あれから色々な所を回りました…。
映画館にゲームセンター、 
どれもすごく気持ちが安らいで…楽しくて

今私と憂は帰り道の川沿いの道を歩いている、手を繋いで

「憂…今日は楽しかった?」

「うん!楽しかったよ!お姉ちゃん」

「そう?、良かったぁ」

本当に良かった。
憂の顔が夕焼けに染まっていつもより眩しいです
つい笑顔がでちゃいます


「…憂」

私は憂を見据えて名前を呼びます
いつもと違う雰囲気を憂も感じたようです

「…?」

「本当に、今までありがとうね?」

「っ!…」

憂の顔が歪むのが、確かにわかりました。
ならせめて、私が笑っていないと
………うまく笑えてるかな

「今まで…ずっと傍にいてくれて、迷惑いっぱいかけたね?」

「…ちがう!…迷惑なんて…私は……楽しかったから」

「ううん、私は憂に何もしてあげられなかったから、せめて楽しい思い出を、そう思った」

わかってるよ憂
憂の事はわかるから、言わなくてもいいんだよ?
憂のその優しさから私は元気をもらえた
憂のその強さから私は勇気をもらえた
全部、憂のおかげ

「お姉ちゃん…っ…私こそ…ありがとう…」

…憂の精一杯の「ありがとう」
お姉ちゃんは受け取ったよ

「えへへ…憂の事はわかってるから…大丈夫だよ…」

「お姉ちゃん………」

「じゃあ、帰ろうか、私達の家へ!」

「…うん!」

そう言って私達は歩き出した

同じ歩幅、同じ速さで

………
……


数日後、引越し前夜。


「ふー、よし、大体終わったなー」

そう言って思い切り伸びをするのは律ちゃん

「みんなありがとね、引越し手伝ってもらって」

みんな、本当にありがとう

「いいってことよー」

「そうだぞ、遠慮なんかするな」

「うふふ」

軽音部の皆が引越しを手伝ってくれました

「さて、そろそろ帰るか律」

「えー、もう帰っちゃうのかー?」

「バカ…」

「……あっ」

律ちゃんが私をを見てきづいたようです
えへへ…気を使わせてごめんね

「そっか…へへへ、よし、んじゃ帰るかー!」

「そうね、唯ちゃん、憂ちゃんも、またね」

「憂ちゃん、元気でな」

「はい!、みなさん、ありがとうございました!」

憂はお辞儀おしてお礼を言う
そして皆はそれぞれの帰路に着きました

「じゃ、行こうか憂」

「うん…」

私達は家の中に戻りました

「あー、疲れたねー」

「そうだね…あっ、もうこんな時間だよ」

時計を見ると、針は11時を回っていました

「ほんとだー、じゃあ今日はもう寝ようか!」

「うん………えと…」

憂が何か言おうとしています
…わかるよ、憂

「憂…一緒に寝ようか」

「…!……うん!」

憂が笑顔になりました、

「じゃ、行こう!」

「うん」

私達は階段を一緒にをあがっていきます… 二人で一緒に


………
……


パサッ
「うふふ…お邪魔しまーす」

「いらっしゃい、お姉ちゃん」

私は憂のベットに潜り込みます
まだ夜はすこし肌寒いけど、二人でいればあったかです
「…」
「…」

しばらくの沈黙
わかってるから、憂も。
…これが二人で過ごす最後の夜ってこと


「お姉ちゃん、明日、何時ごろでるの?」

「んー、向こうでの整理もあるし朝かなー」

「そう……」

「……えへへ、少し寂しくなるね…」

「っ…そうだね……」

憂の顔はよく見えません
私は、胸が苦しくなるのを感じます
わかってるから、憂は無理してるんだって

「憂………本当に、今まで、ありがとね…」

「……っ……」

私は憂の頬に触れます
そこで気づきました

「…憂?……泣いてるの……?」

「……え………?」

憂は自分の顔を触りました
…憂の目からは涙が溢れていました、憂もびっくりしてる
自分でも気づかない、それ程自然な涙。

「なん…で……私…っ!」

憂は必死に涙を拭おうとしました

「憂……泣かないで?…憂…」

私は憂の頭をそっと撫でました
妹の温もり、憂は安心したのか、
憂の目からは一層激しく涙が溢れます

「…ッ…おねぇ…ちゃ……グスッ……」

「憂……いい子…いい子…」ポロリ

気づけば私も涙が出ていました
憂…無理させてごめんね。
お姉ちゃんの私がしっかりしなきゃいけないのに。
憂には笑顔でいてもらうために、私は泣かない
そう決めたのに。

「おねぇ…ッ…ちゃ…うっ……うわぁぁぁぁっ」

「憂…」ギュ

私は憂の名前を呟くと、そっと、
でもしっかりと、憂が壊れないように抱きしめました

「うわぁぁぁぁぁん、おねえちゃぁ゙ぁぁぁぁん」

「ふふ…うぃは…グスッ……泣き虫さんだね?……」

私は憂の頭を撫でて慰めます
憂…よく頑張ったね。
大丈夫、大丈夫だよ


………
……


「憂…落ち着いた?」

「うん……ごめんね、お姉ちゃん」

憂は大分落ち着いたようです

「いいんだよ、私は、憂のお姉ちゃんだから!」

そう言って私は笑います
全て吹っ切れたように。
今だからこそ胸を張れる、
私は憂のお姉ちゃんだから。


「憂…寂しいけど……私は憂の事、ずっと想ってるから」

………憂。

「…うん……」

「どんな時も、学校でも、お風呂でも、寝るときも、トイレだって…」

………どんな時だって。

「………ぷっ、あははは、トイレは流石におかしいよお姉ちゃん」

そう言って憂が笑う
やっと笑ったね。

「えーそうかなぁ?、…どこだって、離れてたって私の気持ちは変わらないから」

「………うん」

………だから。だからね


「憂も…忘れないでね?」

「ふふっ、お姉ちゃんの事、私が忘れるわけないじゃん…」

「そう?…えへへ、嬉しいよ、………」

本当に嬉しいよ

「私も…最後まで…ありがとう、お姉ちゃん」

憂は真っ直ぐ私を見た
そこに、さっきまで泣いてた憂はいませんでした
もう、憂の心配はいらないみたい


「うん………もう。大丈夫みたいだね」

「…うん、私頑張れるよ…もう泣かないよ!」

「本当に?…約束だよ?」

「うん…約束約束…えへへ」

「ふふっ、やっぱり憂は笑ってなくちゃ…これで私は安心だよ憂」

本当に、安心だよ…憂。
でも少し寂しい、これが子供が成長した時の親の気持ちかな?
ふふふ…なんてね。

「おやすみ、憂」

「うん、おやすみ」

おやすみ。大切な憂

………
……


「じゃあ、行って来るよ、憂!」

「うん!、行ってらっしゃい、がんばってね!」

憂はいつもと変わらず、笑顔で送り出してくれる

「まかせて!、夏にはまた帰って来るから」

「…うん」

「寂しくなったらいつでも遊びに来てもいいんだよ?」

寂しくなくても…ね

「ふふっ…わかった」

「じゃあいってきます!」

「行ってらっしゃい、お姉ちゃん!」

………バタン

最後に私は精一杯の笑いました

行って来ます。


「さて、いきますか!」

私は駅に向かって歩き出しました

そういえば…憂は手紙に気づくだろうか

…きっと大丈夫だよね。


「………ふふ」

思わず手紙の内容を思い出して笑みがこぼれます
手紙の内容?………えへへ、恥ずかしくて言えないよ





今日も太陽が眩しいです



「………温かい」

私は立ち止まりました

季節はもう春、それは楽しいけれど、ちょっぴり悲しい季節


そんな事を考えたその時。
私の気持ちを後押しするかのように、
ヒュ、と柔らかな風が私の背中を押しました
………。


その風に乗るようにして、
不意に、もしかしたら気のせいかもしれないけれど
確かに憂の声が聞こえた。


思わず頬が緩んでしまいます

憂…。

私は振り返りました、いつも大切な人と歩んだ道を。
憂…私の精一杯の気持ち、受け取ってくれる?





「ありがとう」






おわり



最終更新:2010年10月11日 00:18