「ううん。秋山さんは?」
澪ママ「知らないわよ?」
律ママ「・・・うん、電話するのやめよう」
澪ママ「えぇ!?」
律ママ「だ、だって・・・」
澪ママ「そうだ、りっちゃんのケータイにかけたらいいんじゃない?」
律ママ「あ、それいいわね」
澪ママ「私かけてみていい?」
律ママ「いいわよー、律も驚くんじゃないかしら」クスクス
澪ママ「えへへ」ピッピッピッ
律ママ「・・・」
澪ママ「・・・」ピッ
プルルルルルル・・・
律ママ「あ、はい。もしもし」
澪ママ「間違えちゃった」
律ママ「もうね、本当にね」
澪ママ「切るね?」
律ママ「うん」
ピッ
律ママ「もうっ、やっぱり私がかけるわね」
澪ママ「えへへ、ごめんなさい」
律ママ「全く」ピッ
プルルルルル・・・
律ママ「・・・」
澪ママ「・・・」
律ママ「出ない」
澪ママ「みんなでご飯食べてるのかな?」
律ママ「そうかも。また後でかけてみるかな」ピッ
澪ママ「最近特にりっちゃんと仲がいいみたいなのよ、澪」
律ママ「それは律もよ。澪ちゃんの話するとき、すごい楽しそうだもん」
澪ママ「そうそう。ホント、あの二人付き合っちゃえばいいのにね」
律ママ「あはは、そうしたら私も澪ちゃんのお母さんだ?」アハハ
澪ママ「うちはずっと一人っ子だったからりっちゃんみたいな娘が出来たら嬉しいわー」クスクス
律ママ「寂しくないことだけは保証するよっ」アハハ
プルルルルル・・・
律ママ「ん、電話だ」
澪ママ「いってらっしゃーい」
律ママ「ほいほーい」タッタッタッ
ガチャ
律ママ「はい、田井中です。・・・あらあら、どうもぉー」
律ママ「え?律?律なら・・・って、あれ?今日はそちらにお邪魔してるって聞いたけど?あれ?」
澪ママ「?」
律ママ「うん。え、ちょっと待って?今のリアクション、あ!ちょっと、ちょっと待って!?」
律ママ「切れちゃった・・・」ポカーン
澪ママ「・・・いたずら?」
澪ママ「えぇ、間違いないわ」
律ママ「その子からだった」
澪ママ「え・・・?」
律ママ「しかも律に用事があるみたいだったわ」
澪ママ「今日は琴吹さん家に泊まりに行ってるんじゃ・・・?」
律ママ「うん、そう言ったら『あ!そういえばそうでした!!』なんて言って電話切られちゃった」
澪ママ「・・・なーんか怪しいわね?」
律ママ「うーん。親に隠れて何やってるのかしらね?」
澪ママ「わからないわ。でも、あまり強引に聞き出すのもよくないのかな?」
律ママ「かもね。・・・そういえばこの間白ワイン頂いたんだけど、一緒に飲まない?」
澪ママ「いいねぇぇぇぇ!!!!!」
律ママ「いや、いきなりテンション上がりすぎだから。どんだけ酒好きなんだよ」
最終更新:2010年09月16日 21:19