焼肉屋
北斗「……」ジュウッ
子分「……」ヒョイッ パクッ
佐田「どうだ、うめえかよ」
子分「ああ、最高だぜ!」ヒョイッ パクッ
北斗「……」ジュウッ
佐田「そいつはよかった。ま、音楽っていう共通の趣味があるんだ……しばらくは休戦といくかい、北斗さんよ」
北斗「う、うむ」ジュウッ
子分「いやあ、けいおん様々ですね、北斗さん」パクッ
北斗(だから、俺が焼いてるそばから食ってるんじゃねえ!)
佐田「……ん、どうした北斗。あまり箸が進んでないようだが」
北斗「い、いや。今は食うよりも語りたい気分なんだ」ジュウッ
佐田「ああ、音楽……もとい、けいおんの話か」
子分「あ、北斗さん。そこのタン塩焦げそうですよ」
北斗(……もうこいつは無視だ)
北斗「で、佐田よ。お前は何の楽器を担当しているのだ」
佐田「俺は、ベースとボーカルさ」
北斗「ほう、澪と同じポジションか。では、好きなキャラも澪なんだな」
佐田「……いや、そいつはちょっと違うんだ」
北斗「む?」
子分「……あれ、ミノなんて頼んでないですよ。北斗さん、ちょっと店員に文句言ってきて下さいよ」
北斗(いいからお前は焦げたタン塩でも食っていろ)
佐田「確かに、澪は可愛いだが……俺は和ちゃんやさわちゃん先生の方に心を惹かれる」
北斗「ほう……」
佐田「けっしてよ、人気があるキャラが苦手とかじゃねえんだ。ただ、俺は……」
子分「ああ~、確かに競争率は低い方がいいもんな」
北斗(ええい、無視だ無視)
北斗「佐田よ……お前の気持ちはよくわかるぞ」
佐田「なにっ?」
北斗「好きになってしまったものは仕方ないだろう。それを気にやんでいても杞憂というモノだ」
佐田「北斗……」
北斗「生徒会、先生、クラスメイト、モブキャラ、結構ではないか。胸を張って好きと言える……それだけの魅力がけいおんキャラにはあるのだ」
北斗「主役たち意外にも、な」
佐田「北斗……」
佐田「……」ガタッ
北斗「む、どうした、トイレか?」
佐田「いや、今から練習だ……お前のお陰で、胸の奥のモヤモヤが吹き飛んだみたいだぜ」
北斗「佐田……」
佐田「ライブ、よかったら見に来てくれよな」
北斗「うむ、貴様のデビュー姿を見せてもらうぞ」
佐田「フッ……」
子分「……なんだか、あいつ変わりましたね」
北斗「そうみたいだな。これもけいおんの成せる技か」
子分「……俺たちも、少し練習したくなりましたね」
北斗「奇遇だな、俺もちょうどそう思っていたところだ」
子分「へへっ、じゃあ……」
北斗「うむ。行くぞ、俺たちのけいおん部へ……」
子分「あ、あとホルモンだけ食べたいんで。すいませ~ん、網交換してくださ~い」
北斗「……」
トイレ
北斗「あいつメンバーから外そうかな……」
ホルモン>>>>練習
マニエル高校
生徒「……でよお、そいつスイカと天ぷら食っちまってマジで腹痛起こしてんだよ」
生徒「ぎゃははははっ」
藤本(……チッ、相変わらずつまんねえ会話してやがる)
生徒「なあ、藤本もおかしいと思うだろ~。スイカと天ぷらなんてよお」
藤本「……お前ら、そんな会話していて楽しいのか」
生徒「え?」
藤本「スイカと天ぷら食ったら腹が痛くなった? その話を俺にしてなんの得があるってんだ、あ?」
生徒「い、いや、面白いかなって……」
藤本「面白けりゃあなんでもいいのかよ。そんな生産性の無い……ガキみてえな会話していて恥ずかしくねえのか」
生徒「う、うう……」
生徒「相変わらず藤本は考え方が硬派だな……」
付き人「……」
藤本宅
藤本「ふう……やっと学校が終わったな」
付き人「……」
藤本「そして、今の俺の手元には、今巷で大人気と言われている、けいおんの漫画があるわけだ」
藤本「サトリンさんを始め色んな人がネットでオススメしていたのに釣られて…ついに俺もけいおんデビューだ」
付き人「……」
藤本「見たところ、この女の子達を中心に話が進むようだな。以前の俺なら表紙で毛嫌いをしていたが……」
藤本「プラズマ戦記を読み続けている俺には、大抵の『萌え』要素のクリアは可能だろう」
付き人「……」
藤本「では、早速……」
ペラッ。
藤本「ふむ、桜ヶ丘高校……女子高か。なるほど、余計な男キャラを出さない舞台設定だな」
藤本「ほう……これが唯か。少し幼いがそこが可愛らしいのだろう」
唯『うんたん♪ うんたん♪』
藤本「……なるほど、これがうんたんの元ネタか」
藤本「チャットで、俺以外のユーザーがうんたん、と言い出した時はさすがに焦ったが……知ってしまえば何てことはない」
藤本「……今度俺も使ってみるかな」
付き人「……」
藤本「……」ペラッ
藤本「ふむ、人見知りで大人しい澪、元気っ娘な律、お嬢様の紬と……唯以外にも個性的な子が揃っているんだな」
藤本「それぞれ根強いファンがいるのにも納得ができるな」
付き人「……」
藤本「まあ、メインキャラはとりあえずこんな所か。とりあえず、この一巻しか持っていないからな……後はじっくりと話を読むとしよう」
ペラッ
ペラッ
藤本「ふぅ……ライトノベルと違い、漫画なのでスラスラと読めてしまった」
藤本「……」
藤本「とりあえず、この一巻だけでは掲示板のみんなが言っていた『感動』には巡り会えなかったわけだが」
藤本「しかし手元には二巻以降が無い……」
付き人「……」
藤本「ん?」
……。
藤本「よし、これで全巻だな」
付き人「……」←買ってきた
藤本「ほう、新キャラはあずにゃんと言うのか。更に幼い雰囲気で……ツインテール娘か」
藤本「……そうか。今までメンバーが全員集まっていなかったから本編が始まってなかったんだな」
藤本「これからは、しっかり後輩……あずにゃんにもギターを教えて本格的に音楽活動をしていくんだろうな」
藤本「全く、一巻は前座みたいなものか。いや、確かに音楽も多少はやっていたが……如何せん四コマ漫画では分かりにくい」
藤本「……まあ、全てはこれからか」ペラッ
付き人「……」
藤本「ふぅ。これで全部か」
藤本「確かに、音楽っぽい事もしていたが」
藤本「基本的にこいつらお茶飲んでダベっているだけじゃねえか……」
藤本「いやいや……プラズマ戦記に耐えた俺でも……」
藤本「……まあ、確かにギャグや日常の雰囲気がいいんだ、と言ってしまえばそれまでだが」
藤本「感動……ううむ……」
付き人「……」
藤本「……こんな時の掲示板か」
イレブンPM『今晩は! 皆さんにオススメしてもらった『けいおん』を一気読みしてテンションの高いイレブンPMです(笑)』
イレブンPM『いや~、女の子可愛かったですね。でも、プラズマ戦記などの冒険物と違ってちょっとマッタリしすぎてるのが……(汗) 皆さんが、感動したシーンってドコですか? ぜひぜひ教えて下さいませ☆』
藤本「……とりあえずこんな所だろう。批判だけでなく、質問とキャラを誉める。これなら反応が荒れる事もあるまい」
藤本「……ん。早速レスか、さすがけいおん、食い付きも早い」
澪タソモエ『冒険物? 何言っちゃってんの? けいおんはあの部室に女の子がいるだけで充分なんですよ?』
澪タソモエ『それをマッタリしすぎだとか、ただ女の子が可愛いとか……本当に全部読んだんですか? 澪タソがいるだけで感動シーンでしょうが!』
藤本「……」
藤本「むう……この変なHN(ハンドルネーム)の奴に始まり誹謗中傷の嵐が……な、なぜだ!」
イレブンPM『だって、中身が無さすぎますよ! ただ話してお茶を飲んで……たまに音楽をするだけなんて……少なくとも感動はできません!』
『中身(笑) 感動できません(キリッ)』
藤本「くっ……こいつらあ!」
管理人『お待ちください』
藤本「む……とうとう管理人さんまで出てきてしまった。ヤバい、掲示板を荒らしたと見なされたらアクセス禁止になってしまうかも……」
藤本「……とりあえず謝ろう」
イレブンPM『すいません、僕がけいおんに対して変な事を言ったがタメに……』
管理人『……いえ、いいんですよ。作品の感想は個人の自由ですから。正直私は全く怒ってはいませんよ』
藤本「……よかった」
管理人『ですが……』
藤本「む、何だ」
管理人『確かにけいおんは、プラズマ戦記に比べてしまえば冒険もしないで、ただ女の子がほのぼの話しているだけの普通の漫画です』
管理人『ですが、けいおんにはけいおんの良さがあります。プラズマ戦記を読み終わった時とは別の……暖かい気持ちがイレブンPMさんの胸の中にあるのではないのでしょうか?』
イレブンPM『……確かに、僕の気持ちは安心というか、とてもポカポカした気持ちになっているみたいです』
管理人『ええ、例え中身が無いと周りに言われても……イレブンPMさんの胸の安らぎは本物……それでいいじゃありませんか?』
藤本「管理人さん……」
イレブンPM『今回は僕が子供でした。中身が無いなどと言わず、純粋にけいおんを楽しんでいればよかったのですね』
管理人『イレブンPMさんは自分でそれに気付けた、それだけでもう立派なHTTの一員だと思いますよ』
藤本「俺が……一員」
イレブンPM『はい、ありがとうございます。また掲示板が落ち着いたら顔を出します……今度は、マッタリと中身のないトークでもしましょう(笑)』
管理人『はい、楽しみにしております。では、また……ノシ』
藤本「今回はけいおんに色々教えられたな……」
付き人「……」
次の日
藤本「ふっ、あんな事があったのに、学校に来れば清々しい気分だ。これもけいおんのお陰か」
藤本「程よい、中身の無さも必要なんだな」
付き人「……」
生徒「あ、いたいた。おーい藤本」
藤本「んっ、こんな朝からどうしたんだ?」
生徒「いやあ、昨日藤本に言われた事反省してよ……バイト先の店長に、ちょっと中身のある話をしてみたんだよ」
藤本「」ピクッ
生徒「そしたら、時給が上がってよ……いやあ、藤本のお陰だよ、ありがとな」
藤本「……ほう」
生徒「中身の無い話をするやつはバカだってつくづく感じたよ……」
藤本「……」ピクッ
付き人「……」
生徒「あ、そうだ、上がった給料で漫画買ったんだけど間違えて二冊買っちまったんだ……お礼として藤本にやるよ」
藤本「ほう……漫画か、いいな。どんな作品なんだ?」
生徒「けいおんって言う、スゲー感動する話なんだってよ。中身の無いそのへんの本とは訳が違うって噂の……」
藤本「ペラッペラだよ馬鹿野郎!」バキッ
生徒「お、朝から藤本に殴られてるぞ」
生徒「この光景も久しぶりだなあ」
付き人「……」
楽しむ心はどうした、藤本。
最終更新:2010年09月17日 22:07