こんばんは、中野梓です。

今日は唯先輩の提案でけいおん部のみなさんや憂に純、和先輩たちとバーベキューパーティーをしました。
今はその帰り道、あたりはすっかり暗くなってしまってます。
私は門限までに帰ろうと途中の公園を抜けて近道をすることにしました。

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梓「すっかり遅くなっちゃったなぁ」

梓「(あれ?あのベンチに座ってる人…さわ子先生かな?)」


そこには髪の長い女性が俯いて座っていた。
髪で顔はよく見えないけど、桜高けいおん部顧問の山中さわ子先生だ。


梓「(あいさつくらいしてった方がいいよね)」

梓「先生こんばんは。こんな時間に何して…」

さわ子「えっ?あ…」


普段より一層綺麗にメイクされた先生、その瞳からは涙が零れ落ちていた…。


梓「いえっ、あの…すみません!」

さわ子「梓ちゃん…うぅ…」ポロポロ

部活ではいつもダラダラとふざけている先生。
メイクのせいか、いつもより色っぽく落ち着いた雰囲気を醸し出している。

そんな中、今はまるで玩具を買ってもらえず泣いている少女のようだった。
同性でしかもずっと年下である私でも思わず抱きしめたくなってしまう。


梓「あ、あの…先生?」

さわ子「…ごめんなさい、恥ずかしい所見せちゃったわね…」

梓「いえ…」

梓「…」

さわ子「…」


沈黙が辺りを支配し、静まりかえる二人。
…きまずい。

梓「あの、先生は彼氏さんとデートか何かだったんですか?」


って私は何を聞いてる!?
もしそうだったとしてもこの状況、絶対に何かあった後だ。
私のばか…KYにも程がある…orz

梓「すみません!い、今のはなしです!」

さわ子「彼氏…かぁ。私もこの歳だし、今まで何人か恋人もいたわ」

さわ子「でもね…彼氏なんて一度もいないの」

梓「はい?」


先生は何を言っているのだろう。
私は少し混乱した。


梓「えっと…それって…」

さわ子「…私ね…」

さわ子「…同性愛者なの…」


梓「…」


驚いた…。
まさか先生が同性愛者だったなんて…。
でも嫌悪感はなかった。

さわ子先生は綺麗だ。
同性愛者だとしても、そこにはどこか高貴で神聖なものを感じる。


さわ子「…今日もね、仲良くしていた子がいてね…」

さわ子「それでその子に告白したんだけど…ふられちゃった」

さわ子「彼女、最初は冗談だと思って笑ってた…でも、私が本気だってわかると…やっぱり気持ちわるいって…」

さわ子「まあ、それが普通よね」

梓「そんなことないです!」

さわ子「あ、梓ちゃん?」

梓「先生は綺麗ですし、ギターも上手いし…あとはえーっと…眼鏡ですしそれに、えっと…」

さわ子「ふふふっ。梓ちゃん、ムリに誉めなくていいのよ」クスクス

梓「いえ、そんなムリなんて」

さわ子「でもありがと、なんだか元気が出てきたわ」ニコッ

梓「!?いえ、私は何もしてませんから…///」


まだ少し潤んだ瞳でのその笑顔…破壊力バツグン過ぎです…。


さわ子「ってゆーか教え子になんて話してんのかしら!忘れなさい、忘れるのよ梓ちゃん!///」ウガー

梓「そんなのムリですよ。でも先生の秘密にぎっちゃいましたねー」クスクス


…いつもの先生だ。
やっぱりさわ子先生はこうでなくっちゃ…。


さわ子「はぁ、まあいいわ。ごめんね、遅くまで付き合わせちゃって」

梓「いえ、いいんです。それじゃあ先生、さようなら」

さわ子「梓ちゃん、今日はホントにありがとう」ニコッ

梓「いえ、それじゃあ私はここで///」


なんだろう…。
少し気分は高揚し、なんだかちょっぴり幸せな気分。
今日はいい夢を見られる気がする。


ガチャガチャ

梓「あれ?開かない…」


時刻はもう日付が変わっていた。
私は今日、初めて両親に土下座をしました。


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よくじつ!

梓「(昨日はヒドイ目にあった)…もう子供じゃないんだから門限くらい」ブツブツ


何気なく職員用の駐車場に目をやる。
いつもこの時間には既に停まっている赤い車がない。


梓「(先生、今日はまだ来てないんだ…)」


ーーーーー


ほうかご!


梓「こんにちは。すみません、掃除のゴミ出しがあったので遅くなっちゃいました」

律「おっ、やっと来たか。よし、ムギ!お茶の準備だ!」

紬「ラジャ!」

梓「いや、練習しましょうよ!」


ガチャ


さわ子「みんな揃ってるわね。さてムギちゃん、今日のお菓子はなぁに?」ワクワク

紬「今日はザッハトルテです」ニコ

さわ子「いや~ん、ムギちゃん愛してるぅ」ムギュ

紬「さ、さわ子先生///」カァ

梓「…」

律「しっかし、さわちゃんは教師なのにいい加減だよなぁ」モグモグ

澪「こら律、口にものを入れて喋るんじゃない」

さわ子「むー何よりっちゃん」モグモグ

唯「だってさわちゃん、今日なんか遅刻ギリギリだったよねー」モグモグ

澪「唯にさわ子先生まで…もう」

律「どーせ男にフラれてヤケ酒でもしてたんだろ」ケラケラ

さわ子「もう!りっちゃんのいけずぅ」

紬「先生、口にチョコレート付いてますよ」クスクス

さわ子「ほんと?澪ちゃん拭いて~」

澪「もう、自分で拭いてください!」

梓「…」


いつものさわ子先生。
でも私は先輩たちの知らない先生の別の顔を知っている。
ふふふっ、なんだか優越感♪


梓「皆さん、そろそろ練習しましょう!」

さわ子「あーおいしかった。それじゃみんな、練習がんばってね」

律「なんださわちゃん、ケーキ食べに来ただけじゃん!働けー顧問!」

さわ子「お、大人は色々と忙しいのよ」

唯「大人はずるいよ!」


先生はこの後いつも吹奏楽部に顔を出しているんです。
決してお菓子を食べて遊んでるだけじゃありません!
先生はあれで結構忙しいんですから。

なんだか私が一番先生のこと理解してるみたいですね。
あっ、やばい顔がにやけそう。


ーーーーー


律「ふぅ、んじゃそろそろ帰るか」

紬「そうね、もうすぐ下校時間だし」

梓「あ、私もう少し自主練したいので皆さん先に帰っててください」

澪「そうか、梓は偉いな」

唯「え~あずにゃん帰らないの~」ブー

律「梓のくせに生意気なぁ!」

澪「コラ、律と唯はもっと梓を見習え」

紬「梓ちゃん、あまり無理しないようにね」

梓「はい、ありがとございます。皆さんお疲れ様です」

唯「じゃーねあずにゃん!」


ーーーーー


梓「~♪」


ガチャ

さわ子「あら梓ちゃん、まだ帰ってなかったの?」

梓「あ、先生」


そして下校時間にはいつも音楽室を覗きに来ている。
それに部屋の掃除までして帰ってるんだから。
きっと皆さんは気付いてないんだろうなぁ…。


梓「ここのソロの所がなかなかうまく弾けなくて…」

さわ子「なら先生にまかせなさい!特訓してあげるわ」フンスッ

梓「ありがとございます!」


ーーーーー

~♪

さわ子「うん、もう完璧ね。さすが梓ちゃん」

梓「いえ、先生の教え方が上手いから」


…先生ごめんなさい。
実はここ前から練習しててホントは弾けるんです…。
先生と一緒に居たいから嘘つきましたすみません。


梓「先生…もう平気なんですか?」

さわ子「へ?ああ、昨日のこと?まあ平気といえば嘘になるけど」

さわ子「でも失恋した時はヤケ酒に限るわぁ。でもおかげで遅刻しそうになったけどね」テヘッ

梓「もう、お酒も程々にしてくださいよ」ハァ

さわ子「それに仕事とプライベートはきっちり分けなきゃね」

梓「…やっぱり先生にとって私達は仕事上の関係でしかないんですか?」

さわ子「急にどうしたの?」

梓「あの!私、さわ子先生のことが

さわ子「梓ちゃん」

さわ子「もう下校時間も過ぎてるし、帰りましょっか?」

梓「…はい」


さわ子「鍵は私が締めておくから先に帰ってなさい」

梓「わかりました…すみません」

さわ子「いいのよ。それじゃあ気を付けてね」ニコッ

梓「はい、先生さようなら…」


バタン


さわ子「私は教師…なのよね…」

さわ子「…」

さわ子「さ、掃除でもして帰ろうかしらね!」ヨイショ

さわ子「…私もまだまだ捨てたもんじゃないかしら」フフフッ


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最終更新:2010年09月22日 00:41