――翌朝、部室
梓「はぁー、良かったー!」
梓(昨日家に帰った時は、鞄にノートが無くて焦ったけど)
梓(やっぱり部室に置いてきてたんだ)ペラペラ
梓(うんうん、私の百合ノートだ!)
梓「さて、今日は……」
――休み時間
純「ねぇ、憂、今日元気ないよ? 大丈夫?」
憂「……」
純「ねぇ、憂ったら!」ユサユサ
憂「あ、純ちゃんごめん……えっと……何……?」
純「憂……」
純「梓も今日憂元気ないと思うよね?」
梓「うん。もしかして唯先輩と何かあったの?」
憂「えっ……!? あ……うぅ……」コクリ
純「お姉さんと何かあると憂はここまで弱っちゃうのかぁ……」
憂「おね……お姉ちゃん……ぐすっ……」ポロポロ
純「う、憂!? ちょ、ちょっと、泣かないでよ、憂……」アタフタ
梓「……」
梓「…………」
梓 ( 計 画 通 り ! ! )
よしっ、いよいよこの時が来た。
これまでの実験で、このノートの性能の高さはよく分かった。
それを踏まえて、私の一番の望みをついにこのノートに書き込む時が……!!
◆ ◆ ◆
16時00分。
唯先輩は
中野梓のことが好きで好きで堪らなくなる。
中野梓のことが本当に愛おしく思え、何よりも大切な存在と感じるようになる。
もちろん妹の憂よりも。
中野梓以外の者へのスキンシップも無くなり、中野梓だけを愛し、ずっと傍にいたいと思うようになる。
◆ ◆ ◆
梓(よし、これで……)ハァハァ
梓(唯先輩……//////)
梓(放課後が楽しみだな///////)
――放課後、部室
今は私と憂の二人きり。
憂「梓ちゃん……やっぱり私……」
梓「大丈夫だって!」
梓「それにここでちゃんと唯先輩と話さないと、状況はこのままだよ?」
憂「うん……」
梓「本当に唯先輩が憂の話聞いてくれないってなったら、私からも話すからさ」
憂「梓ちゃん……ありがとう」
梓「いいよ、二人のためだもん」
バタン!
律「オースッ!!」
先輩方がやってきた。
ワイワイガヤガヤ
唯「ムギちゃん、今日のお菓子はー?」
紬「今日はねぇー♪」
梓「ほら、憂」コソッ
憂「う、うん……」
唯「わぁ、美味しそう! いただきますー♪」
憂「お、お姉ちゃん……私が食べさせてあげよっか……?」
唯「えっ、いいよ。自分で食べれるし」
憂「……あ、うん……そうだよね……」
唯「モグモグ、モグモグ……」
憂「…………」
唯「パクッ……モグモグ、モグモグ……」
憂「…………」
憂「あ、お姉ちゃん、クリームついてる……」フキッ
唯「自分でできるから!」バッ
憂「あ……ごめん……」
憂「…………」ウルウル
唯「あ、そうそう、律ちゃんー!」ガタッ
憂「ま、待って! お姉ちゃん!」ニギッ!
唯「もう!」バシッ!
憂「え……」
唯「いちいちベタベタしてこないでよ! 不愉快だな、まったく!」
憂「……そんな……」ポロポロ
梓「いいすぎですよー、ゆいせんぱいー」棒
憂「う、お姉ちゃん……うぐ……ふぇん……へぇん……」ポロポロ
澪「お、おい、どうしたんだ?」
律「おい唯、憂ちゃん泣かすなよ……」
唯「えー、だってー」
梓(ノートの効果発動時刻16:00まであと30秒……!!)
29……28……27……26……
澪「可愛そうに……」
唯「勝手に泣きだしたんだって!」
憂「ぐすっ……うぅ……ふぇん……」
18……17……16……15……
紬「唯ちゃんも落ち着いて……!」
律「唯も意地張ってないでさー」
梓(あと数秒で……あと数秒で唯先輩が私だけのものに……!!)
9……8……7……6……
梓「ふふふ、ふははははは!!」
唯憂紬律澪「!?」
律「梓……?」
5……4……
梓「憂」
憂「……!?」
梓「私の勝ちだ!!」ニヤリ
1……
唯憂紬律澪「!!」
0
私は目を瞑った。
梓(さぁ、唯先輩!! 私のもとに飛び込んできてください!!)
梓(さぁ、早く……!! さぁ、さぁ……!!)
梓(ほら、唯先輩!! いつでもいいですよ……!!)
梓(……………………)
梓(あれ…………?)チラッ
みんな、呆気にとられたように私の方を見ている。
唯先輩も特に変わった様子もない。
梓(ば、馬鹿な……こんなはずじゃ……)
紬「梓ちゃん」
梓「!!」ドキ
紬「あなたの負けよ」
梓「ムギ先輩!?」
紬「梓ちゃんが朝ここで見つけたノートは偽のノート、本物はこっちよ」サッ
梓「な……そんな……」
紬「昨日の帰り際に、こっそり私が回収しておいたの」
紬「梓ちゃんが今持ってるノートは本物そっくりの偽のノート、何の力も持たないわ」
梓「で、でも、中身や筆跡まで同じ……」
紬「和ちゃんが一晩でやってくれたわ」
梓「ば……馬鹿な……」
紬「ほら、みんな見て!」バッ
紬「この、人の恋心を操る不思議なノートで、梓ちゃんはこれだけのイタズラをしてたのよ」
澪「こ、これは……」
唯「今までのこと全部……」
憂「梓ちゃん……」
律「ほほう、随分と弄んでくれたみたいだなー、梓ー」
梓「ひ、ひぃ……!!」ガタガタ
梓「ま、待ってください……これは罠です……!」
梓「わ、罠ですったら!!」
律「罠だって言われてもなぁ、梓……」
梓(今だ……!!)カチカチカチカチッ! サッ! カキカキ!
紬「仕込みのノートよ!!」
梓(……!!)カキカキ!
憂「めっ!!」バシッ!
梓「うわぁっ!!」
◆ ◆ ◆
唯s
◆ ◆ ◆
梓「く……!」
紬「梓ちゃんのつくる百合世界、私も楽しませてもらったわ」
梓「だったら! その続きを書きましょうよ! その本物のノートに!」
紬「わかったわ」カキカキ
唯憂律澪「!?」
梓「あはははは! いいですよ、ムギ先輩! さぁ、一体何を書いたんですか?」
紬「観念しなさい、梓ちゃん。あなたの罰が決まってるわ」バッ
ドン!
◆ ◆ ◆
3日間、梓ちゃんはさわ子先生の好き放題なおもちゃになる。
◆ ◆ ◆
バタン!
さわ子「さぁ、梓ちゃん、行くわよー!!」ズルズル
梓「ひ、ひえぇ……!」ガクガク
澪「ちゃんと反省してくるんだな」
律「まあ、さわちゃんで良かったじゃないか、梓」
梓「や、やだぁ! 唯先輩がぁ、唯先輩がいい……!!」ズルズル
唯「あずにゃん、憂のこと苦しませた罰はちゃんと受けないと駄目だよ」
憂「お姉ちゃんっ!!」ダキッ
唯「憂ー!! ごめんね、ほんとごめんね」ギュッ
憂「ううん、私信じてたよ……お姉ちゃんはお姉ちゃんのままだって……」
唯「憂……憂のことはいつまでも大大大好きだからね?」
憂「うん、私もお姉ちゃんが大大大大好きっ♪」
さわ子「さあ、何して遊びましょうか、梓ちゃん♪」
梓「ひえぇー!!」ズルズル
バタン!
――エピローグ
地獄の3日間の罰を終えた私は、深く反省して軽音部の皆さんに謝った。
優しい皆さんは私が反省していると分かって許してくれた。
唯先輩と憂と元の仲に戻るには、もう少し時間がかかりそうだけど。
あと、澪先輩と律先輩の二人は目が合うと赤面しだして、しばらくはまともに話せそうにない。
それでも、また楽しい軽音部での生活を取り戻した。
ただ、ひとつだけ疑問に残ることがある。
ムギ先輩はあの後、本物の百合ノートは燃やして破棄したと言ったが本当だろうか?
紬「うふふふ」
あれ、ムギ先輩ってこんなに可愛かったけ……
ムギ先輩だけじゃない、唯先輩も、澪先輩も、律先輩も、可愛くてしょうがない。
おかしいな……みんなの近くにいるとすごいドキドキしてきちゃうよ……
【 お し ま い 】
最終更新:2010年10月03日 00:04