純「今日の憂おかしいよ」

梓「確かに…機嫌いいかと思ったら突然暗い顔になったり…」

純「叫んだのも本当は唯先輩になんか言われて…」

梓「ありうる…」

純「軽音部では何かなかった?」

梓「唯先輩がお菓子食べてて…憂が食べたのは見てないなぁ」

純「他には?」

梓「練習めんどくさいからって理由で憂が代わりにやらされてた」

純「唯先輩の態度に憂が怒ったのかな?」

梓「だとしたら唯先輩の自業自得だし、お灸になればいいんじゃない」

純「どちらにせよ姉妹のことだったら私達は何もできないね」

梓「どうしても私達が必要そうだったら助けよう」

純「うん」


放課後、私は軽音部員ではないけど、お姉ちゃんが学校をサボってしまったんだから
代わりに私が行ってあげないとね

唯『憂…』

憂「こんにちは、みなさん」

律「おー憂ちゃん、唯は?」

憂「今日一日学校サボるって…」

澪「何も部活まで休まなくてもいいのに」

紬「じゃあ今日の練習は…」

憂「大丈夫です、私が代わりにやりますから」

紬「そう、じゃあお願いね♪」

唯『…』

ジャジャーン♪

梓「いい感じですね」

律「やっぱ憂ちゃんが上手いからな~」

紬「そうよね~」

澪「ほらほら、唯に聞こえてるんだから」

憂「大丈夫ですよ、お姉ちゃんは寝てますから」

律「そっかー、じゃあ唯のこと愚痴り放題だな!」

梓「唯先輩はもっと真面目に…」グチグチ

律「いや、今の冗談だったんだけど、梓」

梓「へ?あ、あはは…私も冗談ですよ~」

唯『あずにゃん…』


部活動も終わって帰宅
私は私のためにご飯を作る

憂「いただきまーす」モグモグ

唯『おいしいよ、憂』

何も聞こえはしない

唯『ごめんね…ごめんね…』

憂「ごちそうさまでした」

唯『憂…』

私は食器を片づけた


お風呂に入るのは一苦労だ
髪をほどかないと髪を洗うことができない

髪をほどいてしまうと、またいつ自由になれるかわかったものではない

そこで私は考えた

髪をほどく前に別のところで髪を結び、結んでいないところを洗う
これを繰り返せば髪を結んだまま髪を洗うことができる

憂「上手くいくか心配だな~」ニコニコ

唯『憂、もう許して…』

憂「ふー、いいお湯だったぁ」

唯『本当にごめんなさい、私家事もするから…』

憂「大丈夫だよお姉ちゃん、もうお姉ちゃんは体を動かす必要なんてないんだから」

憂「それより…もう喋らないで」

唯『…』


夜、久々に静かな夜だ
一人で寝ることができるというのも幸せなんだなぁ

憂「おやすみ…」

ついつい誰かにおやすみと言ってしまった
まったく私はバカだなあ
誰もいないのに


おはようございます、平沢憂です

今日は久々に梓ちゃんと純ちゃんと登校です

梓「おはよー憂」

純「おはよー」

梓「私は憂に言ったんだよ?」

純「なにー!私にも言ってよ~!」

梓「軽音部に入ってくれたら考える」

純「何よそれ~!」

憂「あはは、二人とも元気でいいね♪」

梓「あのさー憂…」

梓「そろそろ許してあげたら?」

憂「何のこと?」

梓「唯先輩」

憂「…許すって?」ニコ

梓「…いや、何でもない」

純「まだダメか…」

放課後、私はいつものように軽音部に向かう
今日もみんなと練習したいな

憂「みなさんこんにちは」

律「おう憂ちゃん、唯は?」

憂「お姉ちゃんは今日も休むって言ってました」

澪「休み過ぎだろ」

紬「まぁまぁ、お茶にしましょう♪」

憂「はい♪」

梓「…」

梓「…ちょっと澪先輩いいですか?」

澪「え?何で私?」

憂「どうしたの、梓ちゃん?」

梓「いや、え、演奏のことでちょっと…」

憂「そっか、じゃあいってらっしゃい」

憂「ムギさん、このケーキおいしいです、いつもありがとうございます」

紬「いいのよ、貰いものを余らせてしまうのも悪いから」

澪「何だよ急に呼び出して」

梓「みなさん気付かないんですか?憂のこと…」

澪「憂ちゃんに何かあったのか?」

梓「多分憂は唯先輩に嫌気がさして、唯先輩にならないようにしてます」

澪「そんな…あの憂ちゃんが唯にイライラするとは思えない…」

梓「でも実際に突然うるさいって叫んだり、唯先輩の話をするとはぐらかされるんです」

澪「そうか…じゃあ律とムギにも私から言っておくよ」

梓「ありがとうございます」



一人きりの家

お父さんとお母さんは二人で旅行に行っているので私達の事情は知らない

自分で自分のお夕飯を作る
我ながらおいしい

お風呂はちょっと大変だ

今日も一人で眠りに着く



翌日、いつも通り早起きをして、いつも通り学校へ向かう

梓ちゃんと純ちゃんはなんだかちょっと暗い顔をしている
何故だろう

放課後は音楽室に行き、お茶をして、練習
先輩方もテンション低いな

澪「憂ちゃん、唯は…」

憂「いつも心配かけてすみません、でも大丈夫ですから」

律「…憂ちゃん、もういいだろ?」

憂「何のことです?」

律「唯のこと…本当のことを教えてくれ」

憂「だからお姉ちゃんはお休みしたいって…」

紬「唯ちゃんと…喧嘩したんでしょ?」

憂「…」

憂「そこまで分かってるなら言います」

憂「お姉ちゃんが悪いんです、私を道具のように扱って…」

憂「もう耐えられなかったんです…」

梓「おおかたの予想通り…」

憂「私だって我慢できないときもあるんです…」

律「唯は謝ってたのか?」

憂「…はい」

律「じゃあそろそろ仲直りしろ、な?」

憂「…まだ許せません…」

律「…まだ、か」



一人きりの家

寂しい…

憂「お姉ちゃん…」

つい口に出してしまった

憂「別に寂しかったわけじゃないよ」

返事はない


憂「お姉ちゃん?今は喋ってもいいんだよ?」

寂しくなっただけですぐに怒りが冷めてしまった自分が悲しい

憂「…お姉ちゃん?怒ってるの?」

憂「お姉ちゃん!なんか喋ってよ!」

自分で言っておいてなんて勝手な妹なんだろう
これじゃあお姉ちゃんのこと言えないじゃないか

憂「お姉ちゃん…そうだ!」

私は髪をほどく
これでお姉ちゃんが強制的に出てくるはず

憂「お姉ちゃん…ってあれ?」

替わらない!?お姉ちゃんは消えてしまったのか!?

憂「お姉ちゃん!?どこ!?」

部屋を探してもいるわけなんてない
テレビを見て転がってるわけでもない

わかってはいるが理解したくはない
私はお姉ちゃんを探し続けた

憂「いない…お姉ちゃん…どこ…?」

お姉ちゃんがいないと何もできない…

お姉ちゃんがいないと謝れない…

お姉ちゃんの声が聞きたい…

お姉ちゃんの笑顔を見れればそれだけで良かった…

いなくなってから気付いたってもう遅い…のかな…

憂「お姉ちゃん…」


唯『う…い…』

憂「お姉ちゃん!」

唯『お姉ちゃん…?』

憂「私だよ!お姉ちゃん!ごめんね!」

唯『…』

お姉ちゃんが弱っている…
私が替わってあげなかったせいだ…



……

梓「…で、私達に相談してきたんだ」

混乱していた私は誰かに頼りたくてとりあえず梓ちゃんと純ちゃんに電話をした
梓ちゃん達は夜なのにすぐに来てくれた

純「でも私じゃ何もできないなぁ」

憂「ごめんね、呼んじゃって…」

梓「唯先輩、生きてますか?」

唯『梓…ちゃん…?』

憂「反応があった!」

純「このまま唯先輩に呼びかけてけば唯先輩が戻るかも!」

梓ちゃんが軽音部のみなさんを呼んでさらにお姉ちゃんに声をかけることにした

澪「唯、消えないでくれ!」

律「お前がいないとからかう相手が減っちまうだろ、唯」

紬「お茶会に来るの待ってるのよ、唯ちゃん!」

唯『みんな…?』

憂「お姉ちゃん、軽音部のみんなが来てくれたよ!」

唯『先…輩…』

憂「お姉ちゃんから見たら先輩じゃないよ」

紬「唯ちゃんの意識が憂ちゃんの意識と混ざってきてるのかも…」

憂「お姉ちゃんは私じゃないよ!」

唯『私は…ゆい…』

憂「そう、私は憂、お姉ちゃんは唯」

唯『私は…おねえちゃん…』

梓「どうなの?憂」

憂「なんとか大丈夫みたい」

律「はぁ~、良かったな」

憂「でも髪を結んでないけどお姉ちゃんにはならない…」

澪「きっと唯の意識が完全に戻ったらなるようになるさ」

憂「お姉ちゃん、大丈夫?」

唯『なんとか…』

憂「お姉ちゃん、ごめんね」

唯『私こそごめん…』

唯『私、動けるようになったら絶対ご飯作るから…』

憂「じゃあ私がお料理教えてあげるね♪」

唯「うん!」



あれから数日

お姉ちゃんの意識は無事回復した
まだ体は戻ってないけれど、私達は大丈夫

唯「じゃあ憂、ご飯作ってあげるね」

憂『お姉ちゃんもだいぶお料理上手くなったよね~』

唯「おいしいものが好きだから素質はあったんだよ!」

憂『あはは~、何それ~』

ムスビ~

憂「自分で作ったメシはウマい!」モグモグ

唯『作ったのは私だよ~』

憂「えへへ、言ってみたかっただけだよ」

私達は交代交代で体を分けています


憂「ムギさん、今日のお菓子はなんですか?」

紬「今日はモンブランよ♪」

梓「最近憂だらしないよ」

憂「そうかな~?」

律「唯も最近しっかりしてきたしなー」

唯『えへへ~、そんなことないよ~』

澪「なんだか二人とも足して2で割ったみたいだよね」

憂唯「だって私達…」

一心同体だから

おわり





最終更新:2010年09月18日 01:42