紬「ただいま~」

律「おお、どうだった?」

紬「唯ちゃん、携帯を忘れて行っちゃったみたい」

梓「さすが唯先輩。ドジっ子ちゃんですね」

澪「そこが可愛いんじゃないか」

「AHAHAHAHAHA!!」

澪「あ、そろそろ冷蔵庫にいれておいたコーラ、冷えたころかな。ちょっと見てくるよ」

律「あいよー」

ガチャリ

澪「うーん、冷え冷えだぞ~♪」

澪「やっぱりコーラは瓶でよく冷えてるやつが美味しいよな。エリに瓶のやつ見つけたら買っておいてって頼んでおいてよかったよ」

「ふしゅるー」

澪「んぐ、んぐ、んぐ…ぷはー! 美味しいっ」

「ふしゅるー」

澪「それにしてもここの冷蔵庫は良いのを使っているな。これでも私は家電に詳しいんだ」

「ふしゅるー、ふしゅるー」

澪「でもこのさっきから聞こえる息みたいな音はなんだろう? 氷でも作ってるのかな」

澪「いや…野菜室から聞こえるぞ…何が…!」パカッ

唯「ふしゅるー」

澪「唯!?」

唯「ミオチャーン…」

澪「この馬鹿!!」グイッ…ペチン!

唯「アウッ」

澪「小さい頃によく言われてただろう!? 冷蔵庫の中に入るなって! 私もしょっちゅう言われてたもんだぞ!!」

唯「ウウウ…ゴメン…」

澪「冷蔵庫は内側から開けられないんだから、危険なんだ。まぁ、かくいう私も子供のころは冷蔵庫に入ることが好きだったんだけどな…」※絶対にマネしないでね

唯「チヲ…ミオチャーン…」

澪「あの心地いい狭さと薄暗さと寒さがなんか癖になるんだよな。でもさすがの私も野菜室には入らなかったぞ?」

唯「ソンナコトヨリ…モウゲンカイナンダヨォォ…」

澪「なに? まだ入りたらないのか? 仕方がない私が見てるからもう一度入っててもいいぞ」

唯「エ…」

澪「ほら、遠慮するな唯」グイグイ

唯「イ…イヤ……ソウジャナイノ…チョ…」パタン

澪「出たくなったら中でノックしてよ」

唯『…ナンダカナァ』

梓「澪先輩」

澪「梓、どうかした?」

梓「帰りが遅いからどうしたのかなって」

澪「ああ、唯が冷蔵庫に入りたがってたから付き合ってたんだよ」

梓「…は? ていうか唯先輩いたんですか!?」

澪「ああ、この中だよ」

梓「何してるんですか!? そんなところに入ってたら死んじゃいますよ!?」ガチャリ

梓「…いないじゃないですか、唯先輩」

澪「え? おかしいなぁ、さっきまで入ってたのに…は! ま、まさか…」ガクガク

澪「おばけぇーっ!!! きゃー!!」

梓「えー…あ、律先輩」

律「おう」

澪「おばけなんかいないおばけなんかいないおばけなんか…」ガクブル

律「どしたの? こいつ」

梓「ええ、まぁ色々ありまして…それよりどうかしましたか?」

律「汗かいてきて…ちょっと気持ち悪くてな。風呂いってくるよ」

梓「あ、はい…って人の家のお風呂に勝手に入るつもりですか!?」

律「後で断れば大丈夫だって~! んじゃ」

梓「あ、ちょっ…もう! 勝手なんだから…」

澪「おばけなんかいないおばけなんか…あわわわ」

梓「ほら、行きましょう澪先輩? きっと何かの見間違いだったんですよ」

澪「あうー…」



チャポン…

律「ふー…いいお湯だ。さっき沸かしておいて正解だったよ」

律「それにしても平沢姉妹遅いよなぁ…まったく、学校サボって何してんのやら」

唯「リッチャン」

律「うおおぉぉっ!? ななな…ゆ、唯ぃっ!」

唯「ふしゅるー」

律「お前いつのまに帰ってたんだよ! ていうか物音もしなかったぞ」

唯「スワセテヨ…リッチャン…モウガマンデキナイヨ…」

律「お、おいおい…入ってきていきなり乳を吸わせろって…とんでもない爆弾発言だな。さすがの私も引いちゃうぞ…」

唯「チヲー…」

律(…なんか様子がおかしいな。ん?)

律(…鏡に…私しか映ってないぞ…どういうことだ…)

唯「ふしゅるー」ギュッ

律「あ、このやろ…! 最近胸がでてきたからって私にひっつけて自慢してんのか!」

律(って、そうじゃない! 鏡に唯が映っていないんだ! 今しっかり私に抱きついているのに…)

唯「ンアー…」ガァ…

律「鏡に映らない…それって…ま、まさか」

唯「イタダキマース」

ガブッ

澪「律遅いな」

紬「のぼせちゃってるのかしら…心配だわ」

梓「仕方がありませんね。私、見てきます」

澪「悪いな、梓。頼むよ」

梓「はい。では…」タタタ…

紬「あら、もうすぐ6時になっちゃうわ。日が暮れるの早くなったね」

澪「そうだなー。暗くならないうちに唯と憂ちゃんが帰ってきてくれるといいんだけど…ん?」

純「……」

澪「純ちゃん! 帰ったんじゃなかったのか?」

純「……」

紬「どうしたの? 俯いたままで…具合悪い?」

純「……ぐっ」

純「ふしゅるー」

ガチャリ

梓「律せんぱーい、のぼせてませんかー?」

梓「って、あれ? いないよ?」

梓「もしかして上がったのかな…そういえば服もそこになかったし…」

律「…あ、梓……」ヨロヨロ

梓「律先輩! どうしたんですか? 顔色悪いですっ」

律「よ、よく聞くんだ…梓…唯は…唯は…」

ガブッ

律「う…あ…!?」

唯「ングング…ウマウマ…リッチャンノチ…シンセンデオイシイヨー」

梓「!? な、何!?」

律「唯は…吸血鬼だ…あぐ…に、逃げろ…澪とムギを連れて…は、はやく…私が血を吸われているうちに…ああっ」

梓「律せんぱーいっっ!?」

律「は…はや……うぐっ」バタッ

唯「ふぅ! ごちそうさま。やっとお腹いっぱいになったよ」

梓「な、なんてことを…」

唯「仕方がないよ、あずにゃん。血を吸わなきゃ私死んじゃうんだもん…」

梓「だからって友達を襲うんですか!? おかしいですっ」

唯「仕方がないんだもん! それにもっと私たちの仲間を増やさなきゃいけないんだよ」

梓「な、仲間って…まさか…!」

律「……」ピク…ピクン

唯「すぐにりっちゃんは吸血鬼になるよ。覚えてる? 吸血鬼に血を吸われた人間は吸血鬼になるって…あずにゃん」

律「…う、ぐ…あああ…」ユラ…

梓「律先輩っ! そ、そんなことないですよね? 吸血鬼になんてなりませんよね!? これもまたごっこ遊びなんですよね!?」

律「…ふしゅるー」

梓「うわー! 律せんぱーいっっ!!」

梓「うわあああ!!」タタタ…

唯「あ、待ってよ! …あずにゃん逃げちった」

律「ノドガ…ハラガ…」

唯「うんうん。わかるよ、りっちゃん。苦しいよね…だから私たちは人の血を吸わなきゃいけないんだよ! この苦しみから逃れるために!」

律「ふしゅるー」

唯「頑張ろうね! りっちゃん!」

和「唯」

唯「あ、和ちゃん」

和「あんたにしてはよくやったわ。昨日吸血鬼になったばかりなのに…上出来よ」

唯「悲しいけど…本能に従っただけだよ。それになんかしらないけどみんなウチに勝手に来てくれたしね。なんでだろ?」

和「学校を休んだからでしょう。唯は普通の吸血鬼だから日が出てる時間外にでれないから」

和「まぁ、私がお見舞いに行けって催促しただけなんだけどね。ふふ」

唯「ありがとー、和ちゃん」

梓「はぁ、はぁ…澪先輩! ムギ先輩!」

梓「いない!? なんで!?」

梓「わ、私をおいて帰っちゃったの!? チクショウあのコンチキショウどもっ!」

グイッ

梓「え、わあっ!? きゃあああ!!」

澪「しっ、静かにしろ! 梓っ」

梓「み、澪先輩…! それにムギ先輩も!」

紬「ああ、無事でなによりだわぁ…ふぅ」

梓「たたた大変なんですっ、唯先輩が…律先輩がぁ…」

澪「やっぱりそうだったか…」

梓「え…?」

紬「あの影の薄い子…えっと、純ちゃんだったかしら? あの子がさっき私たちを襲撃してきたのよ」

梓「じゅ、純が!?」

紬「普通じゃない様子だったわ…それで私、もしやと思って吸血鬼に対抗する手段を色々とってみたの…そしたら」

澪「全部効いたんだ。最後に純ちゃんを窓から思いっきり外に放り投げたら日の光を浴びて苦しみながら塵になった」

梓「そんな…ていうか澪先輩、怖くないんですか」

澪「…ただのやせ我慢だよ。あんなのが出てきたんだ…ワガママは言ってられないよ」

梓「先輩…」

紬「しっ。…誰か部屋に入ってくるわ。物音を立てずにこのままここに隠れましょう」

スタスタスタ…

憂「あれ…? 純ちゃん? どこー?」

梓(憂!?)

憂「純ちゃーん! おかしいな…確かに澪さんたちのところに向かわせたのに」

憂「…それに澪さんたちがいない。まさか、逃げちゃったのかな…だったら困ったよ…」

紬(憂ちゃん…やっぱりあの子も)

澪(まったく! どうなってるんだこの家は…)

梓(憂が着てるエプロン…真っ赤だ…もしかして昨日唯先輩についていた赤いのって…ミートソースなんかじゃなくて…血…!)

憂「…ん? くんくん、くんくん…」

憂「澪さん、ムギさん、梓ちゃんの匂いがする…くんくん」

澪・紬・梓(っ!!)

憂「もしかしてまだ家の中…?」

憂「くんくん…匂いはするけど…血の匂いがまだ残ってて上手く嗅ぎ分けられない」

紬(嗅覚が発達してるんだわ…!)

澪(まずいぞ…下手に動くわけにもいかないし、ここにずっと隠れているわけにもいかない…)

梓(待って…また誰か来ますっ)

律「ウ、ア…アアア…」

憂「あ、律さん! 律さんも吸血鬼になったんですね! よかったぁ~」

澪(律…っ)

律「ノドガカワイテ…ウイチャン…」

憂「かわいそうに…早く血を飲ませてあげないと! 待ってて下さいね。きっとこの家の中にまだ残りの3人がいるはずですから…あの人たちの血を…」

梓(憂…どうしちゃったの…)

澪(隠れてからもう30分ぐらい経った…この分じゃ外はもう日が沈んでるよ)

紬(なんとかこの家を脱出しても…逃げ切れるのかしら…)ガクガク

梓(なにか…なにかいい策は……あ! ありますっ、リーサルウェポン!)

紬(え…梓ちゃん?)

梓(こんなこともあろうかと…)ガサゴソ

梓(買っておいたんです。にんにく!)テッテレー

澪・紬(GJ!!)

澪(ていうか出すならもっと早くに出してくれよっ)

梓(えへへへー)

紬(1、2の3で出て行こう? 出たらまっすぐそこの窓から外に…)

澪(飛び降りるんだ。梓)

梓(なんで私ですか!?)

澪(最後まで聞け。いいか? 梓は窓から…私は玄関からムギは1階のベランダから逃げるんだ。散り散りになって逃げた方が纏まって逃げるよりいいはずだ)

梓(いいかもしれませんけどなんで私だけそんなハードなポイントから脱出しなきゃいけないんですか!? ここ一応3階なんですよ!? 飛び降りたらちょっとの怪我じゃ済みません!)※現在、3階の部屋

澪(大丈夫。運が良ければ足を挫くぐらいですむはずだよ)

梓(運が良い!? 足挫いたら逃げることできないでしょ!? もう澪先輩がやってくださいよ!)

澪(やだ! 梓は軽いから高い所から落ちてもきっと大丈夫なはずだろ!?)

梓(コノヤロー!! なめてんですかっ!?)

紬(ちょ、ちょっと二人とも! そんなに騒いだら外に音が…)

ガチャリ

憂「みーつけたっ、あはっ」

澪・梓「うわあああああ」

憂「こんなところに隠れてたんですね。全然気がつきませんでしたよ?」ニコ

澪「あわわわ…」ガチガチガチ…

紬「も、もうダメだわ…」

梓(さっきの勇ましさはどこへ行った!?)

憂「さぁ、観念してこっちに…」

梓(…私が、やるしかないっ)

梓「やってやるです!!」グイッ

憂「ふぐっ、…ひっ! そ、それは…に…に…に…」

梓「にんにくだよ…憂!」グイイッ

憂「ワアアアアアァァ! イヤアアアァアアア!!」

梓「今ですっ、逃げますよ!」

澪「よ、よし! 梓! 窓から…」

梓「いい加減にしてくれませんかね!?」

タタタ…

澪「なんで着いてきたんだ!」

梓「嫌だって言ってるでしょ! 私も玄関から逃げますっ」

紬「じゃあ私も…」

バッ

律「ウアア…ミオー…ムギー…アズサァー…アアアア」

澪「り、律っ」

律「ノドガカワクンダ…クルシイヨ…チヲ…チヲ…」

梓「何してるんですか! はやくにんにくを!」

澪「律…」

紬「えーいっ」ドン

律「ゲッ…アアアアア」ドンガラガッシャーン

紬「これで少しは時間稼ぎになるはず…いこうっ」

ギュッ

紬「え…」

唯「んあー…」

ガブッ

紬「っああ!?」

澪・梓「ムギ(先輩)!?」

紬「あ…ああ……」バタリ

唯「ごちそうさま! ムギちゃん!」

澪「ゆ、唯…お前…」

唯「ほら、りっちゃんしっかりして? ねー、みんなも吸血鬼になろうよ! なんかすっごく気持ちいいんだよ~」

律「アアア…アアー…」

梓「い、嫌です…そんなの嫌ですっ! 唯先輩どうしちゃったんですか!?」

唯「どうもしないよー、吸血鬼になっただけだよ…さて、と」ズンズンズン…

律「チィ…チィ…チィヲクレー…」ズンズンズン…

梓(逃げ場がない…お、終わった…)

ガシッ

唯・律「!」


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最終更新:2010年09月18日 19:58