憂「……」
憂「えっと……いったい何だったんだろ?」
憂「あ、早く帰って晩御飯作らないと!」
……
斉藤「……はあ」
斉藤「まさか女子高生に柵越えされるとはな。笑ってまうわ」
斉藤「これからどうすっかな……」
律「お~い、澪~」
澪「ん、律か」
斉藤(あれは確かお嬢様の……。って何で隠れてんだ俺)ササッ
律「昨日の試合見た?」
澪「昨日の試合って?」
律「野球だよ、や・きゅ・う!ホークスが連敗しちまったよ」
澪「ああ、それか。昨日は杉内が投げたんだよな?」
斉藤「……」
律「ああ、でも5回もたずノックアウトだよ。和田の調子も悪いし……」
澪「最近は先発陣が踏ん張れないよな、ホークスは」
律「SBM48とか言ってるけど、どんなに磐石な必勝リレーでも先発が頑張らないと意味ないのになあ」
澪「でもホークスって先発陣がかなり強くなかったっけ?」
斉藤「……!」
律「あ~、数年前はな。杉内・和田のダブルエースに加えて、新垣と斉藤で4大エースって呼ばれてたなあ」
澪「杉内と和田はともかく、あと二人はどうしたんだ?トレード?」
律「まさか!新垣は今2軍だよ。もともと暴投王だったからなあ」
澪「へ~」
斉藤(渚……)
律「あとは斉藤か……あいつは今、プロブロガーやってるよ」
澪「はあ!?何だそれ」
律「だからブログやってばっかなんだよ。怪我して2007年以降は一回も投げてない」
澪「おいおい……」
斉藤(……)
律「ブログで日記書いて、彼女とデートしてるだけで数億円なんだもんなあ。世の中狂ってるよ」
澪「球団は何をやってるんだよ……」
律「でも斉藤は来年は支配下登録から外れるかもしれないってさ」
澪「え、クビ?」
斉藤(っ!)
律「いや、育成枠になるかもってさ」
澪「かつてのエースが育成枠って前代未聞だな」
律「ぷぷっ、そうだな」
澪「それにしてもホークスは優勝どころかCSも危ないんじゃないか?」
律「そうなんだよなあ。はあ、どっかに鷹の救世主はいないもんかね~?」
澪「そう簡単には見つからないから救世主なんだろ?さっ、帰るぞ」
律「お~」
斉藤(……)
斉藤「救世主か……俺には無理だ」
斉藤「プロブロガー、か。はは、言いえて妙だ」
斉藤「そうだ、ブログ……ブログを更新しないと……。俺を待っている読者のために……」フラフラ
紬「……そうやって、また逃げるのね」
斉藤「!?」
紬「言っておくけど、ブログの読者が聞きたいのは鷹のエース・斉藤の言葉よ。野球を捨てた負け犬を待っているんじゃない」
斉藤「う……」
紬「戻りなさい、斉藤。リハビリを続けるわ」
斉藤「でも俺はもう……女の子にも打たれて……。渾身のストレート、130も出てなかった……」
紬「球威が戻っていないのだから当たり前よ。それに球速のせいにしないで。和田選手は120km/hの直球を150km/hに見せて三振の山を築いた、という逸話を持っているわ」
斉藤「……」
紬「……」
斉藤「俺は、」
紬「……周りに何を言われようと、何を思われようと、俺のことを必要としてくれてる以上は頑張る」
斉藤「え……?」
紬「『投げれる』ことを信じて『今』を頑張る。その時の気持ちに『正直』に生きて行くのが『ROUTE66』や!」
斉藤「!!!」
紬「……分かる?あなたの言葉よ、斉藤」
斉藤「……ええ、もちろん」
紬「あなたは自分の言葉通りに生きてるの?あなたのROUTE66とやらはこんなところで終わるの?」
斉藤「……」
紬「私は、私たちホークスファンは、いつまでもエース・斉藤和巳の帰還を信じているわ」
紬「立ち上がりなさい、斉藤!あなたの2003年の20勝は……!2005年の16勝は……!2006年の18勝はっ!」
紬「投手四冠王は、2度の沢村賞はっ!」
紬「過去の栄光なんかじゃ……ない!」
斉藤「おじょう、さま……」
紬「あなたはまだやれる。絶対やれるから……!」ポロポロ
斉藤「……」グッ
紬「斉藤……?」
斉藤「ふふ、お嬢様を泣かせるなんて執事失格ですね」
紬「……」
斉藤「やりますよ、俺」
紬「え……?」
斉藤「もう一度、必ずマウンドへ戻ってみせます!お嬢様のために、俺を信じてくれるファンのために!」
紬「斉藤……!」
斉藤「不束者ですが、よろしくお願いします」
紬「ふふ、ここで使うにはおかしな言葉よ、それ」
斉藤「ははは、そうですか?」
紬「うふふふ♪斉藤!」
斉藤「何でしょう?」
紬「頑張りましょう!」
斉藤「はいっ!」
……
紬「みんな~、お茶が入ったわよ~」
唯「わ~い♪」
澪「おおいっ!?」
梓「練習……」
律「ティータイムの後にちゃ~んとやるって♪」
澪「絶対だぞ!」
紬「お茶菓子で~す♪」ドサッ
唯「おおうっ!?何か今日はいつもよりさらに豪勢だね~!」
梓「す、すごい量ですね……」
律「ムギ、何かいいことでもあったの?」
紬「復活祝いで~す♪」
澪「復活祝いって……誰の?」
紬「うふふ、秘密♪」
唯「何だかムギちゃん楽しそうだね~♪はむっ、うまい!」
律「もう食っとる……」
梓「もう唯先輩!口元にクリームがついてますよっ」
唯「あずにゃん取って~」
梓「なっ……も、もう。しょうがないですね」
律「いちゃつくなら他所でやれ~」
梓「そ、そんなんじゃないです!」
唯「えへへ~、私とあずにゃんはラブラブだよ~♪」ギュウ
梓「や、やめて下さい!///」ジタバタ
澪「こらこら、暴れるな~」
紬「うふふ……」
『……さあ首位攻防戦、大変なことになって参りました!お聞きください、この大歓声!』
『そうです、満身創痍のホークスにこの男が帰ってきているのです!炎のエース・斉藤和巳!肩の手術で今季絶望という話だったのですが……』
『ここまで首位・西武の強力打線の前に獅子奮迅の投球。なんと8回までに打たれたヒットは0!信じられません、本当に復帰後初登板なのでしょうか!』
『9回のマウンドにももちろん斉藤が上がります。さあ2007年以来の勝利へ、大記録へと向かってエースが躍動するっ!』
『第1球、投げた!ストライク!低め厳しい球……』
斉藤和巳。背番号66。 1995年、南京都高からドラフト1位で福岡ダイエーホークスに入団。
2000年、6月24日に対千葉ロッテ戦でプロ初勝利。
王貞治監督ら首脳陣には2003年1月に「エースは斉藤か寺原」と明言され、3月28日の対ロッテとの開幕戦で初の開幕投手を務め勝利。
その後プロ野球新記録となる先発16連勝を記録するなど、パ・リーグでは1985年佐藤義則以来となる20勝を記録。
2004年は調子を崩すものの、2005年に開幕15連勝を含む16勝、2006年には18勝を挙げチームを牽引。
気持ちを前面に押し出す投球でホークスのエースとして活躍。
度重なる肩の故障と手術により、2008年からは一軍での登板なし。
最多勝2回、最優秀防御率2回、最多奪三振1回、ベストナイン2回、沢村賞2回、1イニング4奪三振など、数々の輝かしい記録を持つ。
現時点での通算成績は79勝23敗、防御率3.33。
1977年11月30日生まれ。身長192cm、体重96kg右投げ右打ち。
終わり♪
最終更新:2010年09月28日 21:54