紬「はいっ」
律『あ、律だけど』
紬「う、うん」
律『家ちゃんと着いた?』
紬「あ…うん」
もしかして心配してくれたの?
律『具合は?』
紬「うん…大丈夫」
心配…してくれたんだ
律『そっか…よかった。なんか無理させちゃったのかなって…』
紬「ううん…そんなことないよ」
律『なら、いいんだけどさ。具合悪いときとかちゃんと言ってくれよ?』
紬「うん…」
優しい声…優しい言葉…なんだか泣きそうになる
律『今日は早めに寝るんだぞ?』
紬「うん」
律『よしっ!じゃあまた明日な』
紬「うん…ありがとう」
律『いーってことよ!』
明るくて、聞くだけで元気が出そうな声
紬「じゃあ、おやすみ」
律『おやすみ~』
紬「………」カチッ
紬「…ふふっ」
なんでもないような電話が何故かすごく嬉しかった
こんな風に浮き沈みの激しい複雑な思いをしながらも彼女と私の関係は続いていった
…
……
………
でも
それは、突然だった
律「……今日で終わりにしないか」
十数回目のホテルでの密会で彼女は私にそう告げた
律「………」スッ
左手を私に見せる
彼女の左手の薬指に光る証があった
それは夫婦や恋人同士がつける証
この人は私のものだって主張する証
その指輪を買おうと言ったのはどっちだろう
その指輪をプレゼントしたのはどっちだろう
その指輪は二人でお互いの指輪を買ってプレゼントし合ったものなのだろうか
お互いの指輪を買ってプレゼントし合う
私が憧れていた夢の一つをこんな形で目にするなんて思っていなかった
紬「いいよ」
律「…いいのか?」
紬「だって最初に約束したじゃない」
律「……そうだな」
『終わりにしようとどちらかが言ったら必ず「うん」と返事をする』
これだけは絶対に守ろうと思っていた約束
紬「もう帰る?それとも最後にする?」
わざと挑発的な態度をとる
律「………」
紬「…しよっか」
そう言って抱きしめる
紬「最後にヤらせろなんて言いにくいもんね?」クスッ
律「………」
お願い。そんな泣きそうな顔しないで
舌を絡め合わせる
いつもリードするのは彼女の方だった
最後くらい私がしてもいいよね?
律「……っ」
ねぇ
澪ちゃんはこういう風にリードしてくれた?
ないよね
りっちゃんの様子見れば分かるよ?慣れてないって
紬「……っちゅ」
律「…ふっ」
紬「ふふ…おいし」
顔を赤くする彼女
そんな顔するんだね
初めて見たわ
澪ちゃんの前ではそうなのかな
そんな弱弱しい顔も見せるのかな
首筋を舐めながら服を脱がす
されるがままのあなたからはいつもの男の子のような格好よさはなく、どこまでも女の子だった
可愛い胸
感じやすいのね
知らなかったわ
いつも触らせてくれないから
きれいなおへそ
引き締まったお腹によく似合ってる
えっちなあそこ
初めてねこういう風にまじまじ見たの
見せてくれなかったものね
ううん
触らせてもくれなかったなぁ
二人で気持ちよくなることはしたけどあなただけが気持ちよくなることはしなかったもんね
今日は気持ちよくしてあげるね
律「あぁっ…!」
指で、舌で、愛撫する
もちろん他人のをしたことなんかないからりっちゃんのモノマネだけどね
気持ちいい?
りっちゃんから学んだんだよ
私の【性】はりっちゃんでできてるんだよ?
私が気持ちよかったみたいに気持ちいいと思ってくれてるかな
律「───!!」ビクンビクンッ
体を跳ねさせぐったりする
イったんだ
りっちゃんがイくところなんて初めて見た
今日は初めてなことが多いね
なんでだろうね
私達は何回も肌を重ねてきたはずなのに
お互い知らないことだらけだね
律「はぁっ…はぁ…」
りっちゃんは私と違って眠らないんだ
紬「………」ぐいっ
律「え!?ちょ…!」
再び唇を押し付け、舌を這わせる
ぐしょぐしょになったあそこからえっちな刺激臭と不思議な味がした
何度、彼女をイかせただろうか
太ももまでぐしょぐしょにしながらぐったりとしてるりっちゃん
私は今日一度も達していない
でも私はすごく気持ちよかった
りっちゃんの言っていた「人にするだけでも気持ちよくなれるんだよ」と言うのが理解できた
律「ムギ…」
紬「もう一回?」
律「いや…その…最後に……二人で…」
紬「……もう時間ないよ?」
律「でも…」
彼女が恋人にどんな嘘をついたのか知らないがここに入ってもう3時間以上経つはず
そろそろ連絡したりしないとまずいでしょ?
紬「いいから」
律「…うん」
いつだか彼女が私を諭したように私は彼女を諭した
二人でするのは彼女との一体感がほしかったから
イくだけなら彼女の手のが気持ちいい
でも私は二人でする方が好きだった
何でかなんて考えなくても分かる
だから
最後だから
しない
偽りの一体感なんていらない
そう思ってはっと気づく
偽りだらけだったのに私はなにを考えているのだろう
笑いが出た
『本気にならない』
これが最初に彼女とした約束
この時点で偽りだったのに
でもねりっちゃん
私知ってるよ
りっちゃんが本気になりかけていたこと
でも澪ちゃんを愛してるのも本当
だから怖かったんだよね
大事な大事な澪ちゃんを傷つけるのが
心だけは裏切りたくなかったんだよね
優しいりっちゃん
大好きだよ
紬「着替え終わった?」
律「…うん」
紬「今日はここで別れようか」
律「え…でも…」
紬「ね?」
律「………うん」
笑顔の私。泣きそうなあなた。
紬「じゃあね」
律「……ムギ」
そっと私の腕を引き優しく口付けた
それは幼い恋人同士がするような一瞬触れるだけもの
いつもの快楽のために舌を絡ませるようなものとは違う
こんなキスしたことなかったね
だってこのキスはあの人だけのもの
あなたの大事な大事なあの人だけのもの
律「………」
パタン
ドアの閉まる音がした
ベットに倒れこむ
さっきまで彼女がいたベット
さっきまで彼女が乱れていたベット
さっきまで彼女と私だけのものだったベット
ふわっ
彼女の香水の匂いがした
ユニセックスの甘すぎない爽やかな香りの香水
あの人と、お揃いの香水
紬「っ…」
大嫌い
私は声を上げて泣いた
大嫌いな、香水の香りを嗅ぎながら──
おわり
最終更新:2010年10月07日 23:54