休み時間になると純ちゃん達が私の席へ寄って来ました。
純「憂、ギリギリだったね」
憂「うん、お姉ちゃんの教室に居たからね」
梓「何でまた」
憂「お姉ちゃんの髪の毛セットが終わってなくてね、直してきたの」
梓「は~学校来てまでねぇ。よくやるね」
純「過保護過ぎ!」
憂「そんなことないよ~」
純「ってあそこに居るの憂のお姉ちゃんじゃない」
純ちゃんが校庭を指差しています。
校庭にはお姉ちゃんと律さん、紬さん、そして澪さんが居ました。
体操着に着替えていて何かを話しながらゆっくり歩いています。
梓「ホントだ。次は体育かぁ。またマラソンでもするのかな」
お姉ちゃん。
いつもは学校が終わってからじゃないとお姉ちゃんを見ることはないけど
今日は純ちゃんのおかげでお姉ちゃんを見ることが出来ました。
お姉ちゃんこの時間が体育なんだぁ。
嬉しくて声をかけたくなりました。
席を立って窓の向こうのお姉ちゃんに向かって声を上げます。
憂「おねーーーちゃーーーーん!」
気付いてないようです。
もっと力いっぱい声を張り上げました。
憂「おねえーーちゃーーーーーーんんん!!」
純「ちょ、憂!」
あ、お姉ちゃんがきょろきょろ辺りを見回しています。
気付いてくれたようです。
何故か教室が騒がしいですが気にしないでおきます。
憂「おねえちゃーーーーん!!!こっちだよーーー!」
手を思いっきり振ってお姉ちゃんを呼びました。
律さんがこちらに気付いて指を刺します。
――お姉ちゃんがこっち向いてくれた!
唯「あ、ういだーー!うーーーいーー!」
お姉ちゃんが大きく手を振って声をかけてくれました。
私もお姉ちゃんに負けないくらい大きく声を出します。
憂「おねーーーちゃーーん!!体育がんばってえええーー!」
唯「おおーーがんばるよおおーーー!」
そのままお姉ちゃん達がクラスメイトの人達の所へ行くまで見送りました。
憂「お姉ちゃんが気付いてくれたよ!声かけてくれたよ純ちゃん!」
純「あーそうだねよかったねー」
憂「も~聞いてるの純ちゃん」
純「うん聞いてる聞いてるー」
授業が始まるので取り合えず席に着きます。
窓に目をやると走っているお姉ちゃんが見えます。
気になって何度も外をチラチラ見てると
先生に注意されてしまいました。
ごめんなさい。でも気になるから……。
この時間体育だったなんて迂闊でした。
来週からしっかり見ないといけませんね。
席が窓際でよかったです。
――キーンコーンカーンコーン
ああ、やっとお昼です。ご飯の時間です。
待ちに待ったお姉ちゃんと一緒に作ったお弁当。
鞄を開けるとお弁当箱が二つ。
朝に渡し忘れたのでしょうか。
渡しに行こうと席を立つと
向こうからお姉ちゃんが来てくれました。
唯「ういー?」
憂「お姉ちゃん!」
唯「お弁当箱がなくてね。貰いにきたよー」
憂「うん、ごめんね。私が持ってたよ」
唯「さっき体育だったからとってもお腹すいちゃった」
憂「お姉ちゃん頑張ってたもんね。あ、汗まだついてるよ拭いてあげるね」
タオルでお姉ちゃんの首回り等拭いてあげました。
お姉ちゃんはくすぐったそうにしていますが
放っておくとあせもになっちゃうから我慢してね。
急いで着替えたのか服も髪の毛も乱れています。
拭くついでに整えてあげます。
はい、綺麗になりました。
「あれ、唯先輩じゃない~?」
クラスメイトの人達がそんなことを言っています。
お姉ちゃんはけいおん部で結構有名みたいです。
流石お姉ちゃん。
皆もお姉ちゃんの魅力に気付いたみたいです。
憂「そうだよ~、私のお姉ちゃんだよ~!」
「知ってるよー」なんて言われました。
顔だけ知っててもいけないので
あらゆるチャームポイントを教えてあげました。
「それ、前も聞いたよー」
あれ?そうだったっけ。
唯「ういーお腹すいたよー」
憂「あ、ごめんね。はい、お弁当」
唯「ありがとーー。じゃあまたね」
憂「うん、またね」
無事お弁当も渡したので
梓ちゃん達とご飯を食べることにしました。
梓「憂、遅いー」
純「長々と何を話してるのさ」
憂「ごめんねー。色々とね」
まだ話したかったけど時間が足りません。
今はお昼ご飯の方を楽しみましょう。
お姉ちゃんと一緒に作ったお弁当を机に広げました。
梓「憂のお弁当いつもとちょっと違うね」
憂「うん!お姉ちゃんと一緒に作ったんだぁ」
純「へ~憂のお姉ちゃん料理出来たんだ」
憂「私がね色々手伝ったんだよ」
梓「あ~そりゃ出来るよね」
憂「お姉ちゃんすっごく上手に出来たんだよ。ほらこれとか!」
梓ちゃん達に味見をさせてあげました。
食べればお姉ちゃんがどれだけ頑張ったか分かるはずですから。
梓「あ、ホントに美味しいわ、これ」
純「おお、いけるいける!」
憂「でしょ~~?」
そうです。お姉ちゃんの料理は美味しいです。
味付けとか色々手を貸しましたけど
お姉ちゃんが作ってくれたから美味しいです。
気付けばお弁当箱の中はからっぽです。美味しかったです。
お姉ちゃんと一緒にお弁当を作るのは楽しかったけど
朝起きるの大変みたいですし
私が作らないと立派なお嫁さんにはなれませんから。
あ、お姉ちゃんにお礼のメールをしましょう。
純「憂、何のメールしてるの?」
憂「お姉ちゃんにお弁当美味しかったよってメールを」
憂「あ、純ちゃんシャメ取って!ほらお弁当からっぽに食べたから」
純「あーはいはい」
――ピロパロン
憂「ありがとう!純ちゃん」
お姉ちゃんに「美味しかったよ、ありがとう」という言葉とともに
満面の笑みで写っている私とお弁当箱の画像を送りました。
しばらく純ちゃん達とお喋りをしているとお姉ちゃんから返信が来ました。
「憂のお弁当も美味しかったよ」とともに私と同じような笑みのお姉ちゃん。
美味しかったんだぁ。
――よかった!嬉しい!
憂「ほら、お姉ちゃんも平らげちゃったよ!見てみて!」
純「あーほんとだ凄い凄い」
梓「唯先輩、口にご飯粒くっついてるし」
焦って食べてたのかな。
「お口にご飯粒くっついてるよ」と返信しておきました。
梓「憂も唯先輩もよくやるよね。普通そこまで姉妹で仲よくならないよ」
純「今更言ってもね。中学からこんなんだし」
仲がいいと言ってくれました。
素直に嬉しいです。ありがとう梓ちゃん。
そのまま三人でたわいもない話を続けます。
そしてお昼時を過ぎ、いつの間にか今日の授業は全て終わっていました。
部活をやっていない私にとって、後は帰るだけになりました。
部活をやってなくても家でやることがたんまりありますからね。
帰り際に純ちゃんと梓ちゃんにお別れの挨拶。
お姉ちゃんは今から部活です。
『部活頑張ってね。お夕飯美味しいもの作るからね』
お姉ちゃんにメールをしておきました。
疲れたお姉ちゃんを癒すには美味しいご飯がもってこいです。
『うん、頑張るよーー。ご飯、期待してまっす!』
こんな返信が来ました。
期待されています。頑張らなくっちゃ!
お姉ちゃんが帰ってくるまでに家のことは全部終わらせます。
お買い物終わらせて、洗濯物を片付けて、お風呂掃除まで。
お姉ちゃんが帰ってきた時には居心地のいい空間が広がっています。
お姉ちゃんが喜んでくれるから、そのためだけに頑張ります。
お夕飯の支度が整った頃、お姉ちゃんが帰ってきました。
笑顔でお出迎え。
鞄やギー太を受け取り、お姉ちゃんに手を洗うように促します。
鞄等をお姉ちゃんの部屋に置いて
リビングへ戻る頃にはお姉ちゃんは席についていました。
そして二人一緒に――いただきます。
お姉ちゃんと一緒に居ると楽しいものです。
“至福のひととき”と言うべきでしょうか。
毎日こんな日が続けばいいなと思いました。
この後はお風呂入って寝るだけ。
あ、宿題もしないといけませんね。
お姉ちゃんはギー太と一緒に練習もするかな。
それを横で見る私。
いつもと変わりません。
変わりようがないと思います。
だって私達はなかよし姉妹ですから。
――普通そこまで姉妹で仲よくならないよ
梓ちゃんがそう言ってました。
――普通?私達は普通じゃないの?
――普通って何だろう。なかよしって何だろう。
心の中で自問自答を繰り返します。
答えは出ません。私がまだ子どもだからでしょうか。
でもいいです。そんな難しいことは。
私は“お姉ちゃんのことが大好き”なのは正解だから。
明日も今日と同じようになかよくして
その次の日も同じようになかよくして
お休みの日も同じようになかよくして
一ヶ月たっても一年たっても十年たっても
お姉ちゃんと一緒に――――
ただ“なかよし”だけが続きます。
いつまで?――死ぬ日まで。
運命だからです。こうなることは。
ただそれだけですから。
だからシスコンと呼ばないで下さいね。
おしまい
最終更新:2010年10月08日 23:01