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唯「今さらっ!?」ガーン

和「大体ねえ、一口あげるって言ったのは唯でしょ?私に非はないわよ」

唯「いや、あるよ!?どこの世界にケーキの一口でイチゴを狙う人がいるのさ!」

和「ここに」

唯「そういうことじゃなくてさ、こう……常識で考えてね?」

和「唯みたいな非常識な人間には言われたくないわね」

唯「ひどっ!?」

和「そもそも常識……その言葉ほど疑わしいものはないわね」

唯「え?」

和「唯、考えてみて?社会で決められたルール、学校で決められたルール、一般常識と呼ばれる暗黙のルール……それらは全て本当に正しいと言える?」


和「そして唯。あなたはそれらを全て完璧に守っていると自信を持って言える?」

唯「それは……」

和「例えばエスカレーター。常識とやらでは歩く人のためにどちらか片方を空けて並ぶのが正しいのよね?」

唯「うん、まあ」

和「でも作っている側としては、そもそもエスカレーターは歩けるようには作られていないからそれは止めて欲しいらしいわ。どちらか片方に寄るとそれだけエスカレーター自体に変な負担がかかるのよ?」

唯「そうなの!?」

和「ええ、エスカレーターの故障の原因は大体それね。さらに歩く人たちが起こすエスカレーターの事故は年間百件単位に上るわ」

唯「……」

和「ついでに言えば、設置している側の態度も真っ二つに分かれているのよ。一つは急ぐ人のために片側に寄れ、もう一つは二列に並んで歩くな……全く、矛盾しているわ」

唯「ほえ~……」

和「他にも疑うべき悪しき常識は探せばいくらでもあるわ。さて唯、あなたは本当に自分が思う『常識』とやらが正しいと言えるの?」

唯「う……」

和「唯……私はね、あなたにつまらない常識に囚われる人間になってほしくないの」

唯「和ちゃん……?」

和「唯はやる気になれば何でも出来る。それに優しくて皆を元気にできる明るさがあって……でも、純粋であるからこそ社会の嘘に騙されやすい気がするの」

唯「……」

和「常識を疑いなさい、唯。自分で考えた本当に正しい答えを見つけるのよ!」

唯「和ちゃん……分かった、私やるよ!」

和「唯……!」

唯「ゴメンね和ちゃん。和ちゃんはそんなにも私のことを考えてくれていたのに、私はケーキのイチゴくらいで熱くなっちゃって……」ウルウル

和「いいのよ唯。私は全然気にしていないわ。あなたの成長が、私の幸せよ……?」ギュッ

唯「和ちゃん……のどかちゃ~んっ!」ギュウッ

和「ちょろい」

唯「え?何か言った?」

和「何でもないわ」


……

和「……」

澪「和、ちょっといいか?」

和「……」

澪「お~い、和~?」

和「……澪?」

澪「どうしたんだ?ボーっとして」

和「ちょっとね。窓の外、見える?」

澪「えっと……何かあるのか?」

和「ええ、木があるでしょ?」

澪「ああ、あるな。木がどうかしたのか?」

和「……あの木の葉っぱが全部落ちた時、私の命の灯も消えてしまうの」ポツリ

澪「えっ!?」

和「今はまだ夏だから青々と茂っているけど……やがて秋が来て鮮やかに紅葉し、冬が来て葉を落とすわ。その時、私も……」

澪「の、和……そんな……」

和「人の命なんて、儚いものね」

澪「のど、か……」

和「……」

澪「……なあ」

和「何?」

澪「あれ常緑樹じゃないのか?」

和「ええ、そうね。一年中枯れないで緑色の葉をつけているわ」

澪「……」

和「……」

澪「この問題が分からないから教えてほしいんだけど……」

和「ああ、この問題は……」


……

律「おっ、和の弁当美味そうだな!」

和「そう?自分で作ってるんだけど」

澪「和は料理も上手なんだよな~。羨ましい……」

和「別に上手ってほどでもないわよ、これも昨日の残りを詰めただけだし」モグモグ

唯「和ちゃんの料理って憂と同じくらい美味しんだよ~?」

紬「へ~、食べてみたいわね」

律「……」ウズウズ

澪「おい律、無断で食べるのはやめろよ?狙ってるのバレバレだぞ?」

律「ちぇ~」

和「こんなものでいいなら適当につまんでいいわよ?」

律「マジ!?さっすが和!いっただきま~す♪」

紬「わ、私も!」

唯「右に同じ!」

パクパク

澪「お、おいっ!」

律「何だこれ、超うめえ!」モグモグ

唯「むむ……また腕を上げたね、和ちゃんっ」モグモグ

紬「ウチのシェフより美味しいかも……」モグモグ

和「そう?美味しいならもっと食べちゃっていいわよ、今日は詰めすぎちゃったし」

唯「わ~い♪」

律「喜んでいただき~♪」

パクパク…

和「……」

澪「おい、唯と律は食べすぎだ!和の弁当がのり弁になっちゃってるぞ!?」

律「つ、つい食べすぎちゃって……」

唯「ご、ゴメンね和ちゃん」アセアセ

和「……別にいいわよ、そんなに美味しいって思ってくれたのは嬉しいし」

紬(和ちゃんって大人ね……)

和「ただ……」

澪「ただ?」

和「何だかちょっとムシャムシャするわね」ムシャムシャ

唯「和ちゃん、それ私のパン……」

和「あらゴメン、手元にあったからつい」

律「わ、私のパンも食べるか!?」

和「いらないわ。購買の調理パンって不味いもの」

唯・律「……!?」ガーン

澪(の、和……怒ってはいないみたいだけど何か怖いぞ)

唯「ほ、本当にゴメンね和ちゃん!放課後何か奢るから……」アセアセ

律「わ、私も!だから機嫌治してくれよ和~っ」

和「……?別に私は怒ってないわよ?」

律「……本当に?」ビクビク

和「ええ。それにしても律と唯はほとんどパンよね?」

唯「う、うん」

和「それじゃ体に悪いわ、受験生なんだから……。毎日は無理だけど、これからはたまに二人の分のお弁当も用意してあげるわね」

律「え……?」

唯「ほ、本当?和ちゃん」

和「ええ、まあ中身にはあまり期待しないでね?」

律「いやいや、すっげー嬉しいよ!サンキュー和!」

唯「ありがとう和ちゃ~ん♪」ギュー

和「よしよし」ナデナデ

澪「……」

紬(和ちゃんってよく分からないわ……)


……

和「……」

紬「和ちゃん、どうしたの?」

和「あ、ムギ。あれを見て」

紬「あれ……?」

和「……」

紬「……」

和「スズメがいっぱいいるわね」

紬「そうね……スズメがどうかしたの?」

和「……美味しそう」ジュルリ

紬「!?」

和「……」ジーッ

紬「だ、ダメよ和ちゃん!スズメなんて食べられないわ!」

和「え?」

紬「え?」

和「ムギ……スズメは食べられるわよ?」

紬「えっ!?そ、そんな……」

紬(庶民はあんな小さい鳥まで食べるの!?)

和「何を勘違いしているのか知らないけど、スズメは立派な狩猟鳥獣。国内ではかすみ網が禁止されてるから市販できるほど確保出来ないけど、中国とかから輸入もしているわ」

紬「で、でもあんな鳥を食べるなんて……」

和「スズメは確かに癖が強いけど美味しいわよ?焼き鳥もいいけど、あの白い脳みそがもう……」ウットリ

紬「う……」

紬(そ、想像したら気持ち悪くなって来たわ……)

和「……ムギ」

紬「うぷ……な、何?」

和「あなたの勝手な嫌悪で、立派な食べ物を否定するのはやめてちょうだい」

紬「えっ!?わ、私そんなつもりじゃ……」

和「顔色を見れば分かるわ。どうせあなたはイナゴやカエルも食べられないって否定するんでしょう?野草を取って食べるなんて原始人がすることだと思ってるんでしょう!?」

紬「わ、私は、その」

和「私は納得しないわ。鶏や鴨は食べれるのに、スズメは食べられないなんて……」

紬「そ、そうなのかしら」

和「あなたは結局、私たち庶民のことを理解できていない……いや、心の中では見下しているのよ!」

紬「そんな……ことは」

和「黙れ!このブルジョワめっ!」

紬「っ!?」ガーン

紬「……」

紬「そう……ね、和ちゃんの言う通りだわ」

和「……」

紬「私、食べるわ!スズメを……!」

和「無理して食べて貰わなくてもいいわよ?」

紬「無理なんかしないわ!私はもっと理解したいの。みんなのこと……和ちゃんのことをっ」

和「ムギ……」

紬「じゃあ私、捕まえてくる!」

和「あっ、ダメよ!」

紬「大丈夫、心配しないで!素手だけど頑張るわっ」ダッ

和「あ……」

和「……」

和「スズメは勝手に獲っちゃダメなんだけどなあ」


……

梓「あ、和先輩こんにちは」

和「あら梓ちゃん、こんにちは。これから部活?」

梓「はいっ!和先輩は生徒会ですか?」

和「ええ。でもその前にちょっとトイレにね」

梓「あ、私もです」

和「そうなの?それじゃ一緒に行きましょうか」

梓「えっと……はい///」

和「ふふ、照れなくていいのよ。たかが連れションなんだから」

梓「つ、連れ……!?和先輩、その言い方はちょっと……///」

和「あら……ゴメンね?じゃあ一緒にお花を摘みに行きましょうか」

梓「はいっ!」

和「……」スタスタ

梓「……」パタパタ

和「……」テクテク

梓「……」トテトテ…ピタッ

梓「あの~、和先輩?」

和「どうかしたの?」

梓「ここ下駄箱なんですけど……トイレ通り過ぎちゃいましたし……」

和「あら。でもお花を摘みに行くなら外に出ないと」

梓「それは隠語表現じゃなかったんですか!?」ガーン

和「淫語表現だなんてそんな///」

梓「変な変換しないで下さい!分かりにく過ぎです!」

和「……」

梓「……」ハアハア

和「私でそんなに興奮しないで///」

梓「和先輩が連続で突っ込ませるからですーっ!」

和「でも良かったわ」

梓「はあ、はあ……何がですか?」

和「いや、外に出る前に突っ込んでくれて。実はこれから会議があるから、あまり時間がないの」

梓「何故そんな状況でボケたんですか!?」ガーン

和「まあまあ」ナデナデ

梓「ちょ、ちょっと……」

和「よしよし」ナデナデ

梓「こ、こんな手には乗りませんよ!」

和「……」ナデナデ

梓「こんな……こんな……」

和「……」ナデナデ

梓「……ふにゃあ」

和「ふふふ……」スリスリ

梓「にゃあん♪」ゴロゴロ

和「……」パッ

梓「にゃあ……はっ!?私は何を」

和「……」ナデナデ

梓「ごろにゃん♪」

和「……面白い」


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最終更新:2010年09月17日 23:53