カフェ。

姫子「と、いうわけで、今日は私のとっておきのお店。このお店、知ってる?」

和「いえ、初めてよ。楽しみだわ」


カランカラン イラッシャイマセー

姫子につれてきてもらったお店。

新しいお店のようで、広く、清潔感のある木目調の店内。まさにカフェといった雰囲気。

和「へぇ、明るい感じの店ね」

見ると桜高の制服が随分たくさん見える。というか、クラスの子も何人もいる。


信代「あ、姫子じゃん!」

慶子「ほんとだ。って真鍋さんもいる。珍しい!」

姫子「ここ、お勧めなんだ」

和「ずいぶん知った顔がいるわね」

姫子「ここ、夏休み前くらいにできた店なんだけど、運動部の外回りのコースでさ。

   運動部の連中でひそかに流行ってるの」

和「へぇ、そうなんだ」

姫子「明るくておしゃれな雰囲気だしさ、長居しても文句言われないし。

   そして何よりのウリはここ、ドリンクの種類がすごくいっぱいあっていいんだ。

   フレーバーティーに、フレーバーコーヒー出してるところなんて珍しいでしょ」

エリ「そう!このお店のすごいところはそこ!!」バンッ

和「瀧さん、いたんだ」

エリ「コカコーラ、ペプシ、ダイエットなどの基本はもちろん!

   バニラにツイストなんかの普通のお店では見ないのも完備!!

   なんとさらにバオバブやらキューカンバーの色物まで揃ってるんだよ!!!

   こんな良いお店ないよ!

   ま、さすがにキューカンバーは賞味期限が既に切れてるけどね」フンス

和「そうなんだ、じゃあ私コーヒーにするね」

エリ「ちょ、あれぇ?」

アカネ「……エリ、どんまい」

潮「それにしても珍しい組み合わせだよね。真鍋さんと立花さんって」

姫子・和「そうね」

慶子「自分たちで言っちゃうんだ」

姫子「まあ色々あってね。はい、これメニュー」ヒョイ

和「ありがと。あ、ほんとに種類多いのね」


姫子「私はカフェラテ。あと、チョコレートケーキ」

和「じゃあ、私はブレンドと果物のタルトで」

エリ「えー、コーラにしないの?」

アカネ「もうあきらめようよ」


潮「なんかさ、ちずるが夏休みに死にかけたらしいよ」

信代「なにそれ?」

潮「たしか、東南アジアに旅行に行って、日焼けしたら死にかけたって」

慶子「意味わかんないから」

潮「いや、わたしも詳しくは知らないんだけどさ」


いちご「日焼けしていて偽札製作の人に間違えられて、マンハントやら何やらに巻き込まれて、海賊魚雷船に助けてもらった、らしい」

アカネ「いちご知ってるの?詳しく教えて」

いちご「これ以上はただでは教えられない」

エリ「じゃあ、このペプシおごるから!」

いちご「そんなのじゃ御代にならない」キューティクル

エリ「えー」

和「なんだかんだで騒がしいわね」

姫子「まぁ、うちのクラスだからね」

和「そうね。あぁ、ここのブレンドもいけるわね」

姫子「ケーキ一口もらってもいい?」

和「ええ、どうぞ」

姫子「じゃあ、一番上のところいい?」

和「もちろん」

姫子「そういえば、明日提出の数学の課題終わった?」

和「ええ」

姫子「最後の問題、できた?あれだけがどうしても……」

和「……ああ。持ってきてるわよ、今日は」

姫子「ありがとう!すごく助かる」

和「唯もこのくらい熱心になってほしいわ」

姫子「ふふ、そうね」

和「最後の問題は……」


エリ「真鍋さん、私たちにも教えて!」

アカネ「私たちの列、絶対明日当たるから!!」

和「そうなの?」

姫子「そう、だから私やってたの」

和「はぁ、しかたないわね」


信代「あの二人ってさ、珍しい組み合わせだけどさ」

潮「合ってるよね」

慶子「精神年齢高めで。なんていうか」


いちご「保護者」

信代・慶子・潮「うん」


いちご「唯の」

信代・慶子・潮「そう、それ」



夜。

和「ふぅ……」

ノートと参考書から目を離し、一度大きく伸びをする。

時計を見ると、時間はそろそろ日付が変わろうかという頃。

もう1つ、次の区切りのいいところまで進めたいが、疲れもかなり、そして眠気もかなりきている。


和「コーヒー、かな」


部屋を出て、キッチンに向かう。

幸い、両親や弟妹は既に寝ているみたいだった。

ポットに水を汲んでコンロにかける。

お湯が沸くまでに、豆を挽き、フィルターに入れて均す。

香ばしいコーヒー豆の香りが心地いい。


和「あっと、もう沸いた」

沸いたお湯をすこしだけ豆に注ぎ、しばらく蒸らす。

もこもこと膨れる豆を見るのは嫌いではないが、その間にマグカップにもお湯を注ぎ、温める。

そろそろかな?

中心からゆっくりゆっくりとお湯を注いでいく。

ドリップされて、落ちたコーヒーが少しづつたまっていく。

和「よし、できた」

量がたまった所で、直ぐにフィルターを外して、温めたマグカップにコーヒーを注ぐ。

和「いい香り」

香りを楽しみながら、一口飲む。

あぁ、やっぱりおいしい。

熱いコーヒーに、しっかりとした苦味、香ばしいかおりが、眠気を吹き飛ばしてくれる。

今日は頭を使ったし、今からも頭を使う。

頭を使うには、糖分が必要。

だから、夜中だけど、糖分を取るのは仕方ない。

自分でも胡散臭いと分かっている三段論法を使って自分自身に言い訳をしながら、誘惑に負けて茶菓子を探す。

あったのは、買い置きだろうクッキー。甘い。

ゆっくりと味わいながらコーヒーとクッキーを交互に口に運ぶ。

和(唯は、明日の数学やってきては……ないでしょうね)

 (あの子の場合、覚えてるかどうかも怪しいわね。姫子に教科書を貸してたあたり)

 (電話かメールは……もう遅いかしら?けど、一応)


携帯を手に取り、メールで唯に『数学の宿題、忘れてない?』とだけ送っておく。

間に合うといいけれど。


和「さて、もうひと頑張りね」



翌日、放課後。

唯「終わったー!もう疲れたよー」

律「よし、早く部室いこうぜ!」

和「相変わらず疲れたといってる割に元気いいわね」

澪「和の言うとおりだ。その元気を少しは勉強にだな」

律「これはあれだ。お茶会が待ってるからそのために最後の元気を振り絞ってるのさ」

紬「今日はケーキ持ってきたわ」

唯「わーい、ケーキ!ショートケーキある?」

姫子「和、あの」

和「あら、どうしたの?姫子」

姫子「この間いった喫茶店さ、もう1回つれてってくれない?場所忘れちゃってさ」

和「ええ、構わないわよ、今日も特に予定も無いし」

唯「あれ?和ちゃんに姫子ちゃん、呼び方………」

律「意外だな、二人って仲良かったのか?」

澪「たしかに」

紬「一緒にお茶に行ったみたいね」

和「ええ、この間から少しね」クスッ

姫子「割とほんとに最近だけどね」フフッ


唯「いいなー、私もそのお店いきたーい!

  ねぇねぇ、二人とも連れてってー!」

姫子「うーん、唯はちょっと……」

和「今日は唯は諦めた方がいいわ」

唯「そんなー。ひどいよ、和ちゃんも姫子ちゃんも。

  私を仲間はずれなんてー。なんでなんで?」


和「別につれて行ってあげてもいいんだけど条件が……」チラッ

姫子「あ、そうね。うん……」コクン


和・姫子「唯がコーヒー飲めるようになったらね」


おわりです



最終更新:2010年09月22日 22:11