【2/14 18:35 田井中律

澪「律!私、律とキ、キスがしたい!」

律「へ?」

余りに唐突な澪の言葉に、一瞬わけが分からなくなった。
家に帰って、うちに澪が来てチョコレートを渡す、っていつものパターンじゃないのか?

澪「ダメ?」

上目遣いが可愛くて、次の言葉が出てこなくなった。
いいよ、たった一言でいいのに。

律「えっと、あのさ……」

澪「や、やっぱりなんでもない。ごめん!!帰る!!」

律「あ、ちょ……澪!」

しまった。



【2/13 18:40 秋山澪

き、嫌われた。絶対嫌われた!

バカか私は。いきなり何の脈絡もなくキスがしたいなんて。
だいたい律は別に女の子のことが好きなわけじゃない。
ずっと一緒にいるからって付け上がって……。
なんで成功するって前提でチョコレートなんか作ったんだろう。

謝りにいこう。
親友としての律まで失うのはイヤだ。

律「澪?」

澪「……」

律「ったく。家に行ってチャイム鳴らしても誰も出ないし、ケータイは繋がらないし、どうしたのかと思ったぜ」

澪「り、律!さっき言ったことは忘れてくれ!」

律「無理だよ」

や、やっぱり嫌われてる……。

律「なぁ、澪」

澪「……」

律「キスしたい、ってことはさ。もしかして、恋人になりたいってこと?」

澪「……そ、そうだよ!キスしたり、手つないで買い物行ったり、え、えっちなこともしたいの!」

言っちゃった。全部言っちゃった。
おわた。人生おわたよ。なかったことにするつもりだったのに。
あとで2chで相談しよう。
『バレンタインに同性にフラれたけど、質問ある?』とかってな。ふふふ。
叩かれるかな。いや、vipは意外と暖かい。そう信じよう。

律「無理だよ、忘れるなんて。あんな可愛い澪。私だって、ずっと澪とキスしたかったのに」

澪「…………。……はっ?」

律「ぷ、ふふっ。あははっ。あー面白い」

澪「おいなんだよ、律。からかってるのか」

律「ごめんごめん。あんな唐突にキスしたいなんて真顔で言われたら、誰だって一瞬言葉失うって」

澪「ご、ごめん。えっ……」

気づくと律の顔がすぐ目の前にあって……
唇を奪われました。

律「これでいいか?」

澪「り、りりり。りつ……いま、き、ききキス……」

律「なんだよ、キスしたかったんだろ?」

澪「うぅ」プシュー

律「両思いになった記念に、私からチョコレートのプレゼントだ」

律がバレンタインにチョコレート。
初めてだ……嬉しい。

澪「え、あ、ありがと。あの、これ私からチョコ……」

律「ふーん。私さぁ、ずっと澪のこと好きだったんだぞ」

澪「私の方が好きだった!!!」

律「だからさ。チョコレートより……澪を食べちゃいたいなーって」ガバッ

澪「ちょっ、おい律!」

律に押し倒された。少し硬いカーペットの感触が背中に冷たい。
拒絶の言葉を発しようとした口が、律の唇で乱暴に塞がれる。


澪「りっ……ん、あっ……」

律「続きもしたい。いいだろ?」

澪「……律になら。いいよ。」

澪「……っ。あっ……」

律の手がブラウスの袖にかけられたその時。
ピンポーン
あ、誰か来た。

律「あ、やっべー。今日宅配便届くんだった!悪い、ちょっと出てくる。続きは後でな!」

生殺しだよ。
りつぅ……



【2/14 19:30 平沢憂

こんばんは!平沢憂です!
今日はとってもハッピーです。
まだ報告ないけど、お姉ちゃんと梓ちゃんがうまく行かないはずはないし。
紬さんの話を聞いてみたら、いろんなカップルが成立してて、みんな幸せなんだって。

憂「みんなが幸せなのって、いいよね~」

憂「登場人物がみんな幸せになるっていう、著者のけいおん愛が感じられるよね」

憂「私はお姉ちゃんと梓ちゃんがくっついて幸せだし、紬さんもテカテカしてたし」

憂「テカテカしすぎて、光が乱反射してたんだよ」

憂「明日から梓ちゃんとお姉ちゃんの、かわい~い生態を観察する日々が――」

純「憂……」

憂「どうしたの、純ちゃん?」

純「一人だけ、まだ幸せになってない人がいるの、気づいてた?」

憂「え……あっ!忘れてた!!」

純「ずっと隣にいたっつーの」

憂「あわわ……純ちゃん!好きな人、いないの?恋人にしたい子」

純「いるよ」

憂「そっか。どんな子?」

純「料理がうまくて、家庭的で、誰にでも優しい子」

憂「じゃあ早くその子にチョコ渡しに――」

純「はい」

憂「え?」
純ちゃんに黄緑の紙袋を渡されました。

純「好きな人を振り向かせるために、特別なチョコレートを作るんでしょ」

憂「これって……」

純「特別なチョコレート、だよ」

『ほんとに大事なものは、意外と近くにあるのよ』

『ほんとは気づいてるんじゃないの?』

そっか。
私、純ちゃんのこと……



【2/14 19:35 平沢唯

こんばんは、平沢唯です!
恋人記念日!ってことで、あずにゃんと駅前にお出かけです。

唯「あ、純ちゃんと憂だ~」

梓「こんばんは、二人でおでかけ?」

純「そっちこそ。ラブラブで羨ましい限りですねぇ」

唯「えへへー。あ、報告するね。私たち、今日から恋人になりました!」

梓「よ、よろしくお願いします」

純「梓、照れてるー。可愛いなぁ」

憂はなんだか元気がなさそう。
どうしたのかなぁ。

唯「あ、もしかして……二人は付き合うことになった、とか?」

純「そんなことないですよ。私が――」

憂「そうなの!」

純「へ?」

憂「純ちゃんと付き合うことになったの!だから……よろしくね!」

そっかぁ。
憂も大人になったんだね。うんうん。
お姉ちゃんは嬉しいような悲しいような複雑な気分だよ。


唯「じゃあ、これからうちでお鍋パーティしようよ!」

梓「いいですね!純と憂は、このあと大丈夫?」

憂「うん。材料買いに行かなきゃね」

純「なんだかよく分かんないけど、まいっか」


憂「純ちゃん。ちゅーしよっか?」

純「へ!?」

ちゅ。


唯「あらあら。妬けますなぁ」

憂「えへへ。みんな幸せ、だよ!」


chocolate days // substories – fin -



最終更新:2010年09月16日 23:21