同日 PM 5:30
純「こんばんわー」
憂「あ、純ちゃん。早いね」
純「えへへ。楽しみでね」
憂「ま、いいや。入ってー」
純「うん。お邪魔しまーす」
純は憂のあとを追って、リビングに入る。
純「綺麗だね、部屋」
憂「そうかな?」
純「そうだよ。うちよりずっと綺麗」
憂「毎日掃除してるから、かな」
純「へー、だからか……」
純「あ、美味しそうな匂い」
憂「ケーキやいてるんだ」
純「え! 作れるんだ!」
憂「うん。作れるよ。三人分だから、ちょっと大きいけどね」
純「大きくてもいいよ。憂の作ったものなら、何でも食べれちゃう」
憂「そう言ってもらえるとうれしいよ」
数十分後
憂「お待たせー」
そう言いながら憂が運んできたのは、すこし小さめのホールケーキだった。
純「お、美味しそう!」
憂「ちょっと手間取っちゃった」
純「ううん。充分だよ」
純「食べていい?」
憂「うん。どうぞ」
純「いただきまーす!」
憂「あ、ごめん。切り分けるね」
純「あ、うん」
憂はナイフを持ってきて、ケーキを切り分ける。切り取ったそれを、皿に乗せていく。
憂「はい、どうぞ」
皿に乗せられたホールケーキの半分が、純の前に出される。
純「では改めて、いただきまーす」
憂「召し上がれ」
パクパク 純「んー! 甘くて美味しい!」 パクパク
憂「そう? ありがとう」
純「すごいねー、憂って。こんなのも作れちゃうんだから」
憂「お姉ちゃんのために作ってたら、得意になったんだ」
純「ふぅん」ムグムグ
純(いいなぁ、こんな美味しいもの食べられるなんて)
純(唯先輩、超羨ましいよ)
憂「じゃ、私も食べよ」
モグモグ モグモグ
憂「うーん、ちょっと砂糖入れすぎちゃったかな」
純「えー? このくらいが丁度いいよ」
憂「そうかな?」
純「うん。そうだよ」
純「私もこんな風に、料理うまくなりたいなー」
憂「料理、作ってあげたいんだ?」
純「うん」
憂「やっぱ、その……いつか言ってた、好きな人に?」
純「……うん」
憂「頑張ってね、応援してるよ」
純「ありがと」
純はすこし、悲しくなった。
純「そうだ! この前憂、レモンティー好きって言ってたでしょ?」
憂「うん」
純「紅茶、うまく淹れれるように頑張ったんだ。飲んでみて欲しいな」
憂「え! 飲ませて!」
純「うん、淹れてくるね。あ、ケーキ美味しかったよ」
憂「あ、うん。ありがとう」
純「いやいや、お礼を言うのはこっちだよ」
純はキッチンに向かう。
数分して、純がレモンティーの入ったカップを二つ、持ってきた。
憂「香りがいいねー」
純「えへへ」
憂「飲んでみていい?」
純「もちろん! あ、熱いから気をつけてね」
憂「私、猫舌じゃないから平気なんだ」
こくこく、とレモンティーを飲む。
憂「美味しい。すごいね、たった数日で、ここまで美味しく淹れられるなんて」
純「頑張ったんだ」
憂「純ちゃん、絶対いいお嫁さんになれるよ」
純「紅茶と関係がないと思うけど」
純は照れを隠すように鼻を掻いた。
純「そう言われると、何かうれしいな」
憂「あ、そうだ。今日渡せるように頑張って作ったんだ」
憂はそういいながら、自室へ向かった。
純(作った……つまり、手作り!)
純(手作りって、なんだろ……何でもいいけど、楽しみだなぁ)
憂がやってくる。
憂「はい。クリスマスプレゼント」
純「――マフラー?」
憂「うん」
純「あれ? これ長くない?」
憂「二人用のマフラーなんだ」
憂「好きな人と一緒に使って欲しいなって」
純「……そっか」
純「ねぇ、これ首に巻いて、二人で外散歩しない?」
憂「え? でも……」
純「初めては憂とがいいな」
憂「うーん、わかったよ」
憂「……私でよければ」
純「よかった。断られたらどうしようかと」
憂「そんなこと、しないよ」
純「あ、そうそう、言い忘れてた」
憂「? 何?」
純「プレゼントありがとう、憂」
憂「…………えへへ」
憂は嬉しそうに笑った。
それを見て純も笑った。
外
夜空は星空、そして半月が浮かんでいた。
やわらかな光を身に浴びて、同じマフラーを共有した二人は外を歩く。
純「綺麗だね、空」
空気はきん、と冷えている。けれど憂といるから、気にならなかった。
憂「うん。綺麗」
純「今年も終わっちゃうね」
憂「すこし寂しいなー」
純「うん。私も」
憂「ねぇ、この前聞きそびれたんだけどさ」
純「ん?」
憂「純ちゃん、大学どこ行くの?」
純「私は――」
憂「うん」
純「私は……N女だよ」
憂「私と一緒かぁ」
純「うん。お互い頑張ろうね」
憂「でも、何でN女?」
純「それは」
一瞬、言葉に詰まった。
純「……憂と一緒がいいからだよ」
憂「え?」
もう後には退けない。言ってしまえ。
純「憂とずっと、一緒にいたいんだ。私」
憂「……そ、それは、告白みたいな?」
純「告白とかじゃなくてね。私は単に、憂と一緒にいたいんだ」
憂「そう、なんだ」
純「うん。…………もちろん、親友としてね」
純(それでいい。まだ、親友のままでいい)
純(とにかく、憂と一緒にいよう。まだ、恋人にならなくてもかまわない)
純(恋人になりたいけど、今は、親友でいい)
純(まだ、時間はあるんだし)
純(いつか、必ず、私に振り向かせてやるんだから!)
そのために――――…………
ちょっとばかし深呼吸して、純は言った。
言っただけなのに、とても心臓がばくばくと鼓動する。
純(思ったより、恥ずかしいなぁ。手繋ごうって言うの)
憂「え?」
純「いや、ちょっと寒くなってきたじゃん」
純(うまい理由言えて良かった……)
憂「ああ、確かに……」
純「ね?」
純は憂の手を握る。
冬の寒さすら忘れてしまいそうなほど、暖かい。
憂「純ちゃん、すこし手冷たいね」
純「え? そう?」
憂「手の冷たい人は心が暖かいんだって。お姉ちゃんが言ってた」
純「ふぅん」
憂「純ちゃんが優しいのは、心が暖かいからかな」
純「……だったらいいな」
憂と二人。
繋いでいる手の暖かさを感じながら、純は空を仰ぎ見る。
純「あ……流れ星」
憂「え? どこ?」
純「もう消えちゃったよ」
憂「えー。でも、この時期に流れ星って、何だか珍しいね」
純「そうかな?」
憂「うん。流れ星って、夏のイメージなんだよね」
純「ふぅん」
憂「今何時かわかる?」
純「ごめん、わかんないや」
憂「そっか」
純は空を見つめ続ける。
すると、また流れ星を見つけた。
純(ずっと憂と一緒に入れますように、憂といっしょn……あぅ、消えちゃった)
憂「どうしたの? 純ちゃん?」
純「あ、ううん。ちょっと流れ星にお願いしてたの」
憂「なんてお願い?」
純「それは――――」
純「憂と一緒にいられますようにって」
憂「……大丈夫だよ」
純「え?」
憂「私たちは、ずっと一緒にいられるよ」
純「何で?」
憂「もう、親友でしょ?」
純「――うん」
純(もう、親友かぁ)
純(私にしたら、『まだ』親友なんだよなぁ)
純(いつか絶対、私に惚れさせてやる!)
純はまた、空に目を向けた。
憂の手を、すこし強く握った。
終わり
番外編 お正月
神社
梓「あけましておめでとう、純」
純「梓。久しぶり」
梓「うん。久しぶり」
純「誰と来たの?」
梓「一人。純は?」
純「私も一人」
梓「じゃあ、一緒におみくじとか引かない?」
純「うん。いいよ」
梓と純はおみくじ売り場へと向かった。
おみくじ売り場
梓「やったぁ! 私大吉!」
純「私も。ていうか、こういうところって、みんな大吉しかないんじゃないの?」
梓「まさか。私は去年、平だったよ」
純「ふーん」
純(平なんてあるのかな?)
梓「私は……恋愛成就だって」
純「あ、私は学業」
梓「へえ! 受験生になるんだから幸先がいいね」
純「まぁ、確かに」
梓「あ、絵馬あるね。書いてこうか」
純「うん」
絵馬売り場
梓「純ー、なんて書くの?」
純「うーん、なんて書こうかな……」
梓「あ、憂と一緒に……的なこと書いたら?」
純「えー、憂に見られたら恥ずかしいよ」
梓「じゃあ、大学現役合格、とか?」
純「うーん、来年でいいよなー、そういうの」
純「梓は何て書いたの?」
梓「軽音部に新入生が来ますように、だよ」
純「ああ、梓はそうだもんね」
純「じゃあ、私は――――」
純は絵馬に文字を書く。
梓「何て書いたの?」
純「何だと思う?」
梓「ジャズ研のこと?」
純「ううん」
梓「えー。じゃあ何?」
純「えっと、それはね――」
純「『三年生になっても、憂や梓と一緒のクラスになれますように』、だよ」
終わり
最終更新:2010年09月24日 22:36