律「……と、こんな台風の日に、校舎に取り残された生徒を
その鉈を持った少女の怨霊が次々と惨殺していったっていう話だ」

澪「ミミミミエナイキコキコエキコキココ」ブクブク

梓「だ、大丈夫ですか、澪先輩! 律先輩! なんて話するんですか!」

律「いやぁ、台風で帰れなくなった美少女6人。時刻は午後6時。
こんなシチュエーションを生かすためのレクリエーションというか、あはは」

紬「わたし、こんな風に台風で学校に友達と取り残されるのが夢だったの」

和「なんでそんなピンポイントな夢なのよ。でもそうね、たしかにワクワクするわね」

唯「あ、憂からメールだ」

澪「憂ちゃんは雨風酷くなる前に無事帰れたみたいだな」

律「お! 澪ふっか ゴス 痛い!」

唯「あと1時間くらいで弱くなるらしいよ、台風」

律「よし、ならば1時間にわたるとっときの長編怪談を ゴス 痛い!」

唯「あ、そうだ和ちゃん。今日おうちにひとりでしょ? 憂の料理食べてってよ」

和「そうね、お邪魔じゃなかったら、久しぶりにおよばれされようかしら。
ところでなんでうちの事情知ってるのよ」

紬「デ、デザートは!? 憂ちゃんなの!? 唯ちゃんなの!?
そそそれとも、の☆ど☆か?」

梓「わけわかりません、落ち着いてください紬先輩……ってあれ?」

フッ

澪「ひいぃぃミエナイキコエナ……あれホントに見えないぞ? バンザーイ」ブクブク

律「澪! 錯乱しながら気絶するな!」

和「停電、ね。風で電線が切れたのかしら?」

律「……なんだか嫌な予感が」

梓「しますね」

律「おおおい梓! 私か? 私のせいなのか?」

梓「律先輩があんな話するから、こんな推し量ったかのような事になっちゃったんですよ」

紬「和ちゃん。こう部屋が暗くなると、なんだか変な気分にならない?」ハァハァ

和「なりません。落ち着きなさい」

律「これ、絶対出るよなぁ……鉈少女……いや、自分で言っておいてなんだけどさ」

梓「と、とにかく、この部室から出ないようにしましょう。停電なんてきっとすぐ終わりますよ」

律「梓、それフラグじゃないよな?」

梓「! あわわ」

唯「あれ?」

律梓 ビクッ

唯「今どこかで悲鳴が」

律「な、なーに言ってんだよ唯! こんな風強いんだから、悲鳴なんて聞こえるわけないって!」

梓「そ、そうですよ! 風、そう! 風の音ですよ!」

澪「う、うーん、何?」

梓「澪先輩、パニクって部室から飛び出さないでください。
もう私一人で帰るとか言い出さないでください。
それが出来なければおとなしく気絶したままでいてください」

澪「……」ブクブク

和「あ、そうだ」

律梓 ビクッ

和「生徒会室に鞄置きっぱなしだったわ。ちょっと取ってくるね」

律梓「おおぉうい!」

和「な、なによ」

律「和! 聞いてただろ!? さっきの怪談!」

梓「それにこの台風! 停電!」

和「まぁ確かに状況は似てるけれど、でも律。あれ作り話なんでしょ?」

律「さっきまではそうだったけど、なんだか変なスイッチ押しちゃったかもしれないでしょ!?」

和「なによそれ」

梓「せ、せめて明かりがついてからにしてください」

和「大丈夫よ梓ちゃん。すぐ戻ってくるから」

律「ああぁぁぁぁもおうぅぅぅ」

和「非常灯もついてるだろうし、同じ校舎内でしょ。目つぶってたっていけるわ」

梓「あぁぁ和先輩はこれ以上しゃべらない方がいいです」

紬「和ちゃん。おいしい紅茶煎れておくから早く戻ってきてね」

梓「紬先輩も黙ってください!」

和「ありがと。じゃあ私生徒会室行くね」

唯「いってら~」

和「あ、そうそう唯」

唯「なぁに、和ちゃん?」

和「憂の手料理、楽しみだわ」

梓(はい死んだー。和先輩死んだー)



和(停電だったからかしら? なかなか鞄が見つからなかったわね)

和(少し遅れちゃったわ。早く戻らないと)

和「あれ?」

和「廊下の奥に、誰かいる……」



律「……」

梓「……」

紬「……和ちゃん、おそいね」

唯「……」

澪「ブクブクそうだなブクブク」

律「なぁ、梓……」

梓「……なんですか」

律「やっぱり、わたしのせいなのかな?」

梓「今となってはどうしてこうなったかなんて、わかりませんよ」

律「それでも、和の死亡フラグをひとつでもへし折っていれば!」

梓「あんなへし折る隙もなく立て続けるなんて予想外ですよ……。
……せめて、私がもっと強く引き留めていれば……」グス

唯「大丈夫だよ」

律梓紬澪「!」

唯「和ちゃんは、大丈夫」

紬「唯ちゃん……」

律「……そうだな。今は和の無事を」

梓「祈りましょう!」

ガチャ

律梓紬澪 ビクッ


和「ただい……なにこの空気。停電だからって気分も暗くなっちゃ駄目でしょ」ケラケラ

唯「お帰り和ちゃん!」

和「ただいま、唯。遅くなってごめんね。なぜか鞄が見つけにくかったのよ。
そろそろ風も弱くなってきたし、帰れそうね。憂の料理が楽しみだわ」

律「おい! 和!」

梓「なんで生きてるんですか!?」

和「なにふたりとも。私が生きてたら悪いの?」

梓「す、すみません……でも」チラ

律「だって、なぁ……」チラ

紬「和ちゃん。廊下も暗かったでしょう? 大丈夫だった?」

和「非常灯あったし大丈夫だったわ。あ、そうそう」

和「途中で何か持ってる子に会ったけれど、あの子も帰れなくなった生徒かしら」

律「! なぁ和。その持ってるって、鉈、とかじゃないよな」

和「そういえば鉈にも見えたわね。でも急いでいたからスルーしちゃった。悪いことしたかしら」

梓(死亡フラグも)

律(スルーした……だと?)

唯「ふたりとも和ちゃんを甘くみちゃだめだよ」

唯「和ちゃんのスルー力はホントすごいんだよ~」

和「ふふふ。おかしなこと言うのね、唯」

唯「和ちゃんってば、今までもいろんなおつきあいフラグをスルーしてきたんだよ。
これからもきっとスルーし続けて一生独身だよ~」

和「ふふふ。オカシナコト言うのね、唯」ギリギリギリ

唯「い、痛いよ和ちゃん!」

澪「おしまい!」





※立て逃げ・乗っ取り
最終更新:2010年10月03日 22:33