番外編  姫子とエリと

エリ「ねーねー、姫子ちゃん」

姫子「何?」

エリ「一緒にご飯食べない?」

姫子「……うん」

二人は机を並べる。

エリ「そういえばさ、国語の教師の田中先生、不倫してるんだってー」

姫子「ふうん」

エリ「奥さんいるのにね」

姫子「うん」

エリ「そうそう、国語と言ったらさ……」

エリが話題を提供して、姫子が相槌をうつ。

いつもの光景だ。


しかし、その日は違った。

紬「わ、私も一緒に食べていい?」

紬がきたのだ。

エリ「あ、紬ちゃん! いいよー」

紬「ありがと。姫子ちゃんも」

姫子「……うん」

紬「あ。エリちゃんOCの宿題やった?」

エリ「あ、うん。やってるよー」

紬「ごめん。見せてー。昨日やってないのよ」

エリ「いいよー」

姫子(早くどっかいけよ)

姫子(私とエリの時間を邪魔すんなよ)

紬「あら? どうしたの、姫子ちゃん。そんな怖い顔をして」

姫子「何でもない」キッ

紬「そ、そう」

エリ「あ、ちょっと私購買行ってくるね」

紬「何買うの?」

エリ「焼きそばパン」

紬「え? そんなのあるの?」

エリ「知らないの? 」

紬「ええ。焼きそば自体、この前初めて食べたのよ~」

エリ「じゃあ、是非食べたほうがいいよ。一緒に来る?」

紬「行く」

姫子「私も」

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エリ「今日は人が少ないねー」

姫子「うん。焼きそばパンも余ってる」

エリ「二つだけかー」

紬「へえ! あれが焼きそばパン! 斬新な形ね!」

エリ「でしょ! じゃあ、私。買って来るね」

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教室

エリ「ここに二つの焼きそばパンがあります」

紬「うん」

エリ「私たちは三人です」

姫子「うん」

エリ「私は昨日、一昨日と、焼きそばパンを食べてません」

紬「そうだったの?」

エリ「うん、だから、一つ丸々食べたい」

姫子「……いいよ」

エリ「ほんとう? ありがとう!」

エリは片方の焼きそばパンを食べ始める。

エリの顔に浮かぶ笑顔は、純真そのもの。それを見れただけよしとするか――と、姫子は思った。

紬「じゃあ、姫子ちゃん。余ったほう、二人で分けて食べましょうか」

姫子「え?」

紬「だって、姫子ちゃん。とっても食べたそうにしてるわよ」

姫子「……食べる」

紬「でしょう。よかった」

紬は焼きそばパンを二分割すると、はい、と姫子に片方を渡してきた。

なんだ、紬って子。意外といいやつかもしれない、と心の中で呟きながら。

姫子はゆっくりと、焼きそばパンを食べた。

姫子「……美味しい」

自然に言葉が出てきた。

                               終わり



最終更新:2010年09月18日 21:03