『お姉ちゃん、朝だよー、起きて―』

唯「う~ん、あと5分~…」

『お姉ちゃん、お姉ちゃん』

唯「う~ん…はっ、朝だ」

唯「あれ?憂はどこ?」

唯「憂~、憂~」

『お姉ちゃん、私お姉ちゃんのところにいるよ』

唯「憂?どこ?」

憂『私、お姉ちゃんの体の中にいるみたいなの…』

唯「体の…まさか憂を食べちゃった!?」

憂『そういうことじゃなくて…お姉ちゃんの体に魂だけ入ってるっていうのかな…』

唯「憂は幽霊?」

憂『違うよ!…多分…
  取り憑いてるっていうより体を共有してるって感じかな?
  お姉ちゃんの見てるものが見えて、聞こえるものが聞こえて…』

唯「きゃ!恥ずかしい!」

憂『も~、お姉ちゃんもっと緊張感持ってよ~』

唯「まぁよくわかんないけど、憂~ご飯~」

憂『あ、朝からこんなだからご飯は作れなかったんだ、ごめんね』

唯「仕方ない、私が作るか!」フンス

憂『お姉ちゃん頼もしー!』

唯「わからなかったら憂に直接聞けるしね!」

憂『あはは…』

唯「とりあえず憂みたいに髪結んだら料理できる気がする!」

憂『それはないと思うけど…』

唯「よし!」

ムスビ~

憂「あれ?お姉ちゃん?」

『憂~、体が動かない!』

憂「入れ替わっちゃった!?」

唯『憂、どういうこと?』

憂「髪を結んだら私達の立場が入れ替わるのかも…」

唯『…憂お姉ちゃん?』

憂「そうじゃないよ~」

憂「私達は体を共有してるんだけど、お姉ちゃんが基本で、髪を結んだ時だけ私になるんだと思う」

唯『なるほど、わからない!』

憂「これで…」

ホドキ~

憂『こうなるってことだよ』

唯「あ、動く!体が動くよ、憂!」ブンブン

憂『お姉ちゃんはしゃぎ過ぎ~』

唯「だってあの状態気持ち悪いんだもん」

憂『そうだね~』

憂『あ、じゃあお姉ちゃん、髪結んで』

唯「えー、やだよー」

憂『ご飯作ってあげられないよ?』

唯「わかりました、結びます!」

ムスビ~

憂「じゃあお姉ちゃんちょっと待っててね」

唯『任せたぞ妹!』

憂「なにそれ~?あはは」

憂「よし!完成!」

唯『憂~、おいしそうだけど私の分はいらないんじゃない?』

憂「あ、そうか…体は一つだもんね」

唯『じゃあいっしょに食べよ!』

憂「うん、いただきま~す」パク

唯『ああ…食べてないのに食べてる変な感じ…』

憂「お姉ちゃん、替わる?」

唯『すまないねえ憂~』

ホドキ~


唯「ごちそうさまでした!」

憂『お粗末さまでした~』

唯「朝食らしい味だったよ、憂!」

憂『ありがとうお姉ちゃん、でも味は私もわかるんだよ~』

唯「そうか、さっきの私とおんなじだもんね」

憂『今日は日曜日だからいいけど…学校とかどうしよう…』

唯「はっ!そうか、体が一つ足りない…」

憂『…私は元に戻るまで休んでいいから、お姉ちゃんが体使っていいよ』

唯「え…いいの?」

憂『お姉ちゃんは受験生でしょ?勉強しなきゃ!私は後で純ちゃんと梓ちゃんに教えてもらうし』

唯「かたじけない…」

憂(それに…私はお姉ちゃんと一緒なだけで嬉しいし♪)



お昼!

ギータニーモークビッターケー♪

唯「あ、メール…りっちゃんからだ」

律[今日昼空いてる?昼飯食いに行こうぜ~!あ、澪に断られたからじゃないぞ、決して!]

唯「うん、私はヒマだよ~、っと…」

スーキスーキダーイースーキー♪

憂『あ、私の携帯も取って、お姉ちゃん』

唯「うんわかった~、何々…」

純[憂、ヒマだったらご飯食べに行こうよ~]

唯「…」

憂『…』

唯「…ということでこうなりました!」

律「どういうことだ、説明しろ」

純「律先輩と唯先輩…憂は?」

唯「あ~私が憂で憂がお姉ちゃんで~…」

律純「???」

憂『お姉ちゃん、私が説明するから替わって!』

唯「憂…任せた!」

ムスビ~

憂「こんにちは、律先輩、純」

律「?…憂のマネ?」

純「…それとも憂が唯先輩のマネ?」

憂「かくかくしかじかとこんな話だったんです」

律「…うーむ、にわかには信じられない話だが…」

純「でも憂がそんな冗談言うとは思えないし…」

律「唯にこんな冗談考えるアタマがあるとも…」

唯『りっちゃんヒドい!』

憂「お姉ちゃんが怒ってます…」

律「あはは~、ごめんごめん…でも普通には信じられないよな」

?「いえ、彼女の言ってることは正しいわ!」

律「…さわちゃん!?あんた本当に神出鬼没だな!」

さわ子「たまたま通りかかったら珍しい組み合わせがいるんだもの」

純「…さわ子先生!正しいって何か根拠が?」

さわ子「ふふふ…実はね、私は衝撃の事態を目撃しちゃったのよ…」

憂「ゴクリ…」

さわ子「それはね…」

律「それは…!?」

さわ子「髪を結んだ瞬間唯ちゃんの胸のサイズが変わったのよ!」

律「ズコー」

さわ子「それがなかったら店内にまで入ってないと思うわ」

純「よ、良かったね憂、証人がいて…」

憂「う、うん…」

唯『そういえばさっきから胸に違和感が…』

憂「もう、お姉ちゃんったら…」

律「本人同士は話せるんだなー、周りから見たらアレだけど」

憂「あ…あぅ…」

純「まぁまぁ、私達は気にしてないから…」

さわ子「じゃあ私は忙しいから!」

憂「先生さようなら~」

律「何しに来たんださわちゃんよ…」

純「まぁ目的は果たしたって感じですけどね…」

唯『憂~、そろそろ私も動きたい~』

憂「あ、ごめんねお姉ちゃん」

ホドキ~

唯「じゃん!」

律「う~む…そんなに違うかな…」ジー

純「…」ジー

唯「ああ、そんなに見ないで!」

律「でもウチじゃなくて良かったわ~」

唯「なんで?」

律「ほら~、平沢家は姉妹だけどウチは姉弟だろ…」

唯「それが?」

律「ほら~、トイレとかお風呂とか…姉弟でもさすがになぁ…」

唯「はっ!そういえばトイレとか憂に見られちゃうのか!」

憂(お姉ちゃんのお風呂…お姉ちゃんのトイレ…お姉ちゃんの…)

律「遅!…まぁどうにもなんないから諦めたほうがいいんじゃないか?」

唯「まぁ別にいっか~」

純「…話はちょっと戻るんですけど」

唯「うわ!いたんだ純ちゃん!」

純「存在が薄れてきたからそろそろ話さないとなぁ、と思って…」

律「ほら唯、純ちゃん傷つけんなよ、空気キャラに『いたんだ』は禁句だぞ~」

唯「はーい…」

憂『律さんも十分ひどいこと言ってるような…』

純「…おほん、それで…律先輩、だったらトイレやお風呂の時は弟さんと替わればいいんですよ」

律「ああ、そうか!自由に替われるんだもんな、よっしゃー、問題無事解決!」

唯「りっちゃんは実際なってるわけじゃないんだから解決になってないよ!」

律「そうだぞ、純ちゃん!関係ない方向に話を持っていくなよ~!」

純「あ…すみません…」

憂『純ちゃん…』



夕方!

唯「結局収穫ナシだったね~」ゴロゴロ

憂『事情を分かってもらえただけでも収穫だったんじゃない?』

唯「そんなもんかな~?」

憂『あ、お夕飯用意しないと!』

唯「憂~…あ、そうか」

憂『お姉ちゃん髪結んで』

ムスビ~

憂「じゃあ作るから待っててね!」

唯『わーい!』

唯「いただきまーす!」モグモグ

憂『どう?おいしい?』

唯「憂だって同じ味あじわってるでしょ~」

憂『あはは、そうだったね』

唯「ごちそうさま~、食べて眠いから憂バトンタッチ!」

ムスビ~

憂「…」

憂「あ、片付けしないと~」



夜!

唯「憂おやすみ~」

憂『おやすみお姉ちゃん』

唯「グー…」

憂(今日は変な日だったなー)

憂(まぁお姉ちゃんとずっと一緒だったし)

憂(…お姉ちゃんの体でお風呂入ったし…)

憂(でもお姉ちゃんのあったかさを感じられないのは残念だな~…)

憂(私も寝よっか…)

憂『おやすみ、お姉ちゃん』



翌日!

唯「寝たら治るかと思ってたけどそんなことはなかったぜ」

憂『早くしないと学校遅刻しちゃうよ~』

ムスビ~

憂「え?どうしたのお姉ちゃん?」

唯『学校着くまで憂お願い~』

憂「もー、仕方ないなぁ」

唯『ありがとうね憂~』

憂(お姉ちゃんの笑顔が容易に想像できる…)

唯「…というわけでして」

和「ごめん、どういうわけなの?」

律「なんでも唯と憂ちゃんが同じ体に入ってて、髪を結んだら憂になるんだってさ」

唯「…ということです!」フンス

律「お前が締めるな」

澪「なんとなく事情はわかったけどいまいちピンとこないな…」

紬「私も」

唯「じゃあ見て見て~」

ムスビ~

憂「こんにちは~」

和「確かに憂っぽい…」


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最終更新:2010年09月18日 01:40