番外編  祭り

律「なあ、澪。夏祭りやってるんだってよ。行かないか?」

澪「え? ここでか?」

律「ああ。折角帰ってきたんだ。楽しもうぜ」

澪「――そうするか」

律「じゃ、行こうぜ」

澪「ああ」


神社

澪「ああ、神社の夏祭りか」

律「うん。あ、チョコバナナ買わないか?」

澪「昨日焼肉食べたばっかしだからなぁ……」

律「大丈夫だって、太ってもどうせすぐ痩せるだろ」

澪「……ま、一本くらいは」

律「じゃ、買ってくるから待ってて」

澪「うん」

数分後

律「お待たせ」

澪「サンキュー、律」

律「ああ」

澪と律は二人、チョコバナナを食べる。

澪「何でも懐かしく感じられるな……」

律「そうだな」

澪「私たち、いつ大学寮に戻るんだっけ?」

律「明後日」

澪「明日はどこ行くんだ?」

律「さあな」

澪「――正月に、また来れるかな」

律「ああ。来れるさ」

澪「そうか」

律「そうだ」

祭りの騒々しさが、どこか二人には心地よかった。

律「梓、N女志望してるんだって」

澪「本当か? うれしいな」

律「また、五人集まったらさ、HTTとして活動しようぜ」

澪「武道館行ったり」

律「ライブとか。駅前で」

澪「夢が広がるな」

律「ああ」

と、その時。どーん、と花火が上がった。

律「へえ、今日は花火もあったのか」

澪「知ってて誘ったのか?」

律「いや。偶然」

澪「ついてるな。私たち」

律「そうだな」

どぅん、どぅん、どぉぅん。花火が空を舞う。


澪「聡はどうしてるんだ?」

律「男子高行ってるよ」

澪「男子高かー」

律「軽音楽部入ってるんだってよ」

澪「楽器は?」

律「ドラム」

澪「律の弟らしいな」

律「私に憧れてるらしい。やめとけってな」

澪「まったくだ」

律「なあ、明日は水族館にでも行かないか? 二人で」

澪「唯たちは?」

律「二人だけでいいよ。新鮮だろ?」

澪「まあな。大学にいたときは、ずっと四人で行動してたからな」

律「ああ。今もこうやって二人きりでいるけど、結構新鮮だぞ」

澪「だな」

律と澪は、花火を眺める。

律「綺麗だな。まさに夏って感じだ」

澪「なあ」

律「? 何だ?」

澪「来年も、二人でこうやって花火見ないか?」

律「来年だけじゃなく、ずっとそうしようぜ」

澪「ああ。十年後も、ずっと」

律「約束だぞ」

澪「ああ。律の方こそ破るなよ」

律「もちろんだ」

律と澪は、花火を見る。

肩を並べて、花火を見る。
                               終わり



番外編      花火 

平沢家


深夜

憂「お姉ちゃん、起きてる?」

唯「うん。起きてるよ」

憂「今日、楽しかった?」

唯「うん。焼肉も食べれて、すごく楽しかったよ」

憂「そっか。よかった」

唯「何? こんな時間に。私の部屋に」

憂「あのさ、花火しない?」

唯「花火?」

憂「うん。買ってるんだ。やろうよ」

唯「わかった。着替えるよ」


庭先

唯「お待たせ」

憂「お姉ちゃん、早く早く」

唯「うん」

憂「はい、これ」

と、憂は花火を渡してきた。

唯「うん。ありがとう」

憂「火、つけるよ」

唯「うん」

シュバァァァ と音を立てて、緑色の焔を輝かせる。

憂「綺麗だね」

唯「うん。とても」

やがて火は消える。

憂「じゃあ、次はこれね」

唯「ちょっと煙臭いね」

憂「うん」

憂はまた花火を手渡す。

火をつける。

耀めいて、やがて火が消える。

その繰り返し。

三十分ほど過ぎたころ。

憂「あ、もう花火なくなってきちゃった」

唯「うーん、残念。でも、たのしかったね」

憂「うん。あ、待って……線香花火が二本あったよ」

唯「それで最後?」

憂「うん」

唯「そっか。残念だけどまあ、いいや。どっちが先に消えるか、競争しよう!」

憂「うん!」

唯と憂のもつ線香花火に、火がつけられる。

ぱちぱち、と音と共に小さく燃え盛る。

唯「終わりって感じがするね」

憂「そうだね」

唯「ねえ、憂」

憂「何?」

唯「お正月にも来るからさ、そのときもよろしく」

憂「うん。歓迎するよ」

唯「そして来年は憂がN女に来るのかぁ……、待ち遠しいなぁ」

憂「私も。絶対行くから、待っててね」

唯「うん。もちろん」

憂「あ、消えちゃった」

火の玉がぽとり、と地に落ちる。

唯「あ、私のも」

憂「終わっちゃったね」

唯「うん。でも、楽しかったよ」

憂「そうだね」

唯「ああ、そうだ。ねえ、憂」

憂「何? お姉ちゃん」

唯「大学でもよろしくね」

憂「――うん! よろしく、お姉ちゃん」

暗闇の中でもわかるほど、憂の顔は笑顔になった。

花火よりも綺麗な笑みに、唯はすこし見惚れてしまった。
                                             終わり



最終更新:2010年10月01日 01:31