ガラガラガラ…
唯(なんか吹っ切れた)
律「あ、唯遅いぞー何してたんだー?」
唯「いやーごめん、ごめん。ちょっとしたハプニングが起きてさぁ」
律「ハプニング?」
紬「唯ちゃんも早くおいで~? 気持ちいいわよぉ」
澪「ふぃー…」
唯「ところでみんな、見てみて~」
律・澪・紬「?」
唯「ほら、パイパン!」
律・澪・紬「ぶっっ!?」
紬「ゆ、唯ちゃん声大きいわよ…!」
澪「唯! お前、まだ…」
律「さ、さっさとお湯の中に入れ…!!」
唯「えへへー」
律「ったく、何考えてんだ! 恥ずかしいだろ!」
澪「ていうか海に来たわけでもないのになんでそんな…」
唯「あれー? みんな知らないのー?」
律・澪・紬「え?」
唯「今、パイパンが熱いんだよ」
律「なんだと!?」
紬「き、聞いたことないわ。そんなの…」
澪「私も初耳だぞっ」
唯「えー、みんな遅れてるなぁ。女子高生として流行に疎いのはどうかと思うよ」
律「お、おい! デタラメ言ってんじゃないだろうなっ」
唯「あー、そういうこと言っちゃうんだ。せっかく親切心で教えてあげてるのに」
紬「唯ちゃんがこういうことで嘘をつくのは考えられないし…まさか」
澪「いやいや、よくまわりを見ろ! 誰もパイパンにしてる人なんていないぞ!」
唯「ばかだなぁ」フッ
澪「なっ」
唯「周りと一緒だから、みんなしてるから…そうやって自分を安心させてるんだ? 自分は普通なんだって思わせこんでるんだ?」
澪「ち、ちがっ」
唯「流行なんてね。どこから発生するかわからないんだよ。澪ちゃん」
唯「それならさ、私たちで流行らせちゃえばいいじゃない、ね?」
律「流行らせればって…やっぱり流行ってないんじゃないか!」
唯「だからばかなんだよ、りっちゃんは」
律「なにっ」
唯「今やパイパンは各世代の女性たちのあいだで少なからず流行ってきているんだよ。ゆっくりと、着実に」
唯「それにね、世の男性たちの中でも女性がパイパンにしてるってのを喜んでくれる人たちだって少なくないんだよ」
律「そ、そうだったのか…」
唯「今やパイパンはステータス。身嗜みだよ」
紬「そうだったのね…唯ちゃん、疑っちゃってごめんね…」
唯「ううん、わかってくれればいいの」
姫子・春子・三花「唯っ」
唯「ん?」
姫子「今の話聞いて…私たち、その通りだなって…唯の言うとおりだなって……その…」
唯「姫ちゃん…ふふ、わかってるよ。よーし、みんな! これからはパイパンの時代だよ! 陰毛なんて全部剃り落としちゃえ! あんな不潔なモジャモジャ私たちには必要ない! ありのままの自分を見せようよ!」
銭湯内全員「おぉー!!」
就寝時間!
スー…
「くー…くー…」
さわ子「ここもよしっと、ふー…担任ってのも大変だわ」
スー…トン
あかね「行った?」
エリ「行ったっぽい…今のうちだ!」
ショリショリショリ…
信代「あー、なんか新しく自分が生まれ変わるみたいな気持ちだねぇ」ショリショリ
エリ「やってみるといいもんだねーパイパン」
あかね「エリ、綺麗に剃れた?」
エリ「どれどれー」
ショリショリショリ…
和「…みんな何やってるの?」
「知らないの? 今パイパンがゲキアツなんだって」
和「知らないわよ…」
「真鍋さん遅れてる~」
「今からでも遅くないよー」
和「……」
和(いったいなにが起きてると言うの…?)
さわ子「あとは唯ちゃんたちだけ…んっ、まだ部屋の明かりが着いてる! まったくあの子たちはもぉ!」
ショリ…ショリ…
さわ子「…? なんか音が聞こえる……なにやってんの、ほんとに」
バンッ
さわ子「こら! あなたたちっ、はやく寝な……きゃあああ!!?」
律「あ、さわちゃん」
紬「こんばんは~」
さわ子「あんた達なにしてんのよ!?」
律「何って…見て分からないかなぁ」
澪「陰毛を剃り落としてるんですよ」ショリショリ
さわ子「んなの見てわかるわよ!! それよりなんでこんな…」
唯「さわちゃん先生」ス
さわ子「…な、なによ」
唯「…彼氏、欲しいよね? いい方法があるよ…」
さわ子「!!」
一夜にして桜高の3年生のあいだ(教師一名含む)でパイパンが流行った。
きっかけは銭湯での唯の発言。
唯はパイパンに苦しまれ続けた結果、パイパンのカリスマとして覚醒したのであった。
人は彼女をこう呼ぶ…パイパンガール。
唯「って、これ中学での私のあだ名じゃん! 嫌だよこんなの!」
和「唯…この騒ぎはあんたの仕業ね」
唯「和ちゃん…ふふ、私ね…わかったんだよ。仲間がいないのなら無理矢理作っちゃえばいいんだって」
和「そう…」
唯「いくら努力して陰毛生やしても肝心な時になくなってる…それなら私が陰毛を生やすんじゃなくてみんながパイパンになればいいだけだったんだよ。そうすればもう陰毛ごときに苦しまされなくてもいいんだ!」
和「そうね…唯。これだけは言っておくわ」
唯「…?」
和「あんたのパイパン姿が一番可愛い」
唯「…ありがとう、和ちゃん。今ならその言葉もよろこんで受け取ることができるよ」
唯「ということで私は見事パイパンを流行らせることに成功したんだ♪」
憂「す、すごいね! さすがお姉ちゃんだよ~」
唯「えへへ、この勢いで各地にも流行らせようと思ってね」
唯「今回の合宿は夏フェスにいくことに決定したんだよ」
憂「あ…なるほど。夏フェスはあっちこっちから人が集まるもんね」
唯「うん! 澪ちゃんもりっちゃんもムギちゃんもさわちゃんもパイパンだし、向かうところ敵なしだね」
憂「そっか、頑張ってねー」
憂(…ちょっとよくわかんないや)
夏フェス!
唯「見られても恥ずかしくないぐらい剃ってきたんだよぉ」
紬「私もよ~」
梓「なんの話ですか?」
律「ん? こんなところで言わせんなよなーパイパンの話だよ」
「ぶぅっ!?」
「パイパン!?」
「あの子たち、こんなところで何を…///」
梓「ちょっ!? 人が大勢いるところでそんな卑猥な単語出さないでください!!」
澪「卑猥? そんな言葉で片付けるなよ。梓」
梓「み、澪先輩まで…いったいどうしたんですか!?」
さわ子「今夜が楽しみね~♪」
澪「ええ、精一杯私たちの下半身を流行遅れの女どもに見せつけてやりましょう。そしてニューウェーブを起こすんです! この夏フェスという大きなイベントに!」
梓(ど、どうしちゃったの!? 合宿だよね!? ライブ見に来たんだよね!? あれじゃただの痴女の会話だよぉ…)ビクビク
お風呂!
ヌギヌギ…
律「唯ーこれで大丈夫かなぁ」
唯「バッチリだよりっちゃん!」
澪「いい感じでツルツルだな」
紬「可愛いー」
梓(うわぁ…ほんとにパイパンだよ…)
律「え、えへへ…そうかな///」
唯「あれ…あずにゃんのおまた…」
梓「あ、気づきました? 陰毛をピンク色にしてみたんです。それからほら、ピアスつけたんですよ~」
唯「…世の恥だよ、あずにゃん」
梓「え!?」
唯「あずにゃんはできる子だと思ってたけど…とんだ見込み違いだったようだね。残念だよ」
梓「そ、そんな…なにが…なにがいけなかったっていうんですか!? 教えてください! 唯先輩!」
唯「…もっと自分を見せるべきだよ。そんな陰毛という名の仮面を被ってないでさ。本当のあずにゃんを私に見せてよ」
梓「本当の…私?」
シュッ…パシッ
梓「これは…剃刀…」
さわ子「剃れ」クイッ
梓「山中先生…」
さわ子「何を大人ぶってやがる? お前はまだまだべビィなんだよ。ケツが青いガキなんだよ。大人ぶってんじゃねーよ。中野」
梓「……」
ショリショリショリ…
唯「それが、あずにゃんが出した答えだね?」
梓「はい! これがありのままの私! 見せつけます! 丸裸の私を!」ツルツルリン
澪・律・紬「おめでとう、おめでとう」パチパチパチ…
唯「みんな、いざ出陣だよ!」
澪・律・紬・梓・さわ子「おぉー!!」
ガチャリ…
紬「人が一杯だわ…」
律「そりゃあ夏フェスだしな」
唯「…ど、堂々と見せつけるように歩くんだよ!」
澪・律・紬・梓・さわ子「…お、おぉー!」
ズンズンズンズン…
「何あの人たち…」
「やだっ、パイパンだわ」
澪(ううっ…見られてる。恥ずかしい…///)
ズンズンズンズン…
「やだー何あれー」
「AV女優か何か?」
「こ、こっちに向かってくるわー!」
唯「ふんすっ」ドン!
「…!」
クルッ…ズンズンズン
「なんか…カッコよくない?」
「ちょっと良かったかも…」
「パイパンも悪くないのかも知れないわねぇ」
ショリショリショリ…
「あ、剃ってるし」
「私もちょっとパイパンになってみるわ」
ショリショリショリ…
「私も私もー」
「あの人たち見てたらしてみたくなってきたよ!」
律「…唯っ!」
唯「うん! 大成功だよ!」
梓「これが…これが…私たちHTTの力…凄いです! 感激ですっ」
さわ子「見て! あっちでもパイパンの人たちが増えてきたわ!」
紬「私たちの勝利ねっ」
澪「よ、よくわかんないけど…すごいよ…すごいよっ、私たち!」
唯(ああ…あんなにも疎まれてきたパイパンが…ああ…あああ…!)
唯「ぱ…パイパン大好きー!!」
「わーわー!」
唯「みんな、みんな、パイパンガール!」
唯「ってことでちょっくらパイパン流行らせてきたよ。憂」
憂「えー…」
唯「今まで私を馬鹿にしてきた子たちをこれでギャフンと言わせることができるよ。はっはっは」
憂(なんだかよくわかんないけど…お姉ちゃん、遠いところに行っちゃったなぁ…もう私の手が届かないくらい…)
こうしてパイパンガール
平沢唯の逆襲劇は成功を収めた。
しかし、世にはまだ陰毛という名の仮面を被る者たちが山ほどいる。
だが、唯は諦めない。
パイパンガールを増やすため、日々奮闘し続けるのだ。
唯「ぱいぱん!」
和「まったく、誰のせいでこんなことになったのやら…」
おわり!
最終更新:2010年10月01日 01:21